磁性材料メーカー選びで重要な用途や製造技術と品質管理

磁性材料は電気自動車や電子機器など多くの産業に不可欠な素材です。主要メーカーの特徴や用途、製造技術から、最適な材料選定のポイントまで解説します。あなたは適切な磁性材料メーカーを選べていますか?

磁性材料メーカーの特徴と用途

磁性材料メーカーの主要な特徴
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国内主要メーカー

TDK、プロテリアル、信越化学工業、大同特殊鋼などが高性能磁性材料を提供

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多様な製品ライン

軟磁性材料から硬磁性材料まで用途に応じた製品を製造

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先端技術開発

電気自動車やエレクトロニクス分野での高性能化に貢献

磁性材料メーカー業界の主要企業

日本国内には世界トップクラスの磁性材料メーカーが集積しています。TDK株式会社、株式会社プロテリアル(旧日立金属)、信越化学工業株式会社、大同特殊鋼株式会社が主要メーカーとして知られており、特にネオジム焼結磁石の生産では世界市場で重要な地位を占めています。これらのメーカーは物質・材料研究機構(NIMS)と共同で「磁石マテリアルズオープンプラットフォーム(MOP)」を設立し、企業の壁を超えた技術開発に取り組んでいます。

 

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国内市場においては、城北伸鉄株式会社が純鉄系軟磁性材『ELCH2(S)』を、株式会社エムアンドシーが軟磁性材『カルボニル鉄粉』を提供しており、多様な用途に対応した製品ラインナップが揃っています。ネオジム磁石に特化したメーカーとしては、株式会社マグファイン、ヴァックマグネティックジャパン株式会社、株式会社下西製作所などが注目されており、2025年10月の注目ランキングでも上位に位置しています。

 

参考)磁性材料 - メーカー・企業16社の製品一覧とランキング

海外企業も含めた市場では、中国企業が生産量で優位に立っている一方、日本企業は高品質・高性能な製品で差別化を図っています。Arnold Magnetic Technologies、Daido Steel、Proterial、Shin-Etsu Chemicalなどが世界的な磁性材料企業として認知されており、技術革新と品質管理で業界をリードしています。

 

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磁性材料メーカーが提供する主な製品種類

磁性材料は大きく分けて硬磁性材料と軟磁性材料に分類され、それぞれ異なる特性と用途を持っています。硬磁性材料には永久磁石として機能するネオジム鉄ボロン磁石、サマリウムコバルト磁石、フェライト磁石、アルニコ磁石などがあります。ネオジム磁石は最も強力な永久磁石として電気自動車(EV)のモーター、スピーカー、医療機器などに広く使用されています。

 

参考)磁性材料の種類と磁石の特性 【通販モノタロウ】

軟磁性材料は磁場をかけると磁化されやすく、磁場を取り去ると元に戻りやすい特性を持ち、トランス、モーター、インダクターなどの電気機器の磁心や磁気ヨークに用いられます。電磁純鉄、けい素鉄、パーマロイ、フェライト、アモルファス合金、ナノ結晶軟磁性合金などがあり、用途に応じて最適な材料が選択されています。

 

参考)必須電子材料:第7回 磁性材料

近年注目されているのが軟磁性複合材料(SMC)で、富士フイルムは磁性材料をはじめとする多様な技術を融合し、kHz~GHz帯域に適合する高性能な軟磁性複合材料を開発しています。ヘガネスジャパン株式会社が提供する『Somaloy』は3次元の磁路・形状設計が可能で、アキシャルギャップモーターのコアなどに採用実績があります。

 

参考)富士フイルムの軟磁性複合材料

磁性材料の自動車やモーター分野での用途

磁性材料は電気自動車(EV)やハイブリッド車(HV)の駆動用モーターにおいて中核的な役割を果たしています。モーターの効率は磁石や鉄心などの磁性材料に大きく依存するため、高性能化が重要課題となっています。ネオジム磁石は高い磁気エネルギー積を持つため、EVやHVの駆動用モーターに特に重要な永久磁石材料として広く採用されており、モーターの小型化と高出力化を実現しています。

 

参考)モーターの磁性材料とは|モーター基礎|EV-tech.jp

軟磁性材料はモーターのステータやコイル、電源回路などに使用され、エネルギー損失を最小限に抑える役割を担います。電気機器には小型、高出力、高効率なものが求められており、軟磁性材料には小さな磁界で高い磁束密度を発生させる性能が必要とされています。物質・材料研究機構(NIMS)は東北大学や産業技術総合研究所と共同で、電力損失を従来の半分以下に抑えることができる鉄系磁性材料を開発し、次世代高周波トランスやEVの駆動用電源回路での採用が期待されています。

 

参考)https://eetimes.itmedia.co.jp/ee/articles/2509/08/news035.html

自動車分野向けの粉末冶金材料では、ヘガネスジャパンの『Starmix Nova』が亜鉛フリーで高い見掛密度と優れた流動性・潤滑性・圧縮性を備えており、焼結部品の強度・寸法精度の向上に貢献しています。NEDOは次世代自動車向け高効率モーター用磁性材料技術開発事業において、供給リスクの高い重希土類元素(主にジスプロシウム)を使用しない高性能磁石の開発と高性能軟磁性材料の開発を推進しています。

 

参考)次世代自動車向け高効率モーター用磁性材料技術開発

磁性材料の製造工程における品質管理

磁性材料の品質管理は製品の性能と信頼性を確保するために極めて重要です。相模化学金属では製造ロット番号によるトレーサビリティのあるロット管理を実施しており、製品のすべての製造工程の履歴を追跡できる体制を整えています。検査成績表には品名、図番、磁気特性、表面処理、梱包仕様、製品検査結果などの詳細なデータが記載され、顧客が製品の品質を確認できるようになっています。

 

参考)品質管理について

磁気特性の測定では、B-H測定装置を用いて残留磁束密度(Br)、保磁力(bHC)、最大エネルギー積などの基本的な材料性能を評価します。ネオジム磁石工場ではBHトレーサーによる磁石素材の磁気特性検査、最新設備による寸法検査、表面磁束検査、PCT(Pressure cooker test)などの信頼性試験が行われています。

サプライヤーに対しては品質基準を明確に伝え、定期的な品質チェックを実施することで品質管理を強化しています。品質トラブルの早期発見と迅速な対応が製品全体の信頼性を高める鍵となり、共同での研究開発や技術交流を通じて双方の技術力を高めることも重要です。環境問題への対応として、鉛や六価クロムなどを含まないRoHS対応品の製造が標準化されており、ISO14001取得による環境マネジメントシステムの運用も行われています。

 

参考)磁性材料の最新技術と調達戦略:コスト削減と品質向上への道

磁性材料メーカー選定における鉱石観点からの考察

磁性材料の原料となる鉱石の安定調達は、メーカー選定において重要な評価ポイントです。特にレアアース(希土類元素)を含むネオジムやジスプロシウムは供給リスクが高く、中国に依存している現状があります。信越化学工業は2007年からレアアースマグネットの加工工程で出る磁石粉のリサイクルを行っており、2013年からは省電力エアコンやハイブリッドカーに使用されたレアアースマグネットのリサイクルにも取り組んでいます。

 

参考)

トヨタ自動車との連携では、HVモーターで使用する磁石から抽出したネオジムとジスプロシウムを新品の磁石へと循環させる磁石再資源化プロジェクトが進められています。このような資源循環の取り組みは、原料の安定調達を図るだけでなく、環境負荷の軽減にも貢献しています。磁石のリサイクルでは、破砕や異物除去などの処理を経て、合金原料などの再生資源として活用されます。

 

参考)磁石の処理方法は?産業廃棄物としての扱いも解説|丸商の産廃コ…

鉱石に関心がある方にとって、磁性材料メーカーが採用している原料調達戦略やリサイクル技術は、持続可能性と供給安定性の両面から評価すべき重要な要素です。鉄系磁性材料の開発も注目されており、重量比で94%以上を鉄が占める材料は、希土類元素への依存を低減し、比較的低コストの元素(ホウ素、リン、炭素、銅、ケイ素)から構成されるため、資源戦略の観点からも有望です。

信越化学工業の省資源・リサイクル取り組み
レアアースマグネットのリサイクル技術と資源循環プロジェクトの詳細が掲載されています。原料調達の安定化に関する情報を確認する際の参考リンクです。

 

NEDO次世代自動車向け高効率モーター用磁性材料技術開発
重希土類元素を使用しない高性能磁石の開発プロジェクトについて解説されています。将来的な磁性材料の技術動向を知るための参考資料です。

 

プロテリアルの希土類焼結磁石に関するお知らせ
国内主要メーカーの製品情報と技術開発の方向性について確認できます。磁性材料メーカーの最磁性材料メーカーの最新動向を把握する際の参考情報です。