沸石 種類と産地 鉱物特徴から用途

鉱物愛好家必見!沸石には束沸石や輝沸石など多彩な種類が存在し、それぞれ異なる結晶構造と特性を持ちます。産地による違いや工業利用まで、あなたは沸石の奥深い世界をどこまでご存知ですか?

沸石 種類

沸石の主要な種類
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天然沸石は48種以上

現在、世界では48種類の沸石鉱物が分類され、日本国内では42種類が確認されています。

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多様な結晶系

等軸晶系、菱面体晶系、斜方晶系、単斜晶系など、様々な結晶構造を持つ鉱物グループです。

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工業利用の鍵

イオン交換性と吸着特性により、触媒や土壌改良材として幅広く活用されています。

沸石の代表的な種類と化学組成

 

沸石はケイ酸塩鉱物のグループで、一般式(Na₂,K₂,Ca,Ba)[(Al,Si)O₂]n・xH₂Oで表される化学組成を持ちます。この鉱物群は加熱すると結晶内の水分が分離し、沸騰するように見えることからこの名が付けられました。沸石類は現在48種類が分類されており、日本国内では42種類が確認されています。

 

参考)http://www.jiban-fluorite.com/mineral/zelt01.html

代表的な種類として以下が知られています。
🔸 菱沸石(Chabazite) - 等軸晶系または菱面体晶系の結晶を持つ沸石​
🔸 束沸石(Stilbite) - 繊維を束ねたような外観が特徴的で、単斜晶系に属します
参考)沸石

🔸 輝沸石(Heulandite) - 板状の結晶が重なった形状を示し、束沸石と共生することが多い沸石です
参考)https://gemhall.sakura.ne.jp/gemus-natrltt.htm

🔸 方沸石(Analcime) - 等軸晶系で粒状の外観を持つ、Na型沸石の代表種
参考)https://www2.city.kurashiki.okayama.jp/musnat/geology/mineral-rock-sirabekata/mineral44/epx-mineral/henkoukenbikyou-koumoku/henkoukenbi%20zougankoubutu/micro%20zeolite.htm

🔸 ソーダ沸石(Natrolite) - 針状の結晶形態で、化学組成はNa₂(Si₃Al₂)O₁₀・2H₂O
参考)https://lapisps.sakura.ne.jp/gallery13/905edington.html

硬度は3.5〜5.5、比重は2.1〜2.7と比較的軽量な鉱物で、色は無色・白色・黄色・橙色・赤色など多彩です。結晶系により劈開性も異なり、{010}や{110}などの特定方向に割れやすい種類も存在します。

沸石の産地と産状による分類

沸石は主に塩基性火山岩の空洞中、割れ目、熱水脈などに産出するほか、長石類の変質産物や堆積岩中の自生鉱物として形成されます。日本では中新世、特にグリーンタフ地域に多く産出することが特徴です。

国内の主要産地分布:

産地タイプ 地域 特徴
グリーンタフ地帯 北海道南西部〜日本海側

緑色凝灰岩中に広く分布
参考)天然ゼオライトとは?|天然ゼオライト製品販売の株式会社シンセ…

島根県 中・東部地域 西日本最大の天然ゼオライト産地、年間約1万5千トン産出​
玄武岩地帯 インド・デカン高原

沸石標本の一大産地として世界的に知られる
参考)https://lapisps.sakura.ne.jp/gallery13/904levyne.html


日本国内の文献記載産地数を見ると、方沸石が276ヶ所、束沸石が235ヶ所、沸石類全体で154ヶ所と広範囲に分布しています。これらの産地では、枕状溶岩の空隙や火山岩の割れ目に結晶が成長した産状が観察されます。

 

参考)https://hokkyodai.repo.nii.ac.jp/record/5628/files/57-2-sizen-03.pdf

沸石の産状は成因によって4つのタイプに分類されます:表成条件下の土壌中、続成作用・後生作用による生成、後期マグマ作用・熱水作用による形成、マグマ作用最末期の生成です。特にモルデン沸石と輝沸石は共生して見られることが多く、放射状集合のモルデン沸石と板状結晶の輝沸石が明瞭な粒界を形成します。

 

参考)https://www.gsj.jp/data/bull-gsj/22-06_06.pdf

沸石の結晶構造と物理的性質の違い

沸石の最大の特徴は、空隙の多い(大きい)結晶構造を持ち、多量の水分を含んでいることです。この独特な三次元フレームワーク構造により、種類ごとに異なる物理化学的性質が生じます。

 

参考)https://lapisps.sakura.ne.jp/gallery12/876scolecite.html

結晶構造の特異性:
エディントン沸石とソーダ沸石の例では、結晶構造のフレームワークが共通しながらも、バリウム1分子がナトリウム2分子の位置を占め、沸石水の収容数が倍になるという違いがあります。このような陽イオンの種類と配置の違いが、各沸石の性質を決定づけています。

結晶系による形態の違いも顕著で、ソーダ沸石は直方晶系ですが、同質異像の正方晶系のものはゴナルド沸石として扱われます。トムソン沸石は針状〜細柱状の結晶で、先端部を正面から見ると長方形〜細長い六角形をしており、正方形に見えるソーダ沸石と区別できます。

 

参考)https://lapisps.sakura.ne.jp/gallery13/901thomsonite.html

沸石の物理的性質は以下の範囲で変動します。
硬度: 3.5〜5.5(比較的柔らかい)​
比重: 2.1〜2.7(軽量)​
結晶形: 粒状・板柱状・針状など多様​
条痕 白色が基本​
これらの物理的性質の違いにより、光学的性質だけでは種類の判別が困難な場合が多く、X線回折による同定分析が必要とされます。

沸石の工業的用途とイオン交換特性

沸石は鉱物資源として極めて重要な材料です。その価値は、属イオンを交換し、水を吸着する性質に由来します。この特性を活用して、化学工業の触媒、紙の充填材、土壌改良など幅広い用途で利用されています。

触媒としての応用:
石油精製分野では、FCC(流動接触分解)プロセスにおいて、ゼオライトが触媒反応効率の改善と触媒量削減に貢献しました。細孔の中に反応物を吸着することで、細孔空間に触媒反応場を作り出します。クラッキング触媒以外にも、リフォーミング、水素化分解、異性化反応などで固体酸触媒として活用されています。

 

参考)ゼオライト特設ページ|事業・製品|東ソー

窒素酸化物浄化触媒の分野でも研究が進められており、触媒活性、触媒寿命、耐熱性、耐久性などの要件を満足する材料として注目されています。

土壌改良材としての効果:
農業分野では、陽イオン交換容量(CEC)を増やし、雨などによる肥料の流出を防ぐ保肥性を持つことから、畑の土壌改良材として使用されます。窒素やリン酸の利用率向上、土壌の緩衝能を高めることで塩類濃度障害を予防する効果があります。

 

参考)https://www.izuka.co.jp/catalog/images/c_izukalite_riyou.pdf

ゼオライトと堆肥の併用により、土壌の理化学性が改善され、特にマサ土などの粘土含量が少ない土壌の早期熟畑化に有効であることが実証されています。

環境分野での利用:
吸着特性により、水中の重金属、臭い成分を取り除き、水質改善に貢献します。脱臭剤としても優れており、靴箱やクローゼット、ペット用品などで効果を発揮します。吸着した物質は加熱により再生利用が可能なため、持続可能な資源として注目されています。

 

参考)ゼオライトとは?用途・性質・住宅での利用方法まで徹底解説 -…

沸石の見分け方と同定方法

沸石類は多様な形態を示すため、肉眼での鑑定は困難ですが、いくつかの特徴的な外観により種類を推定できます。束沸石は繊維を束ねたような外観が特徴で、輝沸石は板状のものが重なった形をしています。

形態による見分け方:
📌 ソーダ沸石: 針状~細柱状で、先端部を正面から見ると正方形に近い形状​
📌 トムソン沸石: 針状~細柱状だが、先端部は長方形~細長い六角形を示す​
📌 モルデン沸石: 扇形・放射状集合が特徴的​
📌 輝沸石: 板状結晶が重なり、グリーン輝沸石として緑色を帯びることもある​
しかし、正確な同定には光学的性質だけでは不十分で、X線回折による分析が必要です。特にCa型沸石とNa型沸石では産状が異なり、Ca型沸石(輝沸石、束沸石、モルデン沸石など)は多種類が共生するのに対し、Na型沸石(方沸石、ソーダ沸石)は他の沸石とは明確に異なる産状を示します。

鉱物愛好家が沸石を採集する際は、玄武岩の空洞や割れ目を注意深く観察することが重要です。沸石は空隙を充填するように輝沸石が晶出し、その内側に束沸石が認められるという晶出順序があります。この産状の違いを理解することで、現地での種類推定の精度が向上します。

 

参考)https://thesis.pwri.go.jp/files/doken_kyoudoukenkyu_0137_00.pdf

沸石の物理的性質と化学組成の詳細データ - 沸石一覧ページ
日本各地の沸石産地情報 - トww.trekgeo.net/">日本各地の沸石産地情報 - トレックジオ産地リスト

 

 


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