茶針は「注ぎ口の詰まりを取るだけの道具」だと思っているなら、それだけで年間数千円分の茶葉を無駄にしているかもしれません。
茶針(ちゃしん)は、中国茶・台湾茶を淹れる際に使う細長い針状の道具です。「茶通し(ちゃどおし)」とも呼ばれ、どちらも同じ道具を指します。全長は約13センチほど(一般的なボールペンと同じくらい)で、針部分の長さは5〜6センチ程度。重さはわずか14gほどと非常に軽く、片手で扱いやすいサイズです。
茶針の主な役割は大きく2つあります。まず1つ目は、茶壺(急須)の注ぎ口に詰まった茶葉を取り除くことです。2つ目は、茶則(ちゃそく)や蓋碗に茶葉をスムーズに移すためのガイドとしての使い方です。
この2点だけ覚えておけばOKです。
さらに深く知ると、3つ目の用途として茶葉が膨らんだ茶壺の内部で偏った茶葉を整える「かき混ぜ」にも使われることがあります。ただしこれは上級者向きで、茶壺の内部を傷つけるリスクもあるため、基本的な2用途をまず習得するのが賢明です。
茶針は中国茶道具の6点セット「茶道六君子(ちゃどうりくくんし)」にも含まれています。六君子とは、茶則・茶匙・茶針・茶挟・茶漏・茶筒の6種類のことで、茶針はそのうちの1つとして必ず数えられる重要な道具です。
| 道具名 | 主な役割 |
|---|---|
| 茶則(ちゃそく) | 茶葉を取り出して客に見せる |
| 茶匙(ちゃし) | 茶葉をすくって移す |
| 茶針(ちゃしん) | 詰まりの解消・茶葉移送ガイド |
| 茶挟(ちゃはさみ) | 茶杯を挟んで温める・移す |
| 茶漏(ちゃろう) | 茶壺に茶葉をこぼさず入れる |
| 茶筒(ちゃとう) | 六君子の道具を収納する筒 |
中国茶を始めたばかりの方は、セットで揃えるとすべての道具がひとつの茶筒にまとまるので収納も便利です。
中国茶・台湾茶道具の種類と使い方を解説した記事(Chaswear茶思維)
茶壺(急須)を使った中国茶・台湾茶の世界では、注ぎ口の詰まりは「あるある」トラブルのひとつです。特に注ぎ口の穴が1つしかない「一穴タイプ」の茶壺では、茶葉が1枚張り付くだけでお茶が全く出なくなることがあります。茶針が必要になる場面です。
正しい手順は以下の通りです。
このとき、力任せに奥まで押し込んではいけません。茶壺の注ぎ口は繊細な作りで、内部に細かいバリ(突起)が施されている場合があります。これは茶葉が張り付きにくくするための設計です。強引に差し込むと、この精巧な構造を傷つけてしまいます。
傷つけない、が鉄則です。
また、茶壺を使い終わった後に注ぎ口を強い水圧で洗い流すと、詰まりの予防になります。定期的なケアで茶針の出番を減らすことができます。一方、使用中に詰まりが発生した場合は、蓋を外して注ぎ口の向きを真下に傾けて自然に流す方法も有効です。茶針を使わずに済むことも少なくありません。
茶針のもう一つの重要な使い方が、茶葉を茶則や蓋碗から茶壺へ移す際のガイドとしての役割です。この使い方は地味に見えますが、中国茶の本格的な作法では欠かせません。
手順はシンプルです。まず茶則の上に茶葉を乗せ、茶壺の口に向けて少し傾けます。次に茶針を使って茶葉を押さえながら、ゆっくりと滑らせて茶壺の中へ落とします。このとき茶針があることで、一気に大量の茶葉が落ちるのを防ぎ、投入量を細かくコントロールできます。
量のコントロールが肝です。
例えば茶壺の容量が100mlほどの小さなものであれば、入れる茶葉の量は5〜8g程度が目安です。茶針なしで傾けると、底が見えなくなるほど入ってしまうことがあります。多すぎる茶葉は、茶葉が膨らんだときに茶壺を圧迫し、最悪の場合は蓋が割れるリスクもあります。茶針でコントロールすることで、このリスクを防げます。
茶則のロートのような先端部分(注ぎ口)と茶針を組み合わせると、茶葉が飛び散らず、茶盤の上も汚れません。お客様の前でお茶を淹れる際には特に、所作の美しさにもつながります。この「茶葉を見せながら移す」という一連の動作は、中国茶の茶席でのコミュニケーションの一部でもあります。
中国茶器の種類と使い方・最初に必要なものを解説(茶酔 ochayoi)
茶針が特に活躍するもう一つのシーンが、プーアル茶などの「緊圧茶(きんあつちゃ)」を崩す場面です。プーアル茶の餅茶(へいちゃ)は、フリスビーのような円形に固く圧縮されていて、そのままでは急須に入れられません。これを崩すための専用の茶針は「プーアル刀(プーアルとう)」とも呼ばれます。
崩し方の手順を確認しておきましょう。
この方法で大きく割りたいときは、1センチ間隔を目安に複数の箇所を刺して、まず全体を緩めてから持ち上げると崩しやすくなります。一気に力を入れると、茶葉が粉末状になりやすいため要注意です。茶葉の形を残すことで、香りと旨みの揮発が抑えられ、淹れたときの味が豊かになります。
崩しすぎは味の劣化につながります。
また、餅茶は一度に全部崩さないことが重要なポイントです。飲む分だけ崩して取り出し、残りは餅茶の形のまま保存することで、茶葉が空気に触れる面積を最小限に抑え、鮮度を長く保てます。茶針が一本あれば、必要な分だけ精密にコントロールできます。
プーアル餅茶のほぐし方を動画付きで解説(お茶の専門店HOJO)
茶針にはさまざまな素材や形状があり、用途によって選ぶのがベストです。主な素材は竹製・木製・金属製(ステンレスや真鍮)の3種類です。それぞれに特徴があります。
竹製・木製の茶針は、手になじみやすく軽量なのが最大のメリットです。茶壺の注ぎ口に差し込む際に、陶磁器の内壁を傷つけにくいという安全性もあります。天然素材ならではの素朴な風合いが茶席の雰囲気に馴染みやすく、入門者にもおすすめです。ただし竹製は水分を含むと劣化しやすいため、使用後は必ず乾燥させて保管する必要があります。
金属製(ステンレス・真鍮)の茶針は、耐久性が高く丈夫です。硬い餅茶を崩す際には金属製の方が力が入りやすく、折れる心配もありません。一方で陶磁器の内壁に強く当てると傷がつく可能性があるため、茶壺の詰まり解消に使う場合は慎重に扱う必要があります。
茶匙の柄の後ろが茶針になっている「兼用タイプ」の道具も市販されています。これは道具の数を減らしたいミニマルな方に便利です。六君子のセットに含まれる茶針は、初心者がまず1本選ぶ際の目安になります。価格帯は単品で500円〜3,000円程度、六君子セットなら2,000円〜5,000円程度が相場です。
意外なことですが、竹で自作することも可能です。竹林から採取した竹を10センチほどに割り、カッターで鋭利な部分を面取りし、紙やすりで滑らかにするだけで、立派な茶通しになります。天然素材の道具があると、茶の時間がさらに豊かになりますね。
お手入れはシンプルです。使用後はぬるま湯で軽くすすぎ、清潔なタオルやティッシュで水分を拭き取ってから、風通しの良い場所で陰干しします。竹製は特に水分が残るとカビが発生しやすいため、使用後の乾燥が最も重要なポイントです。
竹で茶則・茶通し(茶針)をDIYする方法を紹介(フェリシモ女子DIY部)

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