硫酸ストロンチウム色の特徴と炎色反応の魅力

硫酸ストロンチウムは白色結晶でありながら、炎色反応で美しい赤色を発する不思議な物質です。天青石という天然鉱物として産出し、花火や工業用途で活躍しています。この物質の色にまつわる性質とは?

硫酸ストロンチウム色の性質

この記事のポイント
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固体の外観

硫酸ストロンチウムは無色結晶または白色粉末で、天然には淡青色の天青石として産出します

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炎色反応の特性

加熱すると鮮やかな赤色(紅色)の炎を発し、花火の着色に利用されています

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結晶の美しさ

天青石として空色の結晶を形成し、鉱物標本としても人気があります

硫酸ストロンチウムの固体状態の色

 

硫酸ストロンチウム(化学式:SrSO₄)は常温では無色の結晶または白色粉末として存在します。この物質は斜方晶系(直方晶系)の結晶構造を持ち、格子定数はa=8.31Å、b=5.34Å、c=6.84Åです。天然には「天青石(セレスタイト)」という鉱物として産出し、その結晶は透明で無色、または淡青色を呈します。天青石の美しい空色は、英名のCelestite(ラテン語で「天、空色」を意味するcoelestisに由来)の名前の由来となっています。

 

参考)硫酸ストロンチウム - Wikipedia

硫酸ストロンチウムは水にはほとんど溶けず、その溶解度積はKsp = 7.6×10⁻⁷と非常に小さい値を示します。硫酸バリウムよりは溶解度が大きいものの、酸やアルカリにはほとんど溶けません。ただし、濃硫酸には硫酸水素ストロンチウムSr(HSO₄)₂を生成して溶解し、濃塩酸に対しても溶解度が増大する特性があります。比重は約3.96で、融点は1580℃です。

 

参考)7759-02-6・硫酸ストロンチウム・Strontium …

硫酸ストロンチウムの炎色反応と赤色発光のメカニズム

硫酸ストロンチウムを加熱すると、固体の色とは全く異なる鮮やかな赤色(紅色)の炎を発します。この現象は炎色反応と呼ばれ、ストロンチウムが高温で励起されることによって生じます。炎色反応は、金属元素が熱エネルギーを受け取ってエネルギーの高い状態(励起状態)に移り、元の状態に戻る際に特定の波長の光を放出する現象です。ストロンチウムの場合、この光は深紅色に相当する波長を持ちます。

 

参考)http://blog.kids-earth.com

ストロンチウムの炎色反応は分子発光のメカニズムによるもので、例えば塩化ストロンチウムSrCl₂を加熱すると、SrCl₂ → SrCl + Cl → SrCl* → SrCl + 光という過程でSrCl由来の発光を示します。この赤色発光は非常に明るく鮮やかで、花火の赤色を作り出す定番の元素として使用されています。花火には硝酸ストロンチウム、炭酸ストロンチウム、塩化ストロンチウムなどのストロンチウム化合物が着色料として配合されます。

 

参考)放課後化学講義室 炎色反応:ストロンチウムは分子発光!

硫酸ストロンチウム自体も炎色反応で赤色を発することができ、実際に青い天青石の結晶を燃やすと紅色の炎が上がる実験が報告されています。これは、白色や淡青色の固体が加熱されると鮮やかな赤色の光を放つという、視覚的に非常に印象的な現象です。

 

参考)天青石 - Wikipedia
youtube​

天青石結晶の色と産状の特徴

天青石(セレスタイト)は硫酸ストロンチウムの天然鉱物で、主に堆積岩中にノジュール(球状の団塊)として産出します。結晶は美しい青灰色や空色を呈することが多く、ガラスまたは真珠光沢を持っています。モース硬度は3~3.5と比較的軟らかく、比重は平均3.95です。斜方晶系に属し、平板状や柱状の結晶のほか、繊維状や粒状の集合体としても発見されます。

 

参考)空の色の石セレスタイトとは?特徴から魅力まで専門家が徹底解説…

天青石の色の成因は、約6000万年前の新生代第三期暁新世に、浅い海岸の泥と砂の地層で分解された有機物からの硫黄と海水中のストロンチウムが反応し、温度の安定した環境でゆっくりと硫酸ストロンチウムの結晶が成長したことによります。現在、鉱物市場に流通する天青石の大半はマダガスカル北西部のサコアニー村近郊から産出したもので、この地域では地下10~15mの深さから採掘されています。

 

参考)https://www.ns-mineral.co.jp/item/itemgenre/%E5%A4%A9%E9%9D%92%E7%9F%B3-%E3%82%BB%E3%83%AC%E3%82%B9%E3%82%BF%E3%82%A4%E3%83%88/

天青石はカルシウム、ストロンチウム、バリウムといったアルカリ土類金属硫酸塩鉱物グループに属し、イオン半径の近いこれらの元素が一部置き換わって存在することがあります。そのため、外観だけでは重晶石(硫酸バリウム)や硬石膏(硫酸カルシウム)と区別することが困難です。天青石は酸化ストロンチウムを56%含むため、ストロンチウムの主要鉱石として工業的に採掘されています。

 

参考)https://gemhall.sakura.ne.jp/gemus-celestn.html

硫酸ストロンチウム色の工業的応用と識別法

硫酸ストロンチウムおよびストロンチウム化合物は、フェライト磁石、金属精錬、蛍光体、光学ガラス、顔料など幅広い工業用途で使用されています。炎色反応による赤色発光は花火だけでなく、非常信号用の発煙筒にも利用されており、その鮮やかな赤色は視認性が高く安全性の向上に貢献しています。また、テレビやパソコンモニターがブラウン管だった時代には、ブラウン管用チューブガラスの添加剤として大量に使用されていました。

 

参考)Sr(ストロンチウム)化合物|マテリアル|岩谷産業

炎色反応はストロンチウムを含む物質の識別にも使用されます。天青石の結晶を炎に入れると、ストロンチウム特有の赤い色が出るため、元素の種類を決定することができます。この炎色反応は元素によって決まっており、銅は青~青緑色、バリウムは黄~黄緑色、カリウムは薄紫色、ナトリウムは黄色と、それぞれ特徴的な色を示します。

 

参考)http://www.step.aichi-edu.ac.jp/periodic-table/sr.html

ストロンチウム化合物の合成方法としては、水酸化ストロンチウム水溶液と希硫酸による中和反応、または塩化ストロンチウムや硝酸ストロンチウムなどの水溶性ストロンチウム塩水溶液に希硫酸または硫酸塩水溶液を加えることで白色沈殿として得られます。濃厚溶液の場合は初期に含水塩の針状結晶が析出することがありますが、これは次第に無水物に変化します。

 

参考)硫酸ストロンチウム - Wikiwand

硫酸ストロンチウム色と鉱物コレクターの視点

天青石は鉱物標本として非常に人気があり、その美しい空色の結晶は「空の色の石」として鉱物コレクターに愛されています。特にマダガスカル産の天青石は美品が多く、長さが1m、重さが100kgにも達する大きなノジュールが発見されることもあります。天青石の結晶は、1~2cmの小さなものから、宝石質の大きな結晶まで様々なサイズで産出します。

しかし、天青石を宝石としてカットすることはほとんど行われていません。その理由は、モース硬度が低く完全な劈開性があるためカットが難しいこと、そして小さなルースにカットすると元々かすかな青色が完全に失われてしまい見映えがしないためです。したがって、天青石はその涼しげな結晶の姿をそのまま鉱物標本として楽しむのが最適とされています。

天青石の名前は、最初に発見されたアメリカ・ペンシルベニア州の淡青色の結晶の色から、ギリシア語とラテン語で「天、空色」を意味する"coelestis"に因んで1798年に命名されました。広範に発見される鉱物にしては発見と命名が18世紀末と遅かったのは、重晶石などの類似した鉱物との識別が困難だったためです。ストロンチウムとバリウムが新元素として確認されたのは1808年のことで、それまでは化学的に区別することができませんでした。

鉱物愛好家にとって天青石の最大の魅力は、白色や淡青色の美しい結晶という固体の外観と、炎色反応で見せる鮮やかな赤色という、二つの全く異なる「色」の姿を持つ点にあります。この対比は、硫酸ストロンチウムという物質の持つ化学的・物理的性質の多様性を象徴しています。
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