磁性体一覧と種類の違いや強磁性体鉄コバルト反磁性体の特徴

磁性体にはどんな種類があり、どのような特性を持つのでしょうか。強磁性体・常磁性体・反磁性体の違いから、鉄やコバルトなどの具体的な磁性材料、産業や医療での応用例まで、鉱石や磁石に興味ある方向けに詳しく解説します。実際の製品への使われ方を知りたくありませんか?

磁性体一覧と種類

この記事で分かる磁性体の基礎知識
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磁性体の3つの分類

強磁性体・常磁性体・反磁性体の違いと特徴を詳しく解説

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代表的な磁性材料

鉄・コバルト・ニッケルなどの強磁性元素と各種磁石の特性

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産業・医療での応用

モーター、MRI、磁気記録など幅広い用途での活用例

磁性体の強磁性体と常磁性体と反磁性体の違い

 

磁性体は、磁性を帯びる物質の総称で、磁場に対する反応の違いによって大きく3つの種類に分類されます。強磁性体は外部磁場がなくても自発的に磁化され、磁石に強く引き寄せられる物質です。一方、常磁性体は外部磁場の中で同じ方向に弱く磁化されますが、磁力が非常に弱いため磁石にはほとんど引き寄せられません。

 

参考)磁石ナビ

反磁性体は外部磁場と逆方向に弱く磁化される特殊な性質を持ち、磁石から離れる方向に動きます。この反磁性は電子の周回軌道による磁界が原因で、レンツの法則により外部磁界と逆方向の磁界が発生することで生じます。超伝導体では反磁性効果が極めて強く現れ、磁石と反発して空中に浮く現象が観察されます。

 

参考)強磁性、常磁性、反磁性とは?それぞれの違いをわかりやすく解説…

常磁性体では電子スピンの偏りによる磁気モーメントが存在しますが、強磁性体と比べて電子スピンの偏りの総量が少なく、熱ゆらぎによってスピンの方向がバラバラに分散するため、巨視的には非常に弱い磁気特性しか示しません。磁場を取り除くと磁化が消失する点も強磁性体との大きな違いです。

 

参考)http://www.chem.utsunomiya-u.ac.jp/lab/mukizai/jiseitai.pdf

磁性体の強磁性体における鉄とコバルトとニッケルの一覧

室温で強磁性の性質を持つ元素は、元素周期表の第4周期に位置する遷移金属である鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)の3種類のみです。これらの元素は磁性材料の基本構成要素であり、ほとんどの磁性材料にはこれらのいずれかが含まれています。鉄は最もよく知られている強磁性材料で、高い磁性を持ち磁化しやすく、建設や製造業で広く使用されています。

 

参考)磁性金属の一覧

コバルトは白銀色の金属で、単体で用いることは少ないものの、耐熱特性に優れ丈夫な酸化被膜を形成し摩耗にも強いため、さまざまな合金材料として使用されます。コバルトの結晶磁気異方性定数は約5×10⁵ J/m³と非常に高く、キュリー温度は1115℃に達します。ニッケルは銀白色の金属で、面心立方構造(FCC)を持ち相変態がないため、磁気特性が安定している点が特徴です。

 

参考)《強磁性3元素》鉄(Fe),コバルト(Co), ニッケル(N…

希土類元素の中では、ガドリニウム(Gd)が18℃以下で強磁性を示すことが知られています。また、ルテニウムは正方晶の結晶構造で常温において強磁性を示すことが確認されています。これらの元素の磁気モーメントは不対電子数に依存し、鉄は4μB、コバルトは3μB、ニッケルは2μBの理論値を持ちます。

 

参考)強磁性 - Wikipedia

磁性体の反強磁性体とフェリ磁性体の構造と特徴

反強磁性体は、隣り合う原子の磁気モーメントが互いに反対方向を向いて整列し、全体として磁化を持たない物質です。反強磁性体中の隣り合う磁気モーメントは、隣接する磁気モーメントの相互作用による有効磁場周りを互いに歳差運動し、この有効磁場が数百テスラと大きいため、歳差運動の周波数は数テラヘルツ(THz)に達します。

 

参考)反強磁性・フェリ磁性体の磁化ダイナミクス

フェリ磁性体は、大きさの異なる磁気モーメントが互いに反対方向を向く(反強磁性体のような磁化結合をもつ)ため、隣り合う磁気モーメントの差分として全体の磁化を持つ点が特徴です。フェリ磁性体は強磁性体の磁化のように有効磁場周りを数十GHzの周波数で歳差運動する一方、反強磁性体と同様に隣接する磁気モーメントの交換相互作用による数THzの歳差運動も存在します。

 

参考)フェリ磁性体における磁壁移動に対するスピン移行トルク効果を解…

補償フェリ磁性体は、磁気モーメントの大きさが等しく打ち消しあって磁化がゼロになる特殊なフェリ磁性体です。このタイプは磁化がゼロであるにも関わらず電子バンド構造にスピン分裂があり、外部へ磁場が発生しないため高密度集積に有利でスピンを活用するデバイスへの応用が期待されています。従来は合金系などの無機化合物での実現可能性が議論されてきましたが、有機化合物特有の格子構造を用いることでも実現できることが示されています。

 

参考)スピン分裂を示す新しいタイプの反強磁性体を発見 ——反強磁性…

磁性体の硬磁性材料と軟磁性材料の用途の違い

軟磁性材料は磁場に対して敏感に磁束密度が変わる物質で、飽和磁束密度と透磁率が高く、保磁力と残留磁束密度が低いことが求められます。透磁率が高いことで磁場に俊敏に応答し、高い飽和密度を小さい磁場で出力できます。磁場を切った際には速やかに「ただの金属」に戻ることが要求され、保磁力と残留磁束密度は可能な限り抑えられます。

 

参考)硬磁性と軟磁性:硬派な磁石と軟派な磁石 - はじめよう固体の…

軟磁性材料はモータやトランス、電源、磁気ヘッドなど高速で磁化を反転する必要のあるデバイスに用いられます。代表的な軟磁性材料には、鉄、けい素鉄、パーマロイ、Fe-Si-Al、パーメンジュール、電磁ステンレス、アモルファス、ナノ結晶などがあります。アモルファス材料は電気抵抗率が高いことから、高周波域での使用に向いています。

 

参考)磁性材料とは

硬磁性材料は磁場に対して「硬い」振る舞いをする物質で、飽和磁束密度、保磁力、残留磁束密度が全て高いことが求められます。保磁力が高いので、ちょっとした磁場では特性が変わらず、加えて残留磁束密度が高いのでゼロ磁場でも高い磁化を持ちます。特に磁束密度と保磁力の積をエネルギー積(BHmax)と呼び、硬磁性体の性能を示す重要な値です。代表的な硬磁性材料には、アルニコ磁石、フェライト磁石、サマリウムコバルト磁石、ネオジム鉄ボロン磁石、サマリウム鉄窒素磁石などがあります。

 

参考)https://www.jstage.jst.go.jp/article/sptj1978/29/1/29_1_32/_pdf

磁性体のネオジム磁石とフェライト磁石とアルニコ磁石の比較

ネオジム磁石は、ネオジム(Nd)・鉄(Fe)・ボロン(B)を主成分とした粉末冶金による焼結磁石で、現在ある材質の中で最も強力な磁石です。フェライト磁石の10倍以上の磁力を持ち、小さなサイズで大きな磁力を発揮できる点が最大の特徴です。しかし、キュリー温度が310~340℃と低く高温に弱い上、非常に錆びやすいという欠点があります。

 

参考)https://analyzing-testing.netzsch.com/ja/nouhau/yong-yu-ji/kiyuriwen-du

フェライト磁石は汎用性が高く、現在最も主流の磁石として幅広い用途で使用されています。磁気特性が安定しているため、粉末状の原材料を成型し焼き固めて(焼結)製造されます。フェライト磁石のキュリー温度は450℃で、ネオジム磁石よりも高温環境に適していますが、磁力の強さではネオジム磁石に劣ります。

 

参考)磁石ナビ

アルニコ磁石は、アルミニウム(Al)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)と鉄(Fe)を主成分とする鋳造磁石です。高磁束密度、磁性の温度依存性が小さい、低温減磁・熱減磁が起こりにくい、強度が非常に高いなど極めて安定した性能を持ちます。キュリー温度は850℃と非常に高く、計器用を中心に根強い需要があります。コバルト、ニッケルの供給問題などから価格の安いフェライト磁石にシェアを譲りつつありますが、高温安定性が求められる用途では今でも重要な材料です。

 

参考)磁石(マグネット)の材質の種類について #custom_fi…

磁性体の産業応用と医療用途における活用例

磁性材料は自動車産業において電気自動車(EV)のモーターやハイブリッド車(HEV)の駆動システムなどに広く使用されています。希土類磁石の強力な磁力と小型化の特性により、エネルギー効率の向上と高性能化が実現されています。現代の家電製品には非常に多くのモーターが使用されており、その多くが磁性材料を採用しています。特にハードディスクドライブやスマートフォンのカメラのオートフォーカス機構などにおいて重要な役割を果たしています。

 

参考)希土類磁石加工における最先端技術とその応用事例

医療分野では、磁性材料が磁気共鳴イメージング(MRI)のスキャナーや補聴器、さらには新しい治療法において重要な部品として使用されています。磁性流体はMRIの造影剤として医療分野で応用されており、スピーカーやスマートフォンの振動デバイスにも使用されています。磁性ナノ粒子は交流磁場をかけることで発熱する性質があるため、がん組織内に蓄積させた磁性ナノ粒子に体外から交流磁場を印加して発熱させ、がん細胞を非侵襲的に加温死滅させる治療法、磁性流体ハイパーサーミアが考案されています。

 

参考)磁性流体

半導体製造装置の部品にも磁性流体が使用されており、半導体を作る過程で重要な真空環境において動力を伝える部品(真空シール)の中でシール材の役割を果たしています。歯科技術においては、磁石を用いた小型アッタチメント方式が注目され、耐食性・耐久性とともに審美性の優れた白金系磁石膜の応用が一部実用化されています。Fe-PtならびにCo-Ptの白金系厚膜は、歯科用アッタチメントや医療用マイクロマシン、磁気記録用磁性膜として実用化の可能性を持っています。

 

参考)https://www.ipc.nagasaki-u.ac.jp/data/seeds/44_17040.pdf

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