KPMベルリンは「マイセンよりも知名度が低い」から安く買えると思って伊勢丹を訪れると、ディナープレート1枚で22,000円以上の出費になります。
KPMとは「Königliche Porzellan-Manufaktur Berlin」の頭文字を取ったもので、日本語に訳すと「ベルリン王立磁器工場」となります。プロイセン王フリードリヒ2世(フリードリヒ大王)が1763年に、破産した商人から磁器製陶所を買い取ったことがこのブランドの始まりです。
当時のヨーロッパでは白磁が「白い金(ホワイトゴールド)」と呼ばれ、国家レベルで磁器製造技術の争奪戦が繰り広げられていました。フリードリヒ大王はKPMの白磁の美しさを高く評価し、宮殿用の食器を多数注文しただけでなく、外交の贈り物としても積極的に活用しました。彼一人で450ピースから成る21セットものディナーセットを注文したという記録も残っています。これは驚くべき数字ですね。
1763年の設立から1918年に皇帝ヴィルヘルム2世が退位するまでの間、KPMは7人の王と皇帝によって所有されました。第一次世界大戦後はドイツ州立の工場となり、2006年にベルリンの銀行家ヨルク・ヴォルトマンが全株式を取得して完全に民営化されました。
ドイツの主要7窯のひとつとして数えられるKPMは、マイセン・セーブル・ウェッジウッドと並ぶヨーロッパ代表の磁器メーカーとして、今なお世界中でその名を轟かせています。つまり格付けは最上位クラスです。
すべての製品に共通しているのが「コバルトブルーの王笏」マーク。これはブランデンブルク選帝侯の紋章に由来するもので、このマークこそが正真正銘のKPMベルリン製品の証です。現在でも製品の大部分は熟練職人によるハンドメイドで作られており、これまでに15万型を超える作品が生み出されてきました。15万型という数字は、東京都内のコンビニ店舗数(約7,000店)の約20倍以上に相当するアーカイブの深さです。
KPMベルリンの歴史と各時代のスタイル変遷について詳しく解説(antique-tableware.com)
KPMベルリンには数多くのシリーズがありますが、日本市場でとくに認知度が高いのが「クーランド(Kurland)」「ロカイユ」「ウルビノ」「ベルリン ブラックライン」の4シリーズです。
クーランド(Kurland)は1870年にクールラント公爵からの注文をきっかけに生まれたシリーズで、食器の縁を飾る「リボンカーテン」と繊細な花柄が最大の特徴です。クラシカルでありながらモダンにも合わせやすいデザイン性の高さから、世界中の女性に愛されています。伊勢丹新宿店では「Kurland No.23」として取り扱われており、ライトグレー(24番)という現代インテリアと親和性の高いカラーが加わっています。プラチナラインが施されているため食器洗い機は使用不可、電子レンジも使えない点は覚えておくとよいでしょう。
ロカイユは1760年代に考案されたデザインで、国王フリードリヒ・ヴィルヘルム4世によって命名されました。美しい草花をモチーフにしたレリーフと控えめな花模様が特徴で、今もなお当時のデザインを職人が守り続けています。絵付けがない「白磁ロカイユ」と絵付けありの2種類が存在しますが、高価買取の文脈で注目されるのは絵付けがある方です。
ベルリン ブラックラインは1990年代にイタリアのデザイナー、エンゾ・マーリが手がけたシリーズです。φ28cmのディナープレートが特徴で、現代的でシャープなラインと白磁の純粋な白さが融合したモダンな一品です。アトリエジュンコを通じて伊勢丹でも取り扱いがある実績があります。これは使えそうです。
ウルビノは1931年にトルーデ・ペトリがデザインした「究極のシンプル」を追求したシリーズ。一見するとKPMブランドとわからないほどミニマルな見た目ながら、1937年のパリ万博でグランプリ受賞、ニューヨーク近代美術館(MoMA)の永久コレクションに指定されるという輝かしい実績を持っています。
| シリーズ名 | 誕生年 | 特徴 | 価格帯の目安 |
|---|---|---|---|
| クーランド(Kurland No.23) | 1870年 | リボンカーテン、プラチナライン | ディナープレート約22,000円〜 |
| ロカイユ | 1760年代 | 草花レリーフ、花模様 | セット買取5〜10万円 |
| ウルビノ | 1931年 | 極限のシンプル、MoMA永久収蔵 | 白磁ベースで比較的入手しやすい |
| ベルリン ブラックライン | 1990年代 | モダン、イタリアンデザイン | プレート約15,400〜19,800円 |
ロカイユとクアランドは日本国内で「入手が難しい」とされているシリーズで、市場にあまり出回らないことが希少価値をさらに高めています。希少性が基本です。
KPMベルリンの人気シリーズ(クアランド・ロカイユ・ウルビノ)の詳細と買取価格の目安(福ちゃん)
KPMベルリンと伊勢丹新宿店の接点を語る上で欠かせないのが、テーブルウェアセレクトショップ「アトリエジュンコ(Atelier Junko)」の存在です。世界各地からセレクトしたテーブルウェアを取り扱い、食卓の楽しみを届けるアトリエジュンコは、伊勢丹新宿店本館5階のリビングフロアに店を構えています。
アトリエジュンコはKPMベルリンの国内における重要な取り扱い店舗のひとつで、同店を通じて伊勢丹の顧客がクーランドやベルリン ブラックラインなどのシリーズを購入できる環境が整っています。専属スタッフがテーブルコーディネートのサポートをしてくれるのも、陶磁器選びに慣れていない人にとって大きなメリットです。
2024年2月には「First day of spring(春の始まり)」をテーマにしたフェアが開催され、KPMベルリンのKurland No.23シリーズを中心とした春のテーブルコーディネートが伊勢丹新宿店で展開されました。KPMの白磁の美しさとグレーの縁取り、プラチナラインを組み合わせたコーディネートは、多くの陶磁器ファンの目を引きました。
さらに2022年1月には、スタイリスト山本康一郎が率いるクリエイティブレーベル「スタイリスト私物」と、KPMベルリン、そして〈エンノイ〉の三者によるコラボレーションが三越伊勢丹を通じて実現しました。このコラボで生まれた「クヌート(シロクマのオブジェ)」の無絵付けバージョンは、日本国内初販売かつ世界初となる仕様で、価格は47,300円(税込)でした。いいことですね。
クヌートの元型は2007年にKPMのチーフデザイナーであるトーマス・ヴェンツェルが制作し、ベルリン動物園で生まれて世界的に有名になったホッキョクグマ「クヌート」をモデルとしています。本来は絵付けされた表情があるところを、「simple is deep.」のコンセプトのもと完全に無垢な白磁状態で仕上げた特別仕様です。底面にはスタイリスト山本の「円康マーク」とKPMの「王笏」が印されており、コラボの証となっています。
このコラボ品の販売は三越伊勢丹アプリを通じた抽選方式で行われ、応募期間はわずか3日間(1月20〜22日)、想定を超える応募が集まったため結果発表方法が途中変更されるほどの人気を博しました。
三越伊勢丹公式:KPMベルリン×スタイリスト私物のコラボ「クヌート」の詳細情報(mistore.jp)
KPMベルリンを伊勢丹で購入するには、主に2つのルートがあります。ひとつは伊勢丹新宿店本館5階のアトリエジュンコへ直接訪れる方法、もうひとつは三越伊勢丹オンラインストアを活用する方法です。
店頭ではスタッフによるテーブルコーディネートの提案を受けながら、実際に器の質感や重さ、発色を確認できる点が最大のメリットです。KPMベルリンは職人のハンドメイドが基本であるため、個体差があります。手に取って確認することが条件です。
価格帯の目安は以下の通りです。
- Kurland No.23 ディナープレート(φ25.5cm):22,000円(税込)
- Kurland No.23 デザートプレート(φ20cm):16,500円(税込)
- Kurland No.23 スーププレート(φ20×4cm):18,700円(税込)
- Kurland No.23 コーヒーカップ&ソーサー:29,700円(税込)
- Kurland No.23 ティーカップ&ソーサー:35,200円(税込)
- Kurland No.23 マグカップ(約350ml):29,700円(税込)
- ベルリン ブラックライン プレート:15,400〜19,800円(税込)
コーヒーカップ&ソーサーが約29,700円というのは、一般的なスーパーで売られているカップが500〜2,000円程度であることを考えると、15〜60倍の価格差があるということです。痛いですね。
ただし、この価格には260年以上の歴史と職人の手仕事、そしてプロイセン王室由来の品質保証が込められています。エムアイカード プラスを利用した場合、三越伊勢丹での購入で購入金額の5〜8%がポイント還元されるため、まとめ買いの際には事前にカードを準備しておく価値があります。3万円のカップ&ソーサーなら1,500〜2,400円分のポイントが返ってくる計算になります。
オンラインストアでは、在庫が数量限定であることが多く、季節のフェアに合わせて商品が入れ替わります。特定のシリーズや色を狙っている場合、時期を問わず随時チェックする習慣をつけておくと良いでしょう。アトリエジュンコのECサイト(stores.jp)でもKPMベルリンの取り扱いがあるため、あわせて確認することをおすすめします。
なお、Kurland No.23はプラチナラインが入っているため食器洗い機・電子レンジ・オーブンはすべて使用不可です。購入後の取り扱いルールとして覚えておけばOKです。
伊勢丹新宿店:アトリエジュンコ「春の始まり」KPMベルリン Kurland23取扱い情報(mistore.jp)
陶磁器に興味を持つコレクターにとって、KPMベルリンのアンティーク品は特別な意味を持ちます。食器の買取価格は一般に数千〜数万円が中心ですが、陶板画(磁板に描かれた絵画)となると話が大きく変わります。
KPMベルリンの陶板画は直近の落札平均が約156,000円(オークファン調べ)、高品質なものでは単体で100万円を超えることもあります。陶板画が条件です。なぜこれほど高いかというと、平らな磁体に精緻な絵付けを施す技術が極めて難しく、現代でもほとんどが職人の手描きで行われているからです。
KPMベルリン製品を識別する上で最も重要なのが「刻印(マーク)」の見方です。コバルトブルーの王笏マークがKPMの基本シンボルですが、年代によってマークの形状や付記される文字が異なります。1763年の設立以来、製品の底部に刻印が施されてきており、専門家はこのマークから製作年代を特定します。1980年代以降はベルリン製であれば「ROYAL PORZELLAN KPM GERMANY」の文字が加えられているケースも多いです。
ここで注意が必要なのが偽物の存在です。ドイツ装飾美術のスペシャリストであるイングリット・ギルゲンマン教授(ドイツのオークションハウスLempertz所属)は「王笏のマークはコピーしやすい。コレクターは専門家に真偽鑑定を依頼すべき」と明言しています。フリマアプリやネットオークションでKPMベルリンを購入する場合は、刻印の精度・ポーセリンの質感・絵付けの筆致まで含めて総合的に判断する必要があります。刻印だけで判断するのはダメということですね。
現在のKPMベルリンは高級車ブガッティやイタリアのハイブランド「ボッテガ・ヴェネタ」とのコラボも発表しており、コレクターとしての資産価値の観点からも注目度が上がっています。特に三越伊勢丹との別注品(クヌートの無絵付け版など)は日本限定・世界初という付加価値があり、将来的な希少価値が期待できるアイテムです。
KPMベルリンのアンティーク品を買取に出す場合の相場は以下の通りです。
- 食器(通常品):数千〜数万円
- 食器セット(状態良好):5〜10万円
- 陶板画(標準的なサイズ):5〜30万円
- 陶板画(大型・高品質):100万円以上の実績あり
アンティークとして売却を検討している方は、複数の専門業者に見積もりを依頼し、底面の刻印・状態・付属品(元箱など)をそろえておくことで買取金額が大きく変わる可能性があります。
KPMベルリンの概要・歴史・シリーズ情報(美術品・絵画買取センター)
KPMベルリンの陶板画の買取相場と価値の解説(食器の買取情報サイト)