日本における温室効果ガスの排出量を種類別に見ると、二酸化炭素(CO2)が圧倒的に多く、2023年度の実績では全体の92.3%を占めています。この二酸化炭素のうち、化石燃料の燃焼に由来するものが約94.7%と大部分を占めており、石油・石炭・天然ガスなどのエネルギー利用が最大の排出源となっています。
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メタン(CH4)は温室効果ガス全体の2.7%を占め、二酸化炭素の28倍もの温室効果を持つ強力な気体です。メタンの主な発生源は、稲作における水田での植物分解、家畜の腸内発酵によるげっぷ、天然ガスの採掘過程などです。一酸化二窒素(N2O)は全体の1.5%ですが、二酸化炭素の265倍という極めて強い温室効果を持ち、農業における窒素肥料の使用や燃料の燃焼から発生します。
参考)https://gurilabo.igrid.co.jp/article/4140/
フロン類(HFCs、PFCs、SF6)は合計で約3~4%の割合ですが、二酸化炭素の数千倍から数万倍もの温室効果を持つため、冷蔵庫やエアコンの冷媒、半導体製造などでの使用には厳重な管理が求められています。これらの温室効果ガスは、それぞれ異なる排出源から発生し、地球温暖化に複合的に影響を与えています。
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日本のエネルギー起源CO2排出量を部門別に分析すると、エネルギー転換部門が最も多く、2020年度の実績で全体の約40%を占めています。エネルギー転換部門とは、石炭や原油、天然ガスなどの一次エネルギーを電気や精製石油製品などの二次エネルギーに変換する部門であり、特に火力発電所での化石燃料燃焼が大きな排出源となっています。
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産業部門は全体の約25%を占め、工場での製造活動における化石燃料の使用が主な排出原因です。製造業では、鉄鋼・セメント・化学工業などのエネルギー多消費型産業が多くのCO2を排出しており、生産プロセスで大量の熱エネルギーが必要となります。さらに工業プロセス部門では、石灰石の消費や化学反応によって約4%のCO2が排出されています。
参考)4-04 日本の部門別二酸化炭素排出量(2023年度)
同じ化石燃料でも、石炭から天然ガスへの転換でCO2排出量は約半分になり、天然ガス火力発電は発電効率も高いため、発電量あたりのCO2排出量は石炭火力発電に比べて60~70%削減できます。近年では、アンモニアや水素を燃料とするCO2を出さない火力発電の実証実験も進められており、脱炭素化への技術革新が期待されています。
参考)【日本発】世界が注目する「CO2を出さない」火力発電
運輸部門は日本の温室効果ガス排出量の約17~18%を占め、自動車・船舶・航空機などの移動手段における化石燃料の燃焼が主な原因です。特にガソリンを使用する乗用車や、軽油を使用するトラック・バスなどの道路輸送が運輸部門の大部分を占めており、物流の増加と共に排出量も増える傾向にあります。
家庭部門は全体の約5%、業務その他部門(商業・サービス・事業所等)は約6%を占めています。家庭部門では、冷暖房・給湯・照明・家電製品などの電力使用や、暖房・給湯用の灯油・ガスの使用がCO2排出の主な原因となっています。業務その他部門では、オフィスビル・店舗・学校・病院などの施設における空調・照明・OA機器などのエネルギー消費が排出源です。
電気・熱配分後の排出量で見ると、産業部門が38%と最も多く、次いで業務その他部門、運輸部門、家庭部門の順となります。これは電力消費に伴う間接的なCO2排出を各部門に配分した結果であり、電力使用の多い業務部門と家庭部門の実質的な排出割合が高まることを示しています。エネルギー効率の改善と再生可能エネルギーへの転換が、各部門での削減に有効です。
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温室効果ガスが増加している根本的な原因は、化石燃料の大量消費と森林面積の減少という二つの要因が複合的に作用していることにあります。産業革命以降、「大量生産・大量消費」型の経済活動が世界中に広がり、石油・石炭・天然ガスなどの化石燃料の消費量は増加の一途をたどってきました。火力発電・自動車の走行・工場の稼働・ゴミの焼却処分など、現代社会のあらゆる活動が化石燃料に依存しており、その燃焼によって大量のCO2が大気中に放出されています。
森林は光合成により大気中のCO2を吸収し、炭素として木材に蓄える重要な役割を果たしています。しかし世界の森林面積は減少の一途をたどっており、2000年から2010年の間には毎年平均で520万ヘクタールもの森林が失われました。森林減少の主な原因は、農地への転用、過剰な伐採、違法伐採、焼畑農業などであり、特に南アメリカやブラジルなどの熱帯地域で著しい減少が見られます。
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森林が減少すると、CO2の吸収能力が低下するだけでなく、伐採や焼畑によって森林に蓄積されていた炭素が大気中に放出されるという二重の悪影響があります。森林減少等に伴う温室効果ガス排出量は、世界全体の排出量の約2割を占めており、森林保全と再生は温暖化対策の重要な要素となっています。若い森林ほどCO2吸収速度が大きいため、計画的な伐採と植林のサイクルを維持することが効果的です。
参考)木材の熱物性と接触温冷感
実は、温室効果ガス削減のためのクリーン・エネルギー技術への移行には、大量の鉱物資源が必要となるという興味深い関係があります。世界銀行の報告書によると、風力・太陽光・地熱発電の実現やエネルギー貯蔵のために、グラファイト、リチウム、コバルト等の鉱物の生産が2050年までに500%近く増加する可能性があり、30億トン以上の鉱物・金属が必要になると予測されています。
参考)クリーン・エネルギーの需要増加に伴い鉱物生産が急増
しかし重要な点として、採掘から最終消費まで鉱物生産の過程で生じる二酸化炭素排出量は、化石燃料技術により生じる温室効果ガスのわずか6%に過ぎないことが明らかになっています。これは、再生可能エネルギー技術への転換が、長期的には大幅なCO2削減につながることを意味しています。素材生産に伴う温室効果ガス排出量は全体の約23%を占めるため、金属やセメント、プラスチック等の資源・素材の生産方法の見直しも重要です。
参考)脱炭素社会における資源循環の姿とは?|循環・廃棄物のけんきゅ…
木材利用においては、製品化するのに必要なエネルギー量が鉱物資源などに比べて桁違いに小さく、二酸化炭素排出量削減に効果があります。木材製品を使用すること自体が、空気中のCO2から取り込んだ炭素を木材中に長期間貯蔵することになり、特に長期利用は地球温暖化抑制に大きく寄与します。脱炭素社会実現のためには、2030年までに全ての対象金属の天然鉱石からの生産量がピークに達し、2100年までの累積での天然鉱石採掘量は現在確認されている資源量の概ね50%以下に留まると推計されており、資源循環の重要性が高まっています。
世界銀行「クリーン・エネルギーの需要増加に伴い鉱物生産が急増」
世界の国別二酸化炭素排出量を見ると、中国が圧倒的に多く、2020年の実績で約90億5,700万トン(全体の28~31%)を排出しており、世界最大の排出国となっています。第2位はアメリカで約48億3,300万トン(15%)、第3位はインドで約20億7,700万トン(6.4~7.2%)、第4位はロシアで約14億3,900万トン(5%)と続きます。
参考)温室効果ガスの種類や排出量は?世界や日本の現状を知り対策を考…
日本は世界第5位の排出国であり、2020年の排出量は約10億8,157万トンで全体の3.15%を占めています。日本のCO2排出量は温室効果ガス全体の91.3%を占め、そのうち燃料の燃焼に伴う排出が94.7%とほとんどを占めています。内訳はエネルギー産業で40.5%、製造・建設業で23.5%、運輸業が18%となっており、産業構造がエネルギー多消費型であることが特徴です。
参考)【2023年最新】二酸化炭素排出量の最新ランキング 日本の順…
地球温暖化に対する各国の責任を評価する際には、歴史的な累積排出量も重要な指標となります。産業革命以降の長期にわたる化石燃料使用により、先進国が大気中に蓄積したCO2の量は膨大であり、現在の排出量だけでなく過去からの累積的な影響も考慮する必要があります。開発途上国の経済成長に伴い排出量が増加している一方で、先進国には歴史的責任と技術力を活かした削減の先導が求められています。
参考)https://www.mdpi.com/2076-3298/10/4/66/pdf?version=1681481065
| 順位 | 国名 | 年間CO2排出量 | 全体に占める割合 | |
|---|---|---|---|---|
| 1位 | 中国 | 約107億トン | 31.2% | |
| 2位 | アメリカ | 約48億トン | 14.0% | |
| 3位 | インド | 約25億トン | 7.2% | |
| 4位 | ロシア | 約17億トン | 5.0% | |
| 5位 | 日本 | 約11億トン |
3.2% | 3.2% |

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