泥岩特徴見た目から堆積岩形成まで鉱石愛好家ガイド

泥岩の色や質感といった見た目の特徴から、形成過程、見分け方まで詳しく解説します。鉱石に興味がある方にとって、泥岩の深い魅力と地質学的意義を知る内容となっています。あなたは泥岩の本当の面白さをご存じですか?

泥岩の特徴と見た目

泥岩の主な特徴
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粒子の細かさ

粒径1/16mm以下の泥が固結した堆積岩で、肉眼では粒子が見えないほど緻密な構造を持ちます

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多様な色彩

灰色、黒色、赤褐色、緑色など環境によって異なる色を呈し、鉄分や有機物の含有量で色が変化します

表面の質感

滑らかで緻密な質感を持ち、ハンマーで叩くと白っぽいひっかき傷が付く程度のやや軟らかい性質があります

泥岩の色と見た目の多様性

 

泥岩の色は形成された環境によって大きく異なります。最も一般的なのは暗い灰色から黒色を呈するもので、これは有機物由来の炭素を多く含むためです。黒っぽい色をした泥岩は深海底に堆積した泥が固結したもので、有機質炭素として残った炭質物が黒色の原因となっています。

 

参考)http://www2.city.kurashiki.okayama.jp/musnat/geology/rock/kawara-rock/okayama-kawara-rock/okayama-kawara-200Mamudsandconglo.htm

一方、赤褐色や赤色を呈する泥岩も存在します。この色の違いは、泥岩に含まれる鉄分と酸素の反応の仕方によって決まります。鉄が酸素と反応して錆びる現象と同様に、泥岩中の鉄が赤茶色になることで赤色泥岩が形成されます。逆に青みがかった灰緑色の泥岩は、鉄と酸素の反応が異なる環境下で形成されたものです。

 

参考)https://www.hirahaku.jp/web_yomimono/geomado/isizuk17.html

平塚市博物館の石ころ図鑑(泥岩の色の違いや各種泥岩の写真が確認できます)
緑色や褐色の泥岩も見られ、これらには鉄鉱物が含まれていることが多く、特徴的な色や模様が生まれることがあります。また、灰色と黒色の泥岩が交互に重なり、きれいな縞模様を呈するものもあります。

 

参考)https://lab-brains.as-1.co.jp/enjoy-learn/2023/08/51947/

泥岩の質感と粒子の特徴

泥岩は通常、滑らかで緻密な質感を持っており、肉眼では粒子を確認することができません。粒径が1/16mm以下の非常に細かい砕屑物から構成されているため、表面は緊密で均質に見えます。

 

参考)泥岩(デイガン)とは? 意味や使い方 - コトバンク

顕微鏡で拡大して観察すると、泥岩は細かい粒子の集合体からできていることがわかります。これらの粒子は球体ではなく、薄い板状をしており、粘土鉱物の結晶形を反映しています。通常の偏光顕微鏡による観察では組織や組成の識別は困難ですが、走査型電子顕微鏡や示差熱分析などの方法を用いることで詳細な研究が可能になります。

 

参考)館長コラム 「こんな化石も展示しています」第12回 ーノジュ…

泥岩の硬さはやや軟らかく、ハンマーで叩くと白っぽいひっかき傷がよく見られます。また、層理にほぼ平行した剥離や割れ目ができやすいものは「頁岩(けつがん)」と呼ばれ、薄く剥がれとれる性質を持っています。

 

参考)石割り岩石一覧表|地質情報展 2015 ながの 知っています…

泥岩と他の堆積岩との見分け方

泥岩を他の堆積岩と見分けるには、主に粒子の大きさを基準にします。れき岩、砂岩、泥岩はすべて岩石や鉱物の粒が固まってできていますが、粒の大きさの違いで区別されます。

 

参考)ろとうのみかた 『粒の大きさで堆積岩の分類をするには?』 -…

れき岩は直径2mm以上の小石(礫)が主体で、肉眼ではっきりと礫を確認できます。砂岩は粒径が1/16mmから2mmの砂粒からできており、ざらついた感触があり、細かな砂粒が肉眼で見えます。一方、泥岩は粒径が1/16mm以下で、粒子は肉眼では見えません。

 

参考)https://www.s-yamaga.jp/nanimono/chikyu/chisototaisekigan-03.htm

粒の大きさで堆積岩を分類する方法(図解入りで分かりやすい)
砂岩と泥岩の区分は1/16mmという非常に小さい基準で分類されるため、見た目による判断は難しいとされています。実際の現場では、「小麦粉より細かい粒子なら泥、米粒より大きければ礫」のように、身近なものと比べると分かりやすくなります。

 

参考)石ころ鑑定のコツ|長野県デジタル地質図を活用した地学教材開発…

泥岩の分類とシルト岩・粘土岩

泥岩はさらに細かく、シルト岩と粘土岩に細分することができます。粒径の境界は1/256mmであり、それより粗粒なのがシルト岩、細粒なのが粘土岩です。

 

参考)https://oilgas-info.jogmec.go.jp/termlist/1001289/1001332.html

シルト岩は粒径1/16mmから1/256mmのシルトが固結した岩石で、泥岩のカテゴリーに属します。粘土鉱物の量が比較的少なく、頁岩のように薄い層に分離する性質は弱い傾向があります。粘土岩は粒径1/256mm以下の粘土が固結したもので、主に粘土鉱物から構成されます。

 

参考)Siltstone (Siltstone) - Rock I…

ただし、これらを肉眼的に識別することは困難です。日本では特に粘土岩だけを泥岩と呼ぶことが多く、用語の使い分けには地域差があります。泥岩のなかで、特に層理にほぼ平行した剥離や割れ目のできやすいものを頁岩と呼び、頁岩が圧密し強固化したものは粘板岩(スレート)と呼ばれます。

 

参考)泥岩(でいがん) とは

泥岩の地層における分布と産状

泥岩は堆積岩のうちで最も多い岩石であり、日本列島の各地に広く分布しています。海底や湖沼底などに堆積した泥が、脱水固結して岩石となったものです。

 

参考)泥岩 - Wikipedia

日本では第三紀層地すべりの母岩として泥岩が重要な役割を果たしています。新潟県の寺泊層や小河内層などの泥岩は、主要構成鉱物として斜長石や加里長石などの長石類を含んでいます。沖縄島南部では島尻層群と呼ばれる地層が代表的で、主に泥岩や砂岩から構成され、南は宮古島から北は鹿児島県の喜界島まで分布しています。

 

参考)沖縄島南部の地質—泥の海とサンゴの海—

沖縄県立博物館・美術館の泥岩に関する記事(島尻層群の泥岩「クチャ」について詳しく解説)
青森県七戸町では、1300万年から700万年前の新生代新第三紀中新世頃に深い海底に泥が積もってできた黒っぽい泥岩が見られます。黒色を呈するのは有機物由来の炭素を多く含むためで、このような泥岩はしばしば石油の根源岩となります。

日本列島の基盤岩の多くは、太平洋側から海洋プレートが海溝で沈み込むときに、陸地起源の泥岩などが付加体として形成されたものです。北海道の日高累層群や本州の美濃帯など、各地に泥岩を含む複雑な地質体が分布しています。

 

参考)日本地質学発祥の地

堆積環境によっても泥岩の特徴は異なります。深海底にタービダイト(乱泥流堆積物)として運ばれた泥が堆積して形成されたものは、黒色頁岩として広く分布しています。一方、約2000万年前の新第三紀中新世に湖に泥が積もってできた泥岩は、灰色と黒色が交互に重なる縞模様を持ち、貝や植物の化石が入っていることがあります。

中生代から新生代にかけて形成された泥岩層は、日本各地で重要な地質学的記録を残しています。千葉県の犬吠層群は深海でたまった泥岩を主とする地層で、多くの火山灰層を含み時代対比の良い鍵層となっています。紀伊半島南部海岸には様々な大きさの砂岩角礫を含む田子含角礫泥岩層(通称「サラシ首層」)が分布し、その形成については泥火山説などが議論されています。

 

参考)紀伊半島南部海岸地域の田子含角礫泥岩層「サラシ首層」の時代と…

泥岩は層状の構造を持っていることが多く、これは堆積岩の成り立ちを反映しています。また、泥岩層の中にはデブライト層と呼ばれる特殊な地層が含まれることがあり、大小さまざまな泥岩片が密集した特徴的な構造を持っています。

 

参考)https://www.gsj.jp/data/gcn/gsj_cn_vol11.no11.pdf

泥岩の強度や性質は、生成時代や堆積環境によって大きく異なります。一般的に生成時代が古い方が強度が大きくなる傾向があり、深成岩類や火山岩類と比較すると泥岩の強度は相対的に小さいものの、チャートや砂岩と比べた場合は最も小さい値を示します。泥岩の一軸圧縮強度は新鮮な状態でも25MN/m²未満であることが多く、軟岩系岩盤に分類されます。

 

参考)https://jcmanet.or.jp/bunken/kikanshi/2013/02/094.pdf

泥岩の形成過程と地質学的意義

泥岩の形成には長い時間をかけた堆積と圧密のプロセスが必要です。まず、海底や湖沼底に泥(シルトや粘土)が堆積します。次々と海底に降り積もる泥質の堆積物は、埋積されていくにつれて上に積もった地層の重みで圧力がかかり、また地下深部の熱で温められます。

 

参考)https://www.gsj.jp/Muse/story/src/story_036.pdf

この過程で泥岩には脱水と固結が起こり、最終的に硬い岩石となります。珪藻質泥岩の場合、シリカでできた珪藻の殻が主成分となり、圧力と熱によって硬質頁岩へと変化していきます。日本では約1600万年以降、各地に珪藻質泥岩が形成されました。

 

参考)日本の地質−日本沈没時代

泥岩の風化機構も地質学的に重要なテーマです。第三紀層地すべりの母岩となる泥岩には、かなり多量の硫化鉄が含まれていることが特徴で、この硫化鉄の分解による化学作用が母岩を著しく風化させる大きな原因となっています。硫化鉄の酸化およびそれに起因する硫酸酸性水による溶解反応が、泥岩の化学的風化の主な要因です。

 

参考)https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjseg1960/4/1/4_1_3/_pdf

産総研地質調査総合センターの泥岩研究資料(珪質泥岩の形成過程について詳しく解説)
風化過程において、まず分解されるのは斜長石や加里長石などの長石類です。長石分子中のナトリウムやカルシウムなどの結合力は極めて弱く、水素イオンによって容易に置換されます。こうして長石の結晶構造がゆるんで、遊離した珪酸とアルミナは再び水和結合し、速やかに安定した含水珪酸アルミナすなわち粘土鉱物になります。

泥岩は古環境の記録媒体としても重要です。中国四川盆地の中生代ジュラ紀沙渓廟層の多色泥岩は、古気候と古環境の変化を効果的に記録しており、元素地球化学分析によって古気候、古塩分濃度、古酸化還元状態などが解明されています。白亜紀の大陸堆積物における泥岩の色の違いも、赤鉄鉱の含有量の変化が直接的な原因となっており、鉄の移動メカニズムが色の変化を制御しています。

 

参考)https://pubs.acs.org/doi/10.1021/acsomega.3c01496

泥岩の利用と産業応用の可能性も注目されています。粘板岩に強固化した頁岩は耐候性に優れているため、建物の屋根やポーチの床材などに使われています。また、泥岩は二酸化炭素地中貯留(CCS)技術において、CO2の漏洩を防ぐ「遮へい層」として重要な役割を果たします。貯留層の上部を泥岩などからできている遮へい層で覆うことで、安全にCO2を地下に貯留することが可能になります。

 

参考)https://www.env.go.jp/earth/brochureJ/ccus_brochure_0212_1_J.pdf

沖縄の島尻層群の泥岩は「クチャ」と呼ばれ、泥パックの材料として利用されています。このように、泥岩は建設材料や美容・健康分野など、意外な用途で活用されている興味深い岩石です。

 

 


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