リチウムイオン電池は、優れたエネルギー密度と利便性から急速に普及してきました。しかし同時に、発火事故の報告も増加傾向にあります。電池の発火メカニズムを理解することは、安全な使用と効果的な対策を実現するための第一歩です。
電池内部で発生する短絡は、最も危険な状態の一つです。電極が接触することで電気抵抗が急激に低下し、大量の電流が流れ込みます。この現象により電池内部の温度が急上昇し、場合によっては可燃性の電解液に引火します。短絡の原因は、製造時の異物混入や経年劣化によるセパレータ(絶縁体)の損傷、あるいは外部からの強い衝撃で内部構造が破壊される場合があります。
特に注意すべき現象がデンドライトの析出です。過充電や過放電を繰り返すと、負極の集電体である銅が溶け出し、リチウムが針状結晶(デンドライト)として析出します。このデンドライトが成長すると、正極と接触して内部短絡を引き起こす危険性が高まります。デンドライトによる短絡は特に予測が難しく、使用者が気づかないまま進行することがあります。
発火に至るまでのプロセスを理解することで、予防的措置の重要性が明確になります。
過充電はリチウムイオン電池の発火リスクを著しく高めます。充電時に電圧が設計値を超えると、正極内のリチウムが過剰に取り出され、セル内の化学反応が制御不能に陥ります。その結果、異常な発熱が生じ、電解液が分解してガスが発生し、最終的に電池が膨張または破裂に至ります。
一方、過放電も深刻な問題です。放電しすぎた状態では、負極の銅が溶け出しやすくなり、デンドライトの析出が促進されます。完全に放電してしまった電池を充電する際には、より多くの化学反応が一度に起こるため、発熱のリスクが増加します。
発火対策として最も基本的で重要なのは、正しい充電方法の実施です。製造事業者が指定する純正の充電器やバッテリーを必ず使用することが必須です。非純正品の劣悪な充電器では、充電電流や電圧を正確に制御できないため、過充電の危険性が急増します。また、充電電圧を確認しながら充電し、購入時に付属の充電器や認定メーカー製の製品を選択することも重要です。
異常を感じたら即座に使用を中止することも、発火を防ぐための不可欠な措置です。
リチウムイオン電池の劣化は、長期間の使用や不適切な保管条件により避けられません。セパレータの損傷、電解液の分解、活物質の結晶化など、微視的なレベルで劣化が進行します。劣化が進むと、内部短絡の発生確率が増加し、熱暴走の危険性が高まります。
劣化を最小限に抑えるための対策には、いくつかの重要なポイントがあります。最初に、購入時期と使用履歴を記録することが推奨されます。これにより、使用目安期間を超えた電池を継続使用するリスクを避けられます。一般的に、リチウムイオン電池の使用目安期間は数年から十年未満の範囲内ですが、使用環境により異なります。
次に、長期間使用しない場合の保管方法が重要です。電池を完全に放電した状態で保管すると、内部短絡のリスクが高まります。専門家は、長期保管時には電池残量を半分以上残した状態で、涼しく乾燥した環境に置くことを推奨しています。高温環境は化学反応を加速させ、劣化を促進するため、避けるべきです。
さらに、製品に衝撃を与えないことも重要な劣化防止策です。外部からの衝撃により電極が変形すると、その部分が過充電状態になりやすく、デンドライトの析出が加速します。見た目に異常がなくても、内部にダメージが蓄積していることがあります。
万が一リチウムイオン電池が発火した場合、適切な消火方法を知ることは人命救助と被害拡大防止に直結します。通常の火災消火剤では、リチウムイオン電池火災に対応することが難しいため、特別な知識が必要です。
リチウムイオン電池火災の消火には大量の水が最も有効であることが、実験的に確認されています。発火時は、可能な限り大量の水を使用して消火し、その後、電池を完全に水没させた状態で保持することが重要です。このプロセスにより、電池内部の化学反応を冷却し、再発火のリスクを最小限に抑えられます。
なお、電池から発生する可燃性ガスが蓄積している場合、不用意に水を注ぐと蒸気爆発が発生する可能性があります。ごみ処理施設での火災事故では、圧縮された環境でガスが蓄積し、より危険な状況が生じることがあります。このため、消火後は直ちに119番通報し、専門の消防隊に対応を任せることが最善です。
一般家庭でリチウムイオン電池火災が発生した場合、すぐに他の人を安全な場所に避難させ、消火活動よりも安全確保を優先すべきです。
リチウムイオン電池の発火を未然に防ぐため、日常的に異常を検知することは非常に重要です。いくつかの前兆現象が見られた場合、使用を即座に中止し、製造事業者や販売店に相談することが推奨されています。
発火前の典型的な異常現象には、電池の膨張が挙げられます。電池内部でガスが発生すると、外装が押し出され、目に見える形で膨張します。この現象が見られたら、その製品は極めて危険な状態にあります。また、充電できなくなる、充電中に異常に熱くなる、充電後の持続時間が極端に短くなるといった症状も、内部劣化や短絡の兆候です。
膨張した電池をそのまま使用すれば、わずかな衝撃で破裂する危険性があります。見た目に異常がなくても、内部にダメージがある場合があるため、継続的な観察が重要です。
廃棄方法についても、社会全体での認識が不足しています。ごみ収集車や処理施設での火災事故が増加している背景には、混在ごみの中に埋め込まれたリチウムイオン電池が、収集・圧縮過程で衝撃を受け、発火するケースが多いためです。これを防ぐため、できるだけ電池を使い切ってから廃棄することが重要です。完全に放電していない電池を廃棄すると、処理施設での危険性が増加します。
さらに、一部の自治体では有害物質リサイクルプログラムを設けており、リチウムイオン電池を専門の回収拠点に持ち込むことが推奨されています。廃棄前に、必ず地域の廃棄ルールを確認しましょう。
発火事故を根本的に防ぐためには、製造段階での品質管理と安全技術が不可欠です。製造工程で最も重要な対策は、異物混入の検査と排除です。微細な金属異物が電池内に混在すると、充放電時に内部短絡を引き起こす可能性があります。高度な検査機器を用いて、製造工程の各段階で異物を検出し、排除する技術が開発されています。
さらに、バッテリー管理システム(BMS)の導入が、電池の安全性向上に革命的な役割を果たしています。BMSは充放電時の電流・電圧・温度をリアルタイムで監視し、異常を検知すると自動的に充放電を遮断します。これにより、過充電、過放電、過電流、高温運転による熱暴走を防止できます。BMSは単なる保護回路ではなく、電池内部の複雑な化学プロセスを監視し、最適な運用条件を保つための高度なシステムです。
セパレータ(絶縁体)の材料選択も重要です。耐熱性に優れたセパレータを使用することで、異常な温度上昇時にも絶縁性を維持し、短絡を防止できます。一部の最新技術では、セパレータに熱で溶ける材料を組み込み、過熱時に自動的に充放電経路を遮断する機能を持たせています。
さらに、高品質の材料使用とデンドライト析出の防止が、発火リスク低減の鍵となります。高純度のリチウム化合物と負極材料を使用することで、デンドライト形成の危険性を著しく低減できます。加えて、堅牢な設計により外部からの衝撃に対する耐性を向上させ、内部構造の破損を防止します。
国際的な安全規格への準拠も、安全な電池製造に不可欠です。IEC 62133やUL 1642などの規格は、電気的安全性、機械的完全性、化学的安定性に関する厳格な要件を定めています。これらの規格に基づく試験に合格した電池のみが市場に流通することで、一定の安全基準が保証されます。
市場に流通する製品の中には、安全性が不十分な低価格製品や、PSEマーク(日本国内向けの安全認証)を持たない粗悪な製品が含まれている現実があります。これらの製品は適切な品質管理が行われていないため、発火リスクが著しく高い状態にあります。消費者は、認定メーカー製の製品を選択し、最低限の安全基準を満たしているか確認することが重要です。
使用者教育と啓発活動も、社会全体での発火事故削減に寄与します。リチウムイオン電池の特性や発火リスクについて、一般大衆の理解が不足していることが事故増加の一因です。学校や職場での教育プログラム、メディアを通じた啓発情報の提供により、適切な使用方法と管理方法に関する知識が普及すれば、多くの事故を未然に防げます。
最後に、整理整頓された安全な環境での充電が強調されるべきです。床に直置きして充電したり、ベッドの上で充電したりすると、万が一発火した場合の被害が拡大します。テーブルやデスク上など、周囲に可燃物がない場所で充電することで、発火時の延焼を最小限に抑えられます。
参考リンク:東京消防庁が公表している「住宅でも注意!リチウムイオン電池関連火災」では、一般家庭で起こりやすいリチウムイオン電池火災事例と対策方法が詳しく解説されています。
https://tfd.metro.tokyo.lg.jp/
参考リンク:製品評価技術基盤機構(NITE)の公式ページでは、リチウムイオン電池搭載製品の火災事故防止に関する3つの重要ポイントと、万が一の発火時対応方法が掲載されています。

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