光の干渉公式一覧|ヤングの実験から薄膜干渉まで鉱石観察に役立つ原理

光の干渉公式を一覧形式で解説します。ヤングの実験、薄膜干渉、回折格子など、鉱石の美しい色彩を理解するために必要な公式とその原理を詳しく説明しています。鉱物コレクターが知っておくべき光学現象とは?

光の干渉公式一覧

この記事でわかる光の干渉公式
🌈
ヤングの実験の公式

二重スリットによる干渉縞の明線・暗線条件と縞間隔の計算方法

💎
薄膜干渉の公式

鉱石表面の虹色を生み出す薄膜による光路差と位相差の関係式

回折格子とニュートンリング

周期構造による干渉と曲面による特殊な干渉パターンの計算

光の干渉とは|波動性を示す基本原理

 

光の干渉とは、複数の光波が重なり合うことで明るさが変化する現象です。19世紀初頭にイギリスの物理学者トーマス・ヤング(1773~1829)が行った実験により、光が波としての性質を持つことが決定的に証明されました。

 

参考)光の干渉とは

鉱石愛好家にとって重要なのは、この干渉現象が鉱物の美しい色彩や虹色の輝きを生み出す原理だという点です。例えばオパールやラブラドライトの遊色効果、黄鉄鉱表面の変色膜など、多くの鉱物で観察される光学現象は光の干渉によって説明できます。

 

参考)光の干渉とは:原理・実例・薄膜との関係について解説。

干渉が起こる条件として、波長・位相が揃った光(コヒーレント光)が必要です。現代ではレーザー光を用いることで、より鮮明な干渉縞を観測できるようになっています。干渉縞の光強度は、2つの光の位相差によって周期的に変化します。

光の干渉における明線・暗線の条件式

干渉縞の明暗を決定する基本公式は、光路差と波長の関係で表されます。光路差とは、干渉する2つの光波がたどる光学的距離の差のことです。

 

参考)ヤングの干渉実験 ■わかりやすい高校物理の部屋■

明線(強め合い)の条件
l1l2=mλ(m=0,1,2,)|l_1 - l_2| = m\lambda \quad (m = 0, 1, 2, \ldots)∣l1−l2∣=mλ(m=0,1,2,…)
暗線(弱め合い)の条件
l1l2=(m+12)λ(m=0,1,2,)|l_1 - l_2| = \left(m + \frac{1}{2}\right)\lambda \quad (m = 0, 1, 2, \ldots)∣l1−l2∣=(m+21)λ(m=0,1,2,…)
ここで、l1l_1l1とl2l_2l2は各光波の進んだ距離、λ\lambdaλは波長、mmmは整数を表します。光路差が波長のちょうど整数倍になる地点で波は強め合い明線ができ、整数倍に半波長を足した値になる地点では暗線ができます。

位相差による表現では、明線条件は位相差Δθ=2π+2nπ\Delta\theta = 2\pi + 2n\piΔθ=2π+2nπ、暗線条件は位相差Δθ=π+2nπ\Delta\theta = \pi + 2n\piΔθ=π+2nπとなります。位相差と経路差の関係は、1周期(位相2π2\pi2π分)進めばl=λl=\lambdal=λ分だけ波が進むという対応関係で結ばれています。

参考)位相差?経路差? わかりやすい波の位相の基礎|【かきのたねブ…

光の干渉|ヤングの実験の公式と計算方法

ヤングの実験は、光源から出た単色光をスリットS0S_0S0に通し、さらに2つのスリットS1S_1S1、S2S_2S2を通過させる実験です。回折した光がスクリーン上で干渉し、明暗の縞模様(干渉縞)を作り出します。

参考)【高校物理の要点】光の干渉~ヤングの実験・回折格子・薄膜の干…

実験の設定条件として、スリット間隔をddd、スリットとスクリーン間の距離をDDD、使用する光の波長をλ\lambdaλとします。スクリーンの中心から距離xxxの点における干渉を考えると、以下の公式が導かれます。

参考)ヤングの実験

明線の位置
xm=mλDd(m=0,1,2,)x_m = \frac{m\lambda D}{d} \quad (m = 0, 1, 2, \ldots)xm=dmλD(m=0,1,2,…)
暗線の位置
x=(2m+1)λD2d(m=0,1,2,)x = \frac{(2m+1)\lambda D}{2d} \quad (m = 0, 1, 2, \ldots)x=2d(2m+1)λD(m=0,1,2,…)
縞間隔
Δx=λDd\Delta x = \frac{\lambda D}{d}Δx=dλD
スクリーンの中心には明線が位置し、中心から対称的に干渉縞が発生するという特徴があります。これはスクリーンの中心では両スリットから点までの距離が等しくなるため、光の位相が一致し強め合う干渉となるからです。

単スリットと複スリットの間に単スリットを配置するのは、2つのスリットに入る光の位相を揃えるためです。この工夫により、より鮮明な干渉縞を観測できます。

参考)光の干渉 〜ヤングの実験〜

光の干渉|薄膜干渉の公式と鉱物への応用

薄膜干渉は、シャボン玉や鉱物表面の酸化膜など、薄い膜で見られる虹色の現象です。屈折率nnn、厚さdddの薄膜に光が入射角iiiで入射する場合を考えます。

薄膜の上面で反射する光と、薄膜内を通過して下面で反射する光が干渉します。この2つの光の光路差LLLは以下の式で表されます。

薄膜の光路差
L=2ndcosθL = 2nd\cos\thetaL=2ndcosθ
ここでθ\thetaθは膜中での屈折角です。位相差ψ\psiψは次のように表されます。

参考)http://qopt.iis.u-tokyo.ac.jp/optics/7interferenceU.pdf

位相差の公式
ψ=4πndcosθλ\psi = \frac{4\pi nd\cos\theta}{\lambda}ψ=λ4πndcosθ
薄膜干渉では、反射時の位相変化も考慮する必要があります。屈折率が低い媒質から高い媒質へ進んで反射する場合、位相がπ\piπだけ変化します。

鉱物コレクターにとって重要なのは、この原理が鉱石表面の変色膜の色を決定しているという点です。黄鉄鉱の表面に形成される酸化膜の厚さによって、青色から金色、紫色へと見える色が変化します。膜の厚さdddと波長λ\lambdaλの関係により、ある色の光は強め合い、別の色の光は打ち消し合うため、特定の色だけが観察されるのです。

光の干渉と薄膜の関係についての詳細な技術解説(薄膜コーティングの応用例を含む専門的な内容)

光の干渉|回折格子の公式と明線条件

回折格子とは、透明な板の片面に1mmあたり数百本の溝を等間隔で刻んだ光学素子です。溝と溝の間の透明部分がスリットの役割を果たし、通過・回折された光が干渉を起こします。

 

参考)光の干渉 〜回折格子〜

回折格子の溝間隔をddd、入射光の波長をλ\lambdaλ、回折角をθ\thetaθ、回折光の次数をmmmとすると、明線条件は以下の公式で表されます。

回折格子の明線条件
dsinθ=mλ(m=0,1,2,)d\sin\theta = m\lambda \quad (m = 0, 1, 2, \ldots)dsinθ=mλ(m=0,1,2,…)
この式は隣り合うスリット間の光路差dsinθd\sin\thetadsinθが波長の整数倍になる条件を示しています。回折格子では、すべてのスリットからの光が同時に強め合う必要があるため、「隣りあう2つが強めあう条件」と「すべての光が強めあう条件」が一致します。

参考)回折格子の原理と式(単スリットについても説明)

ヤングの実験と比較すると、回折格子では多数のスリットからの光が重なるため、明線条件を満たす位置では非常に明るくなりますが、そこから少しでも外れると急激に暗くなります。この性質により、より鮮明で明確な干渉縞が得られます。

格子間隔dddが既知の回折格子を使用し、第一明線の角度θ\thetaθを測定することで、未知の光源の波長を決定できます。この原理は分光器など、鉱物の発光スペクトルを分析する装置に応用されています。

 

参考)課題2 回折格子

格子の溝間隔を場所によって変化させることで、光を異なる角度に曲げることが可能です。この原理を用いることで、回折格子上の位置ごとに任意の波面を作り出すことができます。

 

参考)CGHを理解する:古典的回折格子の原理(2) href="https://photo-cross.com/blog/diffractive-optical-element/blog-880/" target="_blank">https://photo-cross.com/blog/diffractive-optical-element/blog-880/amp;#8211…

光の干渉|くさび形空気層とニュートンリングの公式

くさび形空気層による干渉は、長さLLLの2枚の平面ガラスを重ねて一端に厚さDDDの薄い紙を挟み、くさび形の空気層を作る実験です。真上から単色光を入射させると明暗の縞模様が見えます。

上のガラスの下面で反射する光と、下のガラスの上面で反射する光が干渉するため、この現象が起こります。空気層の厚さが場所によって異なるため、等間隔の直線状の干渉縞が観察されます。

ニュートンリングは、平面ガラス板の上に曲率半径RRRの凸レンズ(または平凸レンズ)を置いて観察される円形の干渉縞です。中心からの距離によって空気層の厚さが変化するため、同心円状の明暗の環が現れます。
参考)https://www.gen.t-kougei.ac.jp/physics/Virtual-LW/NewtonR.pdf

中心からmmm番目の暗環の半径rmr_m'rm′は以下の公式で表されます。

ニュートンリングの暗環の公式
rm=mRλ(m=1,2,3,)r_m' = \sqrt{mR\lambda} \quad (m = 1, 2, 3, \ldots)rm′=mRλ(m=1,2,3,…)
明環の公式
rm=(m0.5)Rλ(m=1,2,3,)r_m = \sqrt{(m-0.5)R\lambda} \quad (m = 1, 2, 3, \ldots)rm=(m−0.5)Rλ(m=1,2,3,…)
より一般的には、m+nm+nm+n番目とmmm番目の暗環の半径から、レンズの曲率半径を求める式が導かれます。

R=rm+n2rm2nλR = \frac{r_{m+n}^2 - r_m^2}{n\lambda}R=nλrm+n2−rm2
実験では、中心から外側へ順次暗輪の位置を測定し、さらに中心を越えて反対側の暗輪も測定します。これにより測定精度を向上させることができます。

ニュートンリングの観察は、レンズの品質検査や曲率半径の精密測定に利用されており、光学機器の製造現場で重要な役割を果たしています。鉱物学では、鉱物の劈開面やへき開面の平坦性を評価する際にも応用されます。

 

参考)ニュートンリング – 学習のトリセツ

光の干渉公式を使った波長と屈折率の計算

干渉公式の実用的な応用として、未知の波長や屈折率の測定があります。ヤングの実験の設定で、スリット間隔d=0.5 mmd = 0.5 \text{ mm}d=0.5 mm、スクリーンまでの距離D=1 mD = 1 \text{ m}D=1 m、隣接する明線間の距離Δx=1.2 mm\Delta x = 1.2 \text{ mm}Δx=1.2 mmが測定された場合、使用した光の波長は以下のように計算できます。

縞間隔の公式Δx=λDd\Delta x = \frac{\lambda D}{d}Δx=dλDを変形して、
λ=dΔxD=0.5×103×1.2×1031=6.0×107 m=600 nm\lambda = \frac{d \cdot \Delta x}{D} = \frac{0.5 \times 10^{-3} \times 1.2 \times 10^{-3}}{1} = 6.0 \times 10^{-7} \text{ m} = 600 \text{ nm}λ=Dd⋅Δx=10.5×10−3×1.2×10−3=6.0×10−7 m=600 nm
この結果から、使用した光はオレンジ色の可視光であることがわかります。

薄膜干渉を利用した屈折率測定も可能です。薄膜の厚さdddが既知で、特定の波長で明線が観察される入射角θ\thetaθを測定すれば、薄膜の屈折率nnnを逆算できます。この手法は、鉱物の薄片の屈折率測定や、光学薄膜の品質管理に応用されています。

参考)薄膜の干渉

回折格子を用いた波長測定では、格子定数dddが精密に校正された標準回折格子を使用します。測定された回折角θ\thetaθから、λ=dsinθm\lambda = \frac{d\sin\theta}{m}λ=mdsinθにより波長を高精度に決定できます。この方法は分光分析において、鉱物中の微量元素の同定に利用されています。

位相差と光路差の関係式Δθ=2πλΔl\Delta\theta = \frac{2\pi}{\lambda} \cdot \Delta lΔθ=λ2π⋅Δlを用いることで、波長と経路差を相互に変換できます。この関係は、干渉計による微小距離の測定や、光学系の精密調整に不可欠です。

鉱石観察における光の干渉現象の実例


鉱物コレクターが目にする多くの美しい光学現象は、光の干渉によって説明できます。代表的な例として、オパールの遊色効果があります。オパールは直径150~300nmのシリカ球が規則正しく配列した構造を持ち、この周期構造が回折格子として機能します。見る角度によって異なる波長の光が干渉により強め合うため、虹色の輝きが観察されます。

 

ラブラドライトのラブラドレッセンス(青色や緑色の輝き)も薄膜干渉の一種です。結晶内部の層状構造が数十~数百nmの間隔で積層しており、各層で反射した光が干渉することで特定の色だけが強調されます。この現象は「構造色」と呼ばれ、色素による着色とは異なる発色メカニズムです。

 

黄鉄鉱の表面に形成される酸化膜も薄膜干渉の好例です。新鮮な黄鉄鉱は金属光沢を示しますが、空気中に放置すると表面に酸化鉄の薄膜が形成されます。膜の厚さが100~300nmの範囲で変化すると、青色から紫色、金色へと見える色が変化します。

 

針鉄鉱や赤鉄鉱の薄片を偏光顕微鏡で観察すると、干渉色と呼ばれる鮮やかな色彩が見られます。これは鉱物の複屈折性と薄片の厚さによって生じる干渉現象で、鉱物の同定に利用されています。

 

真珠やアワビ貝の虹色光沢(真珠光沢)も、炭酸カルシウムの薄層が積層した構造による薄膜干渉です。各層の厚さが可視光の波長と同程度であるため、美しい虹色を呈します。

 

シャボン玉の虹色は最も身近な薄膜干渉の例です。膜の厚さが非常に薄いため、光の波長と膜の厚さとの関係によって、ある色の光は強め合い、別の色の光は打ち消し合います。膜が薄い部分では青い光が強められ、厚い部分では赤い光が強められるため、場所によって見える色が変化します。

 

参考)https://syoshi-lab.sakura.ne.jp/excelde/principle.pdf

鉱物・現象 干渉のタイプ 構造の特徴 観察される色
オパール 回折格子型 シリカ球の周期配列 角度依存の虹色
ラブラドライト 薄膜干渉 層状結晶構造 青・緑・金色
黄鉄鉱表面 薄膜干渉 酸化膜形成 青・紫・金色
真珠光沢 多層膜干渉 炭酸塩の薄層積層 虹色光沢

光の干渉性(コヒーレンス)と平面波同士の干渉についての基礎知識