名古屋の老舗酒屋「吉田屋」と、九谷焼の伝統画風「吉田屋手」。この2つの「吉田屋」を知ると、日本酒と陶器への理解がまるごと変わります。
九谷焼の「吉田屋」という名前に親しんでいる陶器好きの方でも、名古屋東区に同じ名を持つ老舗酒屋が存在することを知る人は、意外と少ないかもしれません。名古屋市東区東外堀町17、名古屋城の外堀に面した場所に構える酒屋「吉田屋」は、大正6年(1917年)の創業。2026年現在で実に109年の歴史を刻んでいます。
創業当初から一般小売と飲食店への業務用配達を両立してきたこの店は、長い歳月をかけて蔵元やメーカーとの信頼関係を積み上げてきました。その結果として、現在では日本酒・焼酎・ワイン・ウイスキー・リキュールなど、約1万点の銘酒が店内に並んでいます。1万点という数はイメージしにくいかもしれませんが、コンビニ1店舗の全商品数がおよそ3,000点程度とされますから、その3倍以上の品数が酒だけで揃っているということになります。
特に注目すべきは、店主がフランスのボルドー大学で醸造を実際に学んだ経歴を持つ点です。ボルドー大学の醸造学は世界的に権威があり、修了者はソムリエや醸造家として一流の場で活躍しています。その店主が独自のルートで試飲を重ね、直接フランスへ渡航して直輸入するワインは、国内の一般流通ルートとは切り離されたものも含まれています。
つまり吉田屋ということです。
地下鉄名城線「市役所駅」から徒歩約8分、名鉄「東大手駅」から徒歩約5分というアクセスにもかかわらず、入手困難なプレミア日本酒の抽選会を毎年開催するなど、酒好きには聖地のような存在として知られています。2025年3月の108周年創業祭では「十四代が当たる抽選会」を実施し、名古屋の日本酒ファンの間で大きな話題となりました。これは使えそうです。
営業時間は9:00〜21:00、日曜・祝日定休(12月は無休)で、オンラインショップも展開。手に入りにくいプレミア品に出合えるかもしれない、名古屋随一の酒専門店です。
名古屋の吉田屋に関する公式情報はこちらから確認できます。
陶器・磁器に興味を持つ方なら「吉田屋手(よしだやて)」「吉田屋手風」という言葉を一度は耳にしたことがあるでしょう。これは九谷焼における重要な伝統画風のひとつで、江戸時代後期に石川県(当時・加賀藩)で操業した「吉田屋窯」に由来します。
この窯を開いたのは加賀の豪商・豊田伝右衛門です。1824年(文政7年)、彼は古九谷(江戸初期に一度途絶えた幻の九谷焼)の再現を目指して九谷村に窯を築きました。古九谷とは、鮮やかな色彩と豪快なデザインで知られる九谷焼の源流で、その廃絶後に「復活させたい」と情熱を持った豪商が手がけた窯が吉田屋窯です。意外ですね。
吉田屋窯の最大の特徴は、赤を一切使わないことです。青・緑・黄・紫・紺青の四彩で器の全体を塗り埋める「青手(あおて)」の作風を持ち、そのため「青九谷」とも呼ばれています。九谷焼というと鮮やかな赤絵のイメージが強い方も多いと思いますが、吉田屋手はまったく異なる深みのある青の世界観を持っています。
また、厚く盛り上げた盛絵具が器に立体感を与え、草花・山水といった自然モチーフを豪快かつ精密な筆致で描くのも特徴です。吉田屋窯は開窯からわずか7年ほどで閉窯されましたが、その影響力は甚大でした。
ここで名古屋の酒屋「吉田屋」との接点が生まれます。日本酒や銘酒を愛する人は、その酒器にも必然的に関心を持ちます。吉田屋手の酒器——ぐい呑みや盃、徳利——は、重厚な色彩と立体感が日本酒の晩酌の場を豊かに演出してくれるものとして、陶器好きの酒好きから特に高い評価を受けています。九谷焼の吉田屋手は磁器ですが、その絵付けの美しさは陶器愛好家の審美眼にも十分に刺さる存在です。
九谷焼の吉田屋手を使った酒器には、ぐい呑み・お猪口・盃・徳利など多様な種類があります。どれを選ぶかで日本酒の味わいは実際に変わります。これが基本です。
まずぐい呑みは、お猪口より一回り大きい酒器で、二口・三口とぐいぐい飲める容量が特徴です。口径が広いぶん日本酒の香りが広がりやすく、吟醸香を楽しみたい銘柄(例えば名古屋の「醸し人九平次」など)との相性が良いとされます。吉田屋手のぐい呑みは、器全体に塗り込められた重厚な青の絵付けが手の中に収まる美しさを持ち、コレクターにも人気です。ヤフオクでの吉田屋九谷焼の直近120日の平均落札価格は約1万2,825円と、一般的な九谷焼(同期間の平均約5,522円)の倍以上の相場を示しています。
次にお猪口は、一口で飲み干せる小さな器で、日本酒の温度変化による味の変化が起きにくい点がポイントです。キリッと冷酒を楽しむ場面や、繊細な辛口の日本酒を純粋に味わいたい場合に向いています。
そして盃(さかずき)は、小皿のような浅く広い形状を持つ酒器で、日本酒の香りが最もダイレクトに広がります。結婚式の三三九度や正月のお屠蘇に使われるイメージが強いですが、吉田屋手の盃は普段の晩酌でも使えるギフトとして人気があります。箔一の「吉田屋盃」6種セット(6,600円)はオンラインでも入手しやすく、贈り物の定番になっています。
徳利(注器)については、口が狭くひょうたん型のものを選ぶと注いだときの音がとくりとくりと鳴り、燗酒の風情が増します。吉田屋手風の徳利は、器全体の絵付けがそのまま食卓の飾りになるため、飾りと実用品の両立を求める陶器好きに特に響く選択肢です。
素材の視点で補足すると、九谷焼は磁器(石を原料とした白くなめらかな素材)に分類されます。陶器(粘土原料でザラつきのある素材)と異なり、磁器は熱伝導がやや高く、口当たりが陶器よりもすっきりとした印象を与えます。燗酒よりも冷酒・常温向きとも言えますが、これは一般論にすぎません。実際に吉田屋手の器で飲むと、重みある色彩が五感全体を豊かにしてくれるので、温度よりも「その器で飲む」体験そのものに価値があります。
名古屋の吉田屋で購入したお酒を、九谷焼の吉田屋手の酒器で飲む。この組み合わせは、「吉田屋」という名の偶然の一致を超えて、日本酒と陶器という2つの日本文化を同時に深く味わう体験になります。これは使えそうです。
具体的な組み合わせ例を考えてみましょう。名古屋の吉田屋では日本酒・ワイン・ウイスキーなど約1万点が揃いますが、陶器好きが酒器とセットで楽しむなら日本酒(純米吟醸・純米大吟醸)が最もフィットします。
たとえば愛知県の地酒「醸し人九平次」は、フランスのパリ三ツ星レストランでもオンリストされるほどの高い評価を得た純米大吟醸系の銘柄で、フルーティで繊細な香りが特徴です。吉田屋手の口径が広めのぐい呑みに注げば、その吟醸香が器の中でゆっくりと広がります。器の深みある青の絵付けが、透明感のある日本酒の色を際立たせ、視覚的にも楽しい一杯になります。
一方、しっかりした旨みの純米酒や燗酒を楽しみたい場合は、吉田屋手の徳利とお猪口のセットを使うと、絵付けの重厚感と酒の厚みが調和します。吉田屋手の晩酌酒器セット(徳利2本+ぐい呑み多数)は、楽天などで1万1,000〜1万2,100円(税込)程度から入手可能です。
陶器好きの視点でもうひとつ踏み込むと、吉田屋手の器はコレクション性が非常に高く、ヤフーオークションやメルカリでは骨董品・作家作品を含むと希少なものが数万円以上で取引される場合もあります。普段使いの現代九谷焼の吉田屋手から入門して、徐々に古作や作家品へとコレクションを広げていくルートを楽しめます。これが条件です。
また、名古屋の吉田屋は宅配サービスとオンラインショップも展開しているため、遠方からでも銘酒を取り寄せ、手元の吉田屋手の酒器で飲む、という楽しみ方が実現できます。
これは検索上位ではあまり語られない独自の視点ですが、陶器好きが酒器から入って酒の世界を深めるサイクルは、逆の「酒好きが器を覚える」サイクルよりも圧倒的にリッチな体験をもたらす可能性があります。
陶器・磁器への興味がある方はすでに「素材の違い」「釉薬の効果」「焼成温度による質感の差」といった知識を持っています。この知識は、酒器選びにそのまま応用できます。たとえば磁器製の九谷焼吉田屋手のぐい呑みは、石を原料とする磁器特有の滑らかで密な素地を持つため、熱伝導が陶器より速く、冷たい冷酒がより長くひんやりと感じられます。
一方、同じく酒器として使われる信楽焼や萩焼などの陶器(粘土原料でザラつきのある素地)は、保温性が高く、燗酒の温もりが手にじんわりと伝わります。陶器の微細な気孔が酒の成分をわずかに吸収し、長く使うほど器自体が「育つ」という独特の変化も楽しめます。こういった素材の理解は陶器好きにとっては自然に身についている知識です。
名古屋の吉田屋で手に入るお酒のスタイル(冷酒向きのフルーティ系、燗映えする旨み系など)を、手持ちの酒器の素材や形状と照らし合わせて選ぶ行為は、陶器好きならではの「飲む前から楽しむ」実践に直結します。吉田屋の店頭やオンラインショップで銘酒を選ぶとき、「この酒は吉田屋手のぐい呑みで飲むべきか、燗酒向きの陶器の徳利で出すべきか」と考えるだけで、その日の晩酌が一段深いものになるはずです。
さらに、名古屋の吉田屋では飲食店への業務用配達も行っており、2,367店以上の飲食店をサポートしています。これはプロの目線でも評価されている酒屋であることの証です。陶器好きが趣味の域で酒器と酒を探求するとき、プロが選ぶ基準を参考にできる酒屋を持つのは大きな強みになります。
つまり「器を知る→酒を選ぶ→また器が欲しくなる」というサイクルです。
九谷焼吉田屋窯の歴史と作風をさらに詳しく知りたい方には、石川県加賀市にある「加賀 伝統工芸村ゆのくにの森」がおすすめです。古九谷から吉田屋窯・松山窯・宮本屋窯の再興九谷、近代・現代作家の作品まで幅広く展示されており、吉田屋手の作風を実物で確認できます。