金襴手九谷焼の特徴と歴史と見分け方

金襴手九谷焼は赤と金彩が織りなす豪華絢爛な美の世界。明治期には海外で「ジャパンクタニ」として人気を博し、現在では希少な技法として注目されています。その歴史、特徴、価値から作家情報まで、陶芸愛好家が知っておくべき知識を詳しく解説します。あなたも金襴手の魅力に触れてみませんか?

金襴手九谷焼の特徴と歴史

実は金襴手の本格的な技術を操れる作家が現在ではほとんどいません。


この記事のポイント
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豪華絢爛な赤地金彩

赤で下地を塗り詰めた後、金彩で文様を描く金襴手は九谷焼を代表する技法で、明治期には海外で高い評価を受けました

複数回の焼成で生まれる深み

色彩と金彩を重ねる複雑な工程により、他の九谷焼とは一線を画す立体感と光沢が実現されています

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希少価値の高まり

技術継承者が減少し、現在では希少な技法として市場価値が上昇、買取相場は平均3万円程度です

金襴手九谷焼の誕生と永楽和全の功績

金襴手の技法を九谷焼に持ち込んだのは、京焼の名工・永楽和全です。江戸時代終盤、廃絶状態となった宮本屋窯を受け継いだ九谷本窯に、指導者として京都から招かれた永楽和全は、慶応元年(1865年)から明治3年(1870年)まで加賀大聖寺藩で作陶を行いました。


参考)https://www.toulife.jp/?mode=f85


赤で塗り埋めた器に金彩のみで描く金襴手の技法は、煌びやかで艶やかな表現を可能にしました。この技法の特徴は、赤を下地として使用することで金彩の発色が一層鮮やかで深みのあるものになる点にあります。温かみのある赤い反射面が焼成後に金の輝きをより豊かに見せる効果があるんですね。


参考)九谷焼:永楽和全がもたらした加賀百万石豪華絢爛の象徴「赤地金…


龍や鳳凰、唐草文、瓔珞文といった伝統的なモチーフが頻繁に使用され、加賀百万石の豪華絢爛さを表現する画風として確立されました。永楽風と呼ばれるこのスタイルは、九谷焼に豪華さと洗練さを持ち合わせた新しい美をもたらしたということです。


九谷庄三が確立した彩色金襴手の発展

明治期に入ると、九谷庄三が彩色金襴手(さいしょくきんらんで)という新たな様式を開発しました。江戸時代後期から明治時代初期にかけて、輸入された洋絵の具を用いて確立されたこの技法は、赤絵と金彩の精密な絵付けが特徴です。


参考)九谷焼 美学の象徴:加賀百万石の豪奢で精緻な彩色金襴手 九谷…


庄三風と呼ばれるこの画風は、複数回の焼成を経て色彩と金彩を重ねる技法を駆使し、作品に深みと光沢を与えました。このプロセスには高度な技術と熟練が必要であり、その結果、庄三風の作品は他の九谷焼とは一線を画すものとなっています。特に金彩を効果的に使用することで、作品に立体感と豪華さが加わり、その華麗な仕上がりは見る者を圧倒します。


当時の九谷焼は産業としての発展を目指していた時期であり、庄三の革新的なアプローチは九谷焼の再興と発展に大きく貢献しました。画風にあうように素地を外部から仕入れるなどして、工房の作品は人気を集めたんです。この作風は当時の九谷焼の中核となり、海外にも輸出されています。


参考)石川の伝統工芸品「九谷焼」の特徴 その謎に包まれた歴史をご紹…


金襴手九谷焼が「ジャパンクタニ」として海外で評価された理由

1900年代初頭、金襴手の九谷焼はヨーロッパでの万国博覧会で大好評を得て、海外にも数多く輸出されました。明治期に入り、庄三風は国内外で高く評価され、日本の陶磁器輸出の重要な一翼を担ったということです。


参考)https://www.kilnart.jp/studio/class/studio-iroekinrande/


特に欧米市場で「ジャパンクタニ」として人気を博しました。精緻な上絵付と華麗な彩色金襴手は、多くの外国人コレクターを魅了しました。本金を用いた華やかさに特徴がある金襴手は、明治以降の再興九谷の中で最も中心的な絵付技法となったんです。


この成功により、庄三風は九谷焼のスタイルとして確固たる地位を築きました。海外での評価が高まったことで、九谷焼全体の芸術的な評価や市場での地位も大きく押し上げられることになります。


金襴手九谷焼の現在の技術継承と希少価値

現在では希少な技法になりつつあり、その価値が高まっています。庄三風の技法を操れる作家が非常に少なくなっており、その美しさと唯一無二の技術継承に不安を残しているのが現状です。


赤絵・金襴手は、にじみにくい赤の絵の具の特性を活かした様式で、背景色を赤で塗り詰めているため、色の太さの違いで文様を描かなければいけません。そのため高い技術を求められる様式なんですね。小紋などで埋め尽くされた器に、さらに金彩で絵付した様式は赤絵のなかでも特に「金襴手」と言われており、配色が織物の金襴の趣に似ているところから日本でこう呼ばれてきました。


参考)https://wargo.jp/blogs/mansaku-column/yakimono_kutani


現代においても、庄三風の技法や美学は多くの作家に受け継がれ、現代の九谷焼に新たな創造のインスピレーションを与え続けています。豊かな色彩と複雑な技法は、現代の作家たちが新しい作品を生み出す際の重要な基盤となっているということです。


金襴手九谷焼と他の九谷焼様式との違い

九谷焼には金襴手以外にも複数の様式があり、それぞれ異なる特徴を持っています。青手は寒色を主とした濃く深みのある緑・黄・紺・紫を使用し、赤を使用しないことが特徴です。九谷焼独特の色合いから「青九谷」とも呼ばれています。


参考)九谷焼ってどんな焼き物?歴史、特徴、見分け方を徹底解説


色絵五彩手は、赤・緑・紫・群青・黄の五彩を「九谷五彩」として使用した様式です。呉須(ごす)と呼ばれる顔料で線描きをしたところに、五彩の絵の具を自在に活かしながら厚く盛り上げて塗る彩法になっています。


様式名 主な色使い 特徴
金襴手 赤地に金彩 赤で下地を塗り詰め、金彩で文様を描く豪華な様式。高度な技術が必要
青手(青九谷) 緑・黄・紺・紫 赤を使用しない寒色系。濃く深みのある色合いが特徴
色絵・五彩手 赤・緑・紫・群青・黄 九谷五彩を使用し、厚く盛り上げて塗る技法

金襴手は青手とは逆に、にじみにくい赤の絵の具の特性を活かしている点が大きな違いです。これらの様式の違いを理解することで、九谷焼の多様な美の世界をより深く楽しめます。


金襴手九谷焼の価格相場と市場価値

金襴手九谷焼の買取価格は、作品の年代や作家、保存状態によって大きく変動します。九谷焼全体の平均買取価格は30,000円程度になりますが、作家ものの場合は数十万円単位の買取価格が期待できます。


参考)九谷焼の買取価格はどれくらい?相場の目安と高く売るための査定…


市場で高額取引されている九谷焼のほとんどが作家ものです。そのため作家ものの九谷焼だと分かっているだけで、高価買取の可能性は高まります。人間国宝の作品であっても、実はお手頃価格で買える作品もあるんです。


参考)https://item.rakuten.co.jp/hokusando/c/0000000184/


Yahoo!オークションでの落札データを見ると、九谷焼金襴手の湯呑み・カップ類の過去120日分の落札相場は約12件で平均4,152円でした。ただしこれは一般的な作品の相場で、作家ものや骨董価値のある作品は別格の評価になります。


参考)Yahoo!オークション -「九谷焼金襴手」(湯呑み、カップ…


花瓶や大皿、名工による一点物は高額査定の可能性があります。特に九谷庄三の作品は、九谷焼に産業化の道を開いた歴史的価値から、平均買取価格はだいたい25,000円程度とされています。保存状態が良好で共箱や付属品が揃っていれば、さらに高い評価が期待できますね。


金襴手九谷焼の人間国宝・吉田美統の釉裏金彩技法

現在の九谷焼唯一の人間国宝(重要無形文化財保持者)である吉田美統は、金襴手技法とは異なる「釉裏金彩(ゆうりきんさい)」という独自技法で知られています。平成13年には国の無形文化財に釉裏金彩の技法が認定されました。


参考)https://www.toulife.jp/?pid=115082275


釉裏金彩とは、厚さの異なった金箔を切り取って模様をつくり、その上から透明度の高い釉薬をかける技法です。薄箔と厚箔を使い分けることで遠近感を出す手法が特徴となっています。石川加賀の伝統工芸である金箔と九谷焼が生んだ技法なんですね。


参考)https://kutani.jp/minori.html


吉田美統の作品の中には金襴手で仕上げられたものもあります。今回の作品は、錦山窯の代表的画風である金襴手で唐草を見事にあしらってあり、朱色で下地を施した後、金彩をし針彫りで葉脈等を表現しています。まず九谷伝統の色絵具をかけた素地を本焼きして地色とし、薄い金箔と厚い金箔の二種類を使い分ける技法が用いられているということです。


参考)ぐい呑 金襴手唐草(朱) [ 人間国宝 吉田美統 ]


昭和26年に錦山窯を継ぎ作陶の道に入り、昭和49年に日本伝統工芸展入選、平成4年には石川県指定無形文化財九谷焼技術保存会の技術保持者に認定されました。その後、平成13年に紫綬褒章授章、国指定重要無形文化財釉裏金彩の保持者に認定され、平成18年には旭日小綬章を受章しています。人間国宝の作品でも数千円から購入できるものがあるため、初心者でも手が届く価格帯の作品も存在します。


参考)人間国宝 吉田美統 - 九谷満月


金襴手九谷焼の見分け方と裏印の確認方法

九谷焼の真贋を見分けるには、いくつかのポイントがあります。まず器の底部にある「裏印」と呼ばれる刻印やサインを確認しましょう。裏印は、どの窯元で作られたのか、あるいはどの年代に制作されたのかを示す重要な手がかりです。


参考)九谷焼の鑑定方法とは?本物かどうかの見極めと鑑定費用相場を解…


所有の九谷焼本体に刻印があるかどうか、また共箱にサインがあるかどうかを確認してみてください。


ちゃんと読めなくても大丈夫です。


鑑定の場合、識別可能かどうかより、あるかないかが重要になります。これがあればまずは第一関門クリアなんですね。


裏印をよく観察する際は、以下の点に注目します:
参考)フリーダイヤル


  • 漢字やアルファベットなどの「文字」か
  • 動植物や図形などの「マーク」か
  • 文字とマークの組み合わせか
  • 手書きなのか判子のように押されているのか

古い九谷焼の場合、裏印の形式が異なることがあるため、骨董品の場合は専門家に鑑定を依頼するのも良い方法です。特に古九谷には裏印がないものがほとんどです。ただし、サインや刻印があればすべて問題解決とはならず、サインですら贋作である恐れはあることをご理解ください。


色使いの鮮やかさと調和も重要な判断基準です。本物の九谷焼は、五彩(緑(青)、黄、紫、赤、紺青(群青))の色が大胆かつ調和的に配置され、全体として美しいバランスを保っています。金襴手の場合は、赤地に金彩が施されており、金彩の発色が鮮やかで深みがあるかどうかを確認するといいでしょう。


金襴手九谷焼のお手入れと保管方法

金襴手九谷焼を長く美しく保つには、適切なお手入れが欠かせません。ご使用前には、まず軽く洗ってから「目止め」という処理を行うことをおすすめします。目止めをすることで、器が割れにくくなり、衝撃や汚れに強くなり、シミやにおいがつきにくくなります。


参考)九谷焼のお手入れ方法


目止めの方法は以下の通りです:

  1. ご使用前に軽く洗う
  2. 器を鍋に入れ、かぶるくらいまで米のとぎ汁を注ぎ、15分程度弱火で煮沸する
  3. 鍋ごと冷まして器を取り出し、十分に乾かす

目止めが少し面倒だという場合は、簡単なお手入れとして米のとぎ汁、または真水に浸してしばらくつけ置くだけでも効果があります。


使用後のお手入れも大切です。器は使い終わったら早めに水につけ、中性洗剤を使いスポンジの柔らかい面で洗いましょう。ご飯などのこびり付いた汚れをふやかして洗うと良いでしょう。クレンザー、ナイロンたわし等は絵柄部分に傷がつく場合があります。


参考)九谷焼とは - 漆陶舗あらき


タワシや磨き粉やスポンジの硬い方などでゴシゴシ洗うと細かい傷がつき、陶器といえども肌つやが無くなります。


洗った後は十分に乾燥させてください。


食器洗浄機の使用は可能ですが、手洗いを推奨いたします。保管時は重なったりぶつかったりしないようにしてください。


金襴手は金彩部分が繊細なため、特に丁寧な扱いが求められます。金彩部分を強くこすると剥がれる恐れがあるので、柔らかい布やスポンジで優しく洗うことが大切です。適切なお手入れをすることで、金襴手九谷焼の美しさを末永く楽しむことができますね。


九谷焼のお手入れ方法の詳細 | 陶房概要 - Kutani Sachigama
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