面取りをしないと作品が破損しやすくなります。
面取りとは、陶芸作品の角や縁を削って丸みをつける技法のことです。板状の粘土から作る箱物や、ろくろ成形後の作品の高台部分など、鋭角になっている部分を意図的に処理します。
この作業が重要な理由は3つあります。第一に、鋭利な角は焼成時に欠けやすく、完成後も破損のリスクが高まります。第二に、角が鋭いままだと使用時に手を傷つける可能性があります。第三に、面取りをすることで作品に柔らかな印象が生まれ、視覚的な美しさが向上するのです。
特に箱物や板皿など、直線的な形状の作品では面取りの有無が仕上がりを大きく左右します。プロの陶芸家の作品を見ると、必ずといっていいほど丁寧な面取りが施されています。
これが基本です。
実は面取りには「糸面」「丸面」「角面」など複数の種類があり、作品の用途やデザインに応じて使い分けます。初心者のうちは基本となる丸面から練習するのがおすすめです。
面取りに使う基本的な道具は、カンナ、ナイフ、スポンジ、サンドペーパーの4種類です。
カンナは木工用のものとは異なり、陶芸専用のステンレス製や竹製のものを使います。刃先の角度が20~30度程度のものが一般的で、価格は1本800円から2,000円程度です。初心者には刃幅が2cm程度の小型カンナが扱いやすいでしょう。
ナイフは粘土が柔らかい段階での粗削りに使用します。陶芸用の切り出しナイフやワイヤーツールが便利で、1本500円程度から入手できます。刃先が鋭すぎると粘土を傷つけやすいため、適度な厚みのあるものを選んでください。
スポンジは仕上げ段階で表面を滑らかにするために必須です。目の細かい化粧用スポンジを水で湿らせて使うと、カンナの削り跡を美しく整えられます。
つまり水挽きと同じ原理です。
サンドペーパーは素焼き後の最終調整に使います。耐水ペーパーの400番から600番が適しており、ホームセンターで1枚100円程度で購入できます。
作業の段階ごとに道具を使い分けることで、効率的かつ美しい面取りが実現します。
まずは基本の4点を揃えましょう。
面取りのタイミングは粘土の硬さが重要です。生乾きの「半乾き」状態、つまり表面が白っぽくなり始めた段階が最適です。
手順は次の通りです。
まず作品を固定します。
ろくろの上やバット上で、動かないように安定させてください。次にカンナを持ち、刃を角に対して45度程度の角度で当てます。力を入れすぎず、一定の圧力で手前に引くように削ります。
削る深さは作品の厚みにもよりますが、一般的に1~2mm程度が目安です。1mm程度=クレジットカードの厚みくらいと覚えておくとわかりやすいでしょう。一度に深く削るのではなく、2~3回に分けて少しずつ削るのがコツです。
角を削り終えたら、湿らせたスポンジで表面を優しくなぞります。この工程で削り跡が消え、滑らかな曲面が完成します。スポンジは軽く絞った状態で使うのが基本です。
作品全体の角を均等に削ることも重要です。一部だけ削りすぎるとバランスが崩れて見えます。どういうことでしょうか?例えば箱物の場合、4つの角と底面の8箇所すべてを同じ深さで削る必要があります。
削りカスは作業中にこまめに取り除きましょう。放置すると粘土表面に傷をつける原因になります。
初心者が最も陥りやすい失敗は削りすぎです。特に板作りの作品では、厚みが均一でないことが多く、薄い部分を削りすぎて穴が開くケースがあります。実際、陶芸教室では初回の面取り作業で約3割の受講生が削りすぎによる失敗を経験するといわれています。
削りすぎを防ぐには、削る前に作品の厚みを確認することが必須です。指で軽く押して厚みを感じ取るか、針などで測定します。厚みが5mm以下の部分では特に慎重な作業が求められます。
粘土の乾燥状態にも注意が必要です。乾きすぎた状態で削ると、粉が出て表面がざらつきます。
逆に柔らかすぎると削った部分が歪みます。
意外ですね。
最適な硬さは、指で軽く押したときに少し跡が残る程度です。この状態なら削りカスが細かいリボン状になり、きれいに削れます。もし乾燥しすぎた場合は、霧吹きで表面を湿らせて30分ほど置くと作業しやすくなります。
カンナの角度も失敗の原因になります。角度が急すぎると粘土を削り取りすぎ、浅すぎると削れません。
刃を当てる角度は45度が原則です。
最初は分度器で確認しながら練習するのも有効でしょう。
力の入れ方も重要です。利き手だけに力を入れると削りが不均等になります。両手で道具を支え、体全体で安定させながら削ると均一に仕上がります。
面取り後の表面処理によって、作品の完成度が大きく変わります。スポンジ仕上げの段階では、水の量が重要です。
スポンジの水分が多すぎると粘土が溶けて表面が荒れます。
少なすぎると削り跡が残ります。
適切な水分量は、スポンジを握って数滴水が垂れる程度です。
これだけ覚えておけばOKです。
スポンジがけは円を描くようにではなく、削った方向に沿って直線的に動かします。円を描くと粘土の粒子が不均等に動いて、焼成後に表面がまだらになる可能性があります。
面取り部分と本体の境目は特に丁寧に処理してください。境目に段差が残ると、そこに釉薬が溜まって焼き上がりが不自然になります。スポンジで境目を軽くぼかすように撫でると、自然な曲線が生まれます。
素焼き後には必ずサンドペーパーで仕上げます。素焼き段階で小さな凸凹や削り残しが目立つことがあるからです。サンドペーパーは水をつけて使用し、力を入れず軽く撫でるように動かします。
この工程を省略すると、本焼き後に触り心地が悪くなります。特に口縁部分は唇が触れる場所なので、400番以上の細かいペーパーで丁寧に仕上げましょう。
削りカスはウエスや濡れた布でしっかり拭き取ります。残っていると釉薬の密着を妨げ、剥がれの原因になります。
厳しいところですね。
表面処理の最終段階では、作品全体を明るい場所でチェックします。光を当てると削り残しや凹凸が見えやすくなります。この確認作業で、プロレベルの仕上がりに近づけます。
陶芸技法の基礎 - 日本陶磁協会
面取りを含む基本技法の詳細な解説があります。写真付きで工程が確認できるため、初心者の方に特に参考になります。