グランディディエライトの最大の魅力は、その神秘的なブルーグリーンの色合いと強い多色性にあります。この石を異なる角度から観察すると、3つの異なる色が見えることが特徴です。ダークブルー、グリーン、そして無色またはライトイエローという色彩変化は、見る方向によって劇的に色が変わります。
色の起因は鉄を微量に含むことが関係していると考えられています。鉄分の含有量が多ければ多いほど色が濃くなる傾向がありますが、学術報告では鉄の含有量と色の強弱に直接的な関連性は確認されていないという興味深い知見も報告されています。最も人気の高いトップカラーは、ブルーとグリーンの中間色で色が濃く、ネオン感のあるものです。一方、日本国内ではより淡い水色に近い色味のものも好まれています。
最初の発見地であるマダガスカル南部アンドラホマナ岬は、2000年代まで唯一の主要産地として知られていました。その後、スリランカでも透明なグランディディエライトが2000年に発見されましたが、真の転機は2014年5月に訪れます。マダガスカル南東部のトラノマロ村から約15km離れた地点で新鉱床が発見され、2014年5月から2016年3月の間に800キログラムもの原石が採掘されました。その後2017年にも同地域の近くで追加採掘が行われています。
採掘された800キログラムという数字は一見多く思えますが、そのうち透明度の高い宝石品質の結晶はわずか60グラム程度という現実は衝撃的です。この極めて低い歩留まり率こそが、グランディディエライトが希少石と呼ばれる理由の本質です。また、結晶中には多くのインクルージョン(内包物)が含まれており、100年以上もの間、宝石質の原石が見つからなかったのはこのためです。
グランディディエライトは、高温と低圧下で変成作用を受けたアルミナ質のホウ酸に富む石の中で生成されると考えられています。具体的には、ペグマタイト鉱床で最も頻繁に発見されますが、アプライト、捕獲岩、片麻岩の中からも見つかることが報告されています。これらは低圧下で熱を加え続けた状態の、ホウ素を多く含有したアルミニウム質の岩石が母岩となっており、特定の地質条件下でのみこの鉱物は形成されるのです。
世界各地ではドイツのアイフェル地方、マラウィ、ノルウェー、アルジェリア、チェコ共和国、スロバキア、イタリア、インド、アメリカ、カナダ、南極大陸などでも発見されたことが報告されていますが、マダガスカル産やスリランカ産のような宝石品質のものはきわめて稀です。
グランディディエライトは、パライバトルマリンと並ぶ「三大希少石」の一つとして扱われることがあります。パライバトルマリンと比較すると、グランディディエライトは非常に産出量が限られた宝石という共通点を持ちながら、レアストーンにありがちな脆弱な硬度をカバーしている点が注目されます。
具体的には、トルマリン、アパタイト、アウイナイト、ベニトアイトなどよりも引っ掻き傷に強く、モース硬度7.5という堅牢性があります。さらに特筆すべき点は、パライバトルマリンやタンザナイト、アイオライトなどの多くの希少宝石で行われている加熱処理が、グランディディエライトでは通常なされないという点です。この処理が不要であることは、宝石としての評価を高める重要な要素となっており、天然の美しさがそのまま保たれていることが大きなアドバンテージです。
グランディディエライトの資産性と将来価値は、新鉱山の発見と供給量の増加に大きく左右されます。現在の限定的な供給下では、需要と供給のアンバランスが価値を支えています。透明度が低く内包物が多いというマイナス要因がありながらも、強い多色性によって鑑別が比較的容易であり、ダークブルー⇔グリーン⇔カラーレスの色相が確認できれば真正性が証明されます。
宝石・宝飾品加工としての需要は現在まだ少ないのが現状です。しかし、新鉱床が発見され供給が増えれば、需要の上昇と共に価値も上がる可能性が指摘されています。また、ネオンカラーのグランディディエライトも産出されており、このような特殊な発色の個体は特に注目を集めています。これらの複数の要因が複合すれば、グランディディエライトは今後、より多くの愛好家に注目される宝石へと進化する可能性を秘めているのです。