尾太鉱山水晶と黄鉄鉱や閃亜鉛鉱共生特徴から採集価値まで

青森県尾太鉱山で産出される水晶は、黄鉄鉱や閃亜鉛鉱などの金属鉱物と美しく共生した国産鉱物標本として高い評価を受けています。閉山後も入手困難で、コレクター垂涎の逸品とされるこの水晶には、どのような特徴と魅力があるのでしょうか?

尾太鉱山水晶の特徴と共生鉱物

尾太鉱山水晶の主な特徴
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美しい結晶形態

細身の結晶がまっすぐ上へ伸び、四方八方にエネルギーを放射する端正な形状が特徴

多様な共生鉱物

黄鉄鉱、閃亜鉛鉱、黄銅鉱、菱マンガン鉱など金属鉱物との美しい共生が見られる

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希少な国産標本

1978年閉山後は新規採掘がなく、コレクターの放出品でのみ入手可能な貴重な鉱物

尾太鉱山水晶の結晶形態と透明度

 

尾太鉱山産の水晶は、細身で端正な結晶形状が最大の特徴です。結晶はまっすぐ上へ向かって伸び、大小さまざまなサイズの結晶が密集してクラスター(群晶)を形成します。大きめの結晶の先端部分は透明度が高く、光が当たるとキラキラと反射して美しい輝きを放ちます。

 

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結晶の成長パターンも多様で、双晶状に成長したり、さまざまな方向を向いて成長する個体も見られます。この独特な成長形態は、尾太鉱山の熱水環境における結晶化条件を反映しています。結晶表面は光沢があり、国産水晶の代表格として完璧な形状を持つと評価されています。

 

参考)https://www.tennenseki-akuse.com/?pid=147619182

水晶の色合いは無色透明から白色、茶色がかったものまで変化に富んでいます。これは共生する鉱物や微量の不純物の影響によるもので、標本ごとに異なる表情を見せてくれます。

 

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尾太鉱山水晶と黄鉄鉱の共生

尾太鉱山産水晶の魅力の一つは、金色に輝く黄鉄鉱(パイライト)との共生です。透明な水晶クラスター上に、立方体や五角十二面体の黄鉄鉱結晶が散点状に付着している標本が多く見られます。黄鉄鉱の結晶は最大5mm程度のものが多く、煌びやかな金属光沢が水晶の透明感と美しいコントラストを作り出します。

 

参考)https://www.tennenseki-akuse.com/?pid=147618313

特に注目すべきは、黄鉄鉱の結晶形態の多様性です。立方体の結晶に加え、角に丸みを帯びた一斗缶のような形状のものや、細長く平べったい形状に集合したものなども産出されています。尾太鉱山は黄鉄鉱を多量に産出した金属鉱山であったため、水晶との共生標本が豊富に存在します。

 

参考)https://www.natural-soma.com/?pid=173189494

水晶の結晶の間に黄鉄鉱が点在する様子は、光を受けてきらめき、非常に幻想的な景観を作り出します。底面の石英質母岩にも黄鉄鉱が含まれていることが多く、標本全体に金属的な輝きが広がっています。

 

参考)https://1877.jp/?pid=175785582

尾太鉱山水晶と閃亜鉛鉱や黄銅鉱の共生

尾太鉱山では水晶と閃亜鉛鉱(スファレライト)の共生標本も特徴的です。閃亜鉛鉱は褐色から黒褐色の金属光沢を持つ鉱物で、板状の塊として水晶の母岩部分を形成することが多く見られます。閃亜鉛鉱の塊の上に水晶が群生し、その合間に黄鉄鉱や黄銅鉱が散点する複雑な鉱物組成は、尾太鉱山の鉱脈の晶洞環境を物語っています。

 

参考)https://www.tomo-crystal.com/01/z/japanese-minerals/163japanese-minerals.html

黄銅鉱(カルコパイライト)は、黄金色から真鍮色の金属光沢を持ち、菱形十二面体などの特徴的な結晶形態を示します。尾太鉱山の黄銅鉱結晶は、古典的な面記号でいうとm(110)とe(101)がほぼ等大に発達した、ほぼ完全な菱形十二面体を形成する個体も見られ、結晶学的に貴重です。

 

参考)尾太の水晶と黄銅鉱href="https://chokomineral.blogspot.com/2020/01/quartz-and-chalcopyrite-from-oppu.html" target="_blank">https://chokomineral.blogspot.com/2020/01/quartz-and-chalcopyrite-from-oppu.htmlamp;#12288;Quartz and Ch…

これら複数の金属鉱物が水晶と共生する標本は、一つの鉱物だけでなく水晶、黄鉄鉱、閃亜鉛鉱、黄銅鉱が同時に観察できるため、鉱物学習や観賞用として高い価値を持ちます。母岩部分には長石や石英なども含まれており、鉱脈の鉱物組成の多様性を示しています。

 

参考)https://www.tomo-crystal.com/01/japanese-minerals1/index.html

尾太鉱山水晶と菱マンガン鉱の関係

尾太鉱山では、青森県の石(鉱物部門)に指定された菱マンガン鉱も産出されました。菱マンガン鉱は化学組成が炭酸マンガン(MnCO3)で、美しいピンク色から紅色を呈する鉱物です。尾太鉱山産の菱マンガン鉱は、ぶどう状の集合体として産出することが多く、その品質と美しさは世界的にも有名で、閉山後の今でも商業取引されています。

 

参考)https://ameblo.jp/geo-fukaura/entry-12431586608.html

菱マンガン鉱と水晶が共生する標本も存在し、ピンク色の菱マンガン鉱と透明な水晶、金色の黄鉄鉱が一つの標本に共存する非常に色彩豊かな鉱物標本として珍重されています。これらの鉱物は、地下深部の熱水が地層や岩石の割れ目に入り込み、減圧冷却されることで結晶化したと考えられています。

菱マンガン鉱の名前は、ひし形(菱形)が6つ集まってできる立体である菱面体の結晶を作ることに由来しますが、尾太鉱山産のものは塊状やぶどう状のものが主体です。宝石として取引されることもあり、鉱物コレクターの間では「ロードクロサイト」の名でも知られています。

尾太鉱山の歴史と鉱物採集の現状

尾太鉱山は青森県中津軽郡西目屋村に位置し、江戸時代の1650年(慶安3年)に銀の採掘が始まった歴史ある鉱山です。1677年(延宝5年)には大鉱脈が発見され、年間600-700貫の銀を産出する銀山として繁栄しましたが、銀を掘り尽くして衰退しました。

 

参考)尾太鉱山 - Wikipedia

18世紀には銅・鉛の有望な鉱脈が発見され、年間約440トンもの産出量を誇る銅山として最盛期を迎えました。この時期、尾太の人口は8000人に達し、弘前藩内では弘前、青森に次ぐ人口規模を持つ鉱山町となりました。

 

参考)尾太鉱山とは - わかりやすく解説 Weblio辞書

近代に入ると、1971年(昭和46年)にピークを迎え、銅精鉱、鉛精鉱、亜鉛精鉱、硫化鉄精鉱などを大量に産出する日本有数の金属鉱山となりました。しかし1978年に閉山し、現在では新規の鉱物採集は不可能となっています。

国内の鉱山はほとんど閉山しているため、国産水晶を入手するには個人のコレクションから放出されるのを待つ以外にほとんど方法がなくなってきています。そのため、尾太鉱山産の水晶標本は入手困難な貴重品として、鉱物市場で高い評価を受けています。西目屋村へは弘前駅から路線バスで約65分、または車で約30分でアクセスできますが、鉱山跡地は廃水処理施設が残るのみとなっています。

 

参考)西目屋村へのアクセス/西目屋村

 

 


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