ラスター彩ノリタケの魅力と価値を徹底解説

ノリタケのラスター彩技法は、真珠のような虹色の輝きで1920年代のアールデコ時代を象徴する美しい装飾です。その歴史や製作技法、コレクション価値から日常のお手入れ方法まで、知られざる魅力を詳しくご紹介します。あなたもラスター彩の世界に魅了されてみませんか?

ラスター彩ノリタケの歴史と特徴

ラスター彩ノリタケの魅力
真珠のような虹色の輝き

金属顔料による700度の低温焼成で生まれるメタリックな光沢が特徴。アールデコ時代を象徴する美しい装飾技法です。

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多彩なカラーバリエーション

キャラメル、ブルー、オレンジ、グリーンなど豊富な色彩展開。1920年代のモダン都市のライフスタイルを具現化しています。

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オールドノリタケの代表的技法

大量の磁器にラスター彩を応用したのはオールドノリタケが初。1920~30年代のアールデコ製品に多用された革新的な装飾です。

ラスター彩は9世紀頃メソポタミアに起源を持ち、773年にエジプトで出土したガラス器が年代特定できる最古の作例とされています。 その後イラン、シリアを経て13世紀にはスペインへと伝わり、イギリスのアーツ・アンド・クラフツ運動での復興を経て、近代の日本へと到達しました。 ラスターとは英語で「輝き」を意味するLusterに由来し、光にあてるとメタリックな輝きを放つことからこの名がつけられ、日本では「光彩手」とも呼ばれています。
参考)http://www.old-noritake.sakura.ne.jp/collection/deco/a.html

 

ノリタケにおけるラスター彩の本格的な使用は、明治中頃に石田佐太郎が製品の一部に試みた記録がありますが、大規模な活用は1920~30年代のアールデコ風デザインの製品に集中しています。 銀や酸化銅などの金属を王水で溶解した金属顔料で絵付けし、700度程度の低温で焼成することで真珠のような光沢が生まれます。 この技法により、当時の人々に金属製品のような斬新さを印象付けることに成功しました。
参考) 技法 href="https://japan-porcelain.com/intro/techniques/" target="_blank">https://japan-porcelain.com/intro/techniques/amp;#8211; 日本ポーセリン協会

 

オールドノリタケには定番のキャラメルカラーからブルー、オレンジ、グリーンなど多彩なカラフルな色が用いられており、メタリックな輝きを放つラスター彩は1920年代のモダン都市のライフスタイルや時代の感性を見事に具現する装飾法でした。 大量の磁器にラスター彩を応用したのはオールドノリタケをおいて他にないとされ、ノリタケアールデコの最大の魅力がここにあります。

ラスター彩ノリタケのアールデコ様式との関係

ラスター彩はノリタケ・アールデコ作品に多く見られた技法であり、最大の特徴ともいえます。 金属や貴金属を溶かして作った陶磁器絵付用の絵具を使い、700℃前後の低い温度で焼成すると、メタリックな輝きを発します。 1920年代にはようやく自動車や機械製品が市民生活に浸透し始め、金属製品も身近なものになってきた時代背景がありました。
参考)ポップでキュートなノリタケ・アール・デコ|横山美術館

 

ノリタケのアールデコ商品は、貝殻の内側や虹色の光沢を持った螺鈿のような光沢を「ラスター彩」という技法で表現しており、その輝きは当時の婦人たちに優雅さを提供しました。 虹色に輝くラスター彩をまとい、ポップな色で彩られた愛らしい形をした陶磁器は人気を博し、アメリカのアールデコの隆盛の一翼を担ったのです。
参考)https://www.blueparrot.jp/?mode=f1amp;sort=n

 

ボウルの内側にパールラスター彩が施された作品では、まるで貝殻のような美しい仕上がりとなっており、花の中に佇む人魚が可愛らしい花器など、独創的なデザインが多数生み出されました。 女性をモチーフにした作品が多いのもノリタケ・アールデコの特徴で、クリノリンスカートという裾が広がったスカートを模した蓋付のキャンディボックスなどが人気を集めました。

ラスター彩ノリタケの製作技法と特殊性

ラスター彩とは陶磁器の表面に薄い金属皮膜を作ることで、真珠のような虹色の光沢をもたせた透明彩色のことです。 近代の日本においては、明治初期に水金・転写紙などとともに外国の商社によってラスター液も輸入されていました。 製作には金、銀、銅、プラチナなどの高価な材料を用いるため、使用方法には細心の注意を要します。
参考)https://www.kyuden.co.jp/library/pdf/chiiki_syakai/h13_kajiwara.pdf

 

ラスター液を濃く塗ると模様が大きくダイナミックになる傾向があり、マーブル液で引っ張り動かされる場合に厚み的に動きしろが大きくなるためです。 薄く塗ると細かい模様になる傾向があり、濃く塗ると色調も濃くなります。 乾燥については半日程度、約3~4時間程度行い、急ぐ場合はドライヤーなどを使用しても問題ありません。youtube
ノリタケでは「金彩」「ラスター彩」「エナメル盛」「盛上」「金盛」「金点盛」「モールド」「玉子ボカシ」など、数え切れないほどの技法を開発し、海外でも高い評価を受けてきました。 ラスター彩は金彩や金盛りと併用されることも多く、エナメル装飾は金盛りやコバルト顔料の中にも施されワンポイントのアクセントのようにも使われています。
参考)ノリタケのこだわり デザイン・技法

 

ラスター彩ノリタケのコレクション価値と買取相場

オールドノリタケは骨董品としての価値が非常に高く、世界中にコレクターが存在します。 状態やデザインによっては高価買取が期待でき、カップ&ソーサーは3,000円~30,000円、花瓶・飾壺は10,000円~100,000円、飾皿は5,000円~50,000円、ティーセット・ディナーセットの完品は数万円~数十万円が相場となっています。
参考)フリーダイヤル

 

ラスター彩のオールドノリタケの過去120日分のオークション落札価格は平均11,048円で、約115件の取引が確認されています。 シンプルなカップ&ソーサーは数千円が中心ですが、金彩や手描きが豪華なアール・ヌーヴォー期の作品であれば、数万円といった高額査定になることも珍しくありません。
参考)Yahoo!オークション -「ラスター彩」(オールドノリタケ…

 

市場に滅多に出回らないミュージアムクラスの希少品や、美術品として極めて評価の高い作品の場合は、上記相場を大幅に上回る金額が付く可能性も十分にあります。 ラスター彩婦人文皿など1920~31年頃の流行モダンなデザインの作品は特に人気が高く、コレクターの間で高値で取引されています。
参考)オールドノリタケ×若林コレクション アールヌーヴォーからアー…

 

日本屈指のオールドノリタケコレクションである若林コレクションでは、技巧を凝らした陶磁器やそのデザイン画など、選りすぐりの約250件が美術館で紹介されており、金盛やビーディング、ラスター彩などの装飾技法の多様性が展示されています。
参考)オールドノリタケ×若林コレクション −アールヌーヴォーからア…

 

ラスター彩ノリタケのお手入れと使用上の注意点

ラスター彩は酸や熱湯に大変弱いとされるものの、頻度にもよりますが日常の使用に耐えなくはありません。 しかしながら金属顔料による毒性のために食器にはあまり適さないと言えるため、鑑賞用として扱うことが推奨されます。
アンティーク食器のお手入れでは、必ず手洗いをし、食器洗浄機には入れないでください。 多くの食器洗浄機のラックが食器の表面を傷つける可能性がありますし、乾燥の熱が金のコーティングを浮かせてしまい、最終的には摩耗してしまう恐れがあります。 洗浄には台所用合成洗剤(中性洗剤)を使用し、柔らかいスポンジなどで洗ってください。
シンクの底にタオルまたはマットを敷き、陶器がシンクに当たって破損することを避けることが重要です。 シンクまたは洗い桶にぬるま湯を張り、少量の食器用洗剤を加えて泡が出始めるまで混ぜ、柔らかい布を使って一度に一品ずつやさしく洗います。 漂白剤を含む製品やレモンの香りのある洗剤は陶器の表面に悪影響を及ぼす可能性があるため避けてください。
金属タワシや研磨材付きスポンジは表面を傷つける可能性があるため使用せず、蛇口の真下に食器を置かないようにし、弱い水圧で丁寧に洗剤を洗い流すことが大切です。 そのまま自然乾燥させるか、食器用の柔らかい布巾で拭いて乾かすようにしましょう。
参考)商品のお取り扱い

 

ラスター彩復元の歴史と人間国宝・加藤卓男の功績

ラスター彩は9世紀のメソポタミアで誕生し、西アジア全域に広まり陶磁器芸術の頂点を極めるまでになりましたが、18世紀ごろから突如として姿を消し、製法自体が謎に包まれていました。 人間国宝の加藤卓男は、江戸時代から続く窯元「幸兵衛」の6代目で、この失われたラスター彩の技術を復元し、多大なる功績を残しました。
参考)フリーダイヤル

 

加藤卓男が若い頃目にした一冊の写真集に載っていたペルシャ陶器、特にラスター彩の美しさに心を奪われました。 イラン国立博物館でペルシャ陶器を実際に見て感動しましたが、製法が数世紀前に途絶えてしまったことを知り驚愕します。 その後20年以上の月日を費やし、ついにラスター彩の謎に包まれた製法、釉薬までも突き止めました。
参考)加藤 卓男 作 『ラスター彩 双鳥文陶筥』 買取価格相場|骨…

 

ラスター彩は、釉薬をかけて焼いた表面に銀や銅などの酸化物で絵付けをする技法で、加藤卓男の「呉洲鶴花文鉢」という作品は1986年に開催されたトプカプ宮殿での個展で展示されたものと考えられ、18万円で取引された記録があります。 加藤卓男は三彩という技法で人間国宝に認定されていますが、三彩と同じく有名なのがラスター彩であり、その復元は陶芸史における画期的な成果となりました。
ラスター彩双鳥文陶筥など、加藤卓男が得意とする創作の特徴が現れた作品は、現在でも骨董品として高い評価を受けており、コレクターの間で珍重されています。 イスラム文化圏の陶器に使われたラスター彩という技術の復元により、東洋と西洋を結ぶ陶芸の架け橋となった加藤卓男の業績は、現代の陶芸家たちにも大きな影響を与え続けています。