放射線の影響を表す単位として使用されるシーベルト(Sv)には、ミリシーベルト(mSv)とマイクロシーベルト(μSv)という分量単位があります。これらは国際単位系における接頭辞を用いた表記で、ミリは1,000分の1、マイクロは1,000,000分の1を意味します。
参考)https://www.pref.shimane.lg.jp/genan/index.data/25housyasenpanf.pdf
具体的な換算関係は以下の通りです。
参考)https://www.pref.kanagawa.jp/sys/atom/gosyoukai/3_3.html
したがって、1ミリシーベルトは1,000マイクロシーベルトに相当し、0.1ミリシーベルトは100マイクロシーベルト、0.001ミリシーベルトは1マイクロシーベルトとなります。日常生活で受ける放射線量を表す際には、シーベルト単独よりもミリシーベルトやマイクロシーベルトが通常よく使われます。
参考)https://www.jaea.go.jp/04/ztokai/kankyo/kihou/kihou19_1/dic/unit.html
放射線測定器の読み値を記録する際、単位によって桁数が大きく変わるため、換算を正確に行うことが重要です。
参考)https://www.r-info-miyagi.jp/r-info/column/column_2/
日本における追加被ばく線量の基準として、年間1ミリシーベルト(mSv/年)という値が用いられています。この基準値を時間当たりの空間線量率に換算すると、安全側に立った仮定の下で毎時0.23マイクロシーベルト(μSv/h)に相当します。
参考)環境省_QA2-20 年間の追加被ばく線量1ミリシーベルト(…
私たちは自然界から常に一定量の放射線を受けており、日本平均では1人あたり年間2.1ミリシーベルト、世界平均では年間2.4ミリシーベルトとされています。この自然放射線は、宇宙からの宇宙線、大地に含まれる天然の放射性元素、食物に含まれる放射能などに由来します。
参考)日常生活における放射線の影響について (消費者庁の資料より)…
放射線の人体への影響を評価する際、同じシーベルト値であれば自然放射線でも人工放射線でも、また外部被ばくでも内部被ばくでも、体への影響の度合いは同じとされています。ただし、人体に影響が出てくると言われている被ばく量は累積で100ミリシーベルト(=100,000マイクロシーベルト)とされており、日常の自然放射線レベルとは大きく異なります。
参考)https://www.u-tokyo-rad.jp/wp/wp-content/uploads/2023/11/3.pdf
年間の追加被ばく線量1ミリシーベルトという基準は、原子力施設周辺の環境放射線モニタリングや、福島第一原子力発電所事故後の除染目標値として広く知られるようになりました。
花崗岩や放射性鉱物は自然放射線を放出することで知られており、その線量は鉱物の種類や産地によって大きく異なります。花崗岩は他の岩石に比べて微粒のモナズ石、褐れん石、ジルコンなどの放射性鉱物を多く含むため、やや放射能が強い傾向があります。
参考)https://www2.city.kurashiki.okayama.jp/musnat/geology/mineral-rock-sirabekata/mineral44/mineral-houshanou/mineral-houshanou.html
一般的な岩石の放射線量は直近で0.03~0.05マイクロシーベルト毎時(μSv/h)程度ですが、花崗岩では約0.1μSv/h程度となります。これは花崗岩がウラン(U)、トリウム(Th)、カリウムの放射性同位体(40K)を含んでいるためです。
参考)https://www.sci.keio.ac.jp/gp2010/practice/chemistry/pdf/detail/chemistry_detail.00023.00000032.pdf
数センチメートル以下の大きさの放射性鉱物の放射能は、測定器の直近で0.数~数十マイクロシーベルト毎時程度であることが多いとされています。鉱物の放射能測定にはガイガーカウンターやシンチレーションカウンターが使用され、まず空気中のバックグラウンドを測定し、その後鉱物を近づけて測定した値の差分が鉱物の放射能となります。
花崗岩中の石英が灰色がかっているのは、花崗岩自身が放出するγ線の影響によるものです。鉱物によっては、ウランやトリウムの含有率が高く数十万~約100万年以上前にできたものは、それらの放射壊変でできたラジウム(Ra)、ラドン(Rn)、ポロニウム(Po)などの娘核種を含むため、より強い放射能を示します。
放射線量を表す際、時間単位の扱いが重要になります。環境放射線モニタリングでよく見かける「マイクロシーベルト毎時(μSv/h)」という単位は、1時間あたりに受ける放射線量を示します。これを年間の被ばく線量に換算する際には、時間の積算が必要です。
例えば、年間1ミリシーベルトという基準値を時間当たりの空間線量率に換算すると、毎時0.23マイクロシーベルトになります。この計算には、屋外に8時間、屋内(木造家屋)に16時間滞在するという仮定が含まれており、屋内での遮蔽効果(放射線量が屋外の40%に低減)も考慮されています。
参考)環境省_放射線による健康影響等に関するポータルサイト - 年…
実際の計算式では、1年間を8,760時間(365日×24時間)として考え、滞在時間と遮蔽係数を加味した上で逆算することで、空間線量率の基準値が導き出されます。このため、測定された空間線量率から年間被ばく線量を推定する際には、単純な掛け算ではなく、生活パターンを考慮した計算が必要となります。
放射線測定器の表示単位にも注意が必要で、シーベルト、ミリシーベルト、マイクロシーベルトのいずれで表示されているかを確認し、適切に換算することが求められます。
参考)放射線被ばくに関するQhref="https://www.qst.go.jp/site/nirs/1831.html" target="_blank">https://www.qst.go.jp/site/nirs/1831.htmlamp;A - 量子科学技術研究開発機構
鉱物コレクションの分野では、放射性鉱物に含まれるラジウム(Ra)とその娘核種であるラドン(Rn)の関係を理解することが安全管理上重要です。ラジウムの半減期は1,622年と長いため、温泉水や鉱物中にラジウムがあれば、実質的に半永久的にラドンを生産し続けます。
参考)https://www.murasugi.com/contents/document04-002/2
日本の鉱泉(温泉)における放射能の定義では、ラドン濃度が20×10^-10キュリー以上(5.5マッヘ単位以上)で常水と区別され、30×10^-10キュリー以上(8.25マッヘ単位以上)で療養泉(放射能泉)として認められます。1キュリーは毎秒3.700×10^10壊変する放射性物質の量を示し、1グラムのラジウムと放射平衡にあるラドン量に相当します。
参考)https://www.asahi-net.or.jp/~vd5h-cb/bbs/special/sience_of_hotspring/sience_of_hotspring_4-6.htm
放射性鉱物の中でも、ウラン・トリウムを主成分とするサマルスキー石、ユークセン石、フェルグソン石、および褐れん石やジルコンなどのケイ酸塩鉱物は、長い地質時代の間に原子配列が破壊されるメタミクト化という現象を起こします。これはウラン238の自発核分裂やα崩壊による影響で、数千万年から十数億年という時間スケールで進行します。
鉱物コレクターにとって注意すべき点は、放射性鉱物は密閉容器に保管すると内部にラドンガスが蓄積する可能性があることです。ラドンは不活性の気体元素であり、半減期は3.8日と比較的長いため、換気の悪い場所での保管は避けるべきです。照射処理された宝石についても、中性子照射を受けたものは安全になるまで12~24ヶ月の保管期間が必要とされる場合があります。
参考)放射線照射された宝石は危険ですか?
環境省の放射線による健康影響等に関する資料(年間追加被ばく線量の換算方法について詳細に解説)
日本原子力研究開発機構の放射線単位の解説資料(シーベルトの分量単位と換算表)
神奈川県環境放射線モニタリングシステムの単位換算表(ミリシーベルトとマイクロシーベルトの具体的な換算例)
資源・素材学会の岩石放射線量測定に関する論文(空間線量計を用いた鉱物・岩石の自然放射線量測定法)