世界の光学ガラス市場は、日本とドイツの企業が圧倒的な存在感を示しています。光学ガラス業界のトップ企業として、HOYA株式会社、Schott Glaswerke AG(ドイツ)、株式会社オハラが世界市場を牽引しています。国内市場においては、オハラが15.9%のクリックシェアでトップ、続いて五鈴精工硝子が11.1%、HOYA株式会社とニッキ株式会社が9.5%で並んでいます。
参考)光学ガラス市場の規模、シェアおよび成長分析[2025〜203…
HOYAは特にHDD用ガラス基板市場で圧倒的な強さを誇り、2024年における同市場のトップ企業として売上面で約100%のシェアを占め、実質的に世界市場を独占している状況です。長年にわたり光学ガラスと精密加工分野で培った技術力が、この高いシェアを支えています。
参考)HOYAが世界シェア100%を独占 HDD用ガラス基板市場、…
オハラは1935年に日本で最初に設立された光学ガラス専業メーカーであり、光学ガラス分野では世界でも代表的なメーカーとして知られています。同社は半導体露光装置向けガラスで高いシェアを持ち、特にi線露光装置向けガラスではシェアを独占している分野もあります。グローバル展開も積極的で、中国、台湾、マレーシア、ドイツ、アメリカに生産・販売拠点を持っています。
主要な光学ガラスメーカーは、グローバルな生産ネットワークを構築しています。オハラの例を見ると、日本国内では神奈川県相模原市に本社工場を置き、精密研磨加工と光学ガラス材料の製造を行っています。海外では華光小原光学材料(襄陽)有限公司(中国湖北省)、台灣小原光學材料股份有限公司(台湾雲林縣)で光学ガラス材料を製造し、台灣小原光學股份有限公司(台湾台中)、小原光学(中山)有限公司(中国広東省)、OHARA OPTICAL(M)SDN.BHD.(マレーシア)で光学プレス品の製造を展開しています。
参考)会社情報
世界の光学ガラス市場規模は2024年に21億米ドルと評価され、2033年までに34億米ドルに達すると予想されており、約5.5%のCAGRで成長する見込みです。この成長を支えるため、各メーカーは生産能力の増強と品質管理の徹底に取り組んでいます。
参考)New trends and quality standar…
中国メーカーの存在感も増しており、CDGM Glass Company、China South Industries Group Corporation、Hubei New Huaguang、Changchun Boxin Photoelectric Co.などが市場に参入しています。アジア太平洋地域は発展途上国の電子機器需要の増加と製造能力の急速な進歩により、光学ガラス市場シェアをリードしています。
光学ガラスは、その高度な透明性と特定の光学特性により、現代の光学技術の根幹を成す材料です。一般的なガラスと比較して、光の透過性、屈折率、分散といった光学特性が厳密に管理されています。光学ガラスは非常に高い透過率を持ち、光がほとんどの波長で容易に通過できるように設計されており、光の歪みや散乱を最小限に抑えることが可能です。
参考)光学ガラスとは? 特性・種類・用途例について解説します
紫外線や赤外線など、目に見えない光の範囲に対しても高い透過性を示す点が特徴的です。カルコゲナイドガラスのように、主に赤外線領域での使用に適した特殊なタイプも存在し、赤外線カメラ、夜間視覚装置、赤外線センサーなど、特定の科学的および軍事的用途に不可欠な役割を果たしています。
品質管理面では、ガラスの製造工程のできるだけ早い段階で予測し、必要な措置をすぐに行うことを目的としています。容器の底部、胴部、首部、仕上げ部の欠陥検査を、主に非接触技術(カメラなどの光学センサー)を用いたインライン検査機で生産全体において実施しています。着色度はカタログに示された基準に対し±10の変動幅で管理され、必要に応じて納入メルトの着色度や必要な波長範囲の分光透過率を測定しています。
参考)光学ガラスの内部品質
光学ガラスの応用分野は極めて多岐にわたります。視力補正用途では眼鏡やコンタクトレンズに使用され、映像記録分野ではデジタルカメラやスマートフォンのカメラレンズに採用されています。プロジェクターやVRゴーグルなどの映像表示装置、顕微鏡や双眼鏡、虫眼鏡などの拡大観察機器、さらには工業用カメラやセンサー機器などの計測・検査装置にも広く使われています。
参考)光学ガラス用アプリケーション
天文学、衛星、レーザービジョンなど高度な用途では、極めて高い均質性と全体的に極めて変動が小さい屈折率を提供する必要があります。ショットの均質性の高いガラスは、高出力レーザー、衛星および天文学的用途でのこうした厳しい要求に直接対応しています。
ライフサイエンスアプリケーションでは、ハイエンドな光学設計に特殊な材料が必要とされ、極めて低分散性、低蛍光、大きな異常分散性を持つガラスなど、包括的なポートフォリオが提供されています。マシンビジョンシステムには、高い画像解像度と優れたコントラスト、高い屈折率と厳しい公差を実現する光学ガラス製品が求められており、市場で最も厳しい公差を提供するメーカーが競争力を持っています。
光学ガラス市場は持続的な成長が見込まれており、2025年には22億2,000万米ドルに達すると予測され、2033年までに34億米ドルへと着実に進歩する見通しです。産業および製造活動のパンデミック後のブームが光学業界の市場の成長とシェアを導き、インフレの減少、可処分所得の増加、生産の増加、消費者の需要が業界の市場規模を大幅に拡大する要因となっています。
環境負荷軽減への取り組みも業界全体で加速しています。光学ガラスの製造には「原料調合→熔解→成形→加工→研磨→成膜」の工程があり、粉末原料のため粉塵、熔解時のガラス融液の揮発、加工時の削りくずなど様々なガラス、粉塵、廃液が発生します。光学ガラスは要求される特性付与のために様々な添加物を使用しており、環境や人体に影響をもたらすとされている鉛やヒ素、カドミウムといった重金属類の除去が重要な課題となっています。
参考)https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000017.000142861.html
EU域で制定されているRoHS指令、REACH規制に適合した環境負荷の少ない製品づくりが求められており、国内外の光を利用する様々な企業から信頼を得る重要な要素となっています。ニコンの例では、新たに開発した光学ガラスの量産化において熔解工程を改善し、少ない消費電力量で製造する方法を確立することで、CO2換算で97.5トンの削減を達成しました。プレス加工におけるレンズの形状のばらつきを40パーセント抑えることで、1個あたりのガラス材料を10パーセント削減することにも成功しています。
参考)技術で実現。レンズ製造のCO2削減
株式会社オハラ公式サイト
光学ガラス専業メーカーとしての製品ラインナップや技術情報が詳しく掲載されています。光学ガラスの種類や特性を知りたい方におすすめです。
ショット光学ガラスアプリケーション
天文学、医療、産業計測など幅広い用途における光学ガラスの応用事例が紹介されています。高度な用途での要求特性を理解するのに役立ちます。