硫酸塩鉱物の一覧と種類、特徴、産地

硫酸塩鉱物にはどのような種類があり、どんな特徴を持つのでしょうか。石膏や重晶石、天青石など代表的な硫酸塩鉱物の化学組成から産地、用途まで詳しく解説します。鉱物コレクターや地質学に興味がある方に役立つ情報が満載ですが、希少な北投石についても知りたくありませんか?

硫酸塩鉱物の一覧と特徴

💎 硫酸塩鉱物の主な特徴
🔬
化学組成の基本

硫酸基[SO4]2-を持つ鉱物グループで、金属元素と硫酸イオンが結合した構造を持つ

🌡️
生成環境の多様性

熱水鉱床の脈石鉱物、温泉沈殿物、蒸発岩、硫化鉱物の酸化帯など様々な環境で形成

物理的性質

透明なものが多く、硬度は比較的低め、水に溶けやすい性質を持つ種類も存在

硫酸塩鉱物は硫酸基[SO4]2-を持つ鉱物のグループで、地球上で広く分布する重要な鉱物群です。化学組成による鉱物分類では、酸素酸塩鉱物の一種として位置づけられ、炭酸塩鉱物や燐酸塩鉱物などと並ぶ主要なカテゴリーとなっています。硫酸塩鉱物は、熱水作用に伴って生成する場合、硫化鉱物が産出する金属鉱床の酸化帯に産出する場合、堆積層中に存在する硫化鉄鉱物の酸化により生成する場合、さらに鹹湖などにおいて沈殿堆積生成を行う場合など、多様な生成環境を持つことが特徴です。​
海水や湖水が蒸発してあとに残る成分による岩石中の主要構成鉱物として大規模に産するほか、温泉沈殿物、熱水鉱床脈石鉱物としても広く産出します。蒸発岩としては、陸地に閉じ込められた海水が干上がることによって、溶解度の関係から炭酸カルシウム硫酸カルシウム、塩化ナトリウムの順で沈殿し、それぞれの地層を形成します。硫酸塩鉱物の多くは透明で、硬度は高くなく、水に溶けやすいものが多いという物理的特徴を共有しています。​

硫酸塩鉱物の代表的な石膏グループ

 

石膏は硫酸塩鉱物の代表とも言える存在で、化学組成は硫酸カルシウム二水和物CaSO4・2H2Oです。結晶水の存在形態により半水石膏、二水石膏、無水石膏に分けられますが、一般的に「石膏」という場合には二水和物である二水石膏を指します。二水石膏は比重2.23の無色の結晶で、モース硬度1.5~2と非常に柔らかく、単斜晶系に属します。

 

参考)二水石膏とは何? わかりやすく解説 Weblio辞書

自然界では非常に安定で、水ともほとんど反応しない性質を持ちます。二水石膏は150~185℃まで加熱すると半水石膏に変化し、この性質を利用して建材、セメント用、農業用、食品添加物などに幅広く用いられています。特に食品用途では、豆腐の製造に用いられており、溶解してイオン化し塩析効果を発揮する速度がにがりよりも遅いため、濃厚な豆乳の全体を均質に凝固させやすいという利点があります。また、生薬としても日本薬局方に収載されており、解熱作用や止渇作用などがあるとされています。​

硫酸塩鉱物の重晶石族の特徴

重晶石族は硫酸塩鉱物の中でも重要なグループで、重晶石(BaSO4)、天青石(SrSO4)、硫酸鉛鉱(PbSO4)、ハシェミット石(BaCr6+O4)などが含まれます。重晶石は化学組成がBaSO4(硫酸バリウム)で、結晶系は斜方晶系、モース硬度3~3.5、比重4.3~4.6と高い比重が特徴です。バリウム鉱石としての役割を持ち、スペイン、中国などで採掘され、塗料、プラスチック、ゴムの充填材、石油掘削泥水の加重剤、X線造影剤など多様な用途に利用されています。

 

参考)重晶石バライト|バリウム鉱石としての役割やセレスタイトとの関…

天青石は化学組成がSrSO4(硫酸ストロンチウム)で、斜方晶系に属し、透明感のある空のような淡青色が特徴的な鉱物です。ストロンチウムの原料として採掘され、スペイン、中国などが主要産地となっています。火山岩中の空洞の中や、方鉛鉱閃亜鉛鉱の鉱脈中、また石膏、硬石膏、岩塩などの鉱床に産出します。マダガスカル産の天青石は結晶が大きく、淡い青色が特徴です。

 

参考)https://melc-lilli.com/archives/category/%E7%A1%AB%E9%85%B8%E5%A1%A9%E9%89%B1%E7%89%A9

砂漠のバラとして知られる結晶形態には、石膏タイプと重晶石タイプの二種類が存在します。石膏タイプはCaSO4・2H2O、重晶石タイプはBaSO4の化学組成を持ち、どちらもサハラ砂漠やタクラマカン砂漠などの乾燥地域で形成される特徴的な形態です。

 

参考)https://melc-lilli.com/archives/1458

硫酸塩鉱物の緑礬グループと銅の硫酸塩

緑礬グループは水和物を多く含む硫酸塩鉱物の一群で、緑礬(FeSO4・7H2O)、マラー石(MnSO4・7H2O)、赤礬(CoSO4・7H2O)などが含まれます。緑礬は化学組成が硫酸鉄(II)の7水和物で、単斜晶系に属し、黄鉄鉱や磁硫鉄鉱などが酸化分解することによって生じる二次鉱物です。

 

参考)緑礬 - Wikipedia

属鉱石として利用される硫酸塩鉱物には、硫化鉱物の酸化によって生じた可溶性塩類が水分の蒸発によって晶出した胆礬(CuSO4・5H2O)、緑礬(FeSO4・7H2O)、皓礬(ZnSO4・7H2O)などがあります。これらは硫化鉱物の産出する金属鉱床の酸化帯に産出し、鉱石採取の際の指標となることもあります。

 

参考)硫酸塩鉱物(りゅうさんえんこうぶつ)とは? 意味や使い方 -…

硫酸塩鉱物の青鉛鉱と明礬石の特性

青鉛鉱は銅と鉛の硫酸塩鉱物で、化学組成はPbCu(SO4)(OH)2、単斜晶系に属します。モース硬度2.5、比重5.3で、完全な劈開を持ち、色は青から濃青色、条痕も淡い青色をしています。鉛や亜鉛、銅鉱床の酸化帯などに白鉛鉱や孔雀石などを伴って産出し、ブロシャン銅鉱や硫酸塩鉱、胆ばんなどの二次鉱物と共に生成します。

 

参考)鉱物標本 / 青鉛鉱

結晶は薄い卓状か細い柱状ですが、皮膜状集合や放射状集合、塊状などをなすこともあり、双晶のものが多いのが特徴です。透明から半透明で、ガラス光沢から亜金剛光沢があり、藍銅鉱とは色や産状が似ていますが、希塩酸に浸すと青鉛鉱には白い膜ができるのに対し、藍銅鉱は泡を出して溶けるという違いがあります。日本では兵庫県の辻ヶ瀬鉱山や秋田県の亀山盛鉱山のものがよく知られています。

 

参考)https://mineral.imagestyle.biz/ryuusan/seienkou.html

明礬石は化学組成がKAl3(SO4)2(OH)6で、六方晶系または三方晶系に属する硫酸塩鉱物です。熱水変質作用により生成され、火山性熱水活動に関連した鉱床で産出することが多く、日本では兵庫県朝来郡生野町栃原などで産出が知られています。

 

参考)硫酸塩鉱物とは何? わかりやすく解説 Weblio辞書

硫酸塩鉱物の希少な北投石の特徴

北投石は非常に希少な硫酸塩鉱物で、化学組成は(Ba,Pb)SO4、斜方晶系に属し、モース硬度約3.0~3.5です。重晶石の変種として分類され、鉛を含む特徴があります。最も独特な点は希少な元素「ラジウム」を微量に含んでいることで、放射性元素を持つ特性から自然界の力を感じられるパワーストーンとして重視されています。

 

参考)重晶石 - Wikipedia

台湾の北投温泉と日本の玉川温泉からのみ産出し、世界上の四千余種の鉱物の中で、唯一台湾の地名が名づけられた国宝級の鉱物です。色は乳白色か黄褐色が中心で、主な化学成分には硫酸バリウム(BaSO4)と硫酸鉛(PbSO4)が含まれます。形成過程は熱水性の酸性温泉環境下で進行し、特に強酸性の熱水がバリウム、鉛、硫酸イオンなどを高濃度に含んだ状態で反応・沈殿が起こり形成されます。

 

参考)北投石の意味・効果や特徴とは href="https://fukuenkaku.com/apps/note/archives/2098" target="_blank">https://fukuenkaku.com/apps/note/archives/2098amp;#8211; 福縁閣パワース…

玉川温泉のものは「玉川温泉の北投石」として国の特別天然記念物に指定されており、採取は厳しく制限されています。北投石は数百年から数千年をかけてゆっくりと成長するため、その希少性と保護の重要性が高く評価されています。​
硫酸塩鉱物等の分類と特徴について詳しく解説 - 地質標本館QRコード
石膏の化学的性質と産業利用について - Wikipedia
重晶石族の鉱物と用途について - Wikipedia
北投石の希少性と国宝級鉱物としての価値 - 台湾博物館

 


希少 チリ産 コキンバイト コキンボ石 Coquimbite 硫酸塩鉱物 鉱物 原石 標本〔 天然石 パワーストーン アクセサリー 〕