模様がきれいなガラスほど、実は値段が高いとは限りません。
プレスガラスを正確に見分けるには、まずその製法を理解することが出発点になります。プレスガラス(型押しガラス)とは、凹型(外型)の中に溶けたガラスを注ぎ込み、そこへ凸型(内型)を勢いよく押し込んで成形するガラス製品です。型吹きガラスが「吹き込んだ空気で内側から形を整える」のに対し、プレスガラスは「二つの型で物理的に挟んで形を作る」という根本的な違いがあります。
この製法の違いが、見分け方の核心部分に直結しています。型吹きガラスは外型しか使わないため、外側に模様があっても内側はなめらかになります。一方、プレスガラスは外型と内型の両方を使うため、外側の凹凸と内側の形状が型の構造そのままに現れます。つまり内側を指でなぞってみると、プレスガラスか型吹きかをかなりの確度で判別できるわけです。
製法の歴史も押さえておくとよいでしょう。プレスガラスは1820年代にアメリカで考案され、従来の手吹きガラスでは実現できなかった複雑な模様を大量に生産することを可能にしました。日本には明治時代に品川硝子製作所がイギリスからプレス加工機械を輸入したことで本格的に普及し、明治中期以降から大正・昭和にかけて多くの食器が作られました。つまり製法が定まった経緯が、年代ごとの見分け方にもそのまま反映されているということですね。
参考:プレスガラスの製法・特徴・歴史について詳しく解説されています。
プレスガラスを見分ける最初の手がかりとして最も有力なのが、継ぎ目(バリ)の存在です。プレスガラスは外型を2つまたは3つに分割して作られるため、型の境界線が細いスジ状の盛り上がりとして残ります。これをガラス界では「バリ」や「継ぎ目」と呼び、指の腹でなぞると微かに感触として伝わります。これが原則です。
型吹きガラスでも継ぎ目が残ることがありますが、プレスガラスの継ぎ目は外側・底面の両方に現れることが多く、比較的直線的で規則正しいラインを描きます。実物を手に取ったら、まず底面から側面にかけて縦方向に指を走らせてみましょう。1本または2本の細いスジが感じられれば、プレスガラスである可能性が高まります。
注意したいのが、現代のアンティーク風レプリカにも意図的に継ぎ目をつけたものが存在する点です。本物との差は、継ぎ目の「質感」にあります。古いプレスガラスの継ぎ目は製造後の長年の使用で角が丸くなっていることが多く、レプリカのものはエッジが比較的シャープです。これは使えそうです。骨董市で迷ったときは、継ぎ目の角の丸みを確認する習慣をつけると判断の精度が上がります。
参考:型吹きガラスとプレスガラスの継ぎ目・底の厚みの比較が実物写真で確認できます。
古いプレスガラスを見分けるうえで、気泡の存在は非常に強力なヒントになります。現代のガラス製品では製造管理が厳密なため、意図しない気泡が混入することはほぼありません。気泡があれば時代物のガラスである、というのが骨董の世界の基本的な見立てです。
気泡の量と大きさは、年代の目安にもなります。大正時代のプレスガラスは製造技術がまだ発展途上だったため、特に厚みのある部分に細かい気泡が多数入っているものが多く見られます。昭和初期になると技術が向上し、気泡は減少して小さくなっていく傾向があります。つまり気泡が多いほど古い時代のものである可能性が高いということですね。
ただし、近年製造されたアンティーク風ガラスの中には「わざと気泡を入れたもの」も存在します。人工的に入れた気泡は大きく不自然で、ガラス全体に均等に散りばめられているような印象があります。本物のプレスガラスの気泡は「厚みのある部分に不規則に存在する」のが自然な状態です。気泡が薄い部分にも均等に入っていると感じたら、製造年代に疑問を持ったほうがよいでしょう。
| 年代 | 気泡の特徴 | 見え方の目安 |
|---|---|---|
| 大正時代 | 多く・細かい | 厚い部分に密集 |
| 昭和初期 | 中程度 | やや少なめで不規則 |
| 昭和中期以降 | 少ない〜ほぼなし | 目立たない程度 |
| 現代レプリカ | 大きく人工的 | 薄い部分にも均等 |
プレスガラスの色は、年代と産地を読み解く重要な手がかりになります。大正時代以前のプレスガラスは、ガラスの精製技術が現代ほど発達していなかったため、ガラス素材に不純物が混ざりやすく、わずかに黄みや褐色がかった色味が生じています。完全な無色透明ではなく「うっすら飴色」に感じるものは、大正期以前のものであることが多いです。
昭和時代に入ると技術の向上とともに、より透明度の高いガラスが作られるようになりました。一方で、プレスガラスの世界では無色透明ばかりでなく、緑・青・ピンク・乳白色など様々な色つきのものも存在します。色の付いたプレスガラスを見るときは「自然な色むら」があるかどうかをチェックしましょう。年代のある着色ガラスは色が全体に均一ではなく、わずかに濃淡があります。これが条件です。
また、特定の色が特定の時代にしか作られていなかったケースもあります。例えば、ウランを着色剤として使ったウランガラスは、民間でのウラン使用が制限されるようになった第二次世界大戦後から現代にかけてほぼ生産されなくなりました。白色蛍光灯より暗いブラックライトを当てると黄緑色に強く発光するものは、ウランガラスの特徴です。意外ですね。ウランガラスはプレスガラスと同じ製法で作られたものも多く、見分け方のひとつとして活用できます。
参考:レトロガラスの時代別の色・特徴・気泡の見分け方が詳しく解説されています。
レトロガラス食器を知ろう!プロの見分け方と種類を伝授 – ラフジュ工房
プレスガラスと似て非なるものとして混同されやすいのが、型吹きガラスと切子(カット)ガラスです。骨董市での価格も大きく異なるため、3つの見分け方を正確に理解しておくことは非常に重要です。
まず型吹きガラスとの違いについてです。先述した通り、型吹きガラスは外型しか使わないため、内側はなめらかです。プレスガラスは外型と内型で挟むため、内側にも型の形状が反映されます。コップや皿を手に取って内側を指で触ったとき、外側の模様と対応するような凹凸が感じられればプレスガラスです。型吹きガラスなら内側はつるりとしています。
次に切子(カット)ガラスとの見分け方です。切子は完成したガラスを砥石やグラインダーで削って模様を入れる後加工であるため、断面のエッジが非常に鋭くシャープです。プレスガラスの模様は型から一体成形されるため、模様のエッジが比較的丸みを帯びています。模様の稜線(エッジ)を爪で軽くなぞったとき、スパッと切れるような鋭さを感じれば切子、緩やかな曲面であればプレスガラスと判断できます。
また価格面でも覚えておくと得する知識があります。日本の明治・大正期に作られたプレスプレート(プレスガラスの皿)は、ガラス専門の古美術商では文様の種類によって高値がつきますが、陶磁器を中心に扱う骨董商では見過ごされていることも少なくないとされています。およそ300〜400種にのぼるといわれる文様の中でも、戦勝記念や肖像が刻まれたものは年代基準品として特に研究価値が高いです。これは使えそうです。
参考:プレスガラスと型吹きガラスの製法の違い・模様の再現性について丁寧に説明されています。
これまでの4つのポイント(継ぎ目・気泡・色・模様)を確認した上で、最後に厚み・重さ・音の3つで総合的な判断を行うことが、見分け精度を高めるコツです。
プレスガラスは型で押すという製造上の性質から、同サイズの型吹きや宙吹きのガラスと比べて肉厚になります。特に底部は上げ底ではなく全体的に厚みが均等で、ずっしりとした重さがあります。手のひらに乗せたときに「思ったより重い」と感じたら、プレスガラスである確率が高まります。
音については、指先でガラスのふちを軽く弾いてみましょう。鉛ガラス(クリスタルガラス)は「キーン」と金属的な高い音が長く響くのに対し、一般的なソーダガラスのプレスガラスは「コン」と短く乾いた音がします。明治時代以前のプレスガラスには鉛ガラスが使われているものもあり、その場合はクリスタルに近い響きが出ることがあります。つまり音だけで断定はできませんが、他のチェックポイントと組み合わせることで総合的な判断に使えます。
なお、白い紙の上でガラスを光に透かす方法は、透明度のわずかな違いを見極めるのに効果的です。大正時代のプレスガラス特有の「うっすらとした黄み」は、普段使いの環境ではわかりにくくても、白紙を背景にすると明確に浮かびあがります。骨董市や古道具屋を訪れる際は、ぜひスマートフォンのライトと組み合わせて活用してみてください。
参考:古いガラスの気泡・色・歪みによる見分け方を実例写真とともに解説しています。

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