ストークスの定理例題球から学ぶベクトル解析と鉱物応用

ストークスの定理を球面を使った例題で理解し、電磁気学や鉱物探査への応用まで解説します。面積分と線積分の関係を具体的に計算できるようになりますか?

ストークスの定理例題球

この記事で学べる3つのポイント
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球面での具体的計算

半径Rの球面を用いたストークスの定理の実践的な例題と計算手順

電磁気学への応用

電場や磁場の解析におけるストークスの定理の活用方法

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鉱物探査との関連

地下鉱床の電磁探査技術における定理の実用的な意味

ストークスの定理球面での基本設定

 

ストークスの定理は、空間における曲面上の面積分と、その境界となる閉曲線上の線積分を結びつける重要な定理です。球面を用いた例題では、原点を中心とする半径RRRの球を考え、平面によって切断された曲面を対象とします。

参考)【ベクトル解析】ストークスの定理~概要と例題~

定理の数式表現はCFdl=SrotFds\oint_C\vec{F}\cdot d\vec{l}=\int_S\mathrm{rot}\vec{F}\cdot d\vec{s}∮CF⋅dl=∫SrotF⋅dsとなり、左辺が線積分、右辺が回転の面積分を表します。球面の例題では、この両辺を実際に計算して等式が成立することを確認できます。

参考)ストークスの定理【内容と証明】

球面上の面素ベクトルdSd\vec{S}dSの向きは、閉曲線の周回方向から右ねじの法則で決定され、球から外向きになります。この向きの設定が計算において極めて重要です。

参考)https://math0.pm.tokushima-u.ac.jp/~ohyama/lecture/vector_analysis/Vec10_u.pdf

ストークスの定理球の具体的計算例

原点を中心とする半径1の単位球面x2+y2+z2=1x^2+y^2+z^2=1x2+y2+z2=1が平面x+y+z=1x+y+z=1x+y+z=1で切られる場合を考えます。原点から遠い側の曲面をSSS、その縁をCCCとし、ベクトル場をF=(yz,zx,0)\vec{F}=(yz, -zx, 0)F=(yz,−zx,0)と設定します。

参考)https://hooktail.sub.jp/vectoranalysis/StokesTheorem/index.pdf

まず回転を計算するとrotF=(x,y,2z)\mathrm{rot}\vec{F}=(x, y, -2z)rotF=(x,y,−2z)となります。球面のパラメータ表示をp(u,v)=(u,v,1u2v2)p(u,v)=(u, v, \sqrt{1-u^2-v^2})p(u,v)=(u,v,1−u2−v2)とすると、pu×pv=(u1u2v2,v1u2v2,1)p_u\times p_v=(\frac{u}{\sqrt{1-u^2-v^2}}, \frac{v}{\sqrt{1-u^2-v^2}}, 1)pu×pv=(1−u2−v2u,1−u2−v2v,1)が得られます。

参考)http://www2.itc.kansai-u.ac.jp/~afujioka/2012-2016/2013/tm2/131211tm2.pdf

面積分SrotFdS\int_S\mathrm{rot}\vec{F}\cdot d\vec{S}∫SrotF⋅dSを計算すると、球面座標dS=R2sinθdθdϕdS=R^2\sin\theta d\theta d\phidS=R2sinθdθdϕを用いて具体的な数値が導出できます。一方、線積分CFdl\oint_C\vec{F}\cdot d\vec{l}∮CF⋅dlも境界円周上で計算し、両者が一致することで定理が検証されます。

参考)ストークスの定理とは? 計算例、電磁気学への応用

ストークスの定理球面と電磁気学応用

電磁気学において、ストークスの定理はファラデーの電磁誘導の法則を導出する際に不可欠です。電場E\vec{E}Eと磁束密度B\vec{B}Bの関係式rotE=Bt\mathrm{rot}\vec{E}=-\frac{\partial\vec{B}}{\partial t}rotE=−∂t∂Bに定理を適用すると、SrotE,n=cE\int_S\langle\mathrm{rot}E, n\rangle=\int_cE∫S⟨rotE,n⟩=∫cEが成立します。

参考)http://www.radio3.ee.uec.ac.jp/ronbun/EM_Wonderland_Chap_3.pdf

アンペアの法則も同様に、磁界B\vec{B}Bと電流密度j\vec{j}jの関係c2rotB=jε0c^2\mathrm{rot}\vec{B}=\frac{\vec{j}}{\varepsilon_0}c2rotB=ε0jからc2cB=1ε0Sjc^2\int_c\vec{B}=\frac{1}{\varepsilon_0}\int_S\vec{j}c2∫cB=ε01∫Sjが導かれます。これらは回転の面積分を線積分に変換することで、実用的な計算を可能にします。

球面導体の問題では、対称性の高い球状の電荷分布を扱う際にストークスの定理が活用され、電場が球面に平行な成分を持たないように電荷が再配置される現象を解析できます。

参考)https://webpark1956.sakura.ne.jp/lecture/2004-em/note-em.pdf

ストークスの定理閉曲面と開曲面の違い

ストークスの定理において曲面は「開曲面」を考える必要があります。開曲面とは境界を持つ曲面であり、閉曲線がその縁となります。一方、球面全体のような「閉曲面」を考えると、境界が存在しないため定理の適用には注意が必要です。

閉曲面の場合、表裏の区別ができず、また周回する閉曲線が定義できません。このため、球面の一部を平面で切り取った「球冠」や「半球」を対象とすることで、明確な境界円が得られ、定理が適用可能になります。

曲面の向きと閉曲線の周回方向は右ねじの法則で関係付けられ、この対応が正しく設定されないと計算結果に符号の誤りが生じます。単連結な曲面であることも定理成立の前提条件です。

 

参考)ストークスの定理の応用 [物理のかぎしっぽ]

鉱石探査における球面モデルと定理の実践的意義

鉱物探査において、地下の鉱床や鉱脈を電磁探査法で検出する際、ストークスの定理は電磁場の挙動を理解する理論的基盤となります。鉱床周辺の導電率分布が球状または楕円体状にモデル化される場合、球面を用いた計算技法が直接応用できます。

 

人工的に送信した電磁波が地下の鉱石に誘導電流を生じさせ、その二次的な磁場を地表で観測する手法では、回転と面積分の関係を利用した逆問題解析が行われます。球対称モデルでの解析解は、複雑な地質構造を持つ実際の鉱床データの初期推定値として活用されます。

 

さらに、磁鉄鉱や黄鉄鉱などの磁性鉱物が存在する場合、その周囲の磁場分布を球面上で積分することで、鉱床の総磁気モーメントを推定できます。この技術は航空磁気探査や地上磁気測量のデータ解釈において、ストークスの定理を基礎とした数値シミュレーションと組み合わせて実用化されています。

 

鉱物学における結晶構造の対称性解析でも、球面調和関数を用いた展開が行われ、その際の積分計算にストークスの定理の概念が間接的に関与しています。特に立方晶系や六方晶系の結晶が示す物性テンソルの球面平均を求める際、面積分の性質が利用されます。

 

ストークスの定理とは?計算例、電磁気学への応用 - 数学Fun
電磁気学の基本方程式への応用について詳しく解説されています。

 

 


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