作品写真を載せないDMの方が、来場者数が増えることがある。
グループ展のDM(ダイレクトメール)とは、展示の開催日時・場所・参加作家などをまとめた告知用のはがきのことです。陶芸や陶器の展示をする作家にとって、DMは会場に足を運んでもらうための最初の接点になります。
個展との大きな違いは、「複数の作家が参加している」という点です。このため、1人の作品世界だけでなく、グループとしての統一感や展示のテーマを視覚的に伝えることが求められます。単純に複数の作品写真を並べればよいわけではなく、そこに共通するトーンや空気感をデザインに落とし込む必要があります。
つまり、個展DMよりもデザイン面での調整が一段階多くなる、ということですね。
DMの一般的なサイズはポストカードサイズ(100mm×148mm)が定番です。ポストへの投函もしやすく、ギャラリーや作家仲間への手渡しにも使いやすい。陶芸作家が参加する展示の場合、ギャラリー内に置いてもらうことも多いため、このサイズが扱いやすく重宝されています。
もし作家が5名以上いてプロフィールも載せたい、または作品写真を複数枚使いたい場合は、大判ハガキ(235mm×120mm)も選択肢に入ります。情報量が増えるほど窮屈になりやすいので、記載内容を整理してからサイズを決めるのが正解です。
紙の厚みは「連量180kg前後」が推奨されています。薄すぎると安っぽく見えてしまい、陶芸作品の重厚感と合わなくなる場合があるので注意が必要です。
参考:グラフィック株式会社「個展・展示会DMの作り方とおすすめデザイン例」
https://www.graphic.jp/feature/exhibition_dm
DMには表面(デザイン面)と裏面(宛名面)があり、それぞれに載せる情報を分けて考えることが大切です。これが基本です。
表面(デザイン面)に載せるのは主に「作品写真」「展示タイトル」「参加作家名」「会期の概要」などです。陶芸作品は写真映えする素材ですが、情報を詰め込みすぎると作品の美しさが埋もれてしまいます。表面はあくまでもビジュアルで引きつけることを優先し、細かい情報は裏面に集約するレイアウトが多くの場合うまく機能します。
裏面(宛名面)に載せる情報は次の通りです。
特に注意が必要なのが「開催時間」と「地図」です。最終日のみ閉廊が1時間早い、というケースはギャラリー展示では珍しくありません。この記載が抜けると、遠方から来てくれた方が無駄足を踏んでしまうことになり、クレームや信頼損失につながります。痛いですね。
陶芸のグループ展では、複数の作家がそれぞれ固有のSNSアカウントやウェブサイトを持っていることが多いため、DMの宛名面にQRコードを入れることで来場前の情報収集がしやすくなります。スペースが許す範囲で、作家ごとのQRコードを小さく添えるだけで、来場者がスマートフォンで事前に作品を確認できるようになります。これは使えそうです。
グループ展では1人の担当者がDM制作を仕切るケースが多く、他の参加作家から情報が集まるのが遅れて印刷入稿ギリギリになる、という事態が起きがちです。展示開催の1ヶ月半前を目安にDM完成・配布開始できるよう、参加作家への情報提出締め切りを事前に決めて共有しておきましょう。入稿が遅くなると印刷費の割増料金が発生することもあります。早期入稿が条件です。
参考:Art-Daichi「グループ展や個展のDMをつくりたい!どうやってつくる?」
https://art-daichi.com/dm-1/
DMのデザインクオリティを大きく左右するのは、掲載する作品写真の質です。陶芸作品は光沢・マット・ざらつきなど、質感のバリエーションが非常に豊かな素材であるため、撮影時の光の当て方次第で全く異なる印象になります。
スマートフォンのカメラでも、次のポイントを守ることでDM用として十分な品質の写真が撮れます。
グループ展のDMで難しいのは、複数の作家の作品写真を1枚のDM内に並べたとき、バラバラな印象になりやすい点です。作家ごとにスタイルが異なるのは当然ですが、DMとして統一感を出すためには「背景色を全員同じにする」「写真のサイズ比率を揃える」「同じ光の当たり方になるよう撮影条件を合わせる」といった工夫が有効です。
写真が揃ったら、代表作品1点を大きく配置し、残りの写真はやや小さめにまとめる構成が読みやすく見栄えもよくなります。陶芸作品はサイズが小さいものも多いので、写真の中での余白のとり方が重要で、ぎっしり敷き詰めると窮屈な印象を与えます。
意外に知られていないのですが、「あえて作品写真をDMに使わない」という選択肢もあります。展覧会名・作家名・会期などの文字情報だけをタイポグラフィーとして組み上げ、デザイン性を前面に出す手法です。「来場前に作品を見せたくない」「写真の品質に自信がない」という場合に有効で、謎めいた印象がかえって来場者の好奇心を刺激することがあります。ただしデザインの完成度が求められるため、デザイナーへの依頼が現実的です。
参考:グラフィック株式会社「作品写真の撮り方とデザイン例」
https://www.graphic.jp/feature/exhibition_dm#photo
実際にDMをどのように作るかは、デザインの経験や予算によって選択肢が異なります。主な方法を整理すると次の通りです。
デザインをプロのデザイナーに外注した場合の相場は、ハガキサイズ(片面)で8,000〜20,000円程度です。両面デザインになると15,000〜25,000円前後が一般的な目安です。グループ展の場合、参加人数で費用を分担できるため、1人あたりの負担は個展よりも少なくなることが多いです。
印刷費用の相場は次の通りです(ネット印刷会社の参考価格)。
グループ展で作るDMの枚数は平均500枚が目安とされています。東京都美術館の「都美セレクション グループ展 2024」では来場者がのべ31,382人(20日間)に達しており、大規模展では1,000枚以上のDMが必要になる場合もあります。一方で小規模なギャラリー展示ならば、SNSの告知と組み合わせることで200〜300枚でも十分なケースがあります。
入稿が直前になると「特急料金」が上乗せされる印刷会社もあります。納期を長く取るほどコストが下がるのが一般的で、余裕のある入稿スケジュールを組むことが節約の基本です。
参考:ランサーズ「グループ展の事例・参考デザイン」
https://www.lancers.jp/portfolio/tag/グループ展
グループ展のDMデザインで最も難しいのは、「参加作家それぞれの個性を尊重しながらも、DM全体として1枚絵として成立させること」です。個展と比べてこの課題は特有のもので、陶芸作家のグループ展では特に顕著に現れます。
陶芸作品は釉薬や焼成方法によって、白磁のような白、信楽のベージュ、黒泥の漆黒、青磁の淡いグリーンなど、作家ごとに色のトーンが全く異なります。複数の作品写真をそのまま並べると、DMとして統一感を出すことが難しくなります。
この問題を解決するための考え方が「テーマカラーで包む」という設計です。具体的には次のように考えます。
6名の陶芸作家によるグループ展のDMを六角形の枠でまとめたデザイン事例では、形の統一によって作家数の多さが「雑然さ」ではなく「賑やかさ」として伝わり、好評を得ています。形や枠というデザイン要素を使って「まとめる」手法は参考になります。
また、陶芸グループ展のDMには「白を基調とした作品が多い」という特徴があります。白磁や粉引などを扱う作家が複数参加する展示では、DM全体も白を基調とすることで、静かながら品のある世界観が生まれます。白地にシンプルな1〜2色のフォントだけでまとめたDMは、陶芸展という素材との親和性が特に高いのです。
DM制作の担当者を誰にするかは、グループ展の成功を左右する重要な判断です。デザインの得意な参加作家が担当するのが最もコストを抑えられますが、負担が集中しすぎることもあります。ギャラリー側がDM制作サービスを提供している場合(Gallery子の星では500枚16,800円〜)も多いので、費用と手間のバランスを考えて決めることをおすすめします。
グループ展のDMを通じて伝えたいのは「作品の美しさ」だけでなく、「この展示に行けば何かに出会える」という期待感です。陶芸という手仕事の魅力は、実物を前にしたときに初めて全部伝わるものです。DMはその入り口に過ぎません。小さなはがき1枚に、展示への期待を凝縮させましょう。
参考:Gallery子の星「DM制作サービス・料金」
https://nenohoshi.com/home/rental/dmdesign/