亜硝酸ナトリウム危険性と毒性から安全な摂取方法まで

食品添加物として広く使用される亜硝酸ナトリウムには、どのような危険性が潜んでいるのでしょうか。急性毒性やメトヘモグロビン血症、発がん性リスクなど、健康への影響と安全な付き合い方を詳しく解説します。

亜硝酸ナトリウム危険性

亜硝酸ナトリウムの主な危険性
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急性毒性

成人男性で約2gの摂取により致死的な中毒症状を引き起こす劇物指定物質

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メトヘモグロビン血症

血液の酸素運搬能力を低下させ、チアノーゼや意識障害を引き起こす

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発がん性リスク

食肉中のアミンと反応してニトロソアミンという発がん性物質を生成する可能性

亜硝酸ナトリウムの急性毒性と致死量

 

亜硝酸ナトリウムは劇物に指定されている化学物質で、その毒性は非常に強力です。成人男性の場合、わずか約2g(2,000mg)の摂取で死に至る可能性があるとされています。高濃度の溶液を飲むと、頭痛、吐き気、チアノーゼ、意識障害、痙攣などの深刻な中毒症状を引き起こします。実際に、海外では自殺目的で亜硝酸ナトリウムを摂取し、死亡に至った事例が複数報告されており、18~25gの摂取によってメトヘモグロビン濃度が83~90%以上に達し、致死的な結果となっています。

 

参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC9748921/

意外なことに、亜硝酸ナトリウムは自然界にも存在し、硝酸塩が微生物によって還元されることで生成されます。植物体内では通常、亜硝酸の集積は稀ですが、植物にダメージがある場合には多量に存在することがあります。また、動物の組織中でも内因性の硝酸塩の変換により天然に存在しています。

 

参考)https://www.nihs.go.jp/hse/food-info/chemical/nitrate/nitrate.pdf

亜硝酸ナトリウムによるメトヘモグロビン血症の症状

亜硝酸ナトリウムが引き起こす最も危険な症状の一つがメトヘモグロビン血症です。亜硝酸ナトリウムは強力な酸化剤として作用し、血液中のヘモグロビンを酸化してメトヘモグロビンに変換します。メトヘモグロビンは酸素を運搬する能力を失っているため、全身の組織が酸素不足に陥り、重篤な健康被害をもたらします。

 

参考)https://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen/gmsds/7632-00-0.html

メトヘモグロビン血症の症状は、血中のメトヘモグロビン濃度によって段階的に悪化します。10~15%の濃度では貧血やチアノーゼ(皮膚や粘膜が青紫色になる状態)が現れ、15~30%では脱力感、疲労、頭痛、めまい、頻脈、多呼吸といった症状が出現します。さらに高濃度になると呼吸困難、多幸症、顔面紅潮、失調症などが現れ、最終的には不整脈や心停止に至る可能性があります。

 

参考)https://www.jpec.gr.jp/detail=normalamp;date=safetydata/a/daa8.html

特に注意が必要なのは、乳児は成人と比べてメトヘモグロビン血症を起こしやすいという点です。これは乳児の血液中に胎児型ヘモグロビンが多く含まれており、メトヘモグロビンに変化しやすいためです。

 

参考)亜硝酸性窒素の毒性

亜硝酸ナトリウムとニトロソアミンの発がん性

亜硝酸ナトリウムの危険性として最も懸念されているのが、発がん性物質であるニトロソアミンの生成です。亜硝酸ナトリウムは、肉や魚に含まれる2級アミンという物質と結びつくと、強い発がん性を持つN-ニトロソアミン類を生成します。この反応は特に胃の酸性条件下で起こりやすく、試験管内の実験でも確認されています。

 

参考)亜硝酸ナトリウム(発色剤)|避けた方がよい添加物

国際がん研究機関(IARC)は、生体内でニトロソ化される条件下で硝酸塩または亜硝酸塩をグループ2A(ヒトに対しておそらく発がん性がある)に分類しています。パリ第13大学の論文でも、亜硝酸ナトリウムを含む肉を焦がしたり煮すぎたりすると発がん性のあるニトロソアミンが生成されると報告されています。

 

参考)スーパーで売られているパンの真実

ただし、実際の人体への影響については議論があります。動物実験では、ラットとマウスに2年間亜硝酸ナトリウムを投与した結果、雌雄ラットおよび雄マウスでは発がん性の証拠は見出されず、雌マウスでのみ前胃の腫瘍発生率に増加傾向が見られました。また、食の専門家による調査では、亜硝酸ナトリウムが「食べたくない食品添加物ランキング」のワースト1位に選ばれており、その安全性に対する懸念は根強く残っています。

 

参考)食と健康の専門家が選ぶ「食べたくない食品添加物ランキング」ワ…

亜硝酸ナトリウムの使用基準と食品中の残存量

日本では、食品衛生法によって亜硝酸ナトリウムの使用が厳格に規制されています。食肉製品や鯨肉ベーコンでは、亜硝酸根として1kgあたり0.070g(70ppm)以下、魚肉ソーセージや魚肉ハムでは1kgあたり0.050g(50ppm)以下、いくら・すじこ・たらこでは1kgあたり0.0050g(5ppm)以下の残存量が定められています。

 

参考)https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11130500-Shokuhinanzenbu/0000192871.pdf

亜硝酸ナトリウムの一日摂取許容量(ADI)は、「0.06mg/kg体重/日」と設定されています。これは、体重50kgの成人の場合、1日あたり3mgまでが生涯毎日摂取しても大丈夫な量ということになります。実際の摂取量についての調査では、ADI対比で1.4%以下と安全なレベルにあることが確認されています。

 

参考)ラベル表示から分かること(19) 「発がん性あり」とも言われ…

興味深いことに、亜硝酸ナトリウムには発色効果だけでなく、ボツリヌス菌をはじめとする有害細菌の繁殖を抑える重要な殺菌作用があります。ボツリヌス菌は極めて強力な神経毒を産生する細菌であり、食中毒による死亡リスクが非常に高いため、亜硝酸ナトリウムの使用は消費者の安全を守るために不可欠とされています。

 

参考)「食の安全ダイヤル」に寄せられた質問等Q&A(化学物質系)

亜硝酸ナトリウムの鉱物的背景と天然由来の代替品

亜硝酸ナトリウムと化学的に関連する物質として、硝石(硝酸カリウム)やチリ硝石(硝酸ナトリウム)があります。これらは自然界に存在する鉱物で、乾燥地帯の地表や洞窟の床に硝化作用や風解によって生成されます。特にチリのアタカマ砂漠では広大な硝酸ナトリウムの鉱床が発見され、かつては世界的に重要な窒素工業の原料となっていました。

 

参考)硝石 - Wikipedia

近年、合成亜硝酸ナトリウムの代替品として、天然源由来の亜硝酸ナトリウムが注目されています。栽培セロリ粉末などの植物原料から抽出された亜硝酸ナトリウムを使用することで、「無添加」をうたう製品を作ることができます。米国農務省食品安全検査局(FSIS)は2023年に、合成亜硝酸ナトリウムのサプライチェーンが不足している状況を受けて、天然源由来の亜硝酸ナトリウムの使用について一時的な許容量を設定しました。

 

参考)食品安全関係情報詳細

無添加ベーコンやハムとして販売されている製品も増えており、亜硝酸ナトリウムや発色剤、リン酸塩を使用しない「無塩せき」製品が市場に出回っています。ただし、これらの製品は保存性や食中毒リスクの面で注意が必要であり、適切な保管と早めの消費が推奨されます。

 

参考)無添加の先にたどりついた美味「Green Lineシリーズ」…

食品安全委員会による亜硝酸塩の詳細なリスク評価資料(PDF)
厚生労働省の食品添加物に関する最新情報と使用基準
職場のあんぜんサイトによる亜硝酸ナトリウムの化学物質情報と安全データシート

 

 


NICHIGA(ニチガ) 硫酸ナトリウム <無水芒硝> 国内製造 1kg 食品添加物 クラウバーソルト [01]