硫化鉄 化学式 中学生の化合反応と性質

硫黄と鉄を加熱して化合する硫化鉄とは何か。FeS化学式で表現される硫化鉄の性質や、鉄との違い、そして化学反応式の書き方まで、中学の化学変化を完全解説します。あなたは鉄の磁性が失われるのはなぜだと思いますか?
硫化鉄(FeS)の化学変化を理解する
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化学式FeS とは

硫化鉄は硫黄(S)と鉄(Fe)が化合してできた新しい物質です。分子の構成は Fe1個:S1個となります。

黒色への色の変化

銀白色だった鉄は硫化鉄になると黒色になります。見た目が大きく変わる化学変化の証拠です。

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磁石に引きつけられない

純粋な鉄は磁石に引きつけられますが、硫化鉄になると磁性を失います。化学変化の重要な証拠です。

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塩酸反応で異なるガス発生

鉄は塩酸で水素ガスを発生させますが、硫化鉄は硫化水素(卵の腐ったような臭い)を発生させます。

硫化鉄とは化学式 FeS と化学変化の基本

硫化鉄の化学式と元素の組成

 

硫化鉄は硫黄と鉄が加熱により化合して形成される無機化合物です。化学式は FeS と表記されます。この記号はそれぞれ、Fe(鉄の元素記号)とS(硫黄の元素記号)の1個ずつの原子が結びついた状態を示しています。中学化学では特に重要な反応式であり、化学変化の典型的な例として位置づけられています。

 

硫化鉄の構造を理解する際のポイントは、硫化鉄がただ鉄と硫黄の粒子が混ざっているのではなく、原子レベルで化学結合をしているという点です。つまり、新しい物質が誕生しているのです。化学反応式で正確に表現すると「Fe + S → FeS」となり、反応の前後で元素の種類は変わらないものの、元素の組合わせによってまったく異なる性質を持つ物質に変わります。

 

中学二年の化学分野では、この硫化鉄の生成反応が化学変化と物理変化の違いを学ぶために用いられます。生成過程では通常、ルツボやセラミック容器の中で硫黄と鉄粉を均等に混ぜ、ガスバーナーで加熱します。加熱温度が充分に上昇すると、反応が急速に進行し、暗赤色から黒色へ変化していく様子が観察できます。

 

硫化鉄の化学反応式と炎の色

化学反応式は「8Fe + S₈ → 8FeS」と表記されることもあります。この表記法の違いは、実際の反応における硫黄の分子形態に関連しています。常温常圧下では硫黄は S₈ という8個の原子からなる分子を形成するため、精密には上記の式が正確です。しかし中学段階では、簡略化して「Fe + S → FeS」と習うことが一般的です。

 

反応中に見られる現象として注目すべき点は、加熱を開始してから約10秒から30秒ほどで反応が自発的に急速に進行することです。この際、容器内は一時的に明るく光り、高温の状態になります。この反応は発熱反応であり、充分な加熱源を提供するだけで反応そのものが熱エネルギーを放出するため、いったん開始されると自力で進行していきます。これが化学変化の特性を示す重要な現象となります。

 

化学反応式を記述する際の注意点として、係数の調整が重要です。反応式の両辺に存在する各元素の原子数が一致していることを確認する必要があります。左辺の鉄と硫黄の原子数の合計と、右辺の硫化鉄に含まれる鉄と硫黄の原子数が等しくなっていることが正しい反応式の条件となります。

 

硫化鉄と鉄の性質の違い比較表

硫化鉄がどのような物質であるかをより深く理解するためには、元の物質である鉄との性質比較が極めて有効です。以下は、物理的性質と化学的性質の両面から比較したものです。

 

性質の項目 鉄(Fe) 硫化鉄(FeS) 変化の意義
銀白色 黒色 化学変化を示す外観的証拠
磁性 磁石に強く引きつけられる 磁石に引きつけられない 電子配置の変化
属光沢 強い光沢あり 光沢なし 導電性の喪失
塩酸との反応 水素ガス発生(無臭) 硫化水素発生(腐卵臭) 化学式で表現される異なる反応
融点 1538℃ 1193℃ 化学結合の性質の違い
密度 約7.87 g/cm³ 約4.75 g/cm³ 結晶構造の相違


この表から明確に判断できることは、鉄と硫黄が化合することで、単なる物理的な混合ではなく、まったく異なる新しい物質が生成されているという点です。特に磁性の喪失と色の変化は、中学実験で最も顕著に観察できる現象です。

 

硫化鉄の化学式が示す元素の組み合わせの深い意味

化学式「FeS」はただの文字列ではなく、原子の結合比率を示す重要な情報源です。この1:1の比率は、鉄原子1個が硫黄原子1個と結合したことを意味し、硫黄化鉄が化学的にどのように構成されているかを完全に表現します。

 

硫化鉄の結晶構造は六方晶系に分類され、この規則正しい原子配列が物質の性質を決定しています。加熱時に鉄粉と硫黄粉末が反応する際、原子レベルでの結合の再編成が発生し、新しい結晶格子が形成されるのです。

 

興味深い補足知識として、自然界に存在する硫化鉄には複数の種類があることが挙げられます。中学で学習する FeS の他に、FeS₂(黄鉄鉱)という別の化学式を持つ硫化鉄も存在します。黄鉄鉱は黄金色の金属光沢を持つため、かつては「愚か者の金」と呼ばれることもありました。このように化学式の違いが物質の性質に大きな影響を与えることは、化学学習の奥深さを示す好例となります。

 

硫化鉄と塩酸反応における硫化水素ガスの発生機構

硫化鉄にうすい塩酸を加えると、硫化水素ガスが発生します。これは「Fe + 2HCl → FeCl₂ + H₂S↑」という化学反応式で表現される現象です。硫化水素は特有の腐卵臭を持つガスであり、その臭気は非常に特徴的なため、実験中に嗅覚でも化学変化を検知することができます。

 

この反応が重要な理由は、硫化鉄の化学的性質が元の鉄の性質とは異なることを化学的に証明するためです。もし硫黄と鉄が単なる物理的混合物であれば、塩酸の添加時に鉄から水素ガスが発生し、硫黄には反応が起こらないはずです。しかし実際には硫化水素という新しいガスが発生することで、硫黄が鉄と化学的に結合していることが科学的に確証されます。

 

硫化水素ガスは有毒ガスであるため、中学校の実験環境では安全上の配慮が必須です。実験は必ずドラフトチェンバー内で実施するか、屋外で行われるべきです。また、生成されたガスに直接顔を近づけてはいけません。教育的には、このガスの臭いを認識することで化学変化の証拠を感覚的に理解させることが目的です。

 

硫化鉄の化学式と中学化学の学習における重要性

硫化鉄の学習は、中学二年の化学分野における基礎的かつ最も重要なテーマの一つです。この反応を通じて、生徒は化学式の読み方、化学反応式の書き方、そして化学変化と物理変化の本質的な区別を同時に学習することができます。

 

化学変化とは何かを定義する際、硫化鉄の生成反応ほど適切な例は存在しません。加熱前は二つの単体(鉄と硫黄)であり、それぞれに固有の性質を持っていますが、加熱による反応により、新しい化合物(硫化鉄)が形成されます。この過程において、元素の種類は変わらないものの、物質としてはまったく異なる新しい存在へと変化するのです。

 

テスト問題では、硫化鉄に関して以下のような形式で出題されることが多くあります:硫化鉄の化学式の記述、鉄と硫化鉄の性質比較、塩酸反応での気体の確認、そして化学反応式のバランス調整などです。これらすべての問題タイプにおいて、「FeS」という化学式を正確に理解し記述することが解答の基盤となります。

 

さらに応用問題では、硫化鉄の生成における熱量計算や、反応時間の予測、あるいは反応物の質量比に関する計算問題も出題される場合があります。これらの問題を正確に解くためには、化学式の理解が不可欠な前提条件となるため、この段階での学習の定着度がその後の高度な化学学習に大きく影響することになります。

 

参考リンク:中学理科で「磁石につかない」理由を深掘りした内容が参考になります。

 

中学理科の苦手解決サイト
参考リンク:鉄と硫黄の化合反応の実験手順と注意点、および化学反応式の正確な表記方法の詳細解説があります。

 

映像授業のTry IT - 硫黄と鉄の反応(化合)

 

 


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