永久磁石 作り方 ネオジム フェライト焼結

永久磁石はどのような工程で作られるのでしょうか?ネオジム磁石やフェライト磁石の製造方法から、工場での焼結・着磁プロセスまで、強力な磁力を生み出す秘密を解説します。あなたの身近にある電子機器を支える磁石の製造工程の全容を知りたいと思いませんか?

永久磁石 作り方 ネオジム フェライト焼結

永久磁石の製造工程
原料配合と溶解

酸化鉄・バリウム・ストロンチウム・希土類元素を適切な比率で配合し、高周波熱を加えて溶解。均一な合金を製造する基本工程

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粉砕と微粉末化

溶解した合金を段階的に粉砕し、最終的に1μm以下の微粒子に。粒度が細かいほど磁力が強くなります

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磁場成形

微粉末を金型に入れ、磁場をかけながら圧縮成形。分子の向きを揃える重要なプロセス

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焼結と熱処理

1100℃前後で焼き固め、その後950℃と500℃で段階的に熱処理。結晶組織を最適化し保磁力を高めます

着磁と完成

強い磁界をかけることで初めて永久磁石となります。最後に検査を行い製品完成

永久磁石 作り方の5つの工程

 

永久磁石の製造には大きく5つの段階があります。これらは「溶かす」「砕く」「押し固める」「焼き固める」「磁化させる」という流れです。各工程で異なる技術が用いられ、最終的な磁力の強さに大きく影響します。

 

一般的に、ネオジム磁石とフェライト磁石では基本的な工程は共通していますが、使用される原料と焼成温度が異なります。ネオジム磁石は希土類元素を含むため、より複雑な製造工程が必要になります。一方、フェライト磁石は鉄とバリウム・ストロンチウムの化合物で、比較的シンプルな製造ができます。

 

永久磁石 ネオジム磁石の製造方法と粉末冶金法

ネオジム磁石の製造は「粉末冶金法」という特殊な方法で行われます。この方法では、金属粉末を金型に入れ、高圧で成形してから焼き固めるという独特のプロセスを採用しています。

 

まず、ネオジム・鉄・ボロン(Nd-Fe-B系)の合金を真空熔解炉で作ります。この段階で高周波電流をかけ、高温で完全に溶融させることが重要です。溶けた合金は型に流し込まれ、冷却されると脆い状態になります。

 

次に、この合金をジェットミル装置で微粉砕します。粉末のサイズが揃っていることが、後の成形工程での磁力均一性に大きく影響します。微粉末化された粉末は、磁場成形機で圧縮成形されます。このとき、外部磁場をかけることで、磁性粒子の方向が揃い、より強い磁力を持つ磁石が完成します。

 

成形後の磁石は、相対密度が50~60%程度に過ぎません。これを約1100℃の真空・アルゴン雰囲気で焼結することにより、相対密度がほぼ100%近くまで高まります。焼結により、残留磁束密度が高くなり、機械強度も増加し、腐食への耐性も向上します。

 

焼結後は、950℃と500℃の二段階で熱処理(時効処理)が行われます。この複雑な熱処理により、結晶粒界の組織が微細に変化し、保磁力(磁石が消えにくさ)が大幅に向上します。この組織変化は光学顕微鏡では判別できない程度の超微細レベルですが、磁石の性能に決定的な影響を与えます。

 

永久磁石 作り方でのフェライト磁石の焼結プロセス

フェライト磁石は、酸化鉄を主原料に、バリウムまたはストロンチウムを加えた化合物から製造されます。この磁石は最も大量に生産される永久磁石で、年間800キロトンもの生産量があります。

 

フェライト磁石の製造では、最初に各原料を配合します。配合した原料は約1300℃で仮焼成されます。この仮焼成により、原料の反応が進み、フェライト結晶が形成されます。仮焼成後のフェライトは非常に硬い状態になっているため、何段階かに分けて粉砕され、最終的に1μm程度の粒径まで細かくされます。

 

粉砕されたフェライト粉末に粘結材料が添加され、プレス成形機で金型に圧縮されます。この段階では、外部磁場をかけながら成形することで、磁性粒子が一定方向に配向され、より強力な異方性磁石が製造できます。一方、磁場をかけずに成形すると等方性磁石となり、磁力は低下します。

 

成形後の圧粉体は、ロータリーキルンという巨大な円筒炉に連続投入され、1200~1300℃の高温で焼成されます。斜めに設置された円筒は回転しながら、内部の物質が反応しつつ出口へ移動します。この焼成により、粉末同士が融合し、固い焼結体となります。

 

焼結体は冷却後、グラインダーで必要な寸法に研磨され、マルチワイヤー切断機で切断されます。その後、メッキ加工を施し、表面を保護します。最後に着磁工程が行われることで、初めて強力な永久磁石となります。

 

永久磁石 作り方での着磁工程と磁化メカニズム

多くの人が見落としている点として、焼き固められた磁石だけでは実は「永久磁石」ではないということが挙げられます。焼結後の磁石は、金属元素を含む化合物ですが、内部の磁区(微小な磁石領域)の向きがバラバラになっています。

 

着磁工程では、焼結体をコイル内に配置し、高い電流を流します。発生した強い磁界により、磁区の向きが一定方向に揃えられます。この磁区の配向が固定されることで、初めて「永久磁石」として機能するようになるのです。この工程を経ないと、焼結体はただの「石ころ」と変わらない状態です。

 

着磁工程では、磁石の種類や必要な磁力に応じて、コイルの電圧が調整されます。より高い電圧をかけるほど、より強力な磁石が得られますが、同時に過度な着磁は材料にダメージを与える可能性もあります。着磁後の磁石は品質検査を通じて、表面磁束密度とトータルフラックスが計測され、規格基準を満たしているか確認されます。

 

永久磁石 作り方で活用される加圧焼結と冷却焼結の革新技術

近年、永久磁石の製造技術は急速に進化しています。特に注目される技術として、「冷焼結プロセス」(Cold Sintering Process:CSP)があります。従来の焼結法では1100℃以上の高温が必要でしたが、冷焼結では水溶液や非水溶液(氷酢酸など)を使用し、低温での密度化が可能になりました。

 

この冷焼結プロセスの利点は、省エネルギー化による製造コストの削減、環境負荷の軽減、そして製造スピードの向上です。従来は数時間かかる焼結工程が、冷焼結では大幅に短縮されます。さらに、希土類フリーの材料(ストロンチウムフェライトなど)でも高い磁気特性を持つ焼結磁石を製造できるようになりました。

 

また、静水圧プレスを活用した高圧成形技術も進化しています。真空パックされた成形体に対して、液体を介して均等な高圧力を加えることで、より均一で高密度な磁石が製造できます。この技術により、磁石内部の空孔や欠陥が減少し、より安定した磁気特性を持つ製品が実現しています。

 

さらに革新的な方法として、3D印刷(アディティブマニュファクチャリング)による永久磁石の製造も研究されています。選択的レーザー溶融(SLM)や電子ビーム溶融(EBM)により、複雑な形状の磁石を一度に製造でき、従来の鋳造や焼結では難しかった設計の自由度が得られます。

 

ネオジム磁石とフェライト磁石の詳細な製造工程フロー - ネオマグ通信では、各種磁石の製造方法・製造工程を図解で詳しく解説しており、原料配合から検査着磁までの一連の流れが視覚的に理解できます。
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