飛鉋とは何か技法と特徴を知る

飛鉋は陶芸の装飾技法として知られていますが、その効果的な使い方や失敗しやすいポイントをご存知でしょうか?

飛鉋の技法と特徴

飛鉋を使えば誰でも簡単に模様が作れると思っていませんか?

この記事の要点
🎨
飛鉋の基本技法

回転する素地に鉋を当てて作る伝統的な装飾技法です

⚠️
習得の難しさ

適切な乾燥度と力加減の習得に数ヶ月から年単位の練習が必要です

独特の美しさ

リズミカルな波状模様が作品に動きと表情を与えます

飛鉋とは何か基本を理解する


飛鉋(とびかんな)は、ロクロで回転させた陶器の素地に鉋を当てて、リズミカルな波状の模様を作る装飾技法です。鉋の先端を素地に軽く触れさせると、回転の遠心力で粘土が飛び散り、独特の削り跡が残ります。


この技法は朝鮮半島から伝わったとされ、日本では中世から使われてきました。主に大皿や鉢などの広い面に施されることが多く、シンプルな形状の作品に動きと表情を与える効果があります。


飛鉋の特徴は、機械的な規則性と手仕事のゆらぎが同居している点です。ロクロの回転によって生まれる規則的なリズムに、作り手の手の微細な動きが加わることで、計算できない美しさが生まれます。これは印刷やスタンプでは再現できない、手作業ならではの魅力です。


日本陶芸協会の公式サイトでは、飛鉋を含む様々な装飾技法の歴史的背景について詳しく解説されています。

飛鉋に使う道具と素地の準備

飛鉋に使う鉋は、通常の木工用鉋とは異なる専用の道具です。刃先の幅は5mmから15mm程度が一般的で、素地の大きさや希望する模様の幅によって使い分けます。刃の形状は直線的なものと、わずかに湾曲したものがあり、後者の方が粘土をすくい取りやすく初心者向きです。


素地の準備が飛鉋の成否を分けます。粘土の乾燥度は「半乾き」と呼ばれる状態が理想で、指で押すとわずかに跡が残る程度です。含水率でいうと18~22%程度が目安となります。この状態を見極めるには経験が必要で、多くの陶芸家が最初につまずくポイントです。


素地が柔らかすぎると鉋で削った部分が崩れてしまい、硬すぎると鉋が跳ねて均一な模様が作れません。季節や気温によっても最適な乾燥時間は変わるため、作業環境を観察する習慣が大切です。梅雨時期は通常の1.5倍ほど乾燥に時間がかかることを覚えておきましょう。


乾燥度の見極めが基本です。


飛鉋の基本的なやり方と手順

まず素地をロクロに固定し、回転数を調整します。初心者は毎分60~80回転程度の遅めの速度から始めるのが安全です。速すぎると鉋のコントロールが難しく、遅すぎると模様が途切れてしまいます。


鉋の持ち方は、親指と人差し指で軽く挟み、中指で支える三点持ちが基本です。手首は固定せず、肘から先を使って動かすイメージで行います。鉋の刃先を素地に対して30~45度の角度で当てると、粘土がきれいに跳ねます。


実際の作業は、ロクロを回転させながら鉋の先端を素地の表面に軽く触れさせ、一定のリズムで上下に動かします。力を入れすぎず、粘土の抵抗を感じながら自然に刃先が跳ねるのを待つ感覚が重要です。1周につき3~5回程度の跳ねが標準的な間隔となります。


陶芸技術データベースには、飛鉋の動画解説が掲載されており、手の動きや角度を視覚的に確認できます。
跳ねるリズムが模様を決めます。


飛鉋で失敗しやすいポイントと対策

最も多い失敗は、削り跡が不均一になることです。


これは主に3つの原因があります。


1つ目は素地の乾燥ムラで、部分的に柔らかい箇所があると、そこだけ深く削れてしまいます。成形後は直射日光を避け、室温で均一に乾燥させることが予防策です。


2つ目は鉋を当てる力が一定でないこと。疲れてくると無意識に力が入り、削りが深くなります。長時間の作業では15分ごとに休憩を取り、手首をほぐすことが大切です。3つ目はロクロの回転ブレで、軸のガタつきがあると模様が波打ちます。


削りすぎて素地が薄くなるのも初心者に多い失敗です。大皿の場合、底の厚さは最低でも7mm以上を保つ必要があります。


これはコイン5枚分程度の厚さです。


薄すぎると乾燥や焼成時にひび割れや反りが発生します。


削りすぎた場合は、その作品では飛鉋を諦め、別の装飾技法に切り替える判断も必要です。無理に続けると素地に穴が開き、作品全体が台無しになります。デジタルノギスを使って厚みを測る習慣をつけると、削りすぎを防げます。


厚みの確認が失敗を防ぎます。


飛鉋の応用テクニックと表現の幅

基本の等間隔の跳ねから一歩進むと、様々な表現が可能になります。鉋を当てる強弱を変えることで、波の高低に変化をつけられます。強く当てた部分は深く大きな跳ねとなり、弱く当てた部分は浅く繊細な跳ねになります。


二重飛鉋という技法では、1回目の飛鉋の上から角度を変えて2回目の飛鉋を施します。交差する模様が生まれ、より複雑で立体的な印象になります。ただしこの技法は素地への負担が大きく、厚めの素地(10mm以上)で行う必要があります。


化粧土を使った飛鉋も人気です。白土に黒化粧を施してから飛鉋を行うと、削った部分から白い素地が現れ、コントラストの効いた模様になります。逆に黒土に白化粧をかける方法もあり、作品のイメージに合わせて選択できます。


工芸青花では、現代作家による飛鉋の新しい表現例が多数紹介されており、伝統技法の可能性を知ることができます。
組み合わせで表現が広がります。


飛鉋作品の乾燥と焼成での注意点

飛鉋を施した作品は、通常の作品よりも乾燥に気を使う必要があります。削った部分とそうでない部分で乾燥速度が異なり、急激に乾かすとひび割れの原因になるためです。理想は湿度60~70%程度の環境で3~5日かけてゆっくり乾燥させることです。


ビニール袋で覆って乾燥をコントロールする方法も有効です。作品全体を袋で覆い、1日目は完全に密閉、2日目は袋の口を少し開ける、3日目は半分開けるというように段階的に乾燥させます。


急がないことが重要です。


焼成時は素焼きで特に注意が必要です。飛鉋の凹凸部分は熱の伝わり方が不均一になりやすく、急激な温度上昇はひび割れを招きます。100℃までは1時間あたり50℃以下のペースで昇温し、水分を完全に抜くことが大切です。


本焼きでは、凹凸部分に釉薬が溜まりやすいため、施釉の厚さを通常より薄めにします。目安として、平らな部分の7割程度の厚さに抑えると、焼き上がりが均一になります。釉薬の溜まりを活かして景色として楽しむ選択肢もあります。


ゆっくり乾燥が成功の鍵です。


飛鉋を学ぶ教室と独学のコツ

飛鉋を本格的に学ぶなら、伝統技法を継承している窯元や陶芸教室での指導が確実です。東京都内では、3ヶ月で基礎を学べるコースが月額15,000~25,000円程度で開講されています。直接指導を受けることで、力加減や角度といった言葉では伝わりにくい感覚を体得できます。


独学で挑戦する場合は、まず小さな作品から始めましょう。直径15cm程度の皿なら、失敗しても材料費は500円程度で済みます。大きな作品は技術が安定してからの方が結果的に経済的です。


練習用の素地を作るコツは、同じ条件で複数個を成形しておくことです。同じ日に作った5~6個の素地があれば、乾燥度の違いによる削り心地の変化を比較でき、最適なタイミングを見つけやすくなります。記録をつけることで、自分なりの目安も作れます。


動画学習では、再生速度を0.5倍に落として手の動きを観察するのが効果的です。特に鉋を当てる瞬間の角度と、手首の返し方に注目すると理解が深まります。スマートフォンで自分の作業を撮影し、見本と比較する方法も上達を早めます。


小さく始めるのが上達への道です。




陶芸|飛びカンナ 平型