透閃石の比重と鉱物の特徴や軟玉との関係性を解説

透閃石は比重3.0前後の角閃石族鉱物で、軟玉として宝石にも利用されます。その密度や化学組成、産地、用途など鉱物学的な特性を詳しく知りたくありませんか?

透閃石の比重と鉱物特性

透閃石の基本的な性質
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比重は約3.0

透閃石の比重は2.9~3.1で、平均的には3.0前後です。この数値は鉱物鑑定における重要な判断材料となります。

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硬度6の鉱物

モース硬度は5~6で、二方向に完全な劈開を持つ単斜晶系の角閃石族鉱物です。

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マグネシウムを多く含む化学組成

Ca₂(Mg,Fe)₅Si₈O₂₂(OH)₂の化学式で表され、Mg/(Mg+Fe)比が0.9~1.0の範囲です。

透閃石の比重測定と数値の意味

 

透閃石の比重は2.9~3.1の範囲にあり、一般的には約3.0とされています。比重とは、ある物質の密度を水の密度で割った値のことで、透閃石の場合は水の約3倍の重さがあることを示します。この数値は鉱物の同定において非常に重要な指標となり、外見が似た他の鉱物と区別する際の決め手となります。

 

参考)https://trekgeo.net/m/d/tremolite.htm
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比重の測定方法は比較的シンプルで、まず石を空中で測定した重さと、水中に浸した状態での重さを測定します。その差分から石の体積を算出し、「空中での重さ÷体積」で比重を求めることができます。透閃石の比重3.0という値は、角閃石族の中では標準的な数値であり、鉄分が増えて緑閃石になると比重がやや高くなります。

 

参考)透閃石 - Wikipedia
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硬度は5~6で石英(硬度7)よりやや低く、二方向に完全な劈開を持つため、特定の方向に割れやすい性質があります。この劈開性は角閃石族特有の特徴で、透閃石の結晶構造が二重鎖状のケイ酸塩であることに起因しています。

 

参考)301 Moved Permanently

透閃石の化学組成と結晶構造の特徴

透閃石の化学組成はCa₂(Mg,Fe)₅Si₈O₂₂(OH)₂で表され、マグネシウム(Mg)と鉄(Fe)の比率が鉱物の性質を決定します。透閃石と定義されるためには、Mg/(Mg+Fe)比が0.9~1.0の範囲にある必要があり、これより鉄の割合が多くなると緑閃石(アクチノライト)と呼ばれるようになります。

 

参考)透閃石(トウセンセキ)とは? 意味や使い方 - コトバンク

結晶系は単斜晶系に属し、結晶構造は二重鎖状のケイ酸塩が特徴です。この構造により、透閃石は針状や繊維状の形態をとることが多く、放射状または平行に集合した結晶集合体として産出することが一般的です。

 

参考)https://lapisps.sakura.ne.jp/gallery5/326actino.html

純粋な透閃石はマグネシウムが多いため、ドロマイト苦灰石)が低度の変成作用を受けた際に生成されやすい鉱物です。変成岩を構成する造岩鉱物として重要な役割を果たしており、特に接触変成帯や広域変成岩中に見られます。

透閃石の外観と産状の多様性

透閃石の外観は産状により大きく異なります。は無色、白色、淡緑色、淡褐色などが一般的で、純粋なものほど無色透明に近くなります。バナジウムを含むと鮮やかな緑色を呈し、クロム透閃石として宝石価値を持つこともあります。

 

参考)http://fluoresarasi.web.fc2.com/fluoresarasi/0minerals/tremolite.html

結晶の形態は多様で、針状、繊維状、柱状、塊状などがあります。特に微細な繊維状結晶が密に集合して塊状を呈すると強靭になり、これが軟玉(ネフライト)として知られる宝石素材となります。また、繊維状のものは石綿(アスベスト)として産出することもあり、この形態のものは健康リスクがあるため取り扱いに注意が必要です。

 

参考)アスベストとは?

光沢はガラス光沢から絹糸光沢を示し、特に繊維状のものは独特の絹糸光沢を持ちます。条痕色は白色で、蛍光性を示すものもあり、短波紫外線下で青白く発光する産地もあります。

 

参考)トレモライト(透閃石)- Tremolite | ハッピース…

透閃石と軟玉(ネフライト)の関係性

透閃石が緻密に集合した塊状の鉱物は**軟玉(ネフライト)**と呼ばれ、古来より宝石や彫刻材として珍重されてきました。軟玉は透閃石と緑閃石(アクチノライト)の結晶集合体で、その比率により色調が変化します。

 

参考)KOBE IMPORT COLLECTION

軟玉の比重は2.90~3.02で、透閃石単体の比重とほぼ同じ範囲にあります。モース硬度は5~6と透閃石と同じですが、緻密な交差繊維状の構造により靭性が非常に高く、割れにくい特性を持ちます。この靭性の高さが、軟玉を彫刻や加工に適した素材としています。

 

参考)ジェダイト(硬玉)とネフライト(軟玉)はどちらも翡翠?何が違…

色はマグネシウムが多いと白色(オフホワイト)、鉄が多いと濃緑色になります。特に透閃石の純度が高い白色のものは「羊脂玉(ようしぎょく)」と呼ばれ、最高級品として扱われます。中国のホータン地域産のものが特に有名で、産出量が少なく希少価値が高いとされています。

日本では「ネフライト」と「ジェダイト(硬玉・ヒスイ輝石)」は「翡翠」と総称されますが、科学的には全く異なる鉱物です。硬玉の比重は3.25~3.36で軟玉より高く、化学組成も結晶構造も異なります。

透閃石が石綿として産出する場合の注意点

透閃石は繊維状の形態をとることが多く、その中でも特に微細な繊維状になったものは**石綿(アスベスト)**として分類されます。厚生労働省は透閃石(トレモライト)を6種類のアスベストのうちの1つとして定義しており、重量の0.1%を超えて含有する製剤を規制対象としています。

 

参考)アスベストとは

石綿としての透閃石には発がん性があることが判明しており、吸入すると肺がんや中皮腫を引き起こすリスクがあります。かつては耐熱材として建築材料に使用されていましたが、現在では使用が禁止されています。

 

参考)https://asbestos-database.jp/kenzai/pdf/?id=MTA4NwqZ_6xW5WTMLEVDkd2nMmOZ

ただし、すべての透閃石が危険というわけではありません。石綿として問題となるのは呼吸器に吸入可能な微細な繊維状のものであり、結晶質や塊状の透閃石は通常の取り扱いでは健康リスクは低いとされています。鉱物標本として扱う際も、繊維状のものは密閉容器に保管し、粉塵を吸い込まないよう注意が必要です。

 

参考)アスベスト(石綿)の種類と特徴|健康リスクや使用用途を解説 …

透閃石の産地と採集における独自の視点

透閃石は世界各地で産出しますが、日本でも複数の産地が知られています。特に愛媛県の東赤石山周辺は本邦屈指の名産地として知られ、関川流域では川原に転がる緑閃石を容易に採集できます。別子山村保土野や高知県の白髪山冬の瀬付近にも産出地があり、最近ではこれらの地域の標本が市場に出回ることも多くなっています。

 

参考)https://userweb.shikoku.ne.jp/mineral/irazu-4.htm

海外では、アメリカのアリゾナ州ハーパカラ山脈、ニューヨーク州タルクビル、ニュージャージー州フランクリン鉱山などが有名産地です。タンザニアのメレラニ産では、バナジウムを含む緑色の透閃石が宝石として産出し、ルースや原石の状態で販売されています。

鉱物採集の観点から興味深いのは、透閃石が珪灰石の仮晶として産出することがあることです。これは、元々珪灰石だった結晶が、後の変成作用により透閃石に置き換わりながらも、元の珪灰石の結晶形を保っているという現象です。このような標本は鉱物学的に貴重で、変成作用のプロセスを理解する上で重要な手がかりとなります。

また、透閃石は蛍光性を示す産地があることも注目に値します。フランクリン鉱山産のものは短波紫外線下で青白く蛍光し、タルクビル産ではオレンジ色に蛍光します。この蛍光特性は不純物の種類によって変わり、コレクターにとって魅力的な特徴となっています。

透閃石の基本情報や化学組成について詳しく解説されています(Wikipedia透閃石のページ)
透閃石の結晶系、硬度、比重などの鉱物学的データがまとめられています(コトバンク)
ジェダイト(硬玉)とネフライト(軟玉)の違いや、透閃石を主成分とする軟玉の特徴について分かりやすく説明され、透閃石を主成分とする軟玉の特徴について分かりやすく説明されています(KARATZ)

 

 


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