あなたの作品づくりが変わるかもしれません。
大工が使う切り台を陶芸の削り作業に転用すると作品が割れやすくなります。
陶芸の削り台と大工が使う切り台は、どちらも「作業対象を安定させる」という目的で設計されています。大工の切り台はベニヤ板をクロス(十字)に組み合わせた構造で、その上に板を乗せて加工作業を行います。高さは通常450mm程度で、溝は必ず垂直になるように切り、バッテン(X字型)を2つ組み合わせて使うのが基本です。
陶芸の削り台も回転する天板を支える土台が必要で、作品を安定させて削る点では大工の作業台と似ています。
しかし決定的な違いがあります。
参考)職人技!削りをご紹介
大工の切り台は木材を固定して切断する用途なので振動や衝撃に強く作られていますが、陶芸の削り台は繊細な回転と微調整が求められます。大工用の切り台を陶芸に使うと、回転がスムーズでないため作品に不均一な圧力がかかり、薄い部分が割れるリスクが高まります。つまり構造は似ていても用途が違うということですね。
参考)削り陶芸体験
DIYで削り台を自作する場合、大工の切り台の構造を参考にしつつ、回転部分には専用のベアリングやターンテーブルを組み込む必要があります。ホームセンターで入手できる回転台(lazy susan)を組み合わせると、安定性と回転性を両立できます。
削り台の高さは作業効率と仕上がりに直結します。大工が作業台を作る際、「膝の高さ」を基準にするのと同じく、陶芸でも座った姿勢で肘が自然に曲がる高さが理想です。具体的には床から25cm~35cm程度、はがき約2.5枚分の高さが目安となります。
高さが合わないと何が起きるでしょうか?
低すぎると前かがみになり腰を痛めやすく、高すぎると削りの力加減がコントロールできません。プロの陶芸家は作品サイズに応じて削り台の高さを変えることもあります。大皿なら低めに、小さな湯呑みなら高めにセットするのが基本です。
安定性については、削り台の脚が4点または3点でしっかり接地していることが条件です。大工の切り台が2つで1セットなのは、作業中のぐらつきを防ぐためです。陶芸でも同様に、削り中に台が動くと作品の厚みが不均一になります。床が平らでない場合は、脚の下に薄いゴムシートを挟んで調整しましょう。市販の防振ゴムパッド(100円ショップでも入手可能)を使うと、微細な振動も吸収できます。
削り台の回転部分は作品の仕上がりを左右する最重要ポイントです。大工が鉋(かんな)で木材を削る際、台の精度が0.01mm単位で求められるのと同じく、陶芸の削り台も回転軸のブレが許されません。
参考)鉋(かんな)の使い方(調整法)まとめ【プロの大工用】解説動画…
回転がスムーズでない削り台を使うと、削りカンナの刃が引っかかり、削り跡に段差ができます。これは大工が「逆目(さかめ)」と呼ぶ現象に似ています。木工では刃口(刃の出口)が1mm以上開くと材が毛羽立ちますが、陶芸でも回転ムラがあると粘土表面が荒れます。
電動ろくろには回転台がついていますが、手動の削り台を選ぶ場合はベアリング式が推奨されます。ベアリングがないと摩擦で回転が重くなり、削り中に手を止めるたびに作品の位置がずれます。具体的には、回転台を軽く押して3秒以上スムーズに回る製品を選びましょう。
大工道具メーカーが作る木工用回転台(lazy susan)を削り台に転用する方法もあります。耐荷重が5kg以上あれば、中型の作品まで対応できます。
削り台の天板素材は作業性に大きく影響します。大工が鉋台に樫(かし)の木を使うのは、硬くて狂いにくいからです。同様に陶芸の削り台も、湿気で変形しない素材が求められます。
一般的な削り台の天板は以下の素材が使われます。
参考)大工さんの作業台
木製を選ぶ場合、厚さ12mm以上のシナ合板またはMDFが最適です。これは大工の作業台でよく使われる厚さと同じで、たわみにくく長持ちします。
天板の直径は作る作品サイズより10cm大きいものを選びます。直径20cmの皿を作るなら、天板は30cm必要です。大工が「余裕をもった作業スペース」を確保するのと同じ考え方ですね。
表面の仕上げも重要で、粗めのサンドペーパー(120番~180番)で軽く磨いておくと、粘土の滑りすぎを防げます。大工がランダムオービタルサンダーで仕上げるように、均一な表面処理が作業の快適さを決めます。
陶芸の削りと大工の鉋がけには驚くほど共通点があります。大工の薄削り技術では、3ミクロン(0.003mm)という髪の毛の太さの20分の1まで削ることが可能です。陶芸でも高台削りの際、1mm以下の精度で削る技術が求められます。
大工が鉋を使う際の基本原則は「手の位置と刃の位置の関係」です。これは陶芸の削りカンナにもそのまま当てはまります。削りカンナを持つ手の位置が作品の中心からずれると、削りの深さが不均一になります。
参考)平出刃monoの鑿(のみ)│大工道具の中でも最も種類の多い鑿…
具体的な応用テクニックがこちらです。
プロの陶芸家の中には、高台の精度を極限まで高めるため、蓋物を作る際に「蓋を上に乗せると自重でゆっくり落ちていく」レベルまで削り込む人もいます。これは大工の建具職人が鉋で0.01mm単位の調整を行う技術と同等です。
刃物の微調整技術については、全日本刃物工業会の技術解説が参考になります。大工道具の調整法を陶芸に応用できるヒントが満載です。
削り台を長持ちさせるには、大工が道具を手入れするのと同じ考え方が必要です。大工の鉋台は使用後に必ず砂や粉塵を払い、湿気を避けて保管します。削り台も粘土くずが残ったままだと、回転部分に粘土が入り込んで動きが悪くなります。
メンテナンスの基本手順はこうなります。
大工が鉋台の「台直し」を定期的に行うように、削り台の天板も使い込むと微妙に反ってきます。平面度が失われると作品の底が均一に削れないので、定規を当てて反りをチェックしましょう。反りが1mm以上ある場合は、台直し鉋またはサンドペーパーで修正します。
回転部分のベアリングが劣化すると異音がしたり回転が重くなったりします。この症状が出たら、ベアリングの交換時期です。ホームセンターで入手できる汎用ベアリング(608ZZ規格など)を使えば、自分で交換できます。交換方法は大工の工具修理と同じで、古いベアリングを外して新しいものを圧入するだけです。
削り台への投資は作品の質を高める重要な要素です。安価な製品を頻繁に買い替えるより、しっかりした削り台を一つ購入してメンテナンスしながら長く使う方が、結果的に経済的でもあります。