ケイ石とは?陶芸の釉薬・素地に必須の役割と種類

ケイ石は陶芸作品の強度や透明感を左右する重要な原料です。釉薬や素地への配合比率によって仕上がりが大きく変わることをご存知でしょうか?

ケイ石とは陶芸に使う原料

高温で焼くと透明ガラス質になると思われがちですが、実は1200℃以下では白濁したままです。


この記事の3つのポイント
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ケイ石の正体と役割

二酸化ケイ素を主成分とする鉱物で、陶磁器の強度と透明感を生み出す基本原料

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種類と使い分け

珪砂・珪石・珪藻土の3種類があり、粒度や産地で釉薬・素地への適性が異なる

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配合の実践知識

釉薬では30~50%、素地では20~30%が目安だが焼成温度で調整が必要

ケイ石の基本的な性質


ケイ石は二酸化ケイ素(SiO₂)を主成分とする鉱物です。純度の高いものは99%以上が二酸化ケイ素で構成されています。


陶芸の世界では「シリカ」とも呼ばれます。この原料が陶磁器作りで欠かせない理由は、高温で焼成すると他の原料と化学反応を起こし、ガラス質の層を形成するからです。


ガラス質の層が作品に強度を与えます。


自然界では石英や水晶として存在しています。透明な結晶状のものもあれば、白色や灰色の不透明な岩石状のものもあります。


どちらも陶芸では粉砕して使用します。


融点は約1710℃です。陶芸の一般的な焼成温度(1200~1300℃)では単独では溶けません。しかし長石や石灰などのフラックス融剤)と混ざると、1200℃前後でガラス化し始めます。


つまり他の原料との組み合わせが重要です。


ケイ石が陶芸で果たす役割

釉薬においてケイ石はガラス質の骨格を作ります。釉薬の透明度や光沢感はケイ石の配合量で決まるといっても過言ではありません。


配合比率が高いほど透明度が増します。一般的な透明釉では30~50%のケイ石が使われています。50%を超えると融けにくくなり、表面がざらつくこともあります。逆に20%以下だと釉薬が流れやすくなります。


素地粘土)への配合では、焼成後の強度向上が主な目的です。ケイ石を加えた素地は収縮率が低くなり、ひび割れしにくくなります。磁器土では20~30%程度配合されることが多いです。


耐火度を高める効果もあります。ケイ石の配合量が多い素地は、高温焼成でも変形しにくいです。これは花瓶や食器など、実用性を求める作品では大きなメリットです。


ケイ石の種類と粒度の選び方

陶芸で使われるケイ石には主に3つの形態があります。


それぞれ粒子の大きさと精製度が異なります。


珪砂(けいしゃ)は粗い粒子のケイ石です。粒径は0.1~2mm程度で、砂のような質感があります。素地に混ぜると焼成時の収縮を抑える効果が高いです。


土物の陶器制作でよく使われます。


珪石粉(けいせきふん)は細かく粉砕したケイ石です。粒径は数ミクロン~数十ミクロンで、小麦粉のような細かさです。釉薬の原料としては、この珪石粉が最も一般的です。


水に溶けやすく混ざりやすいです。


珪藻土(けいそうど)は珪藻という植物プランクトンの化石が堆積した土です。


多孔質で軽く、断熱性があります。


陶芸では素地の軽量化や、特殊な質感を出すために使われます。


粒度の選び方は用途で決まります。釉薬には200メッシュ以上(粒径75ミクロン以下)の微粉末が適しています。素地には40~100メッシュ(粒径150~400ミクロン)の中粒が使いやすいです。


産地によっても品質が異なります。国内では岐阜県や愛知県産のケイ石が高品質とされています。海外ではオーストラリアやインド産も流通しています。価格は1kgあたり100~500円程度です。


ケイ石を使った釉薬の基本配合

透明釉の基本配合では、ケイ石が30~50%を占めます。これに長石20~40%、石灰石10~20%を加えるのが標準的なレシピです。


具体例を挙げます。1230℃焼成の透明釉の場合、ケイ石45%、カリ長石30%、石灰石15%、カオリン10%という配合が使えます。この比率なら透明度が高く、流れにくい釉薬になります。


マット釉を作る場合はケイ石の比率を下げます。ケイ石25%、長石35%、炭酸バリウム15%、カオリン25%という配合で、つや消しの質感が得られます。


ケイ石が少ないほど表面が粗くなります。


色釉を作るときもケイ石は基本です。上記の透明釉に酸化銅3~5%を加えれば緑色、酸化鉄5~10%で茶色になります。ケイ石の配合比率が発色の鮮やかさを左右します。


焼成温度で調整が必要です。1200℃以下で焼く場合はケイ石を5~10%減らします。1250℃以上なら5~10%増やすと流れにくくなります。温度が高いほどケイ石が溶けやすくなるためです。


ケイ石を素地に配合する実践的なコツ

陶器の素地にケイ石を加えると収縮率が下がります。焼成後のサイズが計算しやすくなるため、精密な作品作りに向いています。


配合比率の目安は20~30%です。赤土や白土といった基本の粘土に、重量比で2~3割のケイ石を混ぜます。これ以上増やすと成形時にひび割れやすくなります。


混ぜ方には順序があります。


まず乾燥した粘土とケイ石をよく混合します。


次に水を少しずつ加えて練ります。いきなり水を入れるとダマになりやすいので注意です。


粒度は40~100メッシュが扱いやすいです。粗すぎると表面がざらつき、細かすぎると均一に混ざりません。100メッシュ(粒径150ミクロン)前後が標準です。


磁器土を作る場合はケイ石の比率を上げます。カオリン50%、ケイ石30%、長石20%という配合が基本レシピです。


焼成後は白く硬い仕上がりになります。


ケイ石の購入時に確認すべきポイント

純度が品質を左右します。陶芸用として販売されているケイ石は、二酸化ケイ素の含有率が95%以上のものを選びます。不純物が多いと焼成後に黒点が出ることがあります。


粒度の表示を必ず確認します。「200メッシュパス」や「100メッシュアンダー」といった表記があります。


メッシュ数が大きいほど細かいです。


用途に合った粒度を選ばないと失敗します。


産地も重要な判断材料です。国産のケイ石は品質が安定していますが、やや高価です。輸入品は安価ですが、ロットによって品質にばらつきがあります。


初心者は国産品から始めるのが安全です。


保管方法にも注意が必要です。


湿気を吸うと固まりやすくなります。


密閉容器に入れ、乾燥した場所で保管します。一度固まると使いづらくなるので、開封後は早めに使い切ります。


購入先は陶芸材料店やオンラインショップが一般的です。1kgから購入できる店が多く、初心者でも試しやすいです。まとめ買いすると割安になりますが、使用期限はないので少量から始めても問題ありません。


全国の陶芸材料店では、ケイ石の純度や粒度について専門スタッフに相談できます

ケイ石使用時のトラブルと対処法

釉薬にケイ石を多く入れすぎた場合、表面がざらつきます。


これは「釉切れ」と呼ばれる現象です。


対処法は、長石を5~10%増やして再調合することです。


長石がケイ石を溶かしやすくします。


逆にケイ石が少ないと釉薬が流れます。作品の底まで釉が垂れて、窯の棚板にくっつくトラブルが起きます。


この場合はケイ石を5~10%追加します。


焼成前のテストピースで必ず確認します。


素地にケイ石を入れすぎると、成形中にひび割れが増えます。


粘りが失われて扱いにくくなるためです。


すでに混ぜてしまった場合は、ベントナイト(粘土の一種)を2~3%加えると粘りが戻ります。


焼成後に黒い点が出ることもあります。


これはケイ石に含まれる鉄分が原因です。


純度の高いケイ石に変更するか、釉薬を厚めにかけて隠す方法があります。素地の場合は白土を混ぜると目立ちにくくなります。


粉塵対策も重要です。ケイ石の微粉末を吸い込むと肺に悪影響があります。


作業時は必ず防塵マスクを着用します。


換気扇を回し、粉が舞わないよう水を含ませながら混ぜる習慣をつけます。


ケイ石と他の原料の相性

長石との組み合わせは陶芸の基本です。長石はフラックス(融剤)として働き、ケイ石を溶かしてガラス化させます。両者のバランスで釉薬の融け具合が決まります。


カオリンとの相性も良好です。カオリンは釉薬に粘性を与え、垂れを防ぎます。ケイ石40%、カオリン10%という配合なら、透明で流れにくい釉薬になります。


石灰石を加えると融点が下がります。ケイ石45%、石灰石15%、長石30%という配合は1200℃で十分に融けます。


低温焼成したい場合に有効です。


酸化金属との組み合わせで色が生まれます。ケイ石ベースの釉薬に酸化コバルト1%を加えれば鮮やかな青色が出ます。ケイ石の透明度が高いほど発色が美しくなります。


灰との併用は伝統的な技法です。木灰や藁灰にケイ石を混ぜると、独特の景色が生まれます。灰40%、ケイ石30%、長石30%という配合で、柔らかな色合いの釉薬ができます。


陶芸におけるケイ石の役割は多岐にわたります。釉薬では透明度と光沢を、素地では強度と耐火性を生み出します。配合比率と粒度の選択が仕上がりを左右するため、目的に応じた使い分けが重要です。


初心者の方は、まず少量で実験することをおすすめします。基本配合を試し、焼成結果を記録しながら自分好みの配合を見つけていきます。ケイ石の特性を理解すれば、表現の幅が大きく広がります。




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