リン酸アルミニウム化学式と鉱物ベルリナイト性質用途製法

リン酸アルミニウムの化学式AlPO₄の詳細と鉱物ベルリナイトの結晶構造、工業用途から製法まで、鉱石に興味がある人に向けて全方位で解説します。希少鉱物としての産出状況や、セラミックス・触媒への応用など、意外と知られていない情報も満載です。リン酸アルミニウムについてもっと知りたいと思いませんか?

リン酸アルミニウム化学式と基本性質

この記事の要点
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化学式と基本構造

AlPO₄で表される無機化合物で、石英と同構造の三方晶系を持つ

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鉱物ベルリナイト

天然にはベルリン石として産出する希少な結晶性リン酸塩鉱物

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工業用途と製法

セラミックス、触媒、表面処理剤として多彩な応用を持つ機能性材料

リン酸アルミニウムの化学式AlPO₄の構造

 

リン酸アルミニウムは化学式AlPO₄で表される無機化合物で、分子量は121.95g/molです。この化合物は、アルミニウムイオン(Al³⁺)とリン酸イオン(PO₄³⁻)が1:1のモル比で結合した構造を持ち、オルトリン酸アルミニウムとも呼ばれています。結晶構造は三方晶系に属し、石英(SiO₂)と非常によく似た骨格構造を形成することが特徴です。

 

参考)リン酸アルミニウム - Wikipedia

この化合物の密度は2.566 g/cm³、融点は1850℃と非常に高く、きわめて堅固な結晶性を示します。常温では白色無臭の粉末として存在し、通常の条件下では化学的に安定です。水にはほとんど溶けず(溶解度は20℃で6.92 g/L)、濃塩酸や濃硝酸にわずかに溶解する一方、アルカリに溶けてアルミン酸塩を生成する性質があります。

 

参考)リン酸アルミニウム

結晶形態としては、石英型、クリストバル石型、りんけい石型の3種類の安定な多形が知られており、それぞれ異なる温度条件で安定相を形成します。加熱により、AlPO₄は酸化アルミニウム(Al₂O₃)と五酸化二リン(P₄O₁₀)に分解する性質も持っています。

 

参考)リン酸アルミニウム(リンサンアルミニウム)とは? 意味や使い…

リン酸アルミニウム鉱物ベルリナイト結晶構造

天然に産出するリン酸アルミニウムは、ベルリナイト(Berlinite)という鉱物名で知られる希少な結晶性リン酸塩鉱物です。1868年にスウェーデンのVästanå鉱山で初めて発見され、化学者ニルス・ユーアン・ベリーン(1812-1891)にちなんで命名されました。

 

参考)ベルリナイト - Wikipedia

ベルリナイトの結晶構造は三方晶系で、石英と同様に鏡映異性体(光学異性体)を持つことが大きな特徴です。左手型では空間群P3₁21、右手型ではP3₂21に属し、どちらも軸に平行な二回対称軸を持ちます。左手型の格子定数はa = 4.9458 Å、c = 10.9526 Åであり、右手型はa = 4.9438 Å、c = 10.9498 Åで、既約単位格子あたり3つの組成式を含みます。

 

参考)ベルリナイトとは何? わかりやすく解説 Weblio辞書

純粋なベルリナイトは無色透明ですが、格子欠陥や多結晶形成により光が多面反射して白く見えることがあります。外来原子が含まれると、ピンクグレーから淡いピンク色を呈することもあります。紫外光下では暗赤色の蛍光を示すことが多く、モース硬度は約6.5と比較的硬い鉱物です。

日本では山口県の日の丸奈古鉱山で仮晶の状態で発見されており、2010年には福岡県平尾台の千仏鍾乳洞でも見つかっています。世界的にも産出は限られており、主に表面に半透明の光沢を持った繊維状、球晶状、粒状から大きな集合鉱石として産します。

 

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リン酸アルミニウム用途セラミックス触媒応用

リン酸アルミニウムは多様な工業用途に活用される重要な機能性材料です。最も代表的な用途の一つがアルミナセラミックスの原料で、優れた硬度、耐熱性、耐食性、熱伝導性を持ち、電気伝導性が低いという特性を活かして電気絶縁部品を中心とした様々な機械部品の材料として利用されています。

 

参考)りん酸アルミニウム

窯業分野では、ノンアルカリガラスの原料や特殊コーティング剤として重要な役割を果たしています。ノンアルカリガラスは液晶ディスプレイなどの精密電子機器に不可欠な材料であり、リン酸アルミニウムはその製造に欠かせない成分です。

化学工業においては、高温下で無水酢酸を製造する際の触媒として使用されます。この反応では、まずAlPO₄が加熱分解されてAl₂O₃とP₄O₁₀を生成し、五酸化二リンが酢酸と反応することで無水酢酸が得られます。また、結晶性リン酸アルミニウムはゼオライト構造を持つものがあり、固体触媒や吸着材として応用が研究されています。

 

参考)KAKEN href="https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-22K04826/" target="_blank">https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-22K04826/amp;mdash; 研究課題をさがす

金属表面処理の分野では、鋼板の化成処理に古くから使用されてきました。リン酸処理により金属素材の耐食性が向上し、塗装下地としての効果も発揮します。さび止め顔料としての用途もあり、防錆効果を提供します。

 

参考)リン酸処理とは?その種類と特徴を紹介

歯科医療では、歯科用セメントの成分として利用されており、酸や塩基への耐性だけでなく、圧力や張力への耐性も付与する効果があります。その他、化粧品や有機合成触媒など、幅広い分野で活用されています。

リン酸アルミニウム製法合成反応

リン酸アルミニウムの製法には複数の方法が確立されています。最も一般的な方法は、アルミニウム塩水溶液にリン酸塩水溶液を加えて沈殿を生成させ、それを熟成させる方法です。具体的には、水酸化アルミニウムを試薬一級リン酸液(85%)にAl₂O₃/P₂O₅=1/3のモル比で添加することで酸性リン酸アルミニウム水溶液を生成できます。

 

参考)https://nitech.repo.nii.ac.jp/record/2012/files/bnit1965_341.pdf

工業的な製造プロセスでは、アルミン酸ナトリウムとリン酸の反応も利用されます。この方法では、水酸化ナトリウム、イオン交換水、水酸化アルミニウムを混合してアルミニウム成分含有アルカリ性水溶液を調製し、これにリン酸を加えて反応させます。室温で24時間攪拌を続けて生成した沈殿を熟成させた後、吸引ろ過により沈殿をろ別し、イオン交換水で洗浄して105℃で乾燥させることで、白色粉体のリン酸アルミニウムが得られます。

 

参考)https://patents.google.com/patent/JP4392455B2/ja

得られる生成物には水和物と無水和物があり、二水和物(AlPO₄·2H₂O)と3.5水和物(AlPO₄·3.5H₂O)が知られています。二水和物を高温に加熱すると無水和物が得られます。無水和物の製造では、加熱温度や時間を調整することで、石英型、クリストバル石型、りんけい石型といった異なる結晶構造を得ることができます。

リン酸アルミニウムには、オルトリン酸アルミニウム(AlPO₄)の他に、リン酸二水素アルミニウム(トリス(リン酸二水素)アルミニウム、Al(H₂PO₄)₃)も知られています。Al(H₂PO₄)₃は無水和物と三水和物があり、水に可溶で、耐火物バインダー、表面処理剤、防炎剤などとして使用されます。

 

参考)https://japanese.alibaba.com/product-detail/Aluminium-Dihydrogen-Phosphate-Al-h2po4-3-1600975020806.html

リン酸二水素アルミニウム防炎剤耐火物特性

リン酸二水素アルミニウム(Al(H₂PO₄)₃)は、化学式Al₂O₃·3P₂O₅·6H₂Oで表される水溶性の酸性リン酸塩で、第一リン酸アルミニウムまたは酸性リン酸アルミニウムとも呼ばれています。この化合物は、リン酸と水酸化アルミニウムから生産され、AlPO₄とは異なる独特の性質と用途を持っています。

最も重要な特性は、加熱脱水による縮合反応と高温加熱による結晶転移によって硬化結合する性質です。この特性により、耐火物バインダーや鋳物砂用バインダーとして広く利用されています。耐火コンクリートや耐火レンガの製造において、Al(H₂PO₄)₃は粉体同士を強固に結合させる接着剤の役割を果たし、高温下でも構造を維持します。

防炎剤としての用途も重要で、鉄骨構造物への耐火性接着被覆材の主成分として使用されます。アルカノールアミンで錯体化し中和した第一リン酸アルミニウムは、鉄骨構造物への接着性に優れ、錆の発生を抑える効果もあります。火災時には耐火性を向上させ、断熱性、吸音性、保温性も提供します。

 

参考)https://patents.google.com/patent/JPH0578160A/ja

金属表面処理剤としても重要な役割を持ち、自動車、コンデンサー、半導体などの製品において金属表面の保護と機能性向上に貢献しています。酸化アルミニウム(Al₂O₃)が39.0%以上、五酸化リン(P₂O₅)が53.0%以上という組成により、強熱減量8.0%以下という安定した性能を示します。

 

参考)https://www.sbj.or.jp/wp-content/uploads/file/sbj/9008/9008_tokushu_4.pdf

耐水性粉体の製造にも応用されており、例えば窒化アルミニウム(AlN)の表面にリン酸を塗布することで、表面にリン酸アルミニウム層を形成し、耐水性を向上させる技術が開発されています。このように、リン酸二水素アルミニウムは高温環境や過酷な条件下で機能を発揮する特殊な用途に適した材料として、様々な産業分野で重要な役割を担っています。

 

参考)https://shingi.jst.go.jp/pdf/2020/2020_hiroshima-soken_4.pdf

 

 


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