絶縁体 一覧と種類・用途・特性の完全ガイド

電気機器に欠かせない絶縁体の基本から、プラスチック・ガラス・セラミックなど具体的な種類、耐熱クラス、そして実際の用途まで、業界別の活用事例を交えて徹底解説します。あなたの知らない絶縁体の秘密とは?
絶縁体の全体像を把握する
絶縁体とは何か

電気を通しにくい、または通さない性質を持つ物質で、電気機器の安全性確保に不可欠な存在

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導体との根本的な違い

自由電子がほとんど存在しないため、電気が流れにくい特性を持つ

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電気機器での役割

感電防止、電気配線の安全確保、電子部品の保護など、複数の役割を担当

絶縁体 一覧と基本特性

絶縁体 一覧に見る有機物と無機物の分類

 

絶縁体は大きく有機物と無機物に分類されます。有機物の絶縁体には、木材、紙、ゴム、プラスチック(ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレンなど)、そして合成樹脂(エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリウレタンなど)があります。一方、無機物の絶縁体には、ガラス、セラミック、磁器、雲母(マイカ)、石英ガラス、アルミナ(酸化アルミニウム)があります。

 

これらの分類は、その材料の原子構造に根ざしています。絶縁体の価電子は原子と強く結合しており、原子間を自由に動き回る電子(自由電子)がほとんど存在しないのです。この根本的な違いが、導体と絶縁体を分け隔てています。

 

実は、同じ有機物でも種類によって絶縁性能は大きく異なります。例えば、テフロン(PTFE)の体積抵抗率は10^18Ω·cm以上と極めて高く、一方でポリ塩化ビニルは10^15Ω·cm程度です。このような細かな差が、実際の用途選定を左右する重要なポイントとなります。

 

絶縁体 一覧における耐熱クラスと性能の関連性

絶縁体は日本産業規格(JIS)により、耐熱温度別に9つのクラスに分類されています。クラスYは最高許容温度が90℃で、綿、紙、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、天然ゴムが主要材料です。クラスAは105℃で、クラスEは120℃、クラスBは130℃に対応しています。

 

より高温に対応するクラスFは155℃、クラスHは180℃、クラスNは200℃、クラスRは220℃、そして最上位のクラス250は250℃に達します。高温対応クラスではマイカ、石綿、ガラス繊維などの無機材料が採用され、より厳しい環境での使用に耐えるようになっています。

 

特に注目すべきは、同じ温度耐性でも接着・充填材料によって性能が変わることです。例えば、クラスFとクラスHはともにマイカやガラス繊維を使用していますが、クラスFではシリコンアルキド等の樹脂を使い、クラスHではシリコーン樹脂を採用することで、温度に対する耐久性を高めています。

 

絶縁体 一覧の電気抵抗値と誘電体との違い

電気抵抗率(体積抵抗率)は、絶縁体の性能を評価する最も重要な指標です。体積抵抗率が高いほど電気を流しにくく、より優れた絶縁体といえます。ただし、ここで重要な区別があります。絶縁体と誘電体は異なる概念です。

 

誘電体は絶縁体の一種であり、直流の電気は通しません。しかし、交流においては周波数に応じた電気抵抗を持ちます。これは交流電流が誘電体内部で誘電分極を引き起こすためです。電子機器や半導体素子のゲート絶縁に用いられるのは、この誘電体の性質を活用しているのです。

 

実は、絶縁破壊という現象も重要な性能指標です。絶縁体に十分に高い電圧がかかると、電子が伝導帯まで励起され、電気が流れるようになります。この絶縁破壊電圧は材料によって異なり、テフロンは19~20kV/mm、エポキシ樹脂は20~30kV/mm、ポリフェニレンサルファイドは19~30kV/mmなどと報告されています。

 

絶縁体 一覧で注目すべき絶縁破壊と電子雪崩現象

絶縁破壊は単なる性能劣化ではなく、物理的および化学的な変化を伴う現象です。絶縁体に電界を印加したとき、その物体のバンドギャップエネルギーに比例するしきい値を超えると、絶縁体は電気抵抗を伴う抵抗器となり、時には破壊的な結果をもたらします。

 

この過程では「電子雪崩」と呼ばれる連鎖反応が発生します。自由な電荷担体が強い電場によって加速され、衝突した原子をイオン化して電子を飛び出させます。その電子とイオンもさらに加速され、別の原子に衝突することで、さらなる電荷担体が生み出されます。こうして絶縁体は瞬時に電荷担体で満たされ、電気抵抗値が低下してしまうのです。

 

空気における絶縁破壊はコロナ放電やアーク放電といった放電現象を伴い、これは送電線での故障原因となることも多いです。実は、同様の絶縁破壊は任意の絶縁体に起こりうる現象であり、設計段階から十分な考慮が必要です。

 

絶縁体 一覧と実務での選定基準の賢い活用法

実際にプロジェクトで絶縁体を選定する際は、電圧、温度、機械的強度、化学耐性、柔軟性など複数の因子を総合的に判断する必要があります。低電圧や中程度の電圧(数百から数千ボルト)の場合、ゴム状の重合体や多くのプラスチックが実用的かつ安全な選択肢となります。

 

一方、高圧送電線(数十万ボルト)では、プラスチックなどのコーティングは現実的ではなく、主に空気だけを絶縁に利用し、電線同士の間隔を広げることで対応しています。高電圧装置には、六フッ化硫黄などの絶縁ガスを高圧に満たした中で動作させるよう設計されたものもあります。

 

興味深い事実として、同じ素材でも用途によって性能が大きく異なることがあります。例えば、電源周波数や低周波では優れた絶縁体でも、誘電体であるために高周波では熱を持ち、絶縁性能が低下するものが存在します。電子機器の設計者は、この周波数特性を考慮して最適な絶縁体を選択しなければなりません。

 

Wikipedia「絶縁体」ページでは、バンド理論、モット絶縁体、絶縁破壊のメカニズムなど、より詳細な物理学的説明が提供されています。

 

絶縁体の具体的な種類と用途

絶縁体 一覧におけるプラスチック系材料の多様な活用

プラスチック系の絶縁体は、その加工性と低コストにより、最も広く使われている材料です。ポリエチレン(PE)は柔軟性に優れ、一般的な電線被覆に採用されています。架橋ポリエチレン(XPE)はさらに耐熱性が向上し、より厳しい環境での使用に対応します。

 

ポリ塩化ビニル(PVC)は難燃性を持ち、制御盤内の配線に多く用いられます。ただし、欧州連合の環境規制により経済性が低下しつつあり、代替素材への切り替えが進んでいます。ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、一般にテフロンとして知られるこの素材は、極めて高い耐熱性と耐薬品性、非粘着性を持ち、特殊用途での採用が増えています。

 

エポキシ樹脂(EP)は優れた接着性と機械的強度を持ち、プリント基板やレジン材として活躍しています。ポリフェニレンサルファイド(PPS)は耐化学性に優れ、自動車業界での需要が高まっています。シリコーン樹脂(SI)は優れた耐温度特性と柔軟性を兼ね備え、医療機器や航空宇宙産業での採用が進んでいます。

 

絶縁体 一覧の無機材料と高耐熱性の秘密

無機絶縁体は、有機材料では対応できない極端な環境での使用を可能にします。ガラス及びガラス繊維は、耐熱性と機械的強度の両立で知られており、絶縁テープや基板材料として活躍しています。セラミック、特にアルミナ(酸化アルミニウム、Al₂O₃)やジルコニアなどは、数百℃を超える高温環境での用途に欠かせません。

 

雲母(マイカ)は層状の結晶構造を持ち、変圧器やモータなどの巻線絶縁に古くから用いられています。磁器は機械的強度に優れ、電柱に電線を取り付ける碍子(がいし)として広く利用されています。セラミック系の絶縁体は、耐火性と漏電防止の点でも優れており、開閉装置の母線や遮断器での採用も増えています。

 

実は、これらの無機材料は100年以上に渡って使われ続けているにもかかわらず、経済性と性能のバランスが今でも最もよいという特筆すべき特性を持っています。

 

絶縁体 一覧に見る液体及びガス絶縁体の特殊な役割

変圧器やコンデンサなどの高電圧システムでは、液体及びガス状の絶縁体が放電を防ぐために利用されます。絶縁油は古くから使われており、電位差の大きい空間を空気の代わりに絶縁油で満たすことで、絶縁性能を大幅に向上させます。変圧器の内部は絶縁油で充満されており、その冷却特性も活用されています。

 

高電圧装置の中には、六フッ化硫黄(SF₆)などの絶縁ガスを高圧に満たした中で動作させるよう設計されたものがあります。六フッ化硫黄は優れた絶縁性能と消弧特性を持ち、遮断器などで多く採用されています。空気も絶縁体であり、高圧送電線ではこの空気を利用した自然絶縁が行われています。電線同士が触れると短絡や火災の危険を生じるため、適切な間隔を確保することが重要です。

 

同軸ケーブルの中心にある内部導体は、中空の外部導体のちょうど真ん中になるよう絶縁体で支持されており、電磁波の反射を防いでいます。この設計思想も、絶縁体の多角的な役割を示す好例といえるでしょう。

 

絶縁体 一覧における日本工業規格と国際規格への適合

絶縁体の品質確保と安全性保証のため、様々な規格が存在します。日本産業規格(JIS)では、前述の耐熱クラスの他、絶縁抵抗値や耐圧試験など、複数の試験方法が定められています。国際電気標準会議(IEC)の規格も広く採用されており、グローバルな製品開発では両規格への対応が求められます。

 

IEC 60243-1は誘電体の絶縁破壊強度測定方法を、IEC 60296は変圧器油の品質要件を規定しています。これらの規格は、製品の信頼性と安全性を保証するための基盤となっており、メーカーは厳格な試験プロセスを経て初めて製品化に至ります。

 

特に医療機器や航空宇宙産業では、規格適合性の証明が製品受け入れの必須条件となります。高温耐性、機械的強度、化学耐性など、複数の評価項目を同時にクリアする必要があり、この厳格さが優れた絶縁体製品を生み出す要因となっています。

 

絶縁体の実用的な応用と業界別活用

絶縁体 一覧から見る電気配線とケーブル設計の実際

電気配線における絶縁体の選定は、安全性と経済性の両立が求められます。一般的な低圧配線では、ポリ塩化ビニルやポリエチレンの被覆が標準ですが、より大きな電力ケーブルでは用途によって無機絶縁銅被ケーブル(無機物のパウダーを圧縮した絶縁物を使ったケーブル)を使うこともあります。

 

被覆電線やケーブルには電圧と温度の定格が存在します。アンペア容量は、電線やケーブルが使用される環境に依存するため、設計段階で詳細な環境分析が必要です。高温環境での配線には架橋ポリエチレンやシリコーン樹脂被覆ケーブルが採用されます。

 

ある程度以上の電圧がかかっている電線は、感電によって人が死亡する危険性をはらんでいます。絶縁体をコーティングすることでそういった問題を防ぎます。実は、感電防止は絶縁体が果たす最も基本的で重要な役割なのです。

 

絶縁体 一覧に見る半導体デバイスと集積回路の内部構造

トランジスタや集積回路などの半導体素子では、シリコンはドーピングによって導電性を持ちますが、熱と酸素を加えることで部分的によい絶縁体とすることもできます。酸化したシリコンは石英、すなわち二酸化ケイ素(SiO₂)になります。

 

プリント基板はエポキシ樹脂やファイバーグラスで出来ており、こうした絶縁体の板が銅の導体層を支持しています。電子部品にも絶縁体のエポキシ樹脂やフェノール樹脂で封入したものや、ガラスやセラミックでコーティングしたものもあります。

 

半導体素子の内部の絶縁には二酸化ケイ素(SiO₂)などの無機固体絶縁体が用いられています。ここで注目すべき発展は、次世代デバイスのために、より高い誘電率を持つ新しい絶縁材料(high-k dielectric)の研究が進んでいることです。これらの新素材は、より小さなデバイスサイズを実現しながら、優れた絶縁性能を維持することを可能にしています。

 

絶縁体 一覧と送電インフラの安全性確保

高圧送電線は数十万ボルトの電圧が流れており、プラスチックなどのコーティングは現実的ではありません。そのため、主に空気だけを絶縁に利用し、電線同士の間隔を広げることで、空気による断熱も利用して絶縁を施します。

 

電柱や鉄塔に電線をとりつける碍子(がいし)も、重要な絶縁物の一種です。放送用アンテナも電波塔として建てられることが多く、特にマスト構造のものは全体に高電圧がかかることでエネルギーを与えられるため、地面から絶縁されなければなりません。そのためステアタイトを架台とすることが多いです。

 

これらの碍子には場合によっては400kVにも達するアンテナにかかる電圧に耐えるだけでなく、アンテナの重量にも耐える必要があります。マスト型アンテナには落雷もよくあるので、アークホーンと避雷器も必須です。玉がいしは、張力ではなく圧縮力がかかるという利点があり、たとえそれが破壊されても支線自体はアンテナを支え続けられるという利点があります。

 

AMUX「絶縁体とは」ガイドでは、絶縁体の用途分類と具体的な選定基準について、より詳細な情報が提供されています。特に業界別の活用事例が参考になります。

 

絶縁体の最新技術動向と将来展望

絶縁体 一覧における次世代高機能材料の開発動向

現在、より高性能な絶縁材料の開発が活発に行われています。高誘電率絶縁材料(high-k dielectric)は、より小さなデバイスサイズを実現しながら優れた絶縁性能を維持することを可能にし、半導体産業に革新をもたらしています。これらの新素材は、従来のシリコン酸化物よりも数倍から数十倍高い誘電率を持ちながら、低いリーク電流を実現しています。

 

トポロジカル絶縁体という新しい概念の材料も注目されています。これは表面では電気を流す特異な性質を持ちながら、内部では絶縁体として機能する材料であり、将来の量子デバイスやスピントロニクス応用での活躍が期待されています。

 

ポリイミド(PI)やポリアミドイミド(PAI)などのスーパーエンプラ(高機能プラスチック)も、より過酷な環境に対応する選択肢として注目を集めています。これらの材料は300℃を超える高温でも性能を維持し、航空宇宙産業や自動車電動化での採用が急速に進んでいます。

 

絶縁体 一覧と環境対応・サステナビリティの新展開

従来の有機絶縁材料の中には、環境への悪影響が懸念されるものもあります。ポリ塩化ビニル(PVC)は欧州連合の環境規制により、代替素材への置き換えが進んでいます。石綿を含む絶縁材料も、かつては広く使われていましたが、健康被害のリスクにより使用が制限されています。

 

バイオベース絶縁材料の開発も進んでおり、植物由来の樹脂を使用した新しい絶縁体が開発されています。これらの材料は、従来の石油系材料と比べて環境負荷が低く、サステナビリティの観点から注目されています。

 

リサイクル性に優れた絶縁材料の開発も重要なテーマです。使用済み電子機器から回収された絶縁材料を、新しい製品の材料として再利用する試みが進められており、循環型経済への転換が期待されています。

 

絶縁体 一覧における電動車両と再生可能エネルギーへの対応

電動自動車の普及に伴い、より高温・高電圧環境に対応できる絶縁体の需要が急速に増加しています。モータコイルの絶縁には、従来の有機材料では対応できない、新しいセラミック複合材料が採用され始めています。

 

パワーエレクトロニクス機器(パワーコンディショナーなど)では、スイッチング周波数がkHz~MHzの超高周波領域に達しており、従来の絶縁材料では熱を持ちすぎて対応できません。新しい低誘電正接材料の開発が進み、これらの高周波環境での性能維持が実現しつつあります。

 

太陽光発電システムの各種インバーターやDC-DCコンバーターでも、同様の高周波・高温対応絶縁材料が求められています。これらの要求に対応した新材料の開発こそが、再生可能エネルギー社会への移行を支える重要な技術基盤となっています。

 

 


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