ウラン235半減期から見る同位体と核分裂の世界

核燃料として知られるウラン235の半減期は7億年とされていますが、同位体のウラン238との違いや、地球誕生から現在までの変遷はどうなっているのでしょうか?

ウラン235半減期と同位体の基礎知識

ウラン235の基本的特徴
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半減期7億年の意味

放射性物質の量が半分になるまでの時間を示す重要な指標

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核分裂性同位体

天然に存在する唯一の核分裂可能な物質として原子力利用に必須

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天然存在比0.72%

ウラン鉱石中のわずかな割合だが地球の歴史を物語る貴重な資源

ウラン235の半減期7億年とは何か

 

ウラン235の半減期は7億400万年(7.04×10⁸年)であり、この時間が経過すると元の放射性物質の量が半分に減少します。半減期とは、放射性同位体が崩壊によって減少する速度を示す重要な指標であり、熱・圧力・化学反応などいかなる外的条件でも変えることができない固有の性質です。ウラン235はアルファ線を放出してトリウム231(半減期25.52時間)に変わり、さらに崩壊を続けて最終的には安定した鉛207になります。

 

参考)https://www.ies.or.jp/ri_online/radiation/radiation02-8.html

この7億年という半減期は、地球の年齢45億年と比較すると比較的短いため、地球誕生当初に存在していたウラン235は現在大幅に減少しています。アルファ崩壊によってエネルギーを放出しながら原子核が変化していく過程は、ウラン系列と呼ばれる崩壊系列を形成し、途中でラジウムなど様々な放射性核種を経由します。このため、ウラン鉱石の放射能は純粋なウランよりも13倍も強くなることがあります。

 

参考)しくみはわかった。でも、爆弾にするには、あまりに少ない…つい…

ウラン235とウラン238の同位体の違い

ウラン235とウラン238は同じ原子番号92を持つウランの同位体ですが、中性子数が異なり、ウラン235は143個、ウラン238は146個の中性子を持ちます。この3個の中性子の違いが、核分裂のしやすさや半減期に大きな影響を与えています。天然ウランの同位体比はウラン238が99.3%を占め、ウラン235はわずか0.72%、ウラン234が0.0054%という構成になっています。

 

参考)ウラン-235とは - わかりやすく解説 Weblio辞書

半減期の差も顕著で、ウラン238の半減期は45億年(4.47×10⁸年)であるのに対し、ウラン235は7億年と約6倍の速さで崩壊します。この半減期の違いにより、純粋なウラン235の比放射能は純粋なウラン238の約6倍高くなります。さらに重要な違いとして、ウラン235は中性子を吸収すると容易に核分裂を起こす核分裂性物質であるのに対し、ウラン238は核分裂しにくい性質を持ちます。

 

参考)https://www.s-yamaga.jp/kankyo/kankyo-genpatsu-2.htm

ウラン235の核分裂と連鎖反応のメカニズム

ウラン235の原子核に中性子が当たると、原子核内で陽子と中性子を結びつける力が不安定になり、原子核が2つに分裂する核分裂反応が起こります。この核分裂の際、1原子あたり200MeVという膨大な熱エネルギーと、平均2~3個の新たな中性子が放出されます。放出された中性子がさらに別のウラン235の原子核に衝突することで、次々と核分裂が連続して起こる現象が「核分裂の連鎖反応」です。

 

参考)ウラン235 - Wikipedia

原子力発電所では、この連鎖反応をホウ素・カドミウム・ハフニウムなどでできた制御棒を使って調整し、安定的にエネルギーを取り出しています。一方、核兵器では制御されない連鎖反応により、大量のエネルギーが一気に解放されて核爆発を引き起こします。興味深いことに、アフリカのガボン共和国オクロでは、約20億年前にウラン235の含有率が現在より高かった時代に、天然のウラン鉱床で自然に核分裂の連鎖反応が起きた痕跡が発見されています。

 

参考)第162号 原子力委員会メールマガジン−原子力委員会

ウラン濃縮と原子力発電への利用

天然ウランに含まれるウラン235の濃度は約0.7%と低く、このままでは軽水炉型の原子力発電所の燃料として使用できません。そのため、核分裂しやすいウラン235の割合を3~5%程度にまで高める「ウラン濃縮」という工程が必要になります。濃縮方法には遠心分離法、ガス拡散法、レーザー法などがあり、日本のウラン濃縮工場では遠心分離法が採用されています。

 

参考)[濃縮事業] ウラン採掘から発電までの流れ

ウラン鉱石は採掘後、まず化学処理により粉末状のウラン精鉱(イエローケーキ)に製錬され、次に濃縮工程に適した六フッ化ウランに転換されます。濃縮されたウランは燃料として原子炉で使用され、ウラン238も中性子を吸収することでプルトニウム239に変換され、これも核分裂性物質として利用されます。使用済み核燃料中に残るウラン235を再度濃縮すれば、核燃料として再利用することも可能ですが、ウラン236などの存在により放射性が高く、取り扱いには注意が必要です。

 

参考)https://cnic.jp/knowledge/2605

ウラン鉱物コレクターが注目する鉱石の種類と特徴

ウランを含む鉱物は鉱石コレクターの間で人気があり、代表的なものとして閃ウラン鉱(ウラニナイト)があります。閃ウラン鉱はウランの二酸化物で、最も主要なウラン鉱石鉱物であり、品位の高いものは密度が非常に高く、重量感があります。日本では岐阜県土岐市や秋田県仙北市田沢湖などから産出した記録があり、特に土岐市産のものは品位20%近くに達する高品質のものもあります。

 

参考)結晶美術館 - 含ウラン鉱物

燐灰ウラン石(オータナイト)は代表的なウランの二次鉱物で、黄色い板状結晶が特徴的です。ウラン雲母とも呼ばれ、重量の約40%がウランという高濃度で、紫外光を照射すると鮮やかな蛍光を発します。花崗岩質の堆積物中やペグマタイト中に産出し、アメリカのワシントン州やドイツでは大型の結晶が産出しています。コフィン石はウランのケイ酸塩で、黒々とした地味な外観ですが理論値で70%以上のウラン含有量を持つ大変放射能の高い鉱物です。これらのウラン鉱物は、崩壊系列に含まれる娘核種も含むため、純粋なウランよりも強い放射能を示します。

 

参考)崩壊系列 - Wikipedia

一般財団法人エネルギー総合工学研究所 - ウラン235とウラン238の比較表
ウラン235とウラン238の半減期、核分裂性、天然存在比などの基本データが表形式でわかりやすくまとめられています。

 

原子力資料情報室 - ウラン235の詳細情報
ウラン235の半減期、崩壊方式、存在と生成について権威ある情報源からの詳しい解説があります。

 

結晶美術館 - 含ウラン鉱物の画像と解説
閃ウラン鉱、燐灰ウラン石、コフィン石など、実際のウラン鉱物標本の画像と詳細な産地情報が掲載され本の画像と詳細な産地情報が掲載されています。

 

 


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