鈞窯偽物見分け方と鑑定ポイント

鈞窯の贋作は驚くほど精巧で、数百万円の損失リスクも。釉面の特徴、胎土の違い、窯変の見極め方など、陶芸愛好家が知っておくべき真贋判定の基礎知識を解説します。あなたは本物と偽物を見分けられますか?

鈞窯偽物の見分け方

高級花盆買うつもりが偽物だと後で数十万円の損です。


この記事のポイント
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釉面の観察が基本

蚯蚓走泥紋や窯変の自然さが真贋判定の鍵となります

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胎土と作り方をチェック

底部の土質や製作工程の痕跡から時代を見極めます

⚠️
作為的な加工に注意

摩擦痕や人為的な剥釉は贋作の証拠となります

鈞窯偽物の釉面特徴

鈞窯の釉面には「蚯蚓走泥紋」という独特の文様が現れます。これは釉薬縮れて線状になった自然な現象です。本物の鈞窯では釉面が乳光を含んだように輝き、天青・天藍・月白といった色調が均一かつ滑らかに発色しています。


参考)_古玩天地: 鈞窯瓷器的生產與鈞窯瓷品的真偽鑑定


偽物の釉面には蚯蚓走泥紋が全く見られません。


これが最も分かりやすい判断基準です。



また窯変紅斑の色合いも重要な判定ポイントになります。本物の窯変斑は紫紅色で自然に釉面に溶け込んでいますが、偽物は色が浅すぎるか深すぎて不自然です。窯変は内外で自然につながっており、偽物のように内外各半分で断片的に分かれることはありません。


参考)鈞瓷的真偽


釉面を拡大鏡で観察すると、偽物には獣皮などで摩擦した平行線の痕跡が残っています。作り手が浮光を消すために行った作業の跡です。本物は中原地区の乾燥した土壌環境のおかげで、千年近く経っても光沢が保たれているんですね。


鈞窯の胎土と製作工法の違い

真品の鈞窯は唐代から民国時代まで一貫して手拉坯(ろくろ成形)で作られています。


これが原則です。



胎土を見ると本物は細密で均質、古代は泥の精製工程が複雑だったためです。対して現代の仿鈞は精製が簡略化されており、断面に雑質や気孔が見られることがあります。胎色は真品と贋作で大きな差はありませんが、これは同じ産地の原料を使っているためです。


底部の高台を注意深く観察してください。宋代の鈞窯は細く繊細な高台を持ち、支持具の痕跡が残っています。明清以降の作品は高台が太くなる傾向があります。また官鈞窯と呼ばれる宮廷用の花盆には、底に「一」から「十」までの数字が刻まれており、数字が大きいほど器のサイズは小さくなります。


参考)紫紅釉 盆


剥釉の断面も見逃せません。本物の自然剥釉は断面が直茬(垂直)ですが、人為的に作られた偽物の剥釉は斜茬(斜め)になっています。


鈞窯偽物の作為的な加工痕

贋作業者はいくつかの手口で古く見せようとします。


まず土銹の付着です。出土品に見せるため意図的に土を付けますが、本物の鈞窯は北方の出土品では土銹が少なく光潔な表面が一般的です。大きな土塊が固着している場合は疑うべきですね。


前述の摩擦痕も作為の証拠になります。獣皮や布で表面を磨いて光沢を抑えた結果、平行線状の擦過痕が残ってしまうのです。


剥釉も人為的に作られることがあります。古さを演出するため底足部分の釉を故意に剥がすのですが、断面の角度で見破れます。


真品は垂直断面、偽物は斜め断面です。



化学薬品による腐食処理も行われます。酸やアルカリで表面を侵食させて古色をつけますが、腐食の深さや範囲が不自然で一様すぎるため識別可能です。


鈞窯の形状と時代による違い

北宋時代の鈞窯は古代青銅器の形を模しています。


これが条件です。



参考)鈞窯の花瓶|開運!なんでも鑑定団|テレビ東京


アールヌーヴォー様式のような曲線的で肉感的なデザインは北宋の鈞窯にはあり得ません。日本のテレビ番組「開運!なんでも鑑定団」では、500万円で購入した花瓶が形状の不一致から偽物と判定され、1万円の価値もないとされた事例があります。


参考)https://ameblo.jp/komickk/entry-11601402760.html


器種も時代判定の材料になります。宋代の器皿類鈞瓷は盤・碗・杯・碟などの日用器が中心で、天藍・月白・青緑を基調としています。明代初期の官鈞窯は花盆・盆托・出戟尊といった陳設用の花器が主流で、高温銅紅釉技術が成熟し窯変が顕著です。


参考)鈞窯 - 維基百科,自由的百科全書


ライオンのドアノッカーのような西洋風の装飾が付いた鈞窯も怪しいです。


中国の名窯にそのような意匠は使われません。



鈞窯偽物による金銭的被害の実例

中国では収集家が46万元(約900万円相当)を支払って57件の鈞窯を購入したものの、全て贋作だった事例があります。1件あたりの製作コストは数十元なのに数万元で販売されていました。


参考)收藏者46万元,买来57件钧窑赝品:一件成本几十元,叫价数万…


日本でも大手旅行会社を通じて鈞窯を購入しようとした事例があり、日本まで運送・決済も可能という触れ込みでしたが、慎重な鑑定が必要でした。


厳しいところですね。



参考)https://japanartweb.com/PAGE9/COLUMN-180..html


テレビ番組では30年前に500万円で購入した鈞窯の花瓶が、形状の問題から偽物と判定され1万円の価値もないとされました。購入時の高額さと鑑定結果のギャップが大きすぎて、所有者にとって衝撃的な結果となりました。


北宋時代の本物であれば数億円以上の価値がつくこともあります。


つまり真贋の差は金額にして億単位です。



参考)鈞窯(きんよう)を高価買取!中国の陶磁器の査定ポイントを徹底…


科学鑑定を依頼する場合、蛍光X線分析や電子顕微鏡による検査は1回10万円から100万円程度かかります。高額な鈞窯を購入する前には、この投資も検討する価値があります。


参考)https://sanka-antique.com/pages/antique-authenticity


参考として、陶磁器の真贋判定について詳しく知りたい方は以下のリンクが役立ちます。


陶磁器の骨董品が偽物か本物かの見分け方とは?鑑定のコツを解説
鈞窯の歴史と特徴について理解を深めたい場合はこちらも参考になります。


鈞窯(きんよう)とは。宋代名窯の歴史と特徴

鈞窯真贋判定で陶芸愛好家が注意すべき点

まず購入前に必ず専門家の鑑定を受けてください。自己判断だけで高額な鈞窯を購入するのはリスクが高すぎます。


釉薬の発色と質感を複数の真品と比較することが重要です。美術館や博物館に収蔵されている作品、然るべき伝来が証明されているもの、科学分析でデータ上本物とされたものを基準にします。


これが基本です。



贋作の研究も有効な学習方法になります。現代の贋作を意図的に観察し、本物との違いを体で覚えることで鑑識眼が養われます。


蘆氏による民国期の仿宋鈞は近代で最も成功した模倣作ですが、やはり蚯蚓走泥紋がなく窯変紅斑が暗く不自然という破綻があります。当時は窯変のメカニズムが科学的に解明されていなかったためです。


購入する窯場や販売業者の信頼性も確認しましょう。保証書や返品規定があるかどうか、鑑定結果次第で返金対応してくれるかも確認ポイントです。


陶芸を趣味とする方なら、実際に鈞釉の再現に挑戦してみるのも理解を深める方法です。珪酸とリンを多く含む澱青釉、銅を含む紫紅釉の配合と還元焼成の難しさを体験すれば、本物の技術的価値がより実感できます。


参考)鈞窯(きんよう)とは。宋代名窯の歴史と特徴。美しい澱青釉と紫…