圧縮空気を動力源とするバイクの走行距離は、開発プロジェクトや車両の仕様により大きく異なります。オーストラリアの大学院生が開発した「O2 Pursuit」プロジェクトでは、フルタンクの状態で約100kmの走行距離を実現し、最高時速140kmを記録しました。一方、日本の福岡市立博多工業高校が開発した空気エンジン搭載自転車は、時速20km程度で約3分間、距離にして約1kmの走行が可能という報告があります。
参考)『2分で満タン、圧縮空気で走るバイク』の事。 - deahi…
実用化されている圧縮空気車の事例として、フランスのMDI社が開発した4人乗りコンセプトカー「AirPod」では、175リットルの圧縮空気で217kmの走行が可能とされています。ただし、これは自動車の事例であり、バイクでは車体の軽量化により効率が変わる可能性があります。圧縮空気タンクの容量、圧力設定、エンジンの効率、車体重量などの要因が走行距離に直接影響を与えるため、開発段階によって性能は大きく変動します。
圧縮空気エンジンは、タンクに貯蔵された高圧の圧縮空気を膨張させることでピストンやタービンを駆動する仕組みです。内燃機関が燃料を燃焼させてガスを膨張させるのに対し、圧縮空気エンジンは圧縮空気をそのまま膨張させるため、燃焼プロセスが不要となり、CO2や有害ガスを一切排出しません。
参考)https://ccsenet.org/journal/index.php/mer/article/download/0/0/48211/51836
具体的な動作原理として、シリンダー内に高圧の圧縮空気がタイミングよく送り込まれ、その圧力によってピストンが上下運動を行います。圧縮された空気は元に戻ろうとするエネルギーを蓄えており、この復元力が動力源となります。ピストンの上下運動はクランク軸を回転させ、最終的に車輪を駆動します。一般的なピストンエンジンの4サイクル(吸気、圧縮、爆発、排気)と異なり、圧縮空気エンジンは2ストローク化されることが多く、構造が簡略化されています。
参考)https://www.mdpi.com/1996-1073/6/3/1731/pdf?version=1426590954
市販のガソリンエンジンを改造して圧縮空気エンジンに転用する研究も進められており、100cc程度の小型エンジンでも5~9バールの圧力で0.95kWの出力を得られることが実験で確認されています。
参考)https://www.ene100.jp/www/wp-content/uploads/2022/10/be79480deb8bbd41dc0e86cd5485e392.pdf
圧縮空気バイクの性能を左右する重要な要素がタンクの容量と圧力設定です。タンクに貯蔵できる圧縮空気の量は、タンクの容積と空気の圧力の積で決まり、この総エネルギー量が走行距離に直結します。実験段階の圧縮空気エンジンでは、5~9バール(絶対圧力)の範囲で動作するものが多く報告されています。
参考)https://www.mdpi.com/1996-1073/16/10/4153/pdf?version=1684463312
高圧タンクを使用すればより多くのエネルギーを貯蔵できますが、安全性の確保が課題となります。事故時のリスクや、高圧タンクの重量増加は実用化において重要な検討事項です。また、タンク圧力が高すぎると、エンジン側での圧力調整が複雑になり、制御システムが必要となる場合もあります。
参考)最近のニュースや話題について、空気で走るバイクや水で走る車が…
現状の技術では、航続距離を伸ばすためには圧縮空気タンクの拡大や複数化、あるいは小型内燃機関とのハイブリッド化が必要とされています。複数のタンクを搭載することで、一つのタンクが空になっても別のタンクで走行を継続できる利点があります。
参考)https://news.livedoor.com/article/detail/4468704/
圧縮空気バイクの最大のメリットは、走行時に一切のCO2や有害ガスを排出しない点です。燃料を燃焼させないため、窒素酸化物(NOx)や粒子状物質(PM)といった大気汚染物質も発生しません。都市部での使用において、大気質の改善に貢献できる可能性があります。
参考)福岡・高校生が作った世界一の空気自転車とは!? - 今日は …
さらに、廃棄バッテリーの問題がないことも環境面での利点です。電気自動車やハイブリッド車で問題となるリチウムイオン電池の廃棄処理が不要なため、ライフサイクル全体での環境負荷が低減される可能性があります。また、構造がシンプルで部品点数が少ないため、メンテナンスが容易で製造コストも抑えられる可能性があります。
参考)最高時速はなんと140km!! エンジン無しで圧縮空気で走る…
ただし、圧縮空気を作り出すために使用される電力源が化石燃料由来の場合、トータルでの環境性能は低下します。再生可能エネルギーで圧縮空気を生成することが、真の環境配慮型輸送手段となるための条件です。
参考)https://www.appropedia.org/Air_powered_car/ja
福岡市立博多工業高校の生徒たちは、圧縮空気エンジン搭載自転車の開発で世界的な注目を集めました。2020年11月、彼らが開発した空気自転車は時速63.966kmを達成し、ギネス世界記録に認定されました。非公式では時速61.4kmを記録しており、高校生という限られたリソースの中で高い技術力を発揮しました。
参考)https://x.com/JNickname/status/1944011085109244132
youtube
この開発プロジェクトは複数年にわたって進められ、2年目には試作バイクで時速60km/hを超え、3年目には自転車に圧縮空気エンジンを搭載してギネス記録を達成しました。開発チームは機械科の3年生8人で構成され、圧縮空気でエンジンを動かす仕組みを一から研究しました。
参考)レンタル819西宮 [395] 実話 高校生が圧縮空気で動く…
海外の事例としては、2012年にオーストラリアの大学院生ディーン・ベンステッドが「O2 Pursuit」プロジェクトで圧縮空気バイクを開発し、走行距離100km、最高時速140kmという高い性能を実現しました。これらの開発事例は、圧縮空気バイクの技術的実現可能性を示す重要な成果となっています。
参考)https://www.jikkyo.co.jp/contents/download/9992660173
参考リンク:福岡市立博多工業高校の空気バイク開発の詳細についての情報
https://www.hakatath.ed.jp/
圧縮空気バイクの実用化に向けては、いくつかの技術的・社会的課題が存在します。最も大きな課題はエネルギー効率の低さで、一部の研究者は圧縮空気エンジンの効率が10%程度にとどまると指摘しています。圧縮空気に含まれるエネルギーはガソリンの1%にも満たないという研究結果もあり、同じ走行距離を得るためには大量の圧縮空気が必要となります。
熱力学的な損失も大きな問題です。空気の圧縮時には熱が発生し、膨張時には温度が低下するため、等温圧縮・膨張を実現する技術が理想的ですが、現実には困難です。この熱損失により、投入したエネルギーのうち実際に動力として取り出せる割合が限られています。
参考)https://www.mdpi.com/2673-5628/4/2/4/pdf?version=1712719295
社会インフラの整備も課題です。圧縮空気を充填するスタンドの普及がなければ、利便性は大きく制限されます。充填には専用の高圧コンプレッサーが必要で、家庭での充填には時間がかかるため、現状では実用的ではないとする意見もあります。また、航続距離の短さから、現時点では「買い物用途」などの限定的な使用にとどまるという見方が一般的です。
参考リンク:圧縮空気車の環境性能とエネルギー効率についての研究論文
Environmental Research Letters - Compressed Air Cars Evaluation

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