片麻岩 特徴と鉱物構成 生成条件を解説

片麻岩は広域変成岩の一種で、白と黒の縞模様が最大の特徴です。石英や長石、黒雲母などの鉱物から構成される片麻岩は、地下深部の高温条件で生成されます。片麻岩の見た目や鉱物組成、そして他の変成岩との違いについて知りたくありませんか?

片麻岩の特徴と鉱物構成

片麻岩の主要特徴
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片麻状組織

白い石英・長石と黒い黒雲母・角閃石が数mm~数cmの厚さで交互に積み重なった縞模様

粗粒結晶構造

結晶片岩より粗粒で、肉眼で鉱物を識別できる程度の粒径

光沢感

全体的にキラキラした見た目で、黒雲母の層が光を反射する

片麻岩の基本的な特徴と見分け方

 

片麻岩は広域変成岩の一種であり、最も顕著な特徴は白黒の縞状構造(片麻状組織)です。このシマシマした模様は石英や長石の多い層と、黒雲母角閃石に富む層が規則的に並ぶことで生じます。一般的には花こう岩に似た外観をしていますが、鉱物の配列によって弱い縞模様が見られることで区別されます。片麻岩は中粒ないし粗粒で、結晶片岩よりも粒径が大きく、片理や劈開が比較的弱いのが特徴です。

 

また、片麻岩全体は光沢のあるキラキラした見た目を呈していることが多く、これは黒雲母などの鉱物が光を反射することによります。このため、肉眼での岩石観察では比較的容易に識別できます。片麻岩は様々な鉱物組成を持つため、その外観は採取地域や生成条件によって異なります。

 

片麻岩を構成する主要鉱物成分

片麻岩の基本的な鉱物構成は、石英(SiO₂)、長石(カリ長石や斜長石)、黒雲母、そして普通角閃石です。これら四つの鉱物は片麻岩のほぼすべての標本に含まれており、白い長石類と淡灰色の石英からなる薄い層と、黒い黒雲母・角閃石からなる層が交互に出現します。

 

ただし、片麻岩の鉱物組成は多様であり、原岩の成分に応じて変化します。例えば、黒雲母片麻岩は花こう岩質の原岩が変成したもので、最も一般的です。一方、珪線石や藍晶石などの高温変成鉱物を含む片麻岩もあり、これらは特に高温条件で形成されました。さらに、ざくろ石(アルマンディン)を含む片麻岩も珍しくなく、このような場合はざくろ石の赤い粒が視認できます。石灰質片麻岩には石灰ざくろ石、珪灰石、透輝石などが含まれ、組成と由来が大きく異なります。

 

片麻岩の生成条件と地殻プロセス

片麻岩は比較的高い温度条件(おおよそ400~600℃)で生成します。具体的には、地下約15km以上の深さで、プレートの沈み込みによって堆積物が地下深くに移動したときに形成されます。この過程で、元の岩石(泥岩や砂岩、あるいは花こう岩など)が高温・高圧を受けて再結晶し、鉱物の配列が並び替わって片麻状の組織が生成されるのです。

 

広域変成作用による片麻岩の生成は、一般的には角閃岩相や緑簾石角閃岩相、グラニュライト相といった変成条件下で起こります。特に注目すべき点は、片麻岩はより高温の変成作用を受けるとグラニュライトと同じような等粒状の岩石へと変化し、逆に低温になると結晶片岩へと変化することです。つまり、片麻岩は変成条件の中でも中程度から高温の領域を示す指標鉱物群として機能します。また、変形作用が強い場所では、長石を取り巻く他鉱物が細粒化し、長石が眼球状を呈する眼球片麻岩と呼ばれるタイプも形成されます。

 

片麻岩と他の変成岩との違い

片麻岩と結晶片岩の最大の違いは粒径と組織です。結晶片岩は低~中変成度で形成された岩石で、細粒であり片理(薄く割れる特性)が強く発達しています。一方、片麻岩は中~高変成度で形成された粗粒の岩石で、片理が弱く、縞状構造が顕著です。

 

グラニュライトとの区別も重要です。グラニュライトはグラニュライト相という非常に高温・高圧条件下で形成され、片麻状組織が失われて等粒状になっています。同じ鉱物を含んでいても、結晶の配列方向がなくなることが特徴です。

 

さらに注入片麻岩という特殊なタイプも存在します。これは、縞状構造の白色部が花こう岩のような組成と組織を持ち、あたかも花こう岩マグマが縞状に注入されたように見える片麻岩です。この形態は、複数の異なる原岩が変成される過程で、部分的に融解して新たなマグマが生成され、それが既存の変成岩に注入されることで形成されると考えられています。

 

片麻岩に含まれる高温変成鉱物

片麻岩に含まれる鉱物の中でも特に注目されるのが、珪線石(ケイ線石)、藍晶石、紅柱石といったアルミニウムシリケート系の鉱物です。これらは同じ化学組成(Al₂O(SiO₄))を持ちながら、結晶構造が異なるため異なる変成条件の指標となります。珪線石は広域変成岩に多く見られ、特に片麻岩では頻繁に出現します。これは片麻岩が比較的高温で形成されることを示唆しています。

 

珪線石は片麻岩中では数mm~数cm に達する灰白色短柱状の斑状変晶として見られることがあり、時には褐黒色の黒雲母に密接に伴う細かい針状の集合体として現れます。このような珪線石の出現様式は、その岩石がどの程度の温度環境で形成されたかを推定するのに有用です。さらに、領家変成帯の最高変成度である珪線石帯に属する片麻岩は、雲母類の配列で形成される縞状構造が特に明瞭で、研究対象として重要です。

 

日本国内の片麻岩の分布と地質学的意義

日本では北海道の日高帯、本州の飛騨帯、領家帯、阿武隈帯などの変成帯に片麻岩が広く分布しています。特に注目すべきは島根県の隠岐島後島北東部の隠岐片麻岩です。隠岐片麻岩は、元々は海底に堆積した泥質および砂質の堆積物であり、これが固まって泥岩となった後、地下に押し込められて高温(隠岐では約800℃)の条件で粗粒の結晶からなる変成岩へと変身したものです。

 

隠岐片麻岩類の分布地域には、泥質片麻岩、ミグマタイト質片麻岩、片麻状花こう岩、角閃岩のほか少量の石灰質片麻岩と珪質片麻岩が見られます。泥質片麻岩は石英や長石類からなる白っぽい部分と、黒雲母が多い黒っぽい部分が縞状になっているのが特徴で、この地域の地質学的な歴史を物語っています。

 

岡山県倉敷市周辺も片麻岩の主要な産地であり、倉敷市立自然史博物館などの研究機関で標本が展示されています。これらの地域に分布する片麻岩は、日本列島の地殻形成過程や造山帯の進化を理解する上で不可欠な資料です。

 

日本の変成岩研究における片麻岩の位置づけ
地質調査総合センター - 日本の地質情報

実務での片麻岩の応用と産業的価値

片麻岩は採石業において建築用石材として採掘されることがあります。特に縞状の模様が視覚的に美しいため、装飾的な建材や庭石として需要があります。同時に、片麻岩の粗粒で比較的割れやすい性質は、砕石や路盤材としての用途にも適しています。

 

さらに、片麻岩は地球科学的にも非常に重要です。変成岩として片麻岩が存在する地域は、過去に大規模な造山帯活動があった証拠であり、地殻進化史の解読に役立ちます。例えば、片麻岩に含まれるジルコンという鉱物のU-Pb年代測定により、その岩石がいつ形成されたかを正確に決定できます。地質学者はこのような手法を用いて、日本列島がいつどのような変成作用を受けたかを明らかにしています。

 

鉱物採集の観点からも、片麻岩は重要です。ざくろ石を含む美しい片麻岩は、鉱物愛好家や地質学の学生にとって有価値な標本となります。特に眼球片麻岩は、大きなアルカリ長石が目のように見えることから、学習教材として視覚的に分かりやすく、人気があります。

 

 


東京サイエンス 岩石標本15種 (花崗岩、閃緑岩、 斑れい岩、流紋岩、安山岩、玄武岩、泥岩、砂岩、礫岩、凝灰岩、石灰岩、チャート、ホルンフェルス、晶質石灰岩、片麻岩)