活性酸素は体内で酸素を利用してエネルギーを生成する過程で常に発生しており、スーパーオキシドアニオンラジカル、過酸化水素、ヒドロキシラジカル、一重項酸素など複数の種類が存在します。これらの中でもヒドロキシラジカルは最も毒性が強く、がんや生活習慣病、慢性疾患、老化の直接的な原因となることが知られています。通常、体内では適量の活性酸素が免疫機能として細菌やウイルスを攻撃する重要な役割を果たしていますが、過剰に生成されると細胞にダメージを与える有害な存在に変わります。
参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC11117742/
活性酸素が過剰に発生する主な原因として、紫外線や放射線への曝露、喫煙、過度の飲酒、大気汚染、激しい運動、過度のストレス、酸化した脂肪を多く含む食品の摂取などが挙げられます。特に酸化した古い食品を摂取すると、体内でフリーラジカルや活性酸素を作り出す原因となり、細胞へのダメージが蓄積されていきます。
参考)【医師監修】水素吸入で活性酸素をコントロール!最新科学が示す…
体内で活性酸素が増加すると、DNA、脂質、たんぱく質、酵素などの生体成分を攻撃して酸化させ、細胞レベルでの損傷を引き起こします。その結果、脂質の過酸化、DNA変異、たんぱく質の変性、酵素の失活といった分子レベルの損傷があちこちで発生し、細胞の老化が進行していきます。肌のシワやシミの発生、免疫機能の低下、動脈硬化の進行など、目に見える形での老化現象として現れるのです。
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活性酸素は多くの生活習慣病の発症にも深く関与しています。具体的には動脈硬化、心筋梗塞、脳梗塞、がん、糖尿病、胃潰瘍、肺炎、脳血管性認知症、アルツハイマー型認知症、アトピー性皮膚炎、関節リウマチ、白内障など、極めて多くの疾患の原因となることが明らかになっています。酸化ストレスが存在する条件下では、過剰な活性酸素がDNAの損傷や細胞のダメージを介して発がんに結びつくと考えられており、特に喫煙者や飲酒者では活性酸素高値により胃がんのリスクが高まることが研究で示されています。
参考)血中活性酸素種(Reactive Oxygen Specie…
オムロン ヘルスケアによる活性酸素と生活習慣病の関係についての詳細解説
人体には活性酸素を除去するための防御システムとして、スーパーオキシドディスムターゼ(SOD)、カタラーゼ、グルタチオンペルオキシダーゼなどの抗酸化酵素が備わっています。SOD酵素は体内で最も重要な抗酸化酵素であり、毒性のあるスーパーオキシドアニオンラジカルを害のない酸素と過酸化水素に分解する働きを持っています。
参考)「抗酸化療法」とは?活性酸素の知識と効果的な老化予防 - …
SOD酵素の作用により初期の活性酸素は除去されますが、その過程で過酸化水素が発生します。過酸化水素は弱い活性酸素ですが寿命が非常に長く、体内をあちこち移動する特性があります。この過酸化水素をさらに無害化するため、カタラーゼやグルタチオンペルオキシダーゼという酵素が働き、最終的に安全な水と酸素に変換されます。これらの抗酸化酵素が協力して働くことで、細胞内の活性酸素をおよそ10万分の1に減らし、酸化ストレスから細胞を守っています。
参考)https://www.aob-akashi.com/sod2.html
ヒドロキシラジカルは非常に反応性が高く、体内の解毒酵素では効率的に分解することが難しいため、ビタミンCやビタミンEなどの外部から摂取する抗酸化物質が重要になります。
参考)https://www.rakuten.ne.jp/gold/pycno/special/about_sod.html
活性酸素の働きを抑えるためには、日々の食事から抗酸化成分を積極的に摂取することが効果的です。ビタミンCは緑黄色野菜のブロッコリーやケール、ほうれん草、果物ではオレンジやグレープフルーツ、イチゴやキウイに多く含まれており、細胞の酸化を防ぐ働きがあります。ビタミンCは水に溶けやすく熱に弱いため、水洗いしすぎず、サッと炒めて調理するなど調理方法の工夫が必要です。
参考)https://www.minnanokaigo.com/news/kaigo-text/meal/no66/
ビタミンEは抗酸化作用を持つビタミンで、モロヘイヤやかぼちゃ、しそなどの緑黄色野菜のほか、アーモンドやくるみなどのナッツ類、大豆製品に多く含まれています。大豆製品に含まれるイソフラボンや、赤ワイン、ココア、ブドウ、キノコ、緑茶などに含まれるアントシアニンやカテキンなどのポリフェノールも、強力な抗酸化物質として活性酸素を除去する作用があります。
参考)抗酸化作用のある食べ物とは?アンチエイジング効果と正しい対策…
特にイオウ化合物は毒性が強いヒドロキシラジカルも除去できる優れた抗酸化成分で、にんにくのアリシンやネギ類のイソアリシンなどがその代表例です。
参考)抗酸化による老化防止の効果
| 抗酸化成分 | 主な食品 | 特徴 |
|---|---|---|
| ビタミンC | ブロッコリー、ケール、イチゴ、キウイ | 水溶性で熱に弱い |
| ビタミンE | モロヘイヤ、かぼちゃ、ナッツ類、大豆 | 脂溶性で油と一緒に摂取すると吸収率向上 |
| ポリフェノール | 赤ワイン、緑茶、ココア、ブドウ | カテキン、アントシアニンなど多種類存在 |
| イオウ化合物 | にんにく、ネギ類 | ヒドロキシラジカルも除去可能 |
ミネラルは活性酸素の除去と深い関係があり、特に亜鉛、セレン、マグネシウム、カルシウムは「対抗ミネラル」として重要な役割を果たします。亜鉛は数百種類に及ぶ様々な酵素の活性中心を構成し、水銀、カドミウム、鉛などの有害金属に対抗する働きを持っています。活性酸素種を分解処理する働きを有するセレンも、亜鉛と共に有害金属に対抗する有益なミネラルです。
参考)ミネラル・酸化ストレス度を測定する意義(論文発表) - ら・…
加齢と共に体内のミネラル代謝も変化し、亜鉛、カルシウム、マグネシウムなどの必須ミネラルは減少する一方で、有害金属である水銀や砒素は蓄積していくことが研究で明らかになっています。これらの対抗ミネラルが不足すると、体は有害金属の影響を強く受けることになり、活性酸素の生成が促進されて老化が加速します。
鉱物由来のミネラルは人体において重要な栄養素として機能し、カルシウムは骨や歯の形成に必要であり、鉄はヘモグロビンの構成要素として血液の酸素運搬に関わっています。酸素との親和性の高いミネラル(鉄、銅、マンガン)の過剰摂取や、亜鉛やセレンなどの抗酸化ミネラルの摂取不足は、活性酸素の生成を促進し老化を加速させる要因となるため、バランスの取れた摂取が重要です。
参考)植物性ミネラルの働きと効果|日本オーガニックミネラル株式会社
ミネラルと酸化ストレス測定の意義についての詳細研究
鉱物や鉱石に興味を持つ方にとって、水晶などの鉱物が持つ物理的特性と活性酸素の関係には興味深い側面があります。水晶の正体である石英は酸素とケイ素という2つの元素から構成されており、地球の表層部で最も多い元素の組み合わせです。水晶から製造されるシリカゲルは、無数の微細な穴を持つ構造により高い吸着能力を発揮しますが、これは物質レベルでの相互作用の一例といえます。
参考)科学エッセイ:水晶の秘密を解き明かす - 科学夜話
鉱物採集や野外活動の際には紫外線への曝露が避けられず、紫外線は体内で活性酸素を大量に発生させる主要因となります。野外で長時間活動する鉱石愛好家は、特に抗酸化対策を意識する必要があります。紫外線を浴びると免疫機能として働く活性酸素が生成されますが、過剰に生成されると疲労の原因となり、皮膚細胞中に発生した一重項酸素は皮膚がんを強力に促進する危険性があります。
参考)紫外線で体がサビる⁉体を守る抗酸化作用を高める方法とは!
鉱物探索や野外調査の際は、ビタミンCやビタミンEを含む食品を事前に摂取し、日焼け止めなどの物理的防御と合わせて体内からの抗酸化対策を行うことが推奨されます。また、鉱物に含まれる微量元素に関する知識は、体内のミネラルバランスの重要性を理解する上でも役立ちます。亜鉛、セレン、マグネシウムといった必須ミネラルの適切な摂取により、活性酸素の除去能力を維持し、長期的な健康維持につなげることができるでしょう。