叩き板は厚さ3cm以上ないと割れます
叩き作りで最も重要な道具が叩き板です。木製の平らな板で粘土の外側を叩いて成形します。
初心者が選ぶべき叩き板は、桜材またはケヤキ材で厚さ3cm以上、幅10cm程度(はがきの横幅くらい)のものです。薄い板は叩く衝撃で割れやすく、作業中に破損すると粘土に傷がつきます。厚みがあれば耐久性が高まり、長期間使えます。
表面は滑らかに仕上げられたものを選びましょう。ザラザラした表面だと粘土に木の繊維が付着し、焼成後に黒い点として残ります。
購入時は必ず手で触って確認することです。
価格は3000円から5000円程度が相場です。安価な合板製は接着剤の影響で粘土が変色する可能性があるため避けてください。
陶芸三昧の叩き作り道具選びガイドには、プロ陶芸家が推奨する叩き板の詳細スペックと購入先情報が掲載されています。
叩き作りには粘りが強く、可塑性の高い粘土が向いています。
最も使いやすいのは信楽土や伊賀土などの荒目粘土です。砂分が多く含まれているため、叩いても形状を保ちやすく、初心者でも扱えます。乾燥時の収縮率は約8%で、ひび割れのリスクも低めです。
白土や磁器土は細かすぎて叩き作りには不向きです。粘りが強すぎて叩き板に張り付きやすく、成形に時間がかかります。
粘土は購入後、最低3日間は寝かせてから使いましょう。袋から出したばかりの粘土は水分が均一でなく、叩くとムラができます。ビニール袋に入れたまま室温で保管し、毎日1回上下を返すと水分が馴染みます。
1回の作品制作には約2kg必要です。大きめの器なら3kg用意すると余裕を持って作業できます。
当て木は粘土の内側に当てて、叩き板の衝撃を受け止める道具です。
形状は丸みを帯びたこぶし大の石、または木製の球体が理想的です。角があると粘土に跡が残り、表面が凸凹になります。川原で拾った丸い石を使う陶芸家も多く、直径8cmから10cm程度(野球ボールより少し大きいサイズ)が扱いやすいですね。
当て木の重さは300gから500g程度が適切です。軽すぎると叩きの衝撃を吸収できず、重すぎると手首に負担がかかります。
使用前に当て木を濡らした布で拭いておくと、粘土が張り付きにくくなります。作業中も10分に1回程度、布で拭き取ると作業効率が上がります。
石の当て木を使う場合、表面のザラつきが気になるなら耐水ペーパー(400番程度)で軽く磨くと滑らかになります。ただし磨きすぎると滑りすぎて扱いにくくなるため注意が必要です。
作業台の高さと広さが成形の精度に直結します。
理想的な作業台の高さは、立った状態で肘を90度に曲げた位置です。低すぎると腰に負担がかかり、高すぎると力が入りにくくなります。市販の作業台は75cmから80cmが標準ですが、身長に合わせて調整しましょう。
作業スペースは最低でも60cm四方(新聞紙2枚分)必要です。粘土を回転させながら叩くため、周囲に十分な余裕がないと作業しにくくなります。
必要な補助道具は以下の通りです。
室温は20度から25度、湿度は50%から60%が最適です。冬場の暖房で乾燥しすぎる環境では、加湿器を使うか濡れタオルを近くに置くと良いでしょう。
粘土の菊練りを省略するとひび割れの原因になります。
菊練りは粘土内部の気泡を抜き、粒子の方向を揃える作業です。
最低30回は練り直してください。
力を入れて前方に押し出し、手前に引き戻す動作を繰り返します。
練り上がりの目安は、粘土を切った断面に気泡がなく、滑らかな状態です。気泡が残っていると叩いた際に破裂し、穴が開きます。
粘土の硬さは耳たぶ程度が理想です。硬すぎると叩いても伸びず、柔らかすぎると形が崩れます。硬い場合は霧吹きで水分を加え、ビニール袋に入れて1時間ほど馴染ませます。
叩き作りを始める直前に、粘土を手のひらサイズの塊に分けておくと作業がスムーズです。一度に大きな塊を叩くよりも、小さな塊を叩いて繋げる方が均一な厚みになります。
叩く力加減は粘土の状態によって変えます。
作業開始時は弱めの力(りんごを軽く叩く程度)で全体を均します。いきなり強く叩くと表面だけが伸びて内部との差で亀裂が入ります。10回から15回程度、優しく叩いて粘土を落ち着かせましょう。
粘土が馴染んできたら、徐々に力を強めます。
ただし全力で叩く必要はありません。
板チョコを割らない程度の力で十分です。
叩くリズムは「トン、トン、トン」と一定のテンポを保ちます。不規則なリズムだと厚みにムラができ、焼成時に歪みの原因になります。メトロノームを使って1分間に60回程度のペースで練習すると感覚が掴めます。
叩き板の角度は粘土の表面に対して垂直です。斜めに当てると一部だけが伸びて形が崩れます。毎回、叩き板の面全体が粘土に接触するよう意識してください。
作業中に粘土が乾燥してきたら霧吹きで軽く湿らせます。
表面が白っぽくなったら乾燥のサインです。
ただし水をかけすぎると粘土が緩むため、3回から4回のスプレーに留めましょう。
成形は底から始めて側面へ進みます。
最初に粘土の中心部を叩いて平らな底面を作ります。直径10cm程度(CDの内側の穴くらい)の円形を目指し、中心から外側に向かって叩き広げていきます。
底の厚さは1cmに揃えることです。
底ができたら側面の立ち上げに移ります。当て木を内側に当て、底の縁から5mm程度外側を叩いて徐々に立ち上げます。一気に立ち上げようとせず、1周する間に5mm程度ずつ高くする感覚で進めましょう。
側面を叩く際は必ず粘土を回転させます。同じ場所を連続で叩くと薄くなりすぎて破れます。30度から45度ずつ回転させながら叩くと均一な厚みになります。
器の高さは底の直径の半分が目安です。直径20cmの皿なら高さ10cmまでにすると安定した形になります。それ以上高くすると重力で形が崩れやすくなります。
口縁部は最後に整えます。上端から5mm程度を軽く叩いて薄くし、指で内側に巻き込むように成形すると強度が増します。
目視だけでは厚みの判断は困難です。
最も確実な方法は針を刺して確認することです。まち針程度の細い針を器の外側から垂直に刺し、内側に貫通するまでの深さで厚みを測ります。3cm間隔で10箇所程度測定し、8mmから1cmの範囲に収まっていれば合格です。
指で挟んで感触を確かめる方法もあります。器の外側と内側を親指と人差し指で挟み、軽く押さえながら移動させます。
硬さが変わる箇所は厚みが異なる証拠です。
光を当てて透け具合を見る方法も有効です。器を持ち上げて蛍光灯などの光源に向けると、薄い部分が明るく透けて見えます。ただしこの方法は白土など明るい色の粘土でないと判別しにくいですね。
厚みにムラがある場合は、厚い部分をさらに叩いて調整します。薄い部分は叩いて伸ばすと破れる危険があるため、粘土を継ぎ足して厚みを増やす方が安全です。
叩き板の表面に彫刻を施すと独特の模様が生まれます。
縄文土器に見られる縄目模様は、叩き板に麻ひもを巻き付けて叩くことで再現できます。ひもの太さは3mmから5mm程度が扱いやすく、板に1cm間隔で平行に巻きつけると規則的な模様になります。
木目を活かした模様も人気です。杉材や桐材など木目の粗い木材を叩き板にすると、自然な線状の模様が粘土に転写されます。ただし木目が深すぎると粘土が張り付くため、表面を軽くヤスリがけしておくと良いでしょう。
布を使った質感表現も可能です。麻布やガーゼを叩き板に巻いて叩くと、布目の細かい模様がつきます。布は使い捨てと考え、作業ごとに新しいものに交換すると清潔です。
模様をつける際の注意点は、叩く力を通常より2割程度弱めることです。強く叩きすぎると模様が潰れて不明瞭になります。
叩き作りで最も作りやすいのは平たい皿類です。
大皿は直径30cmから40cm程度まで制作可能です。ろくろでは困難な楕円形や四角形も叩き作りなら自由に成形できます。料理の盛り付け皿として使う場合、縁を少し立ち上げると汁気のある料理にも対応できます。
鉢類も叩き作りの得意分野です。浅めの鉢なら底の直径20cm、高さ8cm程度が安定します。サラダボウルや煮物鉢として実用的なサイズです。
花器を作る際は、底に穴を開けずに成形し、焼成後にドリルで水抜き穴を開けます。焼く前に穴を開けると焼成時にひび割れの起点になりやすいためです。
壺や瓶など口が狭い形状は、叩き作りと紐作りを組み合わせます。底と胴体を叩き作りで成形し、首部分は紐状の粘土を積み上げて繋げる方法です。異なる技法を組み合わせることで表現の幅が広がります。
オブジェや抽象的な造形物にも叩き作りは向いています。粘土を叩いて平らにし、曲げたり折ったりして立体を構成する手法は、現代陶芸で頻繁に使われます。
乾燥の速度が作品の品質を左右します。
成形直後の作品は、ビニールシートで覆って12時間から24時間ゆっくり乾燥させます。急激に乾燥させると表面と内部の収縮差でひび割れが発生します。冬場の暖房や夏場の直射日光は避けてください。
初期乾燥後、ビニールを外して自然乾燥に移ります。この段階で3日から5日かけて完全に水分を抜きます。器を持ち上げて重さを確認し、成形時の半分程度の重さになれば乾燥完了です。
乾燥中は1日1回、作品を回転させて全面が均等に乾くようにします。底面だけが湿ったままだと、そこからひび割れが広がります。
厚みのある作品や大型の作品は乾燥に1週間から10日かかります。
焦らず時間をかけることです。
触って冷たさを感じなくなれば十分に乾いた証拠です。
NHK出版の陶芸テキストには、季節ごとの乾燥時間の目安と失敗例が詳しく掲載されています。
乾燥後の表面調整が最終的な質感を決めます。
スポンジで軽く拭くと小さな凹凸が取れます。水を含ませたスポンジで円を描くように撫でると表面が滑らかになります。ただし水をつけすぎると粘土が再び柔らかくなるため、固く絞ったスポンジを使いましょう。
ヘラで削る方法もあります。金属製または木製のヘラで表面を薄く削ると、叩き跡が消えて均一な質感になります。削りすぎると穴が開くため、0.5mm程度ずつ慎重に削ってください。
磨き仕上げは革の端切れやプラスチックのスプーンで行います。粘土がまだ少し湿っている半乾燥状態で、表面を強く擦ると光沢が出ます。
この技法は黒土や赤土で特に効果的です。
口縁部や底面の角は、濡らしたスポンジで丸く整えます。角が立ったままだと使用時に手が引っかかりやすく、欠けやすくなります。
小さなひび割れは補修可能です。
ひびの幅が1mm以下なら、同じ粘土を水で溶いた泥を隙間に塗り込みます。爪楊枝の先端で泥を押し込み、表面を指で撫でて平らにします。補修箇所が乾いたら軽くスポンジで拭いて馴染ませましょう。
1mmを超えるひびは紐状の粘土で埋めます。細く伸ばした粘土をひびに沿って置き、両側から指で押さえて密着させます。余分な粘土をヘラで削り取り、周囲と同じ高さに揃えることです。
底面のひび割れは特に注意が必要です。焼成時に底が抜ける危険があるため、裏側からも粘土を追加して補強します。直径5cm程度の粘土板を貼り付け、周囲をしっかり圧着させましょう。
補修後は再度乾燥させます。補修箇所は周囲より水分が多いため、最低2日間は乾燥時間を追加してください。
焼成前の最終確認で失敗を防ぎます。
作品を手に取って重さを確認します。同じサイズの器でも重さが2倍以上違う場合、どこかが極端に厚くなっています。底を削って軽量化すると使いやすさが向上します。
底面の安定性をチェックします。器を平らな台に置いて、ガタつきがないか確認してください。三点以上が接地していれば安定しますが、一点だけで接地している場合は削り直す必要があります。
側面を軽く叩いて音を聞きます。「コンコン」と高い音がすれば十分乾燥しています。「ボソボソ」と低い音や響かない音の場合、まだ水分が残っているため追加の乾燥が必要です。
口縁部に指を滑らせて鋭利な部分がないか確認します。引っかかりを感じる箇所は耐水ペーパー(600番程度)で軽く擦って滑らかにしましょう。
作品の裏に制作日と使用した粘土の種類をメモしておくと、焼成の温度設定に役立ちます。
鉛筆で薄く書いておけば焼成後も残ります。
焼成までの保管方法で作品の状態が変わります。
完全に乾燥した作品は、段ボール箱に新聞紙を敷いて保管します。直接床に置くと湿気を吸って再び湿ってしまうため、床から10cm以上高い場所に保管してください。
複数の作品を重ねる場合、間に発泡スチロール板を挟みます。直接重ねると下の作品に圧力がかかり、変形や破損の原因になります。
保管期間は最長で1ヶ月程度です。それ以上放置すると粘土の結合力が弱まり、焼成時に割れやすくなります。
作品ができたら早めに焼成に出しましょう。
焼成前日は作品を室内に置いて温度差をなくします。寒い場所から急に窯に入れると熱膨張で割れる可能性があります。
前日から室温に慣らすことです。
窯元や陶芸教室に焼成を依頼する場合、作品の底面に氏名を彫っておくと取り違えを防げます。
針や釘の先端で薄く彫れば識別できます。