太陽誘電現象と積層技術の結晶構造や圧電効果への応用

太陽誘電が開発した積層セラミックコンデンサにおける圧電効果による音鳴き現象は、鉱物の結晶構造変化と類似した電気機械エネルギー変換メカニズムを示しています。この独自材料技術と積層プロセスは、どのように電子機器の小型化と高性能化を実現しているのでしょうか?

太陽誘電現象と積層技術

太陽誘電現象の3つのポイント
圧電効果による現象

電圧印加時にセラミック材料が変形し、音鳴きや振動を発生させる物理現象

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積層技術の進化

薄層化と多層化により1,000層以上の積層構造を実現し、小型・大容量化を達成

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低歪材料の開発

音鳴き現象を半減させる新材料により、静電容量を維持しながら振動を抑制

太陽誘電における圧電効果と音鳴き現象のメカニズム

 

太陽誘電が製造する積層セラミックコンデンサでは、誘電体に電圧を印加すると材料が変形する「逆圧電効果」と呼ばれる現象が発生します。この現象は、セラミック材料など誘電体に電圧を加えた際に物理的な変形が生じる特性によるものです。高誘電率系の積層セラミックコンデンサは、電圧が印加されると誘電体が変形する(歪む)という特性を持っており、交流電圧を印加すると誘電体が伸び縮みします。

 

参考)https://www.yuden.co.jp/jp/news/category/upload/100907jp.pdf

この逆圧電効果により、基板に実装された積層セラミックコンデンサが歪むことで基板が振動し、「ジー」「キー」「ピー」といった音(音鳴き)が聞こえる現象が発生します。音鳴きが発生する具体的なプロセスは、積層セラミックコンデンサに交流電圧を印加すると伸び縮みし、その振動が実装している基板に伝達され、基板の振動周波数が人間の可聴周波数帯域(20Hz~20kHz)の時に音として認識されるものです。基板の振幅は1pm~1nm程度と非常に小さいですが、音としては十分な大きさに聞こえます。

 

参考)積層セラミックコンデンサの『音鳴き』について! - Elec…

太陽誘電では、この音鳴き対策として新たな低歪材料を開発し、従来品に使用している材料から歪みを半減させることに成功しました。具体的には「GMK325 LD106KN」や「TMK316BLD106KL」といった製品を商品化し、静電容量10μFを維持しつつ、発生する音の大きさを従来の半分から3分の1程度に抑えることができました。この低歪材料の開発により、ノートPCや液晶TV、液晶モニタ向けの電源回路や液晶駆動用回路の平滑用途において、音鳴き現象の問題を大幅に改善しています。

太陽誘電の積層技術と結晶構造の特徴

太陽誘電の積層セラミックコンデンサ(MLCC)は、独自の材料技術と積層技術を組み合わせることで、小型・薄型・大容量化を実現しています。MLCCの誘電体材料であるチタン酸バリウムは、酸化チタンと炭酸バリウムを合成して作られ、太陽誘電では商品の特性に合わせた最適なチタン酸バリウムを自社で合成する技術を持っています。

 

参考)特集:材料技術、積層技術を中心とした商品展開

積層技術の核心は、極めて薄い層を多数積み重ねることにあります。MLCCの1層は薄いものでわずか300nmほどで、1層を薄くしてたくさん積み重ねることで、MLCCに蓄える電気の量を増やすことができます。太陽誘電はこの積層技術を高度化し、1,000層以上の積層構造を持つ商品も開発しています。この薄層シートをズレなく積み重ねる技術は、MLCCの性能向上において非常に重要な役割を果たしています。

積層セラミックコンデンサの構造は、銀やパラジウムといった内部電極と、誘電率の極めて高いチタン酸バリウムが交互に積層されたミルフィーユ状の層状構造を持ちます。静電容量を増やすためには、誘電体層を薄くして積層数を増やす必要があり、この技術により小型化と大容量化の両立が可能となっています。太陽誘電の積層技術は、1980年代初頭に3216サイズ(3.2mm×1.6mm)で静電容量0.1µFであったものを、現在ではその1000倍の100µFにまで向上させています。

 

参考)積層セラミックコンデンサとは?

太陽誘電製品における圧電効果の応用と電圧変換

圧電効果は「電気エネルギー」と「機械エネルギー」を相互変換する性質を持ち、太陽誘電の製品開発において重要な役割を果たしています。圧電セラミックスに外部から力を加える(機械エネルギーを加える)と電圧が発生する「圧電正効果」と、電圧をかける(電気エネルギーを加える)と極性に応じて伸びたり縮んだりする「圧電逆効果」の2つの基本機能があります。

 

参考)圧電セラミックス/圧電材料|セラミックス製品|製品情報|本多…

太陽誘電は積層セラミックコンデンサやインダクタで培った積層技術を応用し、積層圧電アクチュエータを開発しています。この製品は、独自の材料技術で低い誘電率と高い電気機械結合係数を兼ね備えた材料を開発し、積層技術により最適構造化を実現しています。積層圧電アクチュエータは、広い駆動周波数帯域や速い応答性、低消費電力といった特徴を持ち、繊細で高品位な触感を表現することが可能です。

 

参考)積層圧電アクチュエータ|製品情報|太陽誘電株式会社

圧電セラミックスに電極を付けて交流電圧を印加すると、圧電効果により振動し、超音波が発生します。共振周波数で振動させることで大きな振幅を得ることができ、この特性は超音波発生装置などに応用されています。分極処理(高い温度下でセラミックスに直流高電圧を加えて自発分極の向きを揃え極性を与える)を行うことで、圧電効果を持つようになります。太陽誘電は「協創プログラム2022 PartⅡ」において、圧電セラミック素子を使った新しいソリューション創出を目指しており、力を加えることにより電圧を発生させる特性を活用した製品開発を進めています。

 

参考)太陽誘電「協創プログラム2022 PartⅡ」

鉱物の蛍光現象と高圧結晶構造変化との関連性

自然界の鉱物においても、太陽誘電の技術と類似した電気的・構造的現象が観察されます。蛍石(ほたるいし)という鉱物は、太陽光にあててから暗い場所に移すと、ぼんやりとした青い蛍光を発することで知られています。この現象は、太陽光の紫外線により結晶中の電子が励起され、それが元に戻るときに蛍光としてエネルギー放出されるメカニズムによるものです。

 

参考)https://www.tdk.com/ja/tech-mag/hatena/036

蛍光現象の仕組みは、紫外線という強いエネルギーの光が石に当たると、石の中の電子が刺激を受けて一時的に高いエネルギーの状態に跳ね上がり、跳ね上がった電子が元の状態に戻るときにその余分なエネルギーを「光」として放出するものです。蛍光を示すかどうかは、その石に含まれる不純物や微細な構造の違いによって決まり、マンガンやウラン、希土類元素などが微量に含まれていると蛍光性が現れることがあります。蛍光石(fluorite)は紫外線下で蛍光を発することで知られていますが、他の鉱物のように燐光や暗闇で発光することはありません。

 

参考)天然石と紫外線|色が変わる?変色・蛍光・輝きの仕組みを解説

高圧鉱物における結晶構造変化も、太陽誘電の積層技術における材料変化と類似した現象を示します。カンラン石からできる高圧鉱物として、1969年に「リングウッダイト」、1983年に「ワズレアイト」という高圧鉱物が発見されました。高圧鉱物とは、グラファイトが地下の深いところで高い圧力を受けて密度が高まり、硬い構造に変化したダイヤモンドのように、高圧がかかったことでつくられる鉱物を指します。カンラン石に高い圧力が加わると、結晶構造が変化し、密度が高くなってポワリエライトなどの高圧鉱物になります。

 

参考)新発見鉱物「ポワリエライト」から太陽系の誕生、地球の中身が見…

鉱物が一瞬だけ衝撃を受けた場合の結晶構造変化については、筑波大学の研究で瞬間の結晶構造変化を超高速X線撮影する実験が行われました。衝撃による瞬間的な高温高圧状態が引き起こす結晶構造変化は、長時間の高温高圧状態が引き起こす変化とは異なることが分かり、温度・圧力条件のみならず時間も結晶構造変化にとって重要なパラメーターであることが実験で確認されました。

 

参考)https://www.tsukuba.ac.jp/journal/pdf/p20220509140000.pdf

太陽誘電技術の独自視点:宇宙機での放電現象との比較

太陽誘電の技術は、地上での電子機器応用だけでなく、宇宙環境での放電現象とも興味深い関連性を持っています。宇宙機の太陽電池パネルでは、プラズマ環境下で「トリプルジャンクション」と呼ばれる導体・絶縁体・プラズマの境界が接する箇所で電気力線が集中し、初期放電が発生しやすくなります。

 

参考)https://www.jspf.or.jp/Journal/PDF_JSPF/jspf2015_09/jspf2015_09-614.pdf

宇宙機が太陽電池を使用して発電すると、太陽電池の正極は宇宙プラズマから電子を収集し、宇宙機構体はイオンを収集して電流のループが形成されます。電子とイオンの移動度が異なるため、衛星構体全体が発電電位と同じ程度負に沈み、イオン電流を収集することでループが維持されます。この状態は「逆電位勾配(Inverted Potential Gradient: IPG)」と呼ばれ、衛星構体と太陽電池表面のカバーガラス間には衛星の発電電圧分の電位差が生じます。

トリプルジャンクションで放電が発生すると、宇宙機に蓄えられた電荷は宇宙プラズマに放出されます。放電で発生したプラズマは誘電体表面に蓄えられた電荷を中和しながら誘電体表面を移動し、この放電の進展は「フラッシュオーバー」と呼ばれます。帯電した状態の太陽電池パネルのカバーガラス一枚一枚が電荷を蓄えたコンデンサと考えることができ、放電で発生したプラズマはコンデンサの電荷を取り込みながら太陽電池パネル上を伝播します。

この宇宙環境での現象は、太陽誘電が地上で開発している積層セラミックコンデンサの動作原理と共通する部分があります。両者とも誘電体材料における電荷の蓄積と放出、電位差の形成、そして環境条件による電気的特性の変化という要素を含んでいます。太陽誘電の技術は、極限環境である宇宙空間での電子部品の信頼性向上にも貢献する可能性を秘めています。

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