緑泥石は低温の変成環境で最も典型的に生成される鉱物です。特に三波川帯などの低温高圧型変成帯では、元の岩石の有色鉱物(輝石や角閃石など)が圧縮変成を受けることで、緑泥石が晶出します。この過程で、緑泥石は白雲母(セリサイト)とともに片理を形成し、結晶が板状・鱗状に配列されます。
変成度が最も低い「緑泥石帯」では、泥質岩が変成を受けることで、微細な緑泥石結晶が新たに形成されます。この環境では、温度が300~400℃程度に留まるため、より低温での緑泥石生成が進行します。顕微鏡下では、緑泥石が微細なウロコ状結晶として認識され、著しい剥離性を示す結晶片岩が形成されます。
火成岩中の緑泥石は、主に熱水変質作用により生成されます。鉄やマグネシウムに富む輝石や角閃石が熱水に接すると、これらの有色鉱物は緑泥石へと変質します。この変質過程は、鉱脈中の脈石緑泥石と母岩の変質帯の緑泥石とで異なる性質を示す傾向があります。
熱水鉱脈中の脈石緑泥石は、600℃以上の温度環境では他の鉱物に分解してしまいます。一方、より低温の環境での熱水変質では、緑泥石が安定に存在でき、長期にわたって保存されます。含銅硫化鉄鉱床などでは、母岩の変質帯における緑泥石が鉄に乏しく、FeMg質となる傾向があり、この化学組成の違いが鉱床の成因を理解する重要な手がかりとなります。
堆積岩の続成作用(ダイアジェネシス)では、埋没深度の増加と温度上昇に伴い、緑泥石が形成されます。この過程は特にイライト/スメクタイト混合層鉱物から、より安定な緑泥石への相転移を伴います。続成作用における3入面体型緑泥石/スメクタイト混合層鉱物の生成と変化は、古い地層の熱履歴を復元する重要な指標となっています。
堆積岩中での緑泥石でき方は、温度勾配や圧力条件、間隙流体の化学組成に強く依存します。浅い埋没環境では微粒状の緑泥石が広く分布し、より深い環境では結晶が成長して顕著な緑泥石鉱物が形成されます。
緑泥石のでき方を理解するうえで、結晶構造の違いと多形の存在が極めて重要です。緑泥石の基本的な結晶構造は、滑石の構造をつくっている層とブルース石の構造をつくっている層が積み重なることで形成されます。この層の重なり方の違いにより、多くの多形が生じます。
合成実験の結果から、7Åのセプテ緑泥石は相対的に低い温度と圧力条件で生成し、14Å構造の緑泥石はより高温・高圧の条件下で生成する傾向があることが明らかになっています。この多形の違いは、原岩となった元素組成や生成環境の物理化学条件を直接反映するため、古い岩石の層序学的な位置付けや変成履歴の解釈に活用されます。
興味深いことに、緑泥石のでき方には、単純な直線的な反応パスばかりでなく、複雑な中間段階を経由するプロセスが存在します。例えば、バーミキュラー状緑泥石は特異な産状を示しており、蛇紋岩中では規則型緑泥石/バーミキュライト混合層鉱物として産出します。このような複雑な混合層鉱物は、単純な固溶体反応では説明できない、緑泥石への段階的な変成・変質プロセスを示唆しています。
また、緑泥石のでき方は元素置換の度合いに応じて分類される複数の種類(シャモス石、クリノクロア、ペナント石、須藤石など)を生み出しており、各種の緑泥石は特定の生成環境や化学条件を示す指標鉱物として機能します。マグネシウムと鉄の置換比率が高いほど、より高酸化状態の環境での生成を示唆し、これが緑泥石の色調差(淡緑色から黒緑色まで)につながります。
緑泥石は岩石の熱履歴や変成経歴を記録する「タイムカプセル」としての重要性があります。地質学的な時間スケールにおいて、緑泥石がどのような環境でどのようにでき上がったかは、地下資源の探査や古環境の復元に直結しています。例えば、含銅鉱床の探査では、その周辺の変質帯における緑泥石の性質を詳細に調査することで、有効な探査指針を得られます。
さらに、緑泥石は超高圧変成岩やエクロジャイト(ザクロ石片岩)の形成された環境では、通常見られない環境を指す指標鉱物としても知られています。600℃を超えるような高温環境では緑泥石は分解してしまうという性質から逆に、緑泥石の存在は比較的低温での変成・変質プロセスが支配的であったことを示す傍証となります。
緑泥石のでき方を根本的に支配するのは、その複雑な固溶体反応です。基本的な化学組成 (Mg,Fe,Mn,Ni)~6-x-y~(Al,Fe³⁺,Cr,Ti)~y~□~x~(Si~4-x~Al~x~)O~10~(OH)~8~ は、蛇紋岩の組成 [Mg~3~(Si~2~O~5~)(OH)~4~] とアメサイトの組成 [(Mg~2~Al~2~)(SiAl)O~5~(OH)~4~] の端成分から理解されます。
Mg²⁺イオンがFe²⁺で置き換わる置換や、Mg~2~SiがAl・Alで置き換わる置換により、多種の緑泥石が生成されます。この置換メカニズムは、各生成環境における主要元素の供給量と酸化還元環境に直接依存しており、原岩の化学組成や変成圧力・温度を反映します。
前述の通り、この複雑な固溶体反応のため、名称としてシャモス石・クリノクロア・ペナント石など複数の鉱物名が付与されています。これらはそれぞれ特定の化学組成範囲と結晶系に対応し、緑泥石全体を総括的に示すグループ名が「緑泥石」となります。
緑泥石のでき方に関する詳細な研究は、岩石学的な実験和び微細構造分析により、日本の地質学界でも数十年にわたり蓄積されてきました。特に三波川変成帯の研究において、緑泥石が極めて重要な時間スケールマーカーとして活用されています。
緑泥石 - Wikipedia:緑泥石の基本的な化学組成、結晶系、産出地、古代の利用法(クロライト製品)について詳述
倉敷市立博物館:緑色片岩と緑泥石の産出例、三波川帯に関連する実地情報

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