日本で販売される汝窯の8割は現代の復刻品です。
汝窯(じょよう)は、中国の北宋時代(960~1127年)にわずか20年間だけ作られた青磁の最高峰です。河南省汝州で宮廷専用の窯として運営されていました。
現存する真作は世界中で約67~70点しかありません。台北の国立故宮博物院に21点、北京の故宮博物院に17点、上海博物館に8点、イギリスのヴィクトリア&アルバート博物館に7点などが所蔵されています。日本では大阪市立東洋陶磁美術館が1点を所蔵しているだけです。
これほど希少な理由は製作期間の短さにあります。北宋朝廷が金に滅ぼされたことで、汝窯の技術も途絶えてしまったのです。
汝窯の最大の特徴は「雨過天青」と呼ばれる青色です。雨上がりの空の色を表現したこの淡い青緑色は、釉薬に微量の鉄分を含ませることで生まれます。表面には細かい貫入(ひび割れ模様)が入り、これが時間とともに茶色く変化していくのも魅力の一つです。
日本で汝窯が注目されるようになったのは室町時代からです。茶の湯の大成者である千利休も汝窯の美しさを高く評価していました。
江戸時代の大名茶人たちは、中国から渡ってきた汝窯の破片さえも貴重品として扱いました。茶碗の金継ぎ修理に使われるほど、わずかな破片にも価値があったのです。
明治時代以降、日本の陶芸家たちは汝窯の再現に挑戦し始めます。特に昭和期には、科学的な分析技術の進歩により、釉薬の成分や焼成温度の研究が進みました。
現在では日本国内でも汝窯の技法を学んだ陶芸家が復刻品を制作しています。ただし、宋代の真作と同じ土や材料は入手できないため、完全な再現は不可能です。それでも日本の技術力により、かなり近い質感の作品が生み出されています。
日本で汝窯を購入する場合、現代の復刻品が対象になります。価格は制作地や技法により大きく異なるため、事前の情報収集が必要です。
中国製の汝窯復刻品
中国の景徳鎮や汝州で作られた復刻品が主流です。
価格帯は以下の通りです。
量産品はオンラインショップでも購入できます。ただし、写真と実物の色味が異なる場合があるので注意が必要です。
日本の陶芸家による作品
日本人陶芸家が汝窯の技法を研究して制作した作品もあります。
こちらは10万円以上が相場です。
作家の知名度や技術レベルにより、100万円を超える作品も存在します。これは宋代の技法を現代に蘇らせる難しさの表れですね。
購入先の選び方
信頼できる購入先を選ぶポイントは3つあります。第一に、産地や作家名が明記されているか確認します。第二に、返品・交換の条件を事前にチェックします。第三に、実店舗がある業者を優先することです。
専門店や百貨店の陶器売り場なら、実物を見て触れてから購入できます。オンラインで購入する場合は、口コミや評価を必ず確認しましょう。
日本国内で宋代の汝窯真作を見られる場所は限られています。購入前に本物を見ておくと、復刻品を選ぶ際の判断基準になります。
大阪市立東洋陶磁美術館
日本で唯一、汝窯の真作を常設展示している美術館です。「青磁水仙盆」という作品が所蔵されています。
高さ9cm、幅16cmほどの小さな器ですが、雨過天青の色が完璧に再現されています。入館料は500円で、年間を通じて鑑賞可能です。
館内では汝窯の制作技法や歴史についての詳しい解説もあります。実物を見ることで、釉薬の透明感や貫入の美しさを体感できます。
東京国立博物館・特別展
定期的に中国陶磁の特別展が開催され、海外から汝窯の真作が貸し出されることがあります。過去には台北故宮博物院の所蔵品が展示されました。
特別展の情報は公式サイトで確認できます。開催頻度は数年に一度なので、機会を逃さないようにチェックが必要です。
京都国立博物館
中国陶磁のコレクションが充実しており、特別展で汝窯関連の展示が行われることがあります。常設展示ではありませんが、年に数回の企画展をチェックする価値があります。
真作を見る最大のメリットは、復刻品との違いを自分の目で確認できることです。釉薬の発色、貫入の入り方、器の重さなど、写真では伝わらない情報を得られます。
復刻品を購入する際は、いくつかの落とし穴に注意が必要です。特に初めて汝窯を購入する方は、以下のポイントを押さえておきましょう。
産地の確認は必須です
「汝窯」という名前だけで判断すると失敗します。中国の汝州で作られたものか、景徳鎮で作られたものか、それとも日本の陶芸家の作品かで価値が変わります。
汝州産は本家の土地で作られているため、比較的高価です。景徳鎮産は量産体制が整っており、価格も手頃ですが品質にばらつきがあります。商品説明に産地が書かれていない場合は、販売者に直接確認してください。
色味の個体差を理解する
汝窯の特徴である青色は、焼成温度や窯の中の位置によって微妙に変化します。同じ作家の同じシリーズでも、一つ一つ色が異なります。
オンラインで購入する場合、画面で見た色と実物が違うことはよくあります。これは窯変(ようへん)という現象で、不良品ではありません。色味の違いも個性として楽しむ姿勢が大切ですね。
使用目的を明確にする
鑑賞用なのか、実際に茶器として使うのかで選ぶべき品が変わります。
鑑賞用なら貫入の美しさや形を重視します。
実用なら、食洗機対応か、電子レンジ使用可能かを確認します。
高価な作品ほど実用には向きません。貫入に茶渋が入り込むと、元の美しさを保つのが難しくなります。実用するなら1万円以下の量産品から始めるのが賢明です。
作家物の真贋リスク
有名作家の作品として販売されているものの中には、偽物も存在します。特にオークションサイトや個人間取引では注意が必要です。
作家物を購入するなら、作家本人のサイトや提携ギャラリー、信頼できる専門店を利用してください。
証明書や箱書きの有無も確認ポイントです。
高額な作品を購入する前に、陶芸に詳しい知人や専門家に相談するのも一つの方法です。日本陶磁協会などの団体に問い合わせることもできます。