蹴轆轤を使うと電動より土が固くなりやすい。
蹴轆轤(けろくろ)は、足で蹴って回転させる伝統的な陶芸用の轆轤です。江戸時代から日本の陶芸家に使われてきた道具で、電動ろくろが普及した現代でも多くの作家が愛用しています。
構造はシンプルです。下部に重い弾み車(はずみぐるま)があり、これを足で蹴ることで上部の回転台が回ります。弾み車の重量は一般的に20kg~40kgで、重いほど安定した回転が得られます。回転台の直径は25cm~35cm程度が標準的です。
歴史的には中国から朝鮮半島を経て日本に伝わりました。室町時代には既に使われていた記録がありますが、江戸時代に入って各地の窯元で本格的に普及しました。現在でも益子焼・信楽焼・美濃焼などの産地では、伝統技法を守るために蹴轆轤が使われています。
電動ろくろとの最大の違いは、回転速度を作り手が自分で調整できる点です。これが蹴轆轤独特の作品を生み出す要因になっています。
蹴轆轤を使う際は、まず正しい姿勢から始めます。座面の高さは床から40cm~50cmが目安で、座ったときに膝が90度になる高さに調整します。足は弾み車を蹴りやすい位置に置き、片足で蹴って片足で体を支えるのが基本です。
回転の始め方は重要です。最初に3~5回連続で強く蹴り、弾み車に勢いをつけます。その後は回転が落ちてきたタイミングで1~2回蹴り足すだけでOKです。電動ろくろと違い、常に一定速度ではなく、徐々に減速しながら作業するのが特徴です。
どういうことでしょうか?
土の中心を出すときは回転を速く、形を作るときはやや遅く、仕上げのときはさらに遅くと、作業内容に応じて速度を変えます。
この速度調整が蹴轆轤の最大の魅力です。
初心者は最初の1~2ヶ月、回転を維持しながら作業することに苦労しますが、慣れると無意識に足が動くようになります。
手の使い方も電動と異なります。回転が不安定なため、土に触れる力を弱めに保つのがコツです。
強く押しすぎると回転が止まってしまいます。
土の量は500g~1kgから始めるのが無難です。
体全体でリズムを取りながら作業すると、疲れにくくなります。蹴る足を時々交代するのも疲労軽減に有効です。
蹴轆轤と電動ろくろでは、できあがる作品の雰囲気が明確に変わります。最も大きな違いは、器の表面に残る轆轤目(ろくろめ)の表情です。蹴轆轤は回転速度が一定でないため、轆轤目が不均一で味わい深くなります。
電動ろくろは回転速度が安定しているため、薄く均一な作品を作りやすいです。対して蹴轆轤は、土の厚みに微妙な変化が生まれ、手作り感のある仕上がりになります。
この違いは茶碗や花器などで特に顕著です。
つまり個性が出やすいということですね。
制作スピードでは電動ろくろに軍配が上がります。蹴轆轤は回転を維持する手間があるため、同じ作品を作るのに1.5倍~2倍の時間がかかります。ただし、ゆっくり作業できるため、土と向き合う時間が長くなり、修正もしやすいです。
体への負担も異なります。蹴轆轤は足を使うため、最初は太ももやふくらはぎが疲れます。一方、電動ろくろは腰や腕に負担が集中します。長時間作業する場合は、蹴轆轤のほうが体全体を使うため疲労が分散されるという意見もあります。
価格面では、蹴轆轤は3万円~15万円、電動ろくろは5万円~30万円が相場です。メンテナンスコストは蹴轆轤のほうが低く、基本的に故障しにくい構造です。
NHK趣味の園芸「伝統の蹴轆轤で作る器」
蹴轆轤と電動ろくろの作品の違いについて、陶芸家の解説があります。
蹴轆轤を購入する際は、まず設置場所のスペースを確認します。本体の直径は60cm~80cm、高さは40cm~60cmが一般的です。重量は30kg~50kgあるため、床の耐荷重も考慮が必要です。
価格帯は大きく3つに分かれます。入門モデルは3万円~5万円で、弾み車が軽めで回転の持続時間が短いです。中級モデルは6万円~10万円で、弾み車が重く安定した回転が得られます。プロ仕様は10万円以上で、高さ調整機能や軸受けの精度が高いです。
弾み車の重量が選択のポイントです。20kg以下だと回転が安定せず、初心者には扱いにくいです。25kg~35kgが標準的で、40kg以上は重すぎて蹴るのに力が必要になります。
自分の体力に合わせて選びましょう。
回転台の材質も重要です。木製は伝統的で土がなじみやすいですが、反りやすいです。金属製は耐久性が高く、メンテナンスが楽です。表面がざらついているものを選ぶと、土が滑りにくく作業しやすくなります。
高さ調整機能があると便利です。使う人の身長や座椅子の高さに合わせられるため、長時間作業しても疲れにくいです。
調整範囲は5cm~10cmあれば十分です。
購入前に試用できる陶芸教室やギャラリーを探すのがおすすめです。実際に蹴ってみて、自分に合う重さと高さを確認してから購入すると失敗しません。
蹴轆轤を使う最大のメリットは、作品に独自の表現が生まれることです。回転速度の変化が土に反映されるため、電動ろくろでは出せない柔らかい印象の器ができます。特に茶碗や酒器など、手に馴染む器を作る際にこの特性が活きます。
集中力が高まるのも見逃せません。足で回転を維持しながら手で形を作るため、体全体で作陶に没頭できます。電動ろくろではスイッチ一つで回転するため、どこか機械的な作業になりがちですが、蹴轆轤は常に自分でコントロールする感覚があります。
これは使えそうです。
土の状態を細かく感じ取れるのも利点です。回転が遅くなると土の硬さや水分量の変化がすぐわかります。
この感覚が陶芸技術の向上につながります。
初心者のうちからこの感覚を養うと、土の扱いが格段に上手くなります。
環境面でもメリットがあります。電気を使わないため、電気代がかからず、停電時でも作業できます。音も静かで、アトリエでの作業音がほとんど気になりません。マンションなどでも周囲に迷惑をかけにくいです。
メンテナンスが簡単な点も魅力です。電動ろくろはモーターや基盤の故障がありますが、蹴轆轤は軸受け部分に油を差すだけで長年使えます。修理費用も安く、DIYで対応できることが多いです。
蹴轆轤の練習は、まず「蹴る」動作だけを繰り返すことから始めます。土を乗せずに10分間回転を維持する練習を毎日行うと、1週間ほどで足の使い方が身につきます。最初は太ももが疲れますが、これが基礎体力になります。
次のステップは土の中心出しです。500gの土を使い、回転を維持しながら中心を出す練習をします。電動ろくろより時間がかかりますが、焦らずゆっくり進めるのがコツです。中心が出るまで5分~10分かかっても問題ありません。
土殺し(つちごろし)の練習も重要です。土を上下に動かして空気を抜く作業ですが、蹴轆轤では回転が遅いため、力加減を学びやすいです。強く押しすぎると回転が止まるため、自然と適切な力が身につきます。
それで大丈夫でしょうか?
簡単な形から始めましょう。最初は皿や小鉢など、高さのない作品が向いています。高さ3cm~5cmの平たい器なら、初心者でも2~3回の練習で形になります。慣れてきたら湯呑みや茶碗など、高さのある作品に挑戦します。
上達のポイントは記録をつけることです。毎回の練習で「何分回転を維持できたか」「どこで失敗したか」をメモすると、自分の成長が見えてモチベーションが保てます。3ヶ月続ければ、基本的な器は作れるようになります。
陶芸教室で蹴轆轤を教えているところを探すのも有効です。講師から直接コツを学べるため、独学より早く上達します。月2回のペースで通えば、半年で中級レベルの技術が習得できます。
日本陶芸家協会「蹴轆轤の基本技法」
蹴轆轤の練習方法について、段階的な解説があります。