繊維強化プラスチック(FRP)は航空機産業で革新的な役割を果たしています。ボーイング787では機体全体の重量に占める割合でCFRP(炭素繊維強化プラスチック)が50%にまで拡大され、従来型のB767の3%と比較して大幅に増加しました。この軽量化により航続距離の延長と燃費の大幅な向上が実現されています。
参考)炭素繊維の航空・宇宙分野への応用事例
民間航空機への複合材の利用は1940年にレーダードームのGFRP(ガラス繊維強化プラスチック)化から始まり、1975年にはNASAがB727やB737のエレベーター(昇降舵)、DC10の尾翼などに複合材を利用し金属構造に対して約30%の軽量化に成功しました。エアバスのA380やボーイングのB787では、より広範にCFRPの採用が計画されており、航空機用途におけるCFRPの利用はますます拡大しています。
宇宙分野では人工衛星やロケットなどに多くのCFRPが使われており、高強度・高剛性という特性が宇宙開発の効率化に貢献しています。軽量性と耐久性を兼ね備えた繊維強化プラスチックは、過酷な環境下でも安定した性能を発揮するため、今後も航空宇宙産業における需要は増加すると見込まれています。
参考)繊維強化プラスチックの用途
自動車産業では繊維強化プラスチックが車体の軽量化と燃費向上のために広く採用されています。車体重量を軽くすることにより走行に必要なエネルギーが少なくなるため、燃費が向上し、同じ量の燃料でもより長い距離を走ることができます。CFRPは振動減衰性が金属よりも優れており、自動車やモーターサイクルなどの振動減衰性が必要な用途において優れた特性を持つ製品となります。
参考)CFRPとは? 特徴や用途から成形方法の選び方まで詳しく解説
CFRPは高級スポーツカーの車体部品やシャーシに使用され、性能向上に貢献しています。また、GFRPは車体部品や内外装、断熱材などに幅広く利用されており、比較的安価でありながら優れた特性を持つため、量産車にも採用が広がっています。
参考)繊維強化プラスチック(FRP,GFRP)入門
自動車用部品への繊維強化プラスチックの応用は、環境規制の強化と電気自動車の普及に伴い、今後さらに拡大すると予測されています。軽量化による走行距離の延長は、特に電気自動車において重要な要素であり、繊維強化プラスチックの需要は今後も増加し続ける見込みです。
参考)日本の繊維強化プラスチック市場: 分析の業界規模、シェア、成…
私たちの身近な生活において、繊維強化プラスチックは住宅設備に広く使われています。特にFRP製の浴槽は日本の住宅における定番素材となっており、現在の住宅に使われている浴槽の多くがFRPで作られています。FRP浴槽は「繊維強化プラスチック」または「ガラス繊維強化プラスチック」のことを指し、軽量の樹脂に弾性率が高いガラス繊維を混合して作られた素材です。
参考)ユニットバスに使われる素材の特徴は?種類や材質ごとに解説
FRP浴槽の主なメリットとして、価格が安い、防水性能が高い、錆びにくい・腐りにくい、さまざまな形状に対応できる、補修しやすいという点が挙げられます。ユニットバス向けの浴槽として最も普及しているFRP浴槽は、大量生産が可能なため製造コストが低く、本体価格が安価な点がメリットです。
参考)FRP浴槽のメリット・デメリットや人造大理石浴槽との違いとは…
住宅分野では、浴室ユニットや浴槽、キッチンカウンターなどの水回り設備にFRPが多く採用されています。特に防水性と耐久性を兼ね備えたGFRP製の浴槽は、日本の住宅では定番となっており、軽量でデザイン性が高く、多くの住宅や施設で採用されています。
参考)FRPとは?特徴から活用法まで完全解説 株式会社くればぁ
繊維強化プラスチックはスポーツ用品分野でも広く活用されており、高い性能が求められる製品に採用されています。ゴルフクラブのシャフトや釣り竿などのスポーツ用途から実用化が始まり、現在では自転車のフレーム、野球のバット、テニスラケット、スキー用具など多くのスポーツ用品に使用されています。
GFRPはゴルフクラブ、釣り竿、カヤック、ヨットなど、スポーツ用具に広く使用されています。軽量性と耐久性が求められるスポーツ用品において、高性能な材料として利用されており、選手のパフォーマンス向上に貢献しています。CFRPは特に高級スポーツ用品に採用され、その軽量性と高強度が競技レベルの向上を支えています。
参考)【強化プラスチック】GFRP CFRP FRPとは?強化プラ…
船舶産業においても、繊維強化プラスチックは重要な役割を果たしています。小型船舶の船体やボートの船体に使用されることが多く、塩水に対する耐腐食性が求められる海上での使用において、大きなメリットを提供します。海洋環境でも非常に有効であり、軽量かつ耐久性に優れた特性が船舶の性能向上に寄与しています。
参考)FRP(繊維強化プラスチック)とは? その特徴から製作の種類…
医療分野では、繊維強化プラスチックの特殊な性能が高く評価されています。医療用品に使用される部品には、主に耐食性や耐薬品性などが求められ、MRIなどの精密機械の部品には、放射線量を低減するX線透過性などの特殊な性質も要求されます。医療現場では、非磁性・耐薬品性・絶縁性といった複合的な性能が求められており、FRPはそれらを一つの素材で満たせる点が評価されています。
参考)医療用品のFRP製品用途を紹介
手術機器や検査装置の筐体、カバー部品などに使用され、清掃性や耐久性も確保しやすいのが特徴です。介護機器では車いす、入浴補助器具、移動用フレームなどに使用されており、軽量で持ち運びや清掃がしやすいことが大きな利点です。金属よりも錆びにくく、衛生管理にも適しています。炭素繊維強化プラスチック製人工股関節の開発も進んでおり、耐久性と耐摩耗性は従来の金属製の製品に比べ数倍以上の性能を持っています。
参考)https://www.chusho.meti.go.jp/sapoin/index.php/cooperation/project/detail/3493
エネルギー分野では、風力発電のブレードに繊維強化プラスチックが使用されています。風力発電のブレードは、多くがFRP製であり、軽量かつ高強度で腐食に強いFRPは、巨大構造物の回転部材に最適です。軽量かつ高強度なFRPは、風力発電の効率を向上させるために重要な材料となっています。
参考)FRPとは?材質:特徴と用途
建設・土木分野では、繊維強化プラスチックのインフラ整備における活用が進んでいます。住宅やインフラ整備において、その優れた特性から幅広く活用されており、1990年代から建築、橋梁の耐震補強などの建設分野に用途が拡大しています。FRPは補強材や橋梁の耐震補強に使用され、軽量性と高強度により構造物の長寿命化に貢献しています。
参考)炭素繊維強化プラスチック - Wikipedia
ガラス繊維は建築土木分野において補強材や断熱材として広く利用されており、GFRPの耐腐食性と耐水性が屋外設備や構造物に適しています。また、浄化槽、水道管、ポンプなどの水回りのインフラ設備にもFRPが多く採用されており、その耐久性と耐腐食性が評価されています。
産業機械分野では、FRPが各種機械部品や設備に使用されています。天板、カセッテ、手術用部品などの医療機器から、産業機械の部品まで幅広い用途で活用されており、高強度、剛性、X線透過性、耐疲労性といった特性が求められる場面で採用されています。電子機器においては、電磁波の遮蔽性に優れており、信号の干渉や電磁ノイズの防止に役立つため、電子機器の筐体やカバーなどに使用されることがあります。
繊維強化プラスチックは優れた特性を持つ一方で、リサイクルに関する課題が存在します。繊維強化プラスチックの中でも、CFRPは特にリサイクルが困難な素材として認識されており、循環型社会の実現に向けた重要な課題の一つとなっています。CFRPは分解が難しく、製品寿命を終えた多くが廃材として埋め立て処分されている状況が課題となっています。
参考)CFRPリサイクルは難しい?CFRPリサイクルの現状と課題、…
CFRPリサイクルにおける最大の課題は、コスト面での問題です。リサイクル技術の開発には多額の投資が必要であり、回収された炭素繊維の経済価値が新品の炭素繊維に比べて低いことが、リサイクルの普及を阻害しています。技術的な障壁として、炭素繊維の品質を保持しながら樹脂から分離する技術の確立が求められています。
参考)CFRPのリサイクル技術と課題:炭素繊維強化プラスチックの循…
現在、熱分解法や化学的溶解法など、さまざまなリサイクル技術が開発されています。新しいリサイクル技術では、炭素繊維の物性を維持しながら効率的に回収することが可能になり、リサイクル炭素繊維の品質向上が実現されています。FRP浴槽のリサイクルにおいても、金属が埋め込まれていたり異素材と結合していたりするものが多く、リサイクルには膨大なコストがかかるため、製品化は難しいのが現状です。
参考)再資源化困難だったFRPを塗り壁材へ LIXILが目指すマテ…
一方、繊維強化プラスチック市場の将来性は明るく、2026年から2035年の予測期間中は年平均成長率(CAGR)8.2%で成長が見込まれています。2026年には日本の繊維強化プラスチックの業界規模は254億米ドルに達すると予測されており、建設、自動車、航空宇宙、エネルギー、海洋、防衛などの業界における軽量で耐久性があり、耐腐食性のある複合材料の需要増加に牽引され、持続的な成長が見込まれています。業界の長期的な成功は、自動化、ナノテクノロジー、バイオ複合材料の進歩を活用しながら、リサイクル、コスト削減、標準化の課題に取り組めるかどうかにかかっています。
炭素繊維強化プラスチック (CFRP) のリサイクルの現状と課題 - J-STAGE
CFRPリサイクル技術の詳細な解説と今後の展望について専門的な情報が掲載されています。
繊維強化プラスチック(FRP,GFRP)入門 - 三洋化成
FRPの基礎知識から各種繊維の特性、用途まで包括的に解説された権威性の高い資料です。

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