酸化鉱物は、酸素と他の元素が化合した組成をもつ鉱物の総称で、鉱物分類における重要な一類です。金属および半金属、一部の非金属の酸化物、複酸化物、水酸化物などが含まれ、地殻を構成する主要な鉱物グループの一つとなっています。酸化鉱物は主として強いイオン結合からなり、比較的硬く緻密で耐火性が強いという特徴があります。
酸化鉱物の分類は、含まれる金属の数と酸素との比率によって体系化されています。単純酸化鉱物は金属と酸素の比(A:X)によってA₂X型、AX型(ペリクレースMgO)、A₃X₄型、A₂X₃型(赤鉄鉱Fe₂O₃など)、AX₂型(ルチルTiO₂など)に細分されます。複酸化鉱物は二つの同価でない金属原子の席をもち、ABX₂型、AB₂X₄型(スピネルMgAl₂O₄など)、ABX₃型(ペロフスカイトCaTiO₃)などに分類されます。
酸化鉱物には、資源鉱物として重要な赤鉄鉱(Fe₂O₃)、磁鉄鉱(Fe₃O₄)、チタン鉄鉱(FeTiO₃)などメタリックな外見で不透明なものから、自然の造形美の代表である水晶(SiO₂)のような透明なものまで多様な種類が存在します。
主な単純酸化鉱物には以下があります:
複酸化鉱物の代表例としては、スピネル(MgAl₂O₄)、磁鉄鉱(Fe₃O₄)、チタン鉄鉱(FeTiO₃)、ペロフスカイト(CaTiO₃)などがあります。これらは二種類以上の金属イオンが酸素と結びついてできた化合物で、独特の結晶構造を持っています。
酸化鉱物の化学組成は、金属元素と酸素の比率によって特徴づけられます。酸素は唯一の陰イオンとして、そのパッキングが鉱物の構造を決定する重要な役割を果たしています。酸素の役割を水酸イオン(OH⁻)が担う水酸化鉱物も、酸化鉱物のグループに分類されます。
赤鉄鉱(Fe₂O₃)は三方晶系に属し、赤鉄鉱グループの代表鉱物です。コランダム(Al₂O₃)も同じグループに属し、純粋な結晶は無色透明ですが、微量の不純物によってルビー(クロムを含む)やサファイア(鉄とチタンを含む)といった貴重な宝石になります。磁鉄鉱(FeFe₂³⁺O₄)は等軸晶系で、スピネル構造を持つ代表的な鉱物です。
スピネル(MgAl₂O₄)は等軸晶系に属し、八面体の自形結晶を形成することが特徴です。マグネシウムは鉄(2+)やマンガン(2+)に、アルミニウムは鉄(3+)やクロム(3+)に置き換わることで、多くの類質同像鉱物を生じます。この置換によって、赤色、ピンク色、紫色、青色、緑色など多様な色彩を呈します。
チタン鉄鉱(FeTiO₃)は鉄とチタンの複酸化物で、磁石につかないという特徴があります。見かけは磁鉄鉱や赤鉄鉱と似ていますが、酸素に乏しい条件で形成されます。花崗岩や閃緑岩、斑れい岩などに磁鉄鉱とともに含まれることが多く、チタン鉱石として重要です。
酸化鉱物の中には、世界で最も価値の高い宝石が含まれています。コランダム(Al₂O₃)を母体とするルビーとサファイアは、どちらも同じ鉱物でありながら、含まれる不純物元素によって全く異なる色を呈します。
ルビーはもともと無色透明のコランダムが、地中で酸化クロムという金属元素と結びつくことで赤く発色します。酸化クロムを含む鉱山は非常に限られるため、ルビーは希少性が高く、貴重な宝石として高額で取引されます。一方、ブルーサファイアは酸化鉄と酸化チタンを含むことにより青い色に見え、それぞれの不純物の量によって明度と彩度が異なります。
クリソベリル(BeAl₂O₄)という酸化鉱物の中で、変色効果がある変種がアレキサンドライトです。ベリリウムとアルミニウムをメインに形成された酸化鉱物で、わずかに含まれる酸化クロムの影響によって、光源の種類によって色が変化するという驚くべき特性を持っています。太陽光下では青緑色に、白熱灯下では赤紫色に見えるこの性質は、「昼のエメラルド、夜のルビー」とも表現されます。
スピネルもまた、ダイヤモンド、サファイア、ルビー、エメラルドと並ぶ貴石として知られています。八面体の美しい自形結晶を形成し、赤色、ピンク色、紫色、青色など多彩な色を呈する宝石質の結晶が産出されます。モース硬度は7.5-8と高く、ガラス光沢を持つ美しい宝石です。
酸化鉱物は世界各地で産出され、特に鉄、マンガン、チタンなどの重要な金属資源として採掘されています。磁鉄鉱の主要産地はインド、オーストラリア、ロシア、イラン、中国、チリ、ペルー、カナダ、アメリカ合衆国などで、鉄鉱石として大規模に採掘されています。
日本でも酸化鉱物は古くから採掘されてきました。釜石鉱山産の磁鉄鉱は、黒色不透明の塊状として産出し、割れ目には(111)面を主面とした結晶が見出されます。共出鉱物には柘榴石、水晶、灰鉄輝石などがあります。
チタン鉄鉱は、花崗岩や閃緑岩、斑れい岩に磁鉄鉱とともに含まれ、中国地方南部には副成分鉱物としてチタン鉄鉱を含んだ花崗岩が広く分布しています。海岸や河川には磁石につかないチタン鉄鉱からなる砂鉄が見られ、チタン資源として利用されています。
軟マンガン鉱(MnO₂)は、マンガンの重要な鉱石鉱物として産出されます。深海底にはマンガンと鉄の酸化物を主体とする数cm程度の球状の塊、マンガンノジュール(マンガン団塊)が転がっており、将来の海底資源として注目されています。
酸化鉱物は窯業分野で色材(発色)、乳濁、機能付与(耐熱・電気特性)を担う基幹原料として重要な役割を果たしています。釉薬では色出しやマット化、ガラスでは着色やUV遮蔽、素地では耐熱性や強度・熱膨張の調整に寄与します。
金属酸化物が窯業で重視される性質には、耐熱(高温でも相安定)、発色(着色・乳濁)、化学安定性(釉中での反応性/毒性管理)、分散性(粒度・凝集)などがあります。釉薬では色材(Fe/Co/Cr系)、乳濁(TiO₂/ジルコン助剤併用)、マット化(結晶化制御)に使われ、ガラスでは着色(Fe/Cr/Co/Cu)、白色化(TiO₂)、UV遮蔽などに利用されます。
火成岩中には副成分鉱物として酸化鉱物がごく普通に含まれており、造岩鉱物の一種として地殻の構成に重要な役割を果たしています。一般に透明感があり、硬度の高いものが多く、風化に強いため堆積物中に重鉱物として産出するものが多いのも特徴です。
赤鉄鉱(Fe₂O₃)と磁鉄鉱(Fe₃O₄)は、鉄の主要な鉱石鉱物として製鉄業に不可欠です。錫石(SnO₂)はスズの唯一の重要鉱石で、銅合金の製造に利用されます。ルチル(TiO₂)は白色顔料や光触媒として広く使用され、現代の工業製品に欠かせない材料となっています。
地質標本館による酸化鉱物の詳しい解説 - 酸化鉱物の分類と特徴について専門的な情報が掲載されています
iStoneの酸化鉱物標本リスト - 各種酸化鉱物の化学式と分類が一覧で確認できます
Wikipedia酸化鉱物カテゴリ - 72種類の酸化鉱物の詳細情報にアクセスできます

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