火山噴出物は物質の状態によって3つの主要なカテゴリに分類されます。気体状の火山ガスは、主に水蒸気を含み、二酸化炭素、二酸化硫黄、硫化水素などの成分で構成されています。これらのガスは毒性を持つものが多く、酸欠や直接的な健康被害をもたらす可能性があります。
参考)火山噴出物 - Wikipedia
液体状の噴出物としては溶岩が代表的です。溶岩はマグマが地表に流出したもので、火山の噴火様式や地形形成に大きな影響を与えます。火山性の温泉や熱水泉も液体状噴出物に含まれることがあります。
参考)火山噴出物(火山ガス・溶岩・火山灰・火砕流など) - 地理ラ…
固体状の火山砕屑物は最も多様なカテゴリで、粒径によってさらに細かく分類されます。火山灰、火山礫、火山岩塊、火山弾、軽石、スコリアなど、様々な形態と特性を持つ噴出物が含まれています。
参考)火山噴出物|ちがくたす
火山砕屑物は粒子の大きさによって系統的に分類されており、鉱物コレクターにとっても重要な基準となります。直径64mm以上の大型粒子は火山岩塊(volcanic block)と呼ばれ、多孔質の場合は軽石やスコリアとして区別されます。特徴的な外形を持つものは火山弾(volcanic bomb)として分類され、溶岩餅やスパターなど多様な形態があります。
参考)http://www.st.hirosaki-u.ac.jp/~earth_solid/geoexp/pyroclasts.html
64mmから2mmの粒子は火山礫(lapilli)として分類され、降下火砕物の主要な構成要素となります。2mmから1/16mm(約0.06mm)の範囲は火山灰(volcanic ash)の粗粒部分に該当し、1/16mm未満の微細な粒子は細粒火山灰として区別されます。
これらの粒径分類は固結した岩石にも適用され、火山角礫岩、ラピリストーン、凝灰岩など、対応する火砕岩の名称が定められています。凝灰岩は火山灰を主体とする岩石で、火山礫を含む場合は火山礫凝灰岩、火山岩塊を含む場合は凝灰角礫岩と呼ばれます。
参考)岩石の分類|地質を学ぶ、地球を知る|産総研 地質調査総合セン…
火山岩は二酸化ケイ素(SiO₂)の含有量によって系統的に分類されており、それぞれ特徴的な鉱物組成を持っています。玄武岩はSiO₂が53.5%以下の火山岩で、黒色を呈し、かんらん石や輝石を多く含みます。玄武岩質マグマからは粘性が低く流動性の高い溶岩が生成され、スコリアと呼ばれる黒っぽい多孔質の噴出物が形成されます。
参考)https://kazan.or.jp/J/QA/topic/topic53.html
安山岩はSiO₂含有量が53.5%から62%(または57%から63%)の中間的な組成を持ち、灰色を呈します。日本の火山に最も多く見られる火山岩で、角閃石や斜長石を特徴的な鉱物として含んでいます。
参考)まんがの解説 第2回「火山の噴火の仕組みは?」
流紋岩はSiO₂が70%以上(または69%以上)の酸性火山岩で、白色から淡色を呈します。石英やカリ長石を多く含み、粘性の高いマグマから形成されるため、軽石と呼ばれる白っぽい多孔質の噴出物を生成します。デイサイトはSiO₂が62%から70%の中間的な組成を持つ火山岩として、安山岩と流紋岩の間に位置づけられます。
参考)https://www.gsj.jp/Muse/event/archives/src/tephra_leaflet.pdf
軽石とスコリアは共に多孔質の火山噴出物ですが、起源となるマグマの化学組成によって明確に区別されます。軽石は安山岩質から流紋岩質の粘性の高いマグマから形成され、白色から淡色を呈する特徴があります。気泡が多く非常に軽量で、水に浮くこともある軽石は、爆発的な噴火の際にマグマの「しぶき」として生成されます。
参考)用語の説明
一方、スコリアは玄武岩質の粘性が低いマグマから形成され、黒色から赤褐色を呈します。鉄(Fe)やマグネシウム(Mg)を多く含むため全体的に黒っぽい色調となり、軽石に比べて密度が高い傾向があります。両者は見た目の色だけでなく、形成される噴火様式や地質学的な産状も異なり、火山活動の性質を理解する上で重要な指標となります。
参考)http://ooisivolcano.my.coocan.jp/volcano/products.htm
コレクション用の標本としても人気があり、軽石とスコリアの対比セットは教材標本としても広く利用されています。粒径2mm以上64mm未満のものは特に火山礫と分類され、それぞれ軽石、スコリアの名称が適用されます。
火山弾は火山噴火の際に放出される特徴的な噴出物で、空中を飛行する間に独特の形態を獲得します。リボン状火山弾は流動性が高いまたは中程度のマグマから形成され、不規則な紐や滴として火口から放出されます。空中で長く引き伸ばされますが、非常にもろいため着弾時に細かく割れてリボン状となり、断面は円状か平板状で長さ方向に溝が刻まれます。
参考)火山弾 - Wikipedia
球状火山弾は流動性の高いマグマから形成され、空中を飛行する間に表面張力によって球形に整形されます。また、核がある火山弾は先に固まった核を捕獲するようにして形成される特殊なタイプで、核は以前の噴火の破片や同じ噴火で先に固まったマグマ片からなります。
火山弾の形成過程は複雑で、いったん空中に噴出され固化した溶岩礫や火口壁の崩壊砕屑礫が火口内に落下した際、爆発によって溶融溶岩の衣を被ることで形成されると考えられています。元の形と溶岩の衣の加減によって、平餅状(円盤や三角形など)や角錐状など種々雑多な形態が生まれます。鉱物コレクターにとって、火山弾は形態の多様性と形成メカニズムの興味深さから、特に価値のある標本となっています。
参考)https://www.jma.go.jp/jma/kishou/books/kenshin/vol28p075.pdf
テフラは火山噴出物のうち溶岩を除く火砕物の総称で、ギリシャ語で灰を意味する言葉に由来します。具体的には火山灰、軽石、スコリア、火砕流堆積物、火砕サージ堆積物などが含まれ、特に空中から降下したものは「降下テフラ」と呼ばれます。テフラ中の二酸化ケイ素や微量元素を分析することで、噴火の時期や火山の特定が可能となり、地質学的な年代決定に重要な役割を果たします。
参考)テフラ - Wikipedia
火砕流堆積物は高温のガスと火山砕屑物の混合物が高速で流下して堆積したもので、大規模噴火の際に形成されます。日本では阿蘇カルデラの巨大噴火によって形成された阿蘇3火砕流堆積物や阿蘇4火砕流堆積物が有名で、九州中部から北部の広い範囲に分布しています。
参考)産総研:隠れた巨大噴火の全体像が明らかに
広域テフラは巨大なカルデラ噴火の際に火砕流から上空に大量に舞い上がり、日本全土を覆うほどの広範囲に分布します。この時の火砕流から巻き上げられて作られた火山灰は「co-ignimbrite ash(コ・イグニンブライト・アッシュ)」と呼ばれ、特殊な形成過程を持つテフラです。火砕流堆積物の分布図は、将来同様の噴火が発生した場合の影響範囲を推測する手掛かりとなり、防災上も重要な資料となっています。
参考)http://ooisivolcano.my.coocan.jp/volcano/abouttephra.htm
火山噴出物を構成する鉱物は造岩鉱物と呼ばれ、火成岩の性質を決定する重要な要素です。有色鉱物としては、かんらん石、斜方輝石、単斜輝石、角閃石、黒雲母が代表的で、これらは鉄やマグネシウムを多く含むため暗色を呈します。かんらん石は特に玄武岩質の火山岩に多く含まれ、ペリドットとして宝石品質のものも存在します。
参考)火成岩の鉱物の種類【全6つ,写真付】
無色鉱物には白雲母、カリ長石(微斜長石、正長石)、斜長石(曹灰長石、灰長石)、石英、準長石、鱗珪石などがあり、主に珪酸塩鉱物で構成されています。副成分鉱物として磁鉄鉱や燐灰石も含まれ、これらは少量ながら岩石の磁性や化学組成に影響を与えます。
火山噴出物中の鉱物は斑晶として観察されることが多く、顕微鏡下での化学組成分析により、マグマの起源や進化過程を解明する手がかりとなります。鉱物コレクションとしては、造岩鉱物10種または15種のセットが教材用標本として市販されており、火山岩の理解を深めるための基本的な資料となっています。
火山噴出物は鉱物コレクターにとって多様性と科学的価値の両面で魅力的な対象です。標本セットには溶岩、降下火砕物、火山ガス固結物(硫黄)、火砕流堆積物、溶結火砕流堆積物などが含まれ、火山活動の全体像を理解できる構成となっています。木製標本箱入りの製品が多く、6種から20種までのバリエーションがあり、教育用途からコレクション用途まで幅広く利用されています。
参考)火山噴出物標本 鉱物 鉱石 標本 コレクション 自由研究 観…
意外な事実として、火山噴出物は単なる岩石標本にとどまらず、熱水変質鉱物を豊富に含む場合があります。火山直下の熱水系との関係で形成されるこれらの鉱物は、変色や独特の結晶形態を示し、コレクション価値を高めます。また、火山噴出物の風化作用によって粘土鉱物が形成される過程も、長期的な地質学的変化を観察できる点で興味深い研究対象となります。
参考)302 Found
火成岩起源の宝石も火山活動と密接に関連しており、ダイヤモンド、ペリドット、エンスタタイト、普通角閃石などが火成鉱床(正マグマ鉱床)から産出されます。ロシアのシベリアのMirnyダイヤモンド鉱山から産出されるダイヤモンドと母岩のキンバーレー岩は、マグマの特殊な上昇過程を物語る貴重な標本です。
参考)地球の奇跡・火成岩起源の宝石【近山コレクション見聞】 - J…
地質調査総合センター「噴火で飛んでくるもの」PDF資料 - 軽石とスコリアの詳細な違いと形成過程について解説
産総研地質調査総合センター 噴出物一覧表 - 火山噴出物の年代、岩相、マグマタイプの詳細データ
日本火山学会 スコリア・軽石の解説 - 火山学者による専門的な説明