二次電池とは、充放電を繰り返し使用できる蓄電池の総称です。一次電池(使い捨て)とは異なり、化学反応により放電後、逆方向の電流を加えることで化学変化を戻す仕組みを採用しています。二次電池の種類は、主に使用する化学物質により分類され、現在市場では鉛蓄電池、ニッケル・カドミウム蓄電池、ニッケル・水素電池、リチウムイオン電池、そして次世代の全固体電池など多種多様な製品が存在しています。
電圧面では、鉛蓄電池が単セルあたり2Vという比較的高い値を示し、多くの二次電池が1.2~3.7V程度の範囲で動作します。ニッケル系電池は1.2V、リチウムイオン電池は3.7V程度の標準電圧を持ち、用途に応じた選択が重要です。また、各二次電池はエネルギー密度、サイクル寿命、安全性、コストなど複数の特性において異なる強みを持っており、用途ごとに最適な製品が選定される必要があります。
鉛蓄電池は二次電池の中でも最も古い歴史を持つもので、1859年の発明以来、自動車のエンジン始動用や非常用バックアップ電源として信頼されてきました。正極に二酸化鉛、負極に鉛を使用する構造で、単セルあたり2Vの電圧を発生します。この電圧設定により、複数セルを直列に繋ぐことで12Vや24Vなど必要な電圧を得ることができます。
鉛蓄電池の大きな利点は、材料となる資源が豊富でコストが低いこと、短時間の大電流放電にも長時間の少量放電にも対応できる汎用性があります。ただし、エネルギー密度はリチウムイオン電池と比べると低く、寿命も限定的です。また、硫酸電解液を使用するため、取り扱いに注意が必要で、環境への配慮も求められています。現在でも自動車用バッテリーとして全世界で年間数億個が生産される、最も実績のある二次電池タイプです。
ニッケル系電池には、ニッケル・カドミウム蓄電池(ニカド電池)とニッケル・水素電池(ニッケル水素電池)の2つの主要タイプが存在します。ニカド電池は水酸化ニッケルを正極に、水酸化カドミウムを負極に使用し、単セルあたり1.2Vの電圧を発生させます。大電流での充放電が可能な特性を持ち、耐久性が高いため電動工具や非常用電源として広く使用されてきました。
しかし、有毒なカドミウムの使用が環境問題となったため、より安全なニッケル・水素電池が開発されました。ニッケル・水素電池は正極にニッケル水酸化物、負極に水素吸蔵合金を使用し、同じく1.2Vの単セル電圧を保ちながら、電気容量がニカド電池の約2倍に向上しています。メモリー効果が少なく、より環境に優しい設計として、ハイブリッドカーのバッテリーや各種ポータブル電子機器へ採用が拡大しました。
リチウムイオン電池は、1990年代にソニーが商用化した革新的な二次電池で、現在スマートフォン、ノートパソコン、タブレット、ワイヤレスイヤホンなど、あらゆるポータブル電子機器のエネルギー源として支配的な地位を占めています。正極にリチウム遷移金属酸化物(代表的にはコバルト酸リチウム)を、負極に黒鉛を使用し、単セルあたり3.7Vの高い電圧を発生させます。
リチウムイオン電池の最大の強みは、エネルギー密度が従来型の二次電池の2~3倍に達することで、軽量コンパクトな高容量電池の実現を可能にしました。さらに、メモリー効果がなく、急速充電に対応でき、自己放電率が低いといった優れた特性を持ちます。現在、複数の正極材料の組み合わせにより、コバルト酸リチウム、マンガン酸リチウム(スピネル構造)、リン酸鉄リチウム(オリビン構造)、三元系(NMC系)など、用途に応じた多様なバリエーションが開発されています。
一般に、コバルト酸リチウムは高エネルギー密度で高電圧が必要なスマートフォン用途に向き、リン酸鉄リチウムは安全性とサイクル寿命が優れているため電気自動車用途に、三元系はバランスの取れた特性で中・大型用途に適しているとされています。
リチウムイオン電池の課題を克服する次世代二次電池の研究開発が活発に進行しています。その中でも特に注目される技術が全固体電池です。従来のリチウムイオン電池は液体電解質を使用していますが、全固体電池ではこれを完全に固体に置き換えることで、可燃性液体がなくなり熱暴走や液漏れの危険性が大幅に低減されます。固体電解質は高温・低温での安定性が優れており、さらに高いエネルギー密度の実現も期待されています。
ナトリウムイオン電池も重要な次世代候補で、リチウムの代わりにナトリウムイオンを移動させることで充放電を行う二次電池です。ナトリウムは海水や岩塩に豊富に含まれ、リチウムと比べて資源が偏っておらず価格が安価である大きな利点があります。構造的にもリチウムイオン電池と類似しているため、既存製造技術の応用が可能です。スマートグリッド用の大型蓄電システムや電気自動車の電源として期待されており、環境配慮と持続可能性の観点から注目が集まっています。
他の有望な次世代技術としては、リチウム硫黄電池や金属空気電池、多価イオン電池などが研究されています。これらは理論的なエネルギー密度がリチウムイオン電池をさらに上回る可能性を持ち、次々世代のエネルギー貯蔵デバイスとして期待されています。
二次電池を選択する際には、複数の性能指標を総合的に評価する必要があります。以下の表は、主要な二次電池タイプの比較を示しています。
| 二次電池種類 | 正極材料 | 負極材料 | 公称電圧 | エネルギー密度 | サイクル寿命 | 主な用途 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 鉛蓄電池 | 二酸化鉛 | 鉛 | 2V | 低~中 | 500~1000回 | 自動車バッテリー、非常用電源 |
| ニッケル・カドミウム電池 | 水酸化Ni | 水酸化Cd | 1.2V | 中程度 | 1000回以上 | 電動工具、非常用電源 |
| ニッケル・水素電池 | 水酸化Ni | 水素吸蔵合金 | 1.2V | 中程度 | 300~700回 | ハイブリッドカー、ポータブル機器 |
| リチウムイオン電池 | Li遷移金属酸化物 | 黒鉛 | 3.7V | 高~超高 | 500~2000回 | スマートフォン、PC、EV |
| ナトリウムイオン電池 | Na遷移金属酸化物 | 炭素 | 3.2V以上 | 中~高 | 研究段階 | スマートグリッド、EV(将来) |
| 全固体電池 | 遷移金属酸化物 | 炭素/金属 | 3.0~3.5V | 超高 | 研究段階 | 次世代EV、大型蓄電 |
用途が自動車のエンジン始動のような瞬間的な大電流供給を必要とする場合は、鉛蓄電池の安定性が生かされます。スマートフォンやノートパソコンといった長時間連続使用が要求されるポータブル機器では、リチウムイオン電池の高エネルギー密度が必須です。電気自動車やハイブリッドカーのような中~大型エネルギー貯蔵システムでは、安全性、寿命、コストのバランスが重要になります。
近年では、環境面でのニーズの高まりから、リサイクル性に優れ、有害物質を含まない二次電池へのシフトが進行しています。鉛蓄電池からの脱却、カドミウム使用の廃止、さらにリチウム資源の枯渇に対応するナトリウムイオン電池やその他の代替技術が急速に進展しています。
各二次電池の特性を正確に理解することは、製品設計段階でのエネルギー管理戦略、コスト最適化、安全性確保、環境責任の履行に直結する重要な判断材料となります。
<参考情報>
ナノフォトン「二次電池の種類と特徴」では、電解液、電極材料の詳細な技術解説と、各電池タイプの仕組みが図解で理解しやすく整理されています。
https://nanophoton.jp/blog/1003/
三光太陽光発電「二次電池とは?種類・特徴・用途や一次電池との違い」では、実際の製品適用例を交えた実践的な解説が提供されています。
https://wsew.jp/glossary/secondary_batteries/