走査型電子顕微鏡 原理 わかりやすい電子ビーム観察法

電子ビームを試料表面に走査させて、放出される電子を検出することで微細構造を観察する走査型電子顕微鏡(SEM)。その基本原理から応用まで、初心者にも理解しやすく解説します。電子銃から加速された電子がなぜ試料から二次電子を放出させ、高倍率の画像を生成できるのでしょうか?

走査型電子顕微鏡 原理 電子ビーム

走査型電子顕微鏡の基本構成と動作原理
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電子銃と加速機構

高エネルギー電子源から放出された電子を、数百V~30kVの高電圧で加速します。

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電磁レンズによる集束

加速された電子ビームを電磁石のレンズで細く絞り込み、試料に照射します。

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走査コイルによるスキャン

電子ビームを二次元的にずらしながら試料表面全体を網羅的に走査します。

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検出器と画像形成

放出された電子の強度を各点の明るさに変換し、試料表面の詳細な像を表示します。

走査型電子顕微鏡 原理における電子ビームの役割

 

走査型電子顕微鏡(SEM)は、極めて細く絞られた電子ビーム(電子プローブ)を試料表面に照射することが基本原理です。一般的なSEMでは、タングステンフィラメントなどの電子源から放出された電子を、数百V~30kVの高電圧で加速して、非常に小さなスポット状に収束させます。この電子ビームのサイズが小さいほど、より高い分解能で観察が可能になり、ナノメートルスケールの微細構造の観察を実現しています。

 

電子ビームは試料表面の特定の点に照射された時点で、試料を構成する原子の核および電子クラウドと相互作用を起こします。この相互作用の結果として、多様な信号が試料から放出されるのです。二次電子(試料原子がエネルギーを受け取って放出する低エネルギーの電子)、反射電子(入射電子がほぼ弾性的に反射される電子)、および特性X線(試料原子の内殻電子が励起されて放出される放射線)などが主要な信号です。これらの信号の中から、目的に応じて適切なものを選択的に検出することで、試料の表面形態や化学組成に関する情報を取得できます。

 

走査型電子顕微鏡 原理と二次電子の発生メカニズム

走査型電子顕微鏡の画像形成で最も重要な役割を果たすのが二次電子です。入射した電子ビームが試料表面に当たると、試料内の原子や電子に衝撃を与え、それらの原子から比較的低エネルギーの電子が放出されます。これが二次電子で、通常は数十eV以下のエネルギーを持っています。

 

二次電子の重要な特性は、試料の表面形態に敏感に反応することです。電子プローブが照射される際の角度や位置によって、二次電子の放出強度が大きく変わります。特に、試料表面の凹凸構造がある場合、凸部分からはより多くの二次電子が検出器に到達し、凹部分からは相対的に少なくなるという特性があります。この明暗の差がコントラストとなり、試料の立体的な表面形状が画像に映し出されるのです。

 

また、試料表面の各点で二次電子の発生強度を測定し、その値を各画素の明度に対応させることで、高い空間分解能を持つ二次元画像が構築されます。SEMで観察される画像の大部分は、この二次電子を利用した像であり、試料の微細な凹凸を立体感を持って観察できる主な理由となっています。

 

走査型電子顕微鏡 原理における反射電子と元素分析

入射電子ビームが試料表面に当たった時に、一部の電子がほぼそのエネルギーを失わずに反射される現象も発生します。この反射電子(バックスキャッターされた電子)は、二次電子と比べて相対的に高いエネルギーを保持しており、50eV以上のエネルギーを持つことが多いです。反射電子の検出強度は、試料を構成する元素の原子番号に大きく依存する特性があります。

 

原子番号が大きい元素(例えば属など)ほど電子をより効率的に反射する傾向にあり、原子番号が小さい元素(軽元素)ほど反射効率が低下します。したがって、反射電子を検出することで、試料表面の化学組成差を画像として表現できるという利点が生じます。異なる元素で構成される試料では、元素の種類に応じた明度の差がコントラストとして現れるため、試料内の元素分布を可視化することが可能です。

 

さらに、反射電子と組み合わせてX線検出器を装備すると、試料から放出される特性X線をエネルギー分散型X線分光法(EDS)で分析できるようになり、定量的な元素分析も実行できます。この機能により、SEMは単なる表面観察機器から、定性・定量分析ができる高性能な分析機器へと進化しています。

 

走査型電子顕微鏡 原理を支える真空環境と光学系

走査型電子顕微鏡が高い性能を発揮するためには、真空環境が必須の条件です。SEM内部は通常、高真空(10⁻⁴Pa程度以下)に保たれています。この真空環境が重要である理由は、電子が試料に到達するまでに気体分子との衝突を避けるためです。もし大気中で電子ビームを照射しようとしても、空気分子との衝突により電子ビームは散乱され、焦点を失い、観察は不可能になってしまいます。

 

SEM内部の光学系は、X線顕微鏡の可視光レンズに相当する役割を電磁石製のレンズが担当しています。これを電磁レンズと呼び、通常は3~5個のレンズがカスケード状に配置されます。最初の段階で加速電子ビームを初期的に収束させるコンデンサーレンズ、その後、より強く絞り込む対物レンズ、最後に試料上での焦点調整を行うレンズという具合です。これらのレンズの電流値を微調整することで、試料上でのビームスポットサイズを数ナノメートルから数ミリメートルの範囲で自由に変更でき、観察倍率を広範囲で変更することが可能になります。

 

走査型電子顕微鏡 原理の未知側面:動的な試料変化の追跡機能

一般的なSEM解説では触れられることが少ないものの、近年の技術進化で注目されているのが、リアルタイム動的観察機能です。従来型のSEMは静止した試料を観察する機器としてのイメージが強いですが、最新型のSEMには加熱観察、冷却観察、引っ張り観察などの環境制御機能が搭載されつつあります。

 

例えば、加熱観察では試料を加熱しながらリアルタイムで観察することで、材料の膨張挙動や結晶内の不純物の析出過程、破壊がどのような過程を経て進行するのかを直接目視することができます。引っ張り観察では、試料に張力を加えながら観察し、延性破壊がどこから起点するのか、亀裂がどのような経路で伝播するのかを追跡可能です。このように、SEMは単なる静的な画像取得機器から、材料の動的な挙動まで捉える動的分析プラットフォームへと進化しているのです。

 

クライオSEM観察では、含水試料を凍結させた状態で観察でき、従来の固定・脱水プロセスで失われていた生体組織の自然な状態を保持したまま観察できるという利点があります。このような観察法の拡張により、SEMは単に鉱物結晶の表面形態確認だけでなく、生命現象や材料の劣化メカニズムの研究ツールとしても活用の幅が急速に広がっています。

 

JEOLによるSEM応用例と詳細な光学系解説:走査電子顕微鏡の実用的な観察手法と多機能性について、製造企業の観点から詳しく記述されています。
AZサイエンスによるSEM基本原理解説:電子銃の仕組みから検出器までの一連のプロセスを、わかりやすい図解付きで紹介しています。
日本製鋼所によるSEM-EDX分析ガイド:二次電子像の詳細な特性と、EDS分析による元素同定の実践的な活用方法について。

 

十分な情報が収集できました。これからH3タグの構成を確認し、最終記事を構成します。

 

 


走査型プローブ顕微鏡入門