ポートランドの壺とウェッジウッドの魅力

古代ローマ時代に作られたポートランドの壺と、それを再現したウェッジウッドのジャスパーウェアの魅力を徹底解説。希少価値の高い陶磁器の歴史や特徴、コレクション価値について詳しくご紹介します。あなたはこの伝説の壺の秘密をご存知ですか?

ポートランドの壺とウェッジウッドの魅力

この記事でわかること
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古代ローマの傑作

西暦25年頃に作られたカメオガラスの壺の歴史と神秘

ウェッジウッドの再現

4年の歳月をかけて完成させたジャスパーウェアの技術

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コレクション価値

希少性の高いポートランドの壺の価値と魅力

ポートランドの壺の歴史と古代ローマの技術

ポートランドの壺は、西暦25年頃に古代ローマで作られたカメオガラスの傑作です。1582年、ローマのアッピア街道沿いにある古代ローマ皇帝の墳墓で発見されたと伝えられており、紀元前27年から西暦14年の間に、アレクサンドリアで修業を積んだ職人がおそらくローマで製作したと考えられています。コバルトブルーのボディーを一定の形に膨らませてから白色で覆い、それからフルサイズに膨らませて取っ手がつけられる高度な技術が用いられました。
発見後、イタリアの枢機卿や名門バルベリーニ家など資産家一族が所有していましたが、一族最後の女性がギャンブル好きであり、その返済にあてるためローマ在住のスコットランド人に売却されました。18世紀にイギリスの外交官ウィリアム・ハミルトン卿の手によってイギリスに持ち込まれ、その後ポートランド公爵夫人の手に渡ったことから「ポートランドの壺」と呼ばれるようになりました。デザインはギリシャ神話の愛と結婚の場面を描いており、花瓶が冷えてから宝石カット職人によって外側の白いデザインが何層にも削られていく繊細な技法が用いられています。

ウェッジウッドによるポートランドの壺の再現技術

ジョサイアウェッジウッドは、1786年にポートランド公爵からこの壺を借り受け、その美しさに心を奪われました。当時50代後半だったジョサイアは、古代イタリアの芸術の最高傑作といわれるカメオガラスのポートランドの壺をなんとか陶磁器で再現したいと考え、同社の誇るジャスパーウェアで試作を繰り返しました。
参考)The Portland Vase ポートランドの壺 【イギ…

 

ウェッジウッドは、焼成時の装飾部分と壺本体の収縮率の差の調整やガラスの質感の再現に苦労しましたが、4年の歳月をかけて濃紺地に白いレリーフが浮かぶ見事な作品を完成させました。1790年に完成したジャスパー製のポートランドの壺の完成度は素晴らしく、繊細なカメオ装飾が美しく「まるで本物のポートランドの壺のようだ」といわれるほどでした。早期バージョンの壺は焼成過程でひび割れたり、望ましい外観を達成できなかったため、ウェッジウッドの職人たちは材料と技術を完璧にするために4年間奮闘し、暗い不透明なガラスを表現するために青黒い粘土を開発しました。
参考)Redirecting to https://harvard…

 

ウェッジウッド社のショールームで初めて壺が公開された時には、前売り入場券も出たほどの人気でした。最終的に限定版が販売され、そのほとんどはウェッジウッドのショールームでの特別展示を通じて販売されました。
参考)https://ameblo.jp/tea-school-chatea/entry-11221981673.html

 

ウェッジウッド公式サイトでポートランドベースの詳細な制作過程と歴史を確認できます

ポートランドの壺とジャスパーウェアの特徴

ジャスパーウェアは、ジョサイア・ウェッジウッドが数千回の実験と研究の末、1775年に誕生させたストーンウェア(炻器)です。顔料を練り込んで焼成することで色を出しているのが特徴で、通常の陶磁器に行われる釉薬をかけないため、マットで滑らかなジャスパーならではの質感が生まれます。
ジャスパーウェア最大の特徴は、素地上の白いレリーフ(浮き彫り)装飾です。古代ギリシャやローマのカメオ細工を彷彿とさせるこの装飾技法は、古典主義的なスタイルで一世を風靡し、ヨーロッパ中を席巻しました。代表的な色は「ウェッジウッド・ブルー(ペールブルー)」と呼ばれる明るい青で、他にもロイヤルブルー、ピンク、セージグリーンなど豊富なカラーバリエーションがあります。
材質は非常に硬く、耐久性と耐水性に優れており、質的には磁器に近く堅牢で実用性と装飾性が両立しています。ジャスパーウェアは工芸品と近代工業製品の双方の要素を併せ持ち、広範に亘る用途の器物が製作されており、現代でもさかんに生産されています。

ポートランドの壺の大英博物館での破壊事件と修復

本物のカメオガラスのポートランドの壺には、衝撃的な歴史があります。1845年2月7日、大英博物館で展示中に酔っ払った閲覧者によって破壊されてしまいました。壺はなんと200ピース以上の欠片に粉々になってしまったのです。
この危機的な状況で、修復作業に大いに貢献したのがウェッジウッドのジャスパー製ポートランドの壺でした。修復作業の見本としてウェッジウッドの模造品が使われ、その精密さのおかげで見事な修復に成功しました。さらに修復に使われた接着剤の一部は日本のものだったという興味深いエピソードも残されています。
参考)美しすぎる!呪いのガラスの壺?ポートランドの壺とは

 

修復が繰り返され、現在は完璧に近い美しさを取り戻しており、大英博物館のローマブースにガラスケースに入れられて展示されています。鈍くつや光りする素地は黒に見えますが、実際は深いブルーで、地のガラスに乳白色のガラスを重ね、絵柄に不必要な部分を削りとって表現されています。その間は、陶器で有名なウェッジウッドが模造したものが代わりに展示されていたそうです。
参考)新米主婦のちくちくロンドン生活 泥酔者によって粉々にされた大…

 

ポートランドの壺モチーフのウェッジウッド製品の価値とコレクション

ウェッジウッドのポートランドの壺は、同社のブランドシンボルとして長年使用されてきました。ウェッジウッドのバックスタンプ(裏面の刻印)には多くの場合、壺が描かれており、これがポートランドの壺です。頭文字である「W」の中にポートランドの壺のシルエットがデザインされているものもあります。
参考)ウェッジウッドの魅力と価値を徹底解説|人気シリーズ・高額買取…

 

ウェッジウッドの本社にあるジョサイア・ウェッジウッドの像は、手にポートランドの壺を抱えており、ウェッジウッドのブランドの象徴として広く認識されています。ウェッジウッドは価値が落ちにくい洋食器として知られており、特に廃盤となったシリーズには希少価値があり高値で売れる可能性があります。
参考)世界中で愛されるウェッジウッドの価値とは?高く売れるコツを解…

 

ジャスパーウェアで作られたポートランドの壺の複製品は、コレクターの間で高い人気を誇ります。1973年や1976年に製造されたポートランド花瓶などのヴィンテージ品は、世界で最も権威があり神秘的な陶磁器の伝説を、伝説的なレリーフ技法と歴史的再現の精神で再現したものとして評価されています。初期の限定版は、1797年にジョン・トレバーが製造元から取得した第9番など、番号が記されており、これらは18世紀後半にアメリカのコレクションに入った最初の例として歴史的価値を持っています。
参考)ウェッジウッド工場の宝物、ジャスパー、ジャスパーレリーフ、1…

 

ウェッジウッドのラグジュアリーコレクションとポートランドの壺の歴史について詳しい解説があります
ウェッジウッドの最高級ライン「アストバリー」などの高級シリーズと並んで、ポートランドの壺をモチーフにしたジャスパーウェアは、ウェッジウッドの革新性、創造性、決断力を反映した縮図であると多くの人が考えており、現在もウェッジウッドは継続してジャスパー製品を製造し続けています。
参考)https://www.iittala.jp/contents/welcometowedgwood/editorials/guide-to-jasperware