蛇紋岩見分け方と特徴、産地、利用

蛇紋岩を見分ける際、色や模様、硬度などどの特徴に注目すれば良いのでしょうか。鉱石に興味がある方に向けて、蛇紋岩の識別方法や特性、産地まで詳しく解説します。

蛇紋岩見分け方

蛇紋岩の主な識別ポイント
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色と模様

暗緑色から緑黒色を呈し、蛇の皮のような網目模様が特徴的

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硬度と光沢

モース硬度2.5-3.5と軟らかく、釘で簡単に傷つき、すべすべした脂肪光沢を持つ

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磁性

磁鉄鉱を含むため、紐に吊るした磁石が吸い寄せられる

蛇紋岩の色と模様による見分け方

 

蛇紋岩の最も特徴的な識別ポイントは、その色と模様です。蛇紋岩は暗緑色から緑黒色、時には濃緑色を呈し、全体に緻密な質感を持っています。岩石の表面には、蛇の皮のような独特の網目模様が見られることが名前の由来となっており、色の淡い部分や白い部分が不規則に混ざることも多いです。

 

参考)蛇紋岩(じゃもん)岩

風化した蛇紋岩では、褐色と黒が蛇の模様のように入り乱れた様子が観察されます。また、黄緑色の鉱物がべちゃりとついた感じや、針状・葉状の黒~緑の鉱物がきれいに並んでいる場合もあります。岩石カッターで切断面を観察すると、緑黒色の蛇紋岩が角礫状に破砕され、その間を色の淡い灰緑色の蛇紋岩が満たしている様子が確認できることもあります。

 

参考)https://www2.city.kurashiki.okayama.jp/musnat/geology/rock/igneousrock/serpentinite.html

表面が黒いテカテカとした質感であることも特徴の一つで、乾いた状態でも濡れた状態でも独特の色合いを示します。

 

参考)蛇紋岩(石ころ写真集)

蛇紋岩の硬度と触感による識別方法

蛇紋岩は非常に軟らかい岩石で、モース硬度は2.5から3.5程度しかありません。このため、釘などの金属で簡単に傷をつけることができ、これは他の岩石との重要な識別ポイントになります。

 

参考)http://www2.city.kurashiki.okayama.jp/musnat/geology/rock/kawara-rock/okayama-kawara-rock/okayama-kawara-peridotiteserpentinite.htm

触感においては、すべすべとした感じがあり、割れた面は滑らかなことが多いです。これは蛇紋岩に含まれる蛇紋石の性質によるもので、脂肪光沢を持つため、触るとなめらかな質感が感じられます。目に見えない無数の割れ目があり、ハンマーで軽く叩くとばらばらと不規則に割れやすい性質も持っています。

 

参考)「蛇紋岩(じゃもんがん)」とは何か?|誰でもわかるリノベ用語…

条痕色(岩石を素焼きの板にこすりつけたときの色)は白色を示し、これも識別の参考になります。蛇紋岩は非常にもろく、ぽろぽろと崩れやすい性質があるため、取り扱いには注意が必要です。

蛇紋岩の磁性と密度の特徴

蛇紋岩の識別において、磁性は非常に有用な判定基準となります。蛇紋岩は金属元素を含む鉱物を多く含んでおり、特に磁鉄鉱(Fe₃O₄)の微粒子が含まれるため、紐に吊るした磁石を近づけると吸いつけられます。黒色に近い蛇紋岩ほど磁鉄鉱の含有量が多く、磁性が強くなる傾向があります。

 

参考)蛇紋岩

密度に関しては、蛇紋岩はかんらん岩(橄欖岩)よりも低い密度を持ちます。かんらん岩の密度が3.5g/cm³に達し、ずっしりと持ち重りがするのに対し、蛇紋岩の密度は約2.6g/cm³程度です。これは、かんらん岩が水と反応して蛇紋岩に変化する際、蛇紋石と磁鉄鉱が生成され、空間的隙間が多くなるためです。

 

参考)https://www.nagano-c.ed.jp/ina/B_educationalinfo/2015/kadaikenkyuuhappyou/zyamongan.pdf

倉敷市立自然史博物館の蛇紋岩の詳細解説(かんらん岩から蛇紋岩への変化過程が顕微鏡写真で確認できます)
蛇紋岩化度が高くなるほど、密度が小さくなり、磁化率(磁石に引きつけられる度合い)が高くなる関係があります。

 

参考)https://www.gsj.jp/data/bulletin/60_07_01.pdf

蛇紋岩とかんらん岩の見分け方

蛇紋岩とかんらん岩(橄欖岩)は密接な関係にあり、実際かんらん岩が水と反応することによって蛇紋岩が生成されます。そのため、両者の識別は時に困難ですが、いくつかの明確な違いがあります。

色に関しては、かんらん岩は黄緑色から緑色を呈し、ライトグリーン系の色合いを持つのに対し、蛇紋岩は濃い緑色から暗緑色、緑黒色を呈します。かんらん岩の表面は褐色から緑褐色に風化していることが多く、内部を割ると暗緑から緑黒色が見られます。

 

参考)https://www2.city.kurashiki.okayama.jp/musnat/geology/rock/igneousrock/peridotite.html

硬度の違いも重要な識別ポイントです。かんらん岩は緻密で硬い岩石ですが、蛇紋岩は釘などで容易に傷つけることができます。密度においても、かんらん岩は一般的な岩石の中で最も密度が高く(約3.5g/cm³)、ずっしりと持ち重りがするのに対し、蛇紋岩は軽く(約2.6g/cm³)、脆いという特徴があります。

かんらん岩が蛇紋岩化しつつある中間段階の岩石も存在し、そのようなものは釘などで容易に傷つき、やや軽くなっています。

蛇紋岩の産地と日本での分布

日本国内には数多くの蛇紋岩産地が存在し、その数は1,000ヶ所以上に及びます。特に日本の北西部に多く分布しており、新見市をはじめとする地域で見られます。岩手県は2016年5月10日に日本地質学会によって蛇紋岩が「岩手県の岩石」に選定されるなど、重要な産地となっています。

 

参考)蛇紋岩 - Wikipedia

新潟県糸魚川市の青海・小滝地域は、蛇紋岩とともにひすい(翡翠)の産地としても有名です。この地域には蛇紋岩メランジュと呼ばれる複雑な地質構造が存在し、地下深くの高圧条件でできた変成岩が多く含まれています。

 

参考)産総研:日本で新たなひすい産地を発見

河川での分布を見ると、岡山県では高梁川流域で普通に見られますが、旭川では少なく、吉井川ではほとんど見られません。これは蛇紋岩が脆いため、分布域から離れた場所では流される間に崩れやすく、河原の石としてはあまり見つからないためです。

糸魚川ジオパークの蛇紋岩解説(蛇紋石の分類や磁性についての詳細情報)
長野県伊那地域や北海道夕張山地の神居古潭構造帯など、構造帯に沿って蛇紋岩が分布していることも特徴的です。

 

参考)https://geoengi999.jp/details1001091.html

蛇紋岩を構成する蛇紋石の種類と識別

蛇紋岩は主に蛇紋石という鉱物から構成されていますが、この蛇紋石には大きく分けてアンチゴライト、クリソタイル、リザーダイトの三種類が存在します。これらは同じ化学組成を持ちながら結晶構造が異なる多形鉱物で、混ざっていることが多く、見分けるのは非常に困難です。

 

参考)蛇紋岩を構成する蛇紋石にはアンチゴライト、リザーダイト、単射…

リザーダイトは黄緑色のベタリとしたものがついた外観を持ち、モース硬度は2.5、条痕色は白色という特徴があります。アンチゴライトは緑色の葉っぱのようなものが重なっており、非常にもろく、ぽろぽろと取れやすい性質を持ち、モース硬度は3.5です。

蛇紋石の見分け方で最も確実なのは、透過電子顕微鏡でその結晶構造を直接観察することです。しかし、これは高度な専門設備が必要なため、実用的な方法としては、X線回折法、レーザーラマン分光法や赤外分光法、偏光顕微鏡を使った観察などが用いられます。

長年蛇紋岩の研究をしている専門家は、蛇紋岩の見た目や周りにある他の岩石から、含まれる蛇紋石の種類をある程度予想できることもあります。

蛇紋岩の利用用途と鉱物資源

蛇紋岩は約40%のマグネシアとシリカを含有しており、その他にニッケル(Ni)、クロム(Cr)などの特殊金属成分に比較的富む岩石です。このため、クロム、石綿(アスベスト)、ニッケルなどの鉱物資源を内包していることが多く、鉱業開発の対象となってきました。

 

参考)https://www.jstage.jst.go.jp/article/shigentosozai1953/84/959/84_959_188/_pdf/-char/ja

建築材料としては、古くから石材用として利用されており、セメントの材料や装飾石、表札、コースターなどに加工されています。「台湾蛇紋」という名称で流通しているものもあります。庭石としても使用されてきた歴史があります。

 

参考)https://www.gsj.jp/data/chishitsunews/63_06_04.pdf

金属マグネシウムの生産においても、蛇紋石鉱物は重要な原料となります。マグネシウムは合金、爆薬、医薬品などのさまざまな製品の製造に使用される重要な元素であり、蛇紋石鉱物はその主要な供給源となっています。

 

参考)https://miamiminingco.com/ja/2023/01/04/serpentine-minerals-characteristics-uses-and-formation/

しかし、蛇紋岩には石綿(アスベスト)が含まれることがあり、クリソタイル(白石綿)は蛇紋岩中に網状をなして存在しています。2017年には、庭石として蛇紋岩を長年加工してきた造園業者が石綿を吸入したことが原因とみられる肺癌で労働災害を認定された事例があり、取り扱いには十分な注意が必要です。

 

参考)アスベストとは href="https://www.eco-j.co.jp/blog/40.html/" target="_blank">https://www.eco-j.co.jp/blog/40.html/amp;#8211; 解体工事なら株式会社エコ・テ…

蛇紋岩利用に関する研究論文(マグネシウム抽出など工業利用についての詳細)

 

 


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