食洗機を毎日使うと、パラティッシの絵柄が数年で退色する可能性があります。
アラビア(ARABIA)は、1873年にフィンランドのヘルシンキ郊外・アラビア地区で創業した陶磁器ブランドです。150年以上にわたってフィンランドの食文化を支えてきた、北欧を代表する窯元として世界中で知られています。そのアラビアが誇る最高傑作のひとつが、「パラティッシ(Paratiisi)」シリーズです。フィンランド語で「楽園(Paradise)」を意味するこの名前が、シリーズの豊かな世界観をそのまま言い表しています。
パラティッシをデザインしたのは、ビルガー・カイピアイネン(Birger Kaipiainen)。「フィンランドデザイン界の貴公子」とも称される彼は、1969年にこの食器シリーズを発表しました。パンジー、カシス、ぶどう、りんごなど、みずみずしい花や果物のモチーフが、まるで絵画のような細密なタッチで描かれています。カイピアイネンはパラティッシのデザインにあたり、まず形をオーバルにすることを決めたといわれており、それは彼のアート作品にも頻繁に登場する、最も身近な形でした。
実はパラティッシには、一度完全に生産終了になった歴史があります。1974年、アラビア社が経済危機に陥り製品ラインを大幅に縮小。パラティッシもそのとき生産終了となりました。しかし、フィンランド国内からの再生産の強い要望を受け、1988年にカラータイプのみ復刻されます。つまり、長年にわたって「手に入らない幻の食器」だった時代があるのです。その希少性がさらに価値を高め、現在に至るまで北欧食器ファンの間で根強い人気を誇っています。
発売当初のカラータイプに続き、1972年にはブラックホワイトのパラティッシが誕生しました。これはアラビア工場のプロダクトマネージャーのアイデアをカイピアイネンが実現したもので、発売直後からコレクターや北欧デザインの愛好家を中心に人気アイテムとなっています。2012年にはパープルが加わり、現在は「カラー(青と黄)」「ブラック」「パープル」の3色が展開されています。
1969年のベルギー・ファビオラ王女のエピソードも注目すべき逸話です。王女がカイピアイネンのアトリエを訪れた際、パラティッシを見るなり「この食器が欲しい!」と言ったと伝えられており、その上品かつ豪奢な存在感が多くの上流階級からも支持されてきたことがわかります。これが原因で、フィンランド国内ではパラティッシを所有することが「ステータス」となり、母から娘へ、姉妹間でクリスマスプレゼントとして毎年少しずつ買い揃えて贈り合う習慣が生まれるほどでした。
つまり、毎日気軽に使う食器ということですね。
アラビアパラティッシの歴史・デザイン・ロゴの変遷について詳しい情報はこちらをご参照ください。
パラティッシ(Paratiisi)完全ガイド — 歴史・ロゴの変遷・ヴィンテージ解説 | TACKSAM YCKET
パラティッシのマグカップには、現行品で「240ml(マグ 0.24L)」と「350ml(マグ 0.35L)」の2サイズがあります。どちらを選ぶかで、日常の飲み物体験がかなり変わってきます。
まず240mlは、直径約7.6cm、高さ約8.0cmとコンパクトなサイズ感です。缶コーヒー1本(185ml)より少し多いくらい、と想像すると分かりやすいでしょう。指一本がようやく入る小ぶりな持ち手が独特のデザイン的アクセントになっており、女性の手にも自然に馴染みます。毎朝の一杯や、来客時のおもてなし用として複数揃えるのにもちょうど良いサイズです。
これが使いやすいサイズだといえます。
一方の350mlは、直径約8.7cm、高さ約8.8cmとひとまわり大きくなります。500mlペットボトルの約7割の容量で、カフェオレやミルクティーをたっぷり注いでも余裕があります。デスクワークや読書のお供に置いておくと、何度も席を立たずに飲み続けられるため、集中したい時間に最適です。もともとパラティッシのマグとして最初にラインナップされたのはこの350mlで、シリーズ本来の存在感をより強く味わえるサイズでもあります。
サイズ選びに迷ったときの目安として、「コーヒーや緑茶をさっと飲みたい・来客用に使いたい」なら240ml、「カフェオレやたっぷりのお茶でゆったりしたい・PC作業のお供にしたい」なら350mlが向いています。なお、240ml マグはプレート14cmと、350ml マグはプレート16.5cmと組み合わせることでマグ&ソーサーとして使えるのも、パラティッシならではの楽しみ方です。
| 項目 | 240ml(マグ 0.24L) | 350ml(マグ 0.35L) |
|---|---|---|
| サイズ | φ7.6×H8.0cm | φ8.7×H8.8cm |
| 向いている用途 | 来客用・毎朝の一杯・女性向け | PC作業・読書・ゆったりした休憩 |
| 組み合わせソーサー | プレート14cm | プレート16.5cm |
| 参考価格(現行品) | 約4,730円 | 約5,500円 |
| 発売時期 | 後から追加 | オリジナルラインナップ |
パラティッシのサイズ比較についてさらに詳しく書かれている記事はこちらです。
パラティッシマグカップを選ぶならどっち?240mlor350ml・カラーorブラック? | どんぐり5
パラティッシには現在、「カラー(ブルー×イエロー)」「ブラック」「パープル」の3色展開があります。それぞれに異なる雰囲気があり、どれを選ぶかで日常のテーブルがまったく異なる表情を見せてくれます。
カラー(ブルー×イエロー)は、1969年の発売当初から続く、パラティッシ本来の配色です。青と黄の原色を大胆に組み合わせたデザインは、北欧らしい明快な色使いが特徴で、食卓にフレッシュで活気のある雰囲気をもたらします。朝食時や、花を飾ったテーブルに合わせると絵になる配色です。また、後述するヴィンテージ品もカラータイプが中心となるため、コレクター視点でも入門しやすいシリーズといえます。
ブラックは、1972年に誕生したモノクロ配色のバリエーションです。白地に黒の繊細なラインで描かれた図案は、彫刻のような力強さと洗練された印象を兼ね備えています。食事の時間に日常的に使うなら、料理の色を邪魔しないブラックが最も使いやすいという声も多く聞かれます。人気も断トツでブラックが最上位といわれており、特に2006年の映画「かもめ食堂」の影響で北欧ブームが到来した際、一時期ほぼ入手不可能になったほど需要が高まった背景があります。
パープルは、2012年にフィンランドの百貨店「ストックマン創業150周年」を記念して加わった比較的新しいカラーです。最初から定番カラーだったわけではありません。しかし、その鮮やかで大人びた配色がたちまち北欧食器ファンの心をつかみ、ブラックを超える勢いで人気が広がりました。現在もパープルは定番化されておらず、流通量が少ないため「見かけたときに購入しないと入手できない」シリーズでもあります。ティーカップやプレートのカテゴリではブラックよりパープルの人気が上回る場合もあるほどです。
どのカラーもデザイナー・カイピアイネンのオリジナルデザインをベースにしており、絵柄の細部はそれぞれ専用に調整されています。これは嬉しいポイントですね。
「せっかく買うならフィンランド製が良い」と思う方が多いかもしれません。ところが、現在市販されているほぼすべてのアラビア製品はタイ製またはルーマニア製です。
アラビア社は2016年にフィンランドの自社工場を閉鎖し、以降はタイとルーマニアの契約工場で製造を続けています。ブランドのデザイン管理やポートフォリオの監修は引き続きヘルシンキで行われていますが、物理的な製造工程は海外に移転しています。つまり、現行品を新品で購入する場合、フィンランド製を選ぶ余地は基本的にありません。
ここで重要なのが、品質面の実態です。一般的に「フィンランド製=高品質」と思われがちですが、実際には寸法精度や表面のきれいさ(歪み、黒点、貫入の少なさ)という点では、タイ・ルーマニア製のほうがフィンランド製より優れているとされています。これは意外ですね。
理由は、フィンランドの工場が稼働していた時代(特に20世紀中頃)は品質管理が甘く、数ミリの寸法誤差や焼成時の歪みがあっても出荷されていたからです。一方の現代の契約工場では品質基準が厳格化されており、精密に生産管理されています。ただし、フィンランド製の旧いものには「釉薬の深みのある光沢」「手作業ならではの色のニュアンス」があり、食器としての芸術的な魅力という点では別格と評価されています。
価格差という観点でも整理しておきましょう。現行のタイ製マグカップ(350ml)は公式サイトで5,500円前後で購入可能です。一方、1970年代以前に製造されたフィンランド製のヴィンテージ品は、オークションやフリマサイトでコーヒーカップ&ソーサーが1万円以上、希少なアイテムは3万円を超えることもあります。ヴィンテージ品への投資として入手するのか、日常使いとして気軽に楽しむのかで、選ぶべき選択肢が変わります。
つまり、現行品で普段使いするならタイ製で十分です。
アラビア食器のフィンランド製とタイ製の違いについて詳しくはこちらをどうぞ。
アラビア食器のフィンランド製とタイ製の違い | TACKSAM YCKET
パラティッシのマグカップは、電子レンジ・オーブン(250℃まで)・食洗機の3つすべてに対応しています。使い勝手の良さは原則です。ただし、長く美しい状態を保ちたいなら、いくつかの注意点を押さえておく必要があります。
食洗機の使用について、公式では「食洗機OK(長く美しい状態を保つには手洗いを推奨)」と案内されています。毎日食洗機を使い続けた場合、長期的には絵柄の色が薄くなったり、表面の光沢が失われたりするリスクがあります。特にヴィンテージ品の場合は、釉薬の層が現代品より薄い場合があるため、手洗いが強く推奨されます。日常的に使うコップ類に食洗機は当然と考えているとしたら、見直すきっかけになります。
研磨材入りのスポンジ、金属たわし、クレンザーは絶対に使用しないでください。表面に細かい傷がつき、光沢感が取り戻せなくなります。柔らかいスポンジと中性洗剤での手洗いが基本です。
オーブンに入れる際は、食器の底面全体を食品または液体がまんべんなく覆った状態で使用することが条件です。底面が乾いた状態で加熱すると急激な温度変化が生じ、ひび割れの原因になります。直火はNGです。これだけ覚えておけば問題ありません。
また、新品を使い始めるときには「目止め」(めどめ)を行うと、陶磁器の微細な穴に最初から汚れや匂いが染み込みにくくなります。方法は、鍋に水を張り、洗ったマグカップを浸した状態で米のとぎ汁(または少量の片栗粉を溶かした水)を加えて弱火で20分ほど煮るだけです。焦げ付きや茶渋がつきにくくなり、長期間にわたって清潔な状態を保ちやすくなります。
アラビア公式のよくある質問(FAQ)はこちらで確認できます。
パラティッシのマグカップは、贈り物としての満足度が非常に高い食器のひとつです。その理由は、受け取った相手が「飾れる食器」でもあり「使える食器」でもある、二重の価値を持っているからです。フィンランドでは毎年クリスマスプレゼントとして少しずつ贈り合う習慣があると先述しましたが、日本でも引っ越し祝いや結婚祝い、誕生日プレゼントとしてパラティッシのマグカップ1客を贈る文化が根付きつつあります。
マグカップ1客の価格は5,000円前後(240ml:約4,730円、350ml:約5,500円)という、贈り物として絶妙な価格帯です。高すぎず、しかし「日常的には自分では買わない上質な食器」というポジションを満たしています。複数客そろえると1万円を超えるため、1客ずつ少しずつ贈り合うというパラティッシ本来の文化がそのまま贈答シーンに活かせます。
コレクターとしての視点から見ると、パープルは定番化されておらず流通量が限られているため、見かけたときに確保しておくのが賢明です。ブラックは2005年に一度廃盤になり、その後2007年から不定期生産が再開されたという歴史を持っており、廃盤リスクを常に頭に入れておく必要があります。市場でのヴィンテージ品の落札平均価格は約5,840円(過去180日間のYahoo!オークション実績)ですが、状態が良く希少なアイテムには33,550円という高値が付くこともあります。
これは使えそうです。
コレクションとして複数のカラーや、プレートとの組み合わせを楽しむなら、まずマグカップ1客から始めて、徐々に食卓のパラティッシ率を高めていくスタイルが、長期的に飽きずに楽しめる方法です。マグカップは毎日使うものだからこそ、その美しさを日常的に堪能できます。食器棚に並べたときの絵になる存在感も、パラティッシならではの魅力のひとつです。
パラティッシの定番オンラインショップ「スコープ」での現行品ラインナップはこちらです。
Paratiisi パラティッシ|Arabia - scope(スコープ)