太陽電池 仕組み 詳しく 光エネルギー変換

太陽電池はどのようにして太陽の光を電気に変えるのでしょうか?半導体の仕組みから発電の原理、実際の構造まで、初心者向けに丁寧に解説します。複雑な太陽電池の仕組みを理解できます。

太陽電池 仕組み 詳しく 発電原理

太陽電池発電のメカニズム
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光起電力効果とは

太陽光が半導体に当たると、光エネルギーが直接電気エネルギーに変換される現象

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電子と正孔の生成

光が当たることで、マイナスの電子とプラスの正孔が同時に発生

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電気の流れ

生成された電子と正孔が移動して、外部回路を通じて電流が発生

太陽電池 仕組みの基本:光起電力効果

 

太陽電池の核となる仕組みは「光起電力効果」です。これは、光を受けると電気が発生する現象を指し、1887年にセレニウムの結晶で発見されました。現代の太陽電池はこの原理を応用し、シリコンなどの半導体材料を使用して、太陽の光エネルギーを直接電気に変換しています。

 

光起電力効果が起こる際、太陽からの光(光子)が半導体に照射されると、その光エネルギーで半導体内の電子が励起状態となります。この興奮状態の電子は、通常の状態では存在できない自由なエネルギー状態へと移行し、それがやがて電気の流れとなるのです。このプロセスは極めて高速で、光が当たる瞬間に次々と電子が生成され続けることで、継続的な電流が実現されます。

 

太陽電池 仕組みを支える半導体の役割

太陽電池の仕組みを理解するには、半導体という材料について知ることが不可欠です。半導体とは、導体と絶縁体の中間的な性質を持つ材料で、電気を通すことも通さないこともできるという特性があります。現在の主流は「シリコン半導体」で、この材料の価電子帯から伝導帯へ電子を遷移させることが発電の第一段階になります。

 

半導体には2種類あり、一つはP型半導体(正孔が多い)、もう一つはN型半導体(電子が多い)です。これらを組み合わせることで、太陽電池の基本的な構造が完成します。P型半導体はプラスの電気を持つ「正孔」という空間的欠陥が多く、N型半導体はマイナスの電気を持つ「電子」が多い状態です。この2種類を接合させると、接合面に電界が自動的に形成されるメカニズムが生まれます。

 

電界が形成されるのは、電子がN型からP型へ移動しようとする傾向と、正孔がP型からN型へ移動しようとする傾向が釣り合う地点で安定するためです。このバランス状態が「空乏層」と呼ばれ、太陽電池の発電を担う最も重要な領域となります。

 

太陽電池 仕組みにおけるPN接合と内部電界

太陽電池の仕組みの中で、PN接合は最も重要な構造要素です。P型とN型の半導体を接合させると、接合面に内部電界が自動的に形成されます。この内部電界は、電子がN型へ、正孔がP型へ移動する力を持ち、常にこの方向への力が働いています。

 

光が当たる前の状態では、接合面近くの電子と正孔は互いに結合し、動けない状態で存在します。しかし太陽光が当たると、光エネルギーによってこれらの電子と正孔が「叩き出される」のです。このメカニズムにおいて、光が当たった瞬間に電子と正孔が引き離され、内部電界に導かれて別々の方向へ移動します。電子はN型半導体側へ押し流され、正孔はP型半導体側へ移動するという流れが、太陽電池の発電の本質です。

 

この過程で起電力が生じ、その電力は光を当てている間は持続します。次々と新しい電子と正孔が生成され、外部の電気回路に電力を供給し続けることが、太陽電池の発電の継続メカニズムなのです。

 

太陽電池 仕組みに関わる光吸収と色の選別

太陽電池の仕組みにおいて、見過ごされがちながら重要な要素が「光の色」と「光吸収」のプロセスです。太陽からの光は白く見えますが、実は虹の七色(赤外線から紫外線まで)からできています。太陽電池が効率よく発電するためには、このスペクトラムのうち、特定の波長の光を効果的に吸収する必要があります。

 

例えば、シリコン太陽電池は赤色から近赤外線の波長をよく吸収し、青色や紫色の波長では吸収効率が低くなります。このため、太陽電池のバンドギャップ値(材料が光を吸収できる最小のエネルギー)が重要になります。光のエネルギーがこのバンドギャップより大きければ、電子を励起させられます。逆に小さければ、その光を吸収して利用することができません。

 

この色選別のメカニズムにより、太陽電池の理論上の最大効率(シャークレー・クワイサー限界)が決まります。シリコンの場合、このバンドギャップは約1.1電子ボルトで、太陽光スペクトラムのうち約77%しか利用できず、残りの23%はエネルギーロスとなります。これが、現在のシリコン太陽電池の変換効率が理論値20%前後に留まる理由の一つなのです。

 

太陽電池 仕組みの多層構造と外部回路との連携

実際の太陽電池の仕組みはさらに複雑で、単純なPN接合だけでは成立しません。実用的な太陽電池は、複数の層からなる多層構造になっています。最表面には「反射防止膜」があり、できるだけ多くの光を吸収させるための工夫がされています。その下に、主に光を吸収する「発電層」があり、さらにその下には「バックサーフェス電界」や「バックコンタクト」と呼ばれる層があります。

 

外部回路との連携も、太陽電池の仕組みを理解する上で欠かせません。PN接合で生成された電子は、外部の電気回路を通じてP型半導体側へ戻り、正孔と結合します。この外部回路を通じた電子の移動が「電流」となり、その流れによって照明やモーターなどの電気機器を動作させることができるのです。

 

外部回路がなければ、電子と正孔は接合面で即座に結合してしまい、継続的な電流は発生しません。外部回路があるからこそ、電子は少し遠回りをして戻ることになり、その経路上で有用な電気仕事を行うことが可能になります。この仕組みにより、太陽電池は単なる発電装置ではなく、実際に人間の生活に役立つエネルギー供給源となるのです。

 

参考資料:太陽電池発電の基本原理については、産業技術総合研究所(AIST)の「太陽電池の原理」解説が、半導体の接合とその動作メカニズムについて詳しく説明しています。

 

産業技術総合研究所 太陽電池研究
参考資料:シリコン系太陽電池の実用的な構造と発電メカニズムについては、京セラの太陽光発電システム解説が、消費者向けにわかりやすく説明しています。

 

京セラ 太陽光発電システム

 

 


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